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高等学校 地学基礎/人間生活と地球環境の変化

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
高等学校の学習>高等学校理科>高等学校地学>高等学校 地学基礎>人間生活と地球環境の変化

本節は、人間の活動を誤ると、地球環境も危うくなるような問題点を学びます。

キーワード[重要用語]

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オゾンホール・エルニーニョ現象・ラニーニャ現象・酸性雨

地球規模の環境変化

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地球温暖化

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スヴァンテ・アレニウスは、地球温暖化の原因として二酸化炭素を取り上げました。しかし、周囲の人はこの考え方を無視されていました。二酸化炭素は地球を暖めて、寒さを和らぐと宮沢賢治の文学作品「グスコーブドリの伝記」に記されました。科学的な考え方と文学作品の発想は地球の気温にどのような影響を与えるのかを違う視点から示しています。しかし、地球の天気と気温の変化は明らかな原因と結果を掴めません。

昔から人間は豊かな暮らしを求めて、石炭・石油を豊富に使ってきました。石炭・石油を使えば使うほど、二酸化炭素が空気中に増えてしまいます。二酸化炭素が増えると、世界の気温も少しずつ高くなります。また、木は二酸化炭素を吸い込んで空気を綺麗にしてくれます。木が次々切られて少なくなると、空気中の二酸化炭素も溢れます。世界の気温が上がると、異常気象・海面上昇から私達の暮らしにも影響を与えてしまいます。世界各国がこの問題に気づいて、二酸化炭素を減らしていこうと話し合いました。各国は「自国はこれだけ減らします。」と目標を決めて、実際に行動を始めています。このように少しでも地球がこれ以上暑くならないようにして、未来の地球を守り、安心して暮らせるように守ろうとしています。

気候変動に関する政府間パネル
地球温暖化から天気も大きく変わってきています。この問題を解決するために、世界各国はお互いに対策を考えています。その中でも、世界中の科学者が二酸化炭素の量を調べて、それを国際会議で明らかにしています(気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change)。この会議から各国が同じ考え方で対策を進めるようにしています。初期の報告は温暖化の原因も不明でしたが、世界各国でお互いに結束しました。その後、地球温暖化の原因は人間の活動だと分かりました。

観測統計から調べてみると、空気中の二酸化炭素は主に北半球で毎年増えており、時期ごとに増えたり減ったりしています。空気の流れと気温の変化がこのような動きに関係しています。二酸化炭素は冬になると増えて、夏になると少なくなります。地球全体で見たら、二酸化炭素が増えると温室効果も強まります。その結果、地球全体の気温を押し上げます(地球温暖化)。地球温暖化はこれからの地球に影響を与えるかもしれません。

森林は空気中の二酸化炭素を吸い込んで、地球の気温上昇を防いでいます(負のフィードバック)。反対に永久凍土が溶けると、温室効果ガスも出るようになり地球の気温上昇に繋がります(正のフィードバック)。このようなフィードバックは地球の気候に大きな影響を与えています。森林を増やして、人間の活動から永久凍土をなるべく溶かさないようにすると地球温暖化も抑えられるかもしれません。

オゾン層の破壊

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冷蔵庫・エアコン・スプレーなどが私達の周りに溢れています。かつて、このような製品にフロンが含まれていました。フロンは無香・不燃性・無害なので便利な物質として使われました。しかし、フロンは空気中を緩やかに上がり、地球の成層圏まで届きます。成層圏に紫外線が当たると、フロンも化学変化から塩素に変わります。この塩素がオゾン層を壊します。オゾン層は強い紫外線を遮って、地球の生物を守ってくれています。もし、オゾン層が壊れると紫外線も地面まで豊富に届くようになり、人間の健康と自然環境を大きく損ないます。特に、南極の上空はある時期になるとオゾンの減少を突然招いています(オゾンホール)。1987年、世界はこの問題に対して話し合いを行いました。そして、なるべくフロンを使わないようにモントリオール議定書で制限しました。モントリオール議定書に沿って、クロロフルオロカーボンは1996年までに使われなくなり、ハイドロクロロフルオロカーボンも2020年までに使われなくなりました。しかし、これまでのフロンは地球の成層圏に残っており、何十年も残ります。これからも地球を守るためにオゾン層の様子を見ながら、対策を続けていかなければなりません。

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象と天候への影響

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気候は海水温と深く関わっています。特に、太平洋の赤道近くは強い日差しで海水もかなり暖かくなります。赤道近くの暖かい海水と貿易風の流れが世界中の気候に大きな影響を与えます。赤道近くは貿易風も一定の方向に吹いており、貿易風から暖かい海水も西寄りに押しやられます。その結果、冷たい海水が深い海底から湧き上がります。この均衡が崩れると世界の気候も変わります。もし貿易風が弱くなると、暖かい海水も東寄りに広がります。その結果、積乱雲の発生場所も東寄りに移り、空気の流れが変わります(エルニーニョ現象)。エルニーニョ現象なら、夏日が少なくなったり、梅雨明けの遅れをもたらしたり、台風の発生数も減ったりします。その代わり、冬の寒さが少し和らいで暖かくなります。もし貿易風が強くなると、暖かい海水がさらに西寄りに集まり、冷たい海水が深い海底から豊富に湧き上がります。その結果、東寄りの海水がさらに冷たくなり、赤道近くの西寄りで積乱雲が活発になります(ラニーニャ現象)。ラニーニャ現象なら、夏は猛暑になりやすく、西日本で大量の大雨をもたらします。また、冬の寒さもかなり激しく気温もかなり下がります。エルニーニョ現象とかラニーニャ現象とかが起きると、世界中の天候に影響を与えます。雨の降り方も大きく変わります。農作物の収穫量と魚の漁獲量に大きな影響を与え、私達の生活にも大きく関わります。エルニーニョ現象とかラニーニャ現象とかは数年続くので、長期間にわたって地域の気候を大きく変えます。

