高等学校歴史総合/先進国の政治と社会運動

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 1968年頃、若者・女性・黒人などが世界各地で社会運動を起こしました。1968年という年は、世界の歴史の中でどのような意味を持つのでしょうか。

西側諸国と福祉国家政策[編集]

 第二次世界大戦後、クレメント・アトリーがイギリスを支配しました。フランスのシャルル・ド・ゴールは、主要産業の買収と社会保障制度の整備によって、戦後復興を目指しました。イギリスの「ゆりかごから墓場まで」思想に代表される福祉国家政策は、戦後の西側資本主義国に共通する考え方でした。福祉国家政策とは、「大きな政府」による富の再分配です。政府が低金利と公共投資を増やせば需要も増え、完全雇用と社会政策の充実を図らなければならないというケインズ派の考え方に基づきます。1955年、日本は55年体制と呼ばれる政治体制が敷かれました。保守的な自民党が与党、革新的な日本社会党や日本共産党が野党の代表的な政党でした。経済成長を背景に、公共事業や補助金を活用した再分配政策が行われました。

 1960年代、ジョン・フィッツジェラルド・ケネディリンドン・ジョンソンがアメリカ政府を指揮していた頃、「偉大な社会」思想に基づいて福祉の充実が進められました。しかし、ベトナム戦争への出費や社会福祉予算の増大が財政を圧迫しました。また、1960年代以降、国際的に見たアメリカの地位は低下しました。一方、ソ連では、ニキータ・フルシチョフヨシフ・スターリンの重工業重視の政策を変えて、農業生産を増やしましたが、経済的に行き詰まりました。

国境をこえる社会運動[編集]

 1960年代後半から1970年代前半にかけて、資本主義国・社会主義国を問わず、活発な社会運動が展開されました。例えば、アメリカではベトナム反戦運動・公民権運動・女性解放運動などがあります。また、大学紛争・チェコスロヴァキアの「プラハの春」・中国の「文化大革命」なども挙げられます。1968年頃、これらの社会運動は世界中に広がりました。社会主義政党と結びついていた労働運動などの伝統的な社会運動とは異なります。

 「ニューレフト(新左翼)」と呼ばれる新しい社会運動には、自国に限らない共通点がありました。例えば、ベトナム戦争に反対したり、文化大革命を支持したり、第三世界の力が強まる中で社会的少数派に大きな関心を寄せていました。また、運動の中心となった若者達は、伝統的な権力を持った文化とは異なるカウンターカルチャーに参加していました。

 このような運動が各国の政治や社会に与えた影響はまちまちですが、人種・性別・環境・移民・難民など多様な論点は、その後の新しい社会運動の基礎となりました。また、カウンターカルチャーは消費文化とも結びつき、サブカルチャーを中心に現在の文化やライフスタイルに影響を与えました。