高等学校 地学基礎/地震災害・火山災害
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自然界の様々な現象は、人間にとって良い面もあります。しかし、自然災害で生活を危うくしてしまいます。日本は地震や火山噴火などの自然災害が他国と比べても非常に多くなっています。これまでどのような災害を火山や地震からもたらしましたか?
地震と災害
[編集]激しい揺れによる被害
[編集]大きな地震があると、強い地震動で建物の倒壊や土砂災害などをもたらします。また、土地の隆起や沈降、水平方向のずれから被害が出るかもしれません。さらに、火災・停電・断水などの複雑的な災害に見舞われるかもしれません。大きな地震があると、砂地の地盤(河川沿いや埋め立て地など)も動きます。この時、地下水が砂層と混じり合い、砂層が一時的に液体のようになります(液状化現象)。2024年の能登半島地震は、建物の倒壊や火災で大きな被害を出しました。[1]2011年の東北地方太平洋沖地震は、強い地震動や津波で大きな被害を出しました。福島第一原子力発電所も東北地方太平洋沖地震で電源を全て失い、水素爆発や火災を招きました。その後、大量の放射性物質が空気中に運んでしまいました(福島第一原子力発電所事故)。
津波
[編集]地震で海底の断層が動いたり、海底地滑りがあったりすると、大きな波(津波)が出来ます。津波の波長(波の山から山の長さ・谷から谷の長さ)は数キロから数百キロメートルと非常に長く、津波の周期(波の山から次の山・谷から次の谷がくるまでの時間)も数10分と非常に長くなっています[2]。なお、波浪の波長は最大で数m~数十m程度と非常に短く、波浪の周期も数10秒と非常に短くなっています。津波は、地震の震源が海域で、あまり深くなく、マグニチュードも大きい時によく発生します。海底から海面までの水が全て動くので、津波は通常の波よりもはるかに大きなエネルギーを持ちます。2011年の東北地方太平洋沖地震後、約20mの津波が宮城県女川町を襲いました。また、宮城県女川町笠貝島で最大約43mの標高まで津波が来ました。
★津波が出来るまで[3]
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地震前のプレート境界図
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大陸プレートが海洋プレートの下に沈み込みます。この時、大陸プレートにひずみが出来ます。
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ひずみが限界を迎えると地震が発生します。
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津波が発生します。
津波は、一度海面が下がってから押し寄せてきます。また、津波は第2波と第3波と繰り返すうちに大きくなります。このように、地震の数時間後でも津波が押し寄せるかもしれないので、津波が完全に収まるまで海岸付近に近づかないでください。津波の高さは、海岸の地形で変わります。岬の先端やリアス式海岸の奥に集まると、津波の波高も高くなってしまいます。
火山と災害
[編集]火山噴出物による被害
[編集]火山弾や溶岩流などが、近くの建物を壊したり燃やしたりします。火山灰はとても小さな粒子で作られているので、上空に送られて遠くの場所に飛んでいきます。大量の火山灰は、人々の健康や農作物に悪いかもしれません。また、雨と混ざると、家屋の倒壊も起こりやすくなります(泥流)。溶岩ドームの崩落なども火砕流の原因になります。火山ガスは火口とその周辺から出ており、人体に有害な成分を含まれています。
1991年、長崎県の雲仙岳で火砕流が起こり、43名が亡くなりました。2000年、東京都の三宅島で火山が噴火すると、高濃度の火山ガスが流れ込み、全島民が島外に逃げ出しました。2014年、長野県の御嶽山で水蒸気爆発があり、58名が亡くなりました。気象庁の説明から、火山が噴火すると風に乗って火山礫を遠くまで運ばれます(小さな噴石)。また、火山が噴火すると火口から放物線を描くように火山岩を運びます。この時、火山岩はおよそ2~4kmの間に落ちます(大きな噴石)。大きな噴石は建物を丸ごと壊してしまうような力もあります。さらに、昔は大きな火山活動もありました。例えば、約9万年前に熊本県の阿蘇山で大きな火砕流が半径180km(鹿児島県以外の九州全域と山口県)まで流れています。この研究は火山周辺の地層から分かっています。
噴火活動に伴う被害
[編集]火山性地震や火山性微動は、噴火や地下のマグマ活動からよく起こります。マグマの上昇で地盤が変わると、断層も出来ます。また、地震動や火山体内部のマグマの圧力上昇から火山体が崩れ、岩塊も砕けながら高速で斜面から流れるかもしれません(岩屑流・岩雪崩・岩屑雪崩)。岩屑流や火山砕屑物などの堆積物が河川をせき止めます。そして、河川が決壊すると土砂と水が一緒に動きます(土石流・泥流)。1985年、コロンビアのネバド・デル・ルイス山で、大きな泥流が発生しました。その結果、山麓で大勢の人が亡くなりました。2018年、インドネシアのクラカタウ山が噴火すると海に土砂が流れ込みました。そして、その土砂が津波を発生させ、沿岸地域に被害をもたらしました。
資料出所
[編集]- 啓林館『高等学校 地学基礎』磯崎行雄ほか編著 2022年