高等学校 地学/大気圏

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 大気圏とは、地球を取り囲む大気の層を指します。地球の上空や宇宙に行くにつれて、地球の大気はどんどん薄くなっていきます。

大気の組成[編集]

雲海

 地球の大気の大部分は、窒素と酸素で出来ています。100kmくらいまでは、大気が何で出来ているかはほとんど変わりません。これは、この辺りの空気は対流があるため、よく混ざり合っているからです。100km以上の高度になると、軽くなる分子や原子の量が増えていきます。170km以上では酸素原子の割合が増え、1000km以上ではヘリウム原子の割合が増えます。

 空気中には少量の水蒸気、二酸化炭素、オゾンが存在しますが、上から下への温度変化に大きな影響を与えます。水蒸気のほとんどは対流圏にあり、その体積のうち地表に近い部分は3%ほどしかありません。

二酸化炭素[編集]

 大気中の二酸化炭素の濃度は、年々高くなる傾向にあります。これに、夏には小さくなり、冬には大きくなるという変化が重なります。これは、植物が光合成によって作る酸素が夏に多く、冬に少なくなるのが主な理由です。二酸化炭素の濃度は、植物が多く、陸地が多い北半球では、夏に減少し始め、秋に最も下がります。

水蒸気[編集]

 対流圏は、高度が高く、緯度が高いほど単位質量あたりの水蒸気量が少なくなります。これは、温度が上がると、より多くの水蒸気を保持出来るためです。水蒸気は、次のような働きをしているので、地球のエネルギー収支に重要な役割を果たしています。

  • 蒸発や雲の形成の際に、蒸発や結露による熱を取り込みます。
  • 赤外線を取り込みます。
  • 雲を形成する時、可視光線を反射して拡散します。

大気圏の層構造[編集]

気温の鉛直分布

 対流圏、成層圏、中間圏、熱圏は、高度による温度の変化をもとに、地球の大気を下から上に向かって4層に分けたものです。このような複雑な温度構造は、地球の大気圏にしかありません。火星や金星にはありません。地球の大気圏では、成層圏のオゾン層が太陽の紫外線を吸収して空気を温めています。この現象は、空気が最も暖かい高度50km付近で起こります。

 熱圏の窒素や酸素の分子は、太陽の紫外線やX線を吸収し、熱圏の温度を高くしています。

気温[編集]

 大気を構成する原子や分子は、あちこちに散らばっています。これを熱運動といいます。温度とは、この熱運動の強さを示す数値です。熱圏の上の空気は高温ですが、熱運動が激しいといっても、大気の密度があまり高くないので、単位体積あたりのエネルギーはそれほど多くありません。

気圧[編集]

 その高さより上の大気の単位面積あたりの重さが気圧です。高度が上がるにつれて、大気中の圧力は16kmごとに約ずつ下がっていきます。例えば、高度50kmでは海面気圧(海抜0m)の約、高度100kmでは約100万分の1になります。

惑星の気温構造
 金星、地球、火星の大気を構成している気体の種類を紹介します。金星と火星の大気の大部分を占めるのは二酸化炭素で、地球とは大きく異なります。このような大気の組成の違いから、惑星が時代とともにどのように変化してきたかが分かります。

 水蒸気や二酸化炭素などの温室効果ガスは、それぞれの惑星の暑さや寒さを考える上で大きな役割を担っています。金星と火星は、高度が低いほど大気の温度が上昇します。これは、大気が温室効果を持っているのが主な理由です。

 オゾン層があるため、地球の気温は地表から50km付近でピークを迎えます。一方、火星や金星にはオゾン層がないため、地球のようなホットスポットは存在しません。


対流圏と大気境界層[編集]

 大気中の水蒸気のほとんどは対流圏に存在します。大気が動くと、この水蒸気から雲や雨が発生し、毎日の天候を変化させています。対流圏と成層圏の境界である対流圏界面(圏界面)は、高緯度では約9km、中緯度では約12km、低緯度では約17kmの高さになっています。日本付近では、低緯度の球面界面は夏に多く見られ、低緯度と中緯度の球面界面(二重圏界面)は夏以外でもよく見られるようになりました。

 対流圏では、高度が上がるにつれて空気が冷たくなります。高度が高くなるにつれて気温が下がる割合を気温減率といいます。平均すると、高度100mあたり約0.65℃の低下となります。

 大気境界層は、対流圏のうち、地表の影響を受ける最も低い部分です。大気境界層では、地表に接する空気が日中の太陽によって暖められるため、気温は日々変化しています。上昇気流も起こり、地上から1〜1.5kmくらいまでの空気は非常によく混ざっています。

逆転層[編集]

