高等学校物理/気体の状態方程式
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本節は、気体の基礎的な性質について学習します。気体の基礎的な性質では、定義の意味が非常に重要になってきます。下線部や太字の部分を徹底的に押さえて下さい。
気体の圧力【物理基礎の復習】
[編集]気体は、空間を飛び回る莫大な数の分子で構成されます。気体を容器に閉じ込めると、これらの分子が容器の壁に衝突を繰り返します。気体を構成する分子はそれぞれ、様々な速さであらゆる方向に飛び回っているため、それぞれの分子が壁に与える力を平均すると、壁は気体から一定の力を受け続けると考えて構いません。
このように、気体が単位面積(Small area)あたりに垂直に及ぼす力を気体の圧力(pressure)といいます。圧力の単位にはパスカル(Pascal)が使われます。なお、1パスカルは、1平方メートルの面積に、1ニュートン(Newton)の力(Force)がはたらく時の圧力の大きさです。
大気は、大気中の物体に圧力(大気圧)を及ぼし、地球上の大気圧は、およそです。
圧力の公式 |
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p= |
ボイル・シャルルの法則
[編集]容器に閉じ込めた気体の体積や温度を変えると、気体の圧力も変化します。ロバート・ボイルやジャック・シャルルは、この時の気体の圧力、体積、温度の間に成り立つ法則を実験によって明らかにしました。
ボイルの法則
[編集]ロバート・ボイルは一定質量の気体を注射器に閉じこめ、温度(Temperature)が変わらないようにしながら、気体の圧力と体積(Volume)との関係を調べました。その結果、次の2点が分かりました。
- 温度を一定に保ったまま一定量の気体の体積を半分にすると、圧力は2倍になります。
- 一般に、温度が一定の時、一定質量の気体の体積は気体の圧力に反比例します。
以上2点の結果から、圧力×体積=一定(definite)が導き出され、この法則をボイルの法則といいます。
ボイルの法則 |
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pV=definite |
シャルルの法則
[編集]ジャック・シャルルは一定質量の気体を注射器に閉じこめ、気体の圧力が変わらないようにしながら、水の入ったビーカーに入れて加熱し、気体の体積と温度の関係を調べました。その結果、
- 水温が上昇するにつれて、気体の温度が高くなり、気体の体積も大きくなります。
- 圧力が一定の時、一定量の気体の体積は絶対温度(Absolute Temperature)に比例します。
ここから、体積=一定×温度や体積÷温度=一定が導き出され、この法則をシャルルの法則といいます。
シャルルの法則 |
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V=definite×T
=definite |
ボイル・シャルルの法則
[編集]先程のボイルの法則とシャルルの法則は1つの式にまとめられます。
一定質量の気体の体積は、絶対温度に比例し、圧力に反比例します。
これを、ボイル・シャルルの法則といいます。
ボイルの法則 |
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=definite |
証明
[編集]理想気体の状態方程式
[編集]この内容は少し抽象的なので、シュークリームの生地の膨らみ具合を具体例を出してみます。
焼き上がったシュークリームの空洞が、直径約6cm、半径(radius )約3cmの半球体として考えると、体積は球体の体積を求める公式を使って、次のように求められます。
半球の体積=球の体積の半分
=
=18×3.14
=56.52
シュークリーム内部の空洞は、原材料の水分が水蒸気となり、それを加熱して生地を膨らませて出来ています。シュークリームを焼くには、180℃のオーブンが必要です。180℃のオーブンで25分焼くと、シュー生地に含まれる水分が蒸発して水蒸気の泡となり、180℃に加熱すると、その泡が大きくなります。その後、シュー生地は180℃で25分間加熱します。生地をこねると風船のように膨らみ、シュークリームになります。
そして、気体の体積は絶対温度に比例します。180℃(絶対温度約453K)で56.52の体積が、100℃(絶対温度約373K)でどれだけの重さになるのかを考えてみましょう。
