高等学校 地学基礎/気象災害
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大雨による災害
[編集]地球上の降水量は世界平均で約970mmです。一方、日本の降水量は約1700mmと非常に多くなっています。なぜなら、北からの冷たい空気と南からの暖かい空気がぶつかりやすいためです。また、四方を海に囲まれているため、海からの水蒸気が多く空気中に取り込まれます。さらに、台風などの熱帯低気圧が日本に通り大雨をもたらします。このような理由が重なって、日本は世界平均よりも降水量も増えやすくなります。
大雨
[編集]雨も自然災害を引き起こします。停滞前線が長期間居座ったり、熱帯低気圧(台風)が来たり、空気中の水蒸気が増えると、激しい雨をもたらします。このような雨は期間と範囲から集中豪雨と局地的大雨に分けられます。集中豪雨は広い範囲で数時間続きます。一方、局地的な大雨(ゲリラ豪雨)は狭い範囲で短時間に激しい雨をもたらします。気温が上がると空気中の水分量も増え、このような激しい雨も増えます。
集中豪雨の仕組みと危険性 |
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空気中の水分が冷えて雨雲になります。この雨雲が空から雨粒を降ると雨になります。雨の中でも、同じ地域で長時間降り続くような雨(集中豪雨)は大きな被害をもたらします。なぜなら、空気の流れが地形から同じような地域に集まると、どうしても同じような地域へ雨雲が風に流されやすいからです(線状降水帯)。線状降水帯は西日本豪雨で問題になりました。短時間に大量の大雨が降り、土砂崩れから建物・道路も数多く壊れました。もし大雨警報・大雨特別警報が出たら、私達もすぐに安全な場所に逃げるようにしましょう。 |
土砂災害
[編集]山に大雨が降ると、土砂災害も起きます。どのような災害があるのか説明します。急な斜面の地面に雨水が染み込むと、土も重たくなります。そして、この土が突然崩れると崖崩れ・山崩れになります。山崩れは崖崩れより大きな土砂災害になります。土石流は、上流の山崩れから谷とか川とかを高速で流れます。土石流は大きな石とか大きな木も流すので、かなり危険です。扇状地・谷底平野は特に土石流の被害を大きく受けます。山とか丘とかの斜面がゆっくり滑り落ちると地滑りになります。粘土層が斜面の中にあり、雨水を通しません。大雨・長雨から粘土層の上に水がたまります。そして、その上の土が重みで動き始めます。地滑りは、急な斜面だけでなく、緩やかな斜面でも起こります。土砂災害は、雨の量・雨の降り方・地形・地質などが関係しています。このような情報から危険な場所を予測して「土砂災害ハザードマップ」に表しています。雨量計で見張ったり砂防ダムを作ったりして、災害を防いだり被害を減らしたりします。普段から避難場所とか避難経路を確かめましょう。
河川の氾濫と低地の浸水
[編集]日本の災害対策は都市化と天気の関係から難しくなっています。停滞前線・集中豪雨から大雨をもたらします。その結果、排水の仕組みに負担をかけて、私達の暮らしを危険にさらします。日本の場合、住居・労働場所がほとんど河川の近くに集まっているため、洪水などの自然変化に弱くなっています。私達は洪水から都市を守りつつ便利な都市生活を守らなくてはなりません。日本政府と地方自治体はどうして洪水が起きるのかを知って、様々な対策を考えなければなりません。
突風による災害
[編集]大気が安定しなくなると、様々な突風も起こります。その中でもよく知られているのが竜巻です。強い風が回転しながら地面に向かって伸びると竜巻になります。竜巻の速さはとても速く、地面に触れると建物などを壊してしまうかもしれません。そのため、竜巻は身を守るために最も気をつけなければいけません。ダウンバーストも突風が上空から一気に下に向かって吹き、地面で横に広がります。ダウンバーストは飛行機の飛行に大きな影響を与えます。もしかなり大きさのダウンバーストなら、広い範囲に影響が及びます。ガストフロントも冷たい空気が地上の温かい空気とぶつかると起こります。突然強く吹くためガストフロントの予測も難しく、広い範囲に影響が及びます。このような突風は夏の終わりから秋の初めにかけて数多く発生します。なぜなら、秋雨前線とか台風とかの影響で大気が安定しなくなるからです。
地域や季節に特有の気象災害
[編集]黄砂現象
[編集]アジア大陸の乾燥地域から細かい土が風で舞い上がります。これが風に乗って国境を越えて、遠くの地域まで届きます(黄砂)。黄砂は春になると東アジアの空を茶色く染めて、人類の健康に被害をもたらします。
大雪
[編集]毎年、冬になると日本海側で雪に見舞われます。特に東北地方・北陸地方で雪が数多く積もります。冬の終わりから春先にかけて関東地方・近畿地方でも雪が降りやすくなります。なぜなら、南岸低気圧がその地方に通るようになるからです。なお、北海道は強風・大雪と一緒に波も荒れやすくなります。その結果、公共交通機関が動かなくなったり、雪崩も起こりやすくなったりします。
台風
[編集]防災を学ぶ上で台風の被害と地形の関係を知りましょう。台風の右側(危険半円)は風の向きと台風の動きも同じ方向になります。このため、風がかなり強まり、大きな被害も出ます。台風が近づくと気圧も下がり、海の水位を上げます。そして、台風の風からさらに海水を押し上げます(高潮)。特に、複雑な海岸線は海水を大きく押し上げます。その結果、高潮被害も大きくなります。日本は海面より低い土地にも住居を構えているので、これまで何度も高潮被害を受けてきました。
資料出所
[編集]- 啓林館『高等学校 地学基礎』磯崎行雄ほか編著 2022年