地域的な環境変化

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酸性雨

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石油や石炭は私達の暮らしと工場の活動でどうしても使います。石油や石炭を燃やすと、二酸化硫黄と窒素酸化物が空気中に出てしまいます。二酸化硫黄と窒素酸化物は空気中で日光に当たると酸性物質に変わります。この時、雨雲と混ざれば、普通の雨よりも強い酸性雨として降ってきます。酸性雨は自然環境と人間の生活に様々な悪影響を与えます。酸性雨が降ると、建築物と樹木も傷みます。また、土壌環境と水質環境も変わります。その結果、生物が暮らしにくくなります。さらに、酸性物質は風に乗って、かなり遠くの場所まで運ばれます。そのため、汚染の原因から離れていても、酸性雨の影響が出ます。実際、離島でも火山の噴火などで空気が汚れ、酸性の度合いも一時的に高くなります。このような変化が長く続くと、自然環境に大きな影響を与えます。

森林破壊と砂漠化

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人間が便利に暮らすために、自然を壊しました。例えば、輸出向けの商品作物を作るために熱帯雨林が広く切り開かれ、パーム油・海老の生産が行われています。一方、熱帯雨林の伐採は土地の乾燥と水害の被害を招くようになりました。また、温室効果ガス(メタンと二酸化炭素など)が地球全体で増えて気温の上昇と砂漠の拡大をもたらしました。ロシアの針葉樹林でも同じように、針葉樹林の樹木を切ると永久凍土が溶けて湿地になります。その時、温室効果ガスも出てしまいます。また、人口の増加から家畜の放牧が増えると土地の塩害と砂漠化も進みます。こうなると、元の土地に植物が育たなくなります。したがって、人間は賢く水を使ったり、丈夫な植物を育てたりして、自然をこれ以上破壊しないような取り組みを行っています。

水の汚染

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人間は便利な暮らしと経済成長を優先しすぎて、いつの間にか自然と人間の繋がりを忘れがちになります。例えば、生活排水・原発事故・産業排水が目に見える形で自然を汚します。そして、緩やかに人体の健康と動植物にも影響が広がります。しかも、そのような水質汚染は汚染地域だけにとどまらず、世界中に広がります。有害な汚染物質は生物の体に少しずつ溜まり、人間の食物にも入り込むかもしれません。だから、「自然は自分に関係ない」と無視出来ません。「環境を守ろう」と伝えるだけでは水質汚染問題と向き合えません。自然がどのように変わっているのか、水質汚染がどんなふうに広がっているかを知りましょう。この繋がりを理解すれば、少しでも水質汚染問題の解決に近づけます。それに、各国によって水質汚染対策の進み具合にも差があります。もし、その国の水質汚染対策があまり進んでいなかったら、水質汚染も他国に広がってしまいます。だから、世界全体で水質汚染問題と向き合わなければなりません。便利さと経済成長を優先するのではなく、自然と上手く付き合いながら持続可能な発展が求められます。

大気の汚染

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目に見えないような物質が身の回りの空気に混ざっています。その中でも硫黄酸化物・窒素酸化物・粒子状物質・一酸化炭素などは人間の健康を大きく損ないます。特に微小粒子状物質は人類の呼吸器・血管を傷つけてしまいます。また、大気中の汚染物質は風にのって、遠くまで運ばれます。そのため、大気汚染対策は国家同士の協力も大切です。火山の噴火・砂嵐・花粉などでも大気と混ざると、同じように人間の健康を大きく損ないます。さらに、窒素酸化物と炭化水素が紫外線にあたると、光化学オキシダント(オゾン・アルデヒドなど)に変わります。光化学オキシダントが夏の晴天日などに光化学スモッグとして漂い、人間の健康を大きく損ないます。最近、このような大気汚染を減らすための制度が作られるようになっています。それでもまだ安心出来ません。これからも科学の力を使いながら、社会全体でこの取り組みを続けていかなければなりません。

都市気候

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都市はビル・マンションに囲まれているので、緑豊かな場所も限られます。風の流れも気温の感じ方も田舎と違います。その中でも、都市は郊外と比べると気温も上昇しやすくなります(ヒートアイランド現象)。例えば、都市の道路と建物はアスファルト・コンクリートを使っており、熱を吸収しやすく、冷めにくくなっています。また、人間の日常生活が関係しているから都市は郊外と比べると気温も上昇しやすくなります。特に夏になると都市は著しい気温の上昇から暖かい空気も上りやすくなります。こうして、積乱雲が出来て急な雷雨を降らせます(ゲリラ豪雨)。都市の空気も霞んでおり、景色もあまりはっきりしません。大都市になればなるほど、このような天気も多くなります。

持続可能な開発目標(SDGs)
持続可能な開発目標
私達は普段何気なく生活しています。一方、電気を使いすぎたり、自然環境を壊しすぎたりすると次世代に大きな影響を与えます。便利な暮らしを求めすぎると、気づかないうちに何かを失っているかもしれません。最近、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)が少しずつ広まっています。持続可能な開発目標は経済成長を追い求めつつ、自然と仲良くしながら、人間と自然環境の共存を目指しています。このような考え方は世界各国に広がり、力を合わせて取り組もうとしています。したがって、自治体・企業・個人などが「未来の地球を守るために何が出来るのか」を考えて、具体的な行動に繋げなければなりません。

資料出所

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  • 新興出版社啓林館『高等学校 地学基礎』磯崎行雄ほか編著 2022年
  • 浜島書店『二訂版ニューステージ地学図表』2024年度版