 空が澄んでいる夜、上空は暖かくなります。逆転層とは、このような層をいいます。夜、放射冷却によって地球の表面温度が下がると、地表に近い大気も冷やされます。これが地盤逆転の原因となります。逆転層の中では、空気はとても安定しています。上空に逆転層があると、煙や埃などの汚染物質が逆転層の下に集まりやすくなります。逆転層では対流が起こりにくいからです。

成層圏とオゾン層[編集]

 対流圏界面の上では、宇宙空間の温度が上昇し、50〜60km上空で最も高くなります。この領域を成層圏といい、成層圏界面は成層圏の最上部を表す名称です。成層圏下部の約15〜30kmの高さには、大気中に多くのオゾンが存在します。この部分をオゾン層といいます。オゾン層は太陽の紫外線を吸収して大気を暖めるので、成層圏の気温が高くなる仕組みになっています。オゾン層の上部は紫外線を多く吸収しますが、上に行くほど大気の密度が低くなり、熱を保持出来なくなるので、最高気温は50kmくらいになります。オゾン層は、生物に悪い紫外線のほとんどを吸収してしまいます。

 オゾンの多くは、熱帯地方の上部成層圏で、紫外線が酸素の分子にぶつかって作られます。しかし、オゾンの量は、低緯度よりも高緯度の方が多く見られます。これは、低緯度の成層圏で作られたオゾンが、大気の大規模な循環によって高緯度へ移動するためです。この循環は遅く、熱帯対流圏のオゾンが極域に到達するのに4〜5年かかるといわれています。

極渦

 1980年代には、実験室で作られるフロンがオゾン層を薄くしている事実が明らかになりました。フロンの製造や使用には規制があるのに、まだ多くのフロンが大気中で残っています。オゾンホールとは、毎年春先(9〜10月頃)、主に南極に現れるオゾンが非常に少ない領域をいいます。

 オゾンホールは、秋から春にかけて、強いジェット気流(成層圏の極渦)が南極大陸の周りを時計回りに流れるため、同じような状態になります。そのため、中緯度ではオゾンを多く含んだ空気が混ざらないようになっています。極渦の内側には大きな低気圧があり、これが冷たいので極成層圏雲が形成されます。この雲の表面で、オゾンホールを作るものの一つであるフロンから出る物質が、激しいオゾン層破壊反応を起こします。夏になると、極域の気温が上がり、極成層圏の雲や極渦が消えます。その結果、オゾンを多く含む低緯度の空気がオゾンホールに流れ込み、オゾンホールが閉じてしまいます。

成層圏突然昇温と赤道成層圏準2年周期振動[編集]

 成層圏は、夏には極域を中心とした安定した高気圧に覆われます。しかし、冬になると、対流圏で作られた大規模な大気の波が成層圏に伝わり、一時的に極渦が乱されます。この時、成層圏の温度は一気に数十度上昇します。これを成層圏突然昇温といいます。成層圏突然昇温は、陸と海が複雑に広がっている北極では起こりやすく、南極では起こりにくいといわれています。

 一方、赤道成層圏で起こる大規模な振動として、準2年周期振動があります。これは、26カ月ごとに東風と西風が入れ替わるものです。これは、対流圏で大小様々な波が作られ、伝わっていくためだと考えられています。また、対流圏の気候は、成層圏の急激な温暖化や、ほぼ2年ごとに起こる変化にも影響されます。

中間圏・熱圏[編集]

 成層圏と対流圏の境界である約50〜60km上空は、空気が冷たくなっています。この範囲は中間圏といわれています。高度80〜90kmでは、最も気温が下がります。中間圏界面は、中間圏の上端です。

 中間圏の上空で、高度が上がるにつれて気温が上昇するのが熱圏です。ここでは、酸素と窒素が太陽の紫外線やX線を吸収するため、大気が暖かくなります。波長の短い紫外線は熱圏で、波長の長い紫外線はオゾン層で吸収されます。オーロラは、熱圏のある高緯度地方で発生します。太陽からの荷電粒子が大気中の原子や分子にぶつかると、エネルギー状態が高まります。その結果、大気は光を放つようになります。太陽の動きに左右されますが、熱圏の上縁は地表から約500〜700kmの高さにあります。外気圏は、熱圏の上部にある宇宙空間です。

 高度約80〜500kmで、太陽からの紫外線が原子や分子を電離し、イオンや電子が多く存在する場所となります。電離圏とは、この領域の名称です。電離圏には、電子密度が非常に高い層(電離層)が数種類存在します。短波の電波は電離層でよく反射されるので、地球の裏側にいる人と話すのに使えます。

極成層圏雲と極中間圏雲
 極成層圏雲は、冬に南極や北極の成層圏下部(地表から10〜25km)に発生する雲です。日の出前と日没後に真珠が連なったように見える「真珠母