高等学校歴史総合/もっと知りたい 産業革命とブラスバンド

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校地理歴史>高等学校歴史総合>もっと知りたい 産業革命とブラスバンド

18世紀までの金管楽器[編集]

吹奏楽部

 吹奏楽部をブラスバンドと呼ぶ人がいます。ブラスバンドには金管楽器と打楽器がありますが、ブラスバンドは「管楽器と打楽器の合奏、つまり弦楽器を持たないオーケストラ(『新版吹奏楽講座』)」なので、異なります。動物の骨や角、木、金属などで作られた管楽器は、太古の昔から戦争や儀式に使われてきました。ところで、金管楽器を見て何を思い出すでしょうか。トランペットが最初です。他にもチューバ、コーネット、ホルン、トロンボーンなどがあります。金管楽器とは、マウスピースを口にくわえて、唇を動かして演奏する楽器を指します。

 近世ヨーロッパでは、誰が主導権を握っているかを示すために、トランペットを使っていました。しかし、当時のナチュラルトランペットは限られた音(自然倍音)しか出せず、メロディーは高音域で唇を動かして演奏するしかなく、かなりの技術が必要でした。一方、ホルンは、昔は角笛でしたが、均一な音にするため、金属製になりました。18世紀に入ると、ホルンはクルークと呼ばれるパイプに置き換えられるようになりました。これによって、様々な音色に調整出来るようになったので、トランペットよりも多くの種類の音楽に使われるようになりました。イギリスでは18世紀半ばに工業化が始まり、18世紀末にはフランス革命が起こりました。この2つの出来事が、金管楽器を大きく変えていきました。

工業化と金管楽器の発展[編集]

 まず、工業化によって紡績機や織機が高速化されました。この変化に対応するため、木製の機械から金属製の機械へと変わっていきました。同時に、蒸気機関も実用化されました。蒸気機関にはピストンやシリンダーが必要なので、高精度の工作機械を使って作らなければなりません。金属で物を作る精度が上がり、1810年代にはドイツで角型のピストンバルブを持つホルンが作られるようになりました。バルブを押したり回したりすれば、バルブの長さを変えられました。その結果、それまで金管楽器でしか演奏出来なかった半音の音階を、他の楽器でも簡単に演奏出来るようになりました。

フランスのギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団

 こうした変化以前に起こったフランス革命によって、宮廷に仕えていたトランペット奏者達は仕事を失ってしまいました。彼らはギャルド・ナシオナルと呼ばれる近衛兵の新しい楽団に入り、屋外や市民が建てた大きなホールで演奏しました。また、彼らはフランス音楽院の講師もしていました。彼らはトランペットより短いコルネットにバルブをつけ、美しいメロディーを演奏するようになりました。

 一方、イギリスでは、労働者の健康的な娯楽として、ブラスバンドが奨励されていました。19世紀は、金管楽器の価格が下がり続けた時代でした。19世紀、金管楽器の価格は下がりつづけました。工業化によって、原料金属の精錬、部品の共通化、電気メッキやペンダントメッキなどの新しい技術の採用が進んだからです。労働者達は、バルブ付きで演奏しやすいコーネットやサックスホルンの練習に励みました。そして、安く大量生産された楽譜を手に、演奏を楽しんでいました。