100℃の体積
=180℃の体積×
=56.52×
=46.53…
ここで、100℃の水蒸気は1L(1000)で0.598gと分かっているため、最初にどれだけの水があったのかが分かります。
最初の水量
=0.598g×
=約0.028g
そのため、少量の水分で生地が膨らみ、おいしいシュークリーム生地が作れます。私達は材料に水を多めに使いますが、生地に水分を含ませたり、空洞を作ったりする以外には、水は残りません。
もう少し深く考えてみましょう。先程、説明の中で、気体の体積は絶対温度に比例するという法則を使いました。水蒸気は気体なので、温度に対して体積がどのように変化するのかを考えてみます。ここで、理想気体の状態方程式という比例式を使えば、体積の変化が分かります。
この絶対温度とは、温度のはかり方のことです。皆さんが普段用いている温度のはかり方はセルシウス温度(セ氏温度)と呼び、元々は水が1気圧で凍る温度を0度、同じく水が1気圧で沸騰する温度を100度として、その間を100等分したものですが、絶対温度は温度がこれ以上下がらない点である-273.15℃(絶対零度)になる温度を0としたものです。この中でもケルビン(記号:K)というはかり方は、1Kあたりの温度の差を1℃と同じにしたもので、特にこれを指して絶対温度ということもあります。たとえば、0℃は約273K、100℃は約373Kとなります。
グラフは、温度が0℃(273K)の場合と273℃(546K)の場合を比較して、ある分子数の気体体積に圧力がどのような影響を与えるのかを表しています。温度が一定の場合、気体の体積と圧力は正反対の関係になります。
状態方程式をよく理解するために、単位を整理してみましょう。理想気体の状態方程式では、「分子の数」と書かれています。しかし、分子が多いので、「物質量」と表現するのが普通です。単位はmol、つまり約6000億倍の1兆倍個とされています。物質量は、分子の数をアボガドロ定数で割った値に等しくなる関係です。アボガドロ定数とは、12gの炭素原子に含まれる原子・分子の個数です。「分子の個数」ではなく「分子の物質量」を使う場合、その比例定数は「モル気体定数(molar gas constant)」と呼ばれ、8.31と分かっています。
物質量 |
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モル気体定数の証明 |
モル気体定数の数値は、実際の問題で、与えられています。 しかし、もしそれがなかったら、下のように出してもいいでしょう。
= = = = |
グラフは、物質量(分子とアボガドロ定数の割合)が1molの気体分子が、その圧力と体積にどのような関係を持つかを示しています。温度が0℃で、圧力が大気圧と同じ(標準状態)時、1molの気体が占める体積を計算してみましょう。
天気予報では、大気圧を1013hPaと表します。ヘクトは100を意味するので、101300Paとなります。この物質量は1mol、気体定数は8.31J/(mol・K)、温度は273Kなので、体積は0.0224、22.4Lとなります。アボガドロ定数がどんな気体でも気体分子の個数なら、その気体の標準体積は22.4Lになります。
実は、水蒸気を標準状態に近づけると液体に変わるため、標準状態の水蒸気の体積を考えても意味がありません。また、空気中の圧力を上げればいくらでも縮むように感じますが、気体の圧縮には限界があります。
理想気体とは、そのような限界がないと考えられている気体を指します。実際の気体の体積や密度は、存在する範囲で理想気体と同じように変わると考えて計算します。
理想気体の状態方程式 |
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pV=nRT |
「理想気体」の考え方で、100℃の水蒸気の密度がどのくらいかを大まかに考えてみましょう。
気体1分子の質量は、気体の種類によって変わります。一定数以上の分子の質量は、「気体の分子量」と呼ばれる数値に等しくなります。水の分子量は18ですから、シュークリームを膨らませる水蒸気の体積は、標準状態22.4Lで18gです。この18gの水蒸気の質量は、状態方程式を使って計算出来ます。100℃の水蒸気18gの体積は、大気圧の時、約30.6Lとなり、状態方程式を使って計算出来ます。
状態方程式の資料出所
[編集]- 小川慎二郎著『高校の物理が一冊でまるごとわかる』2022年 ベレ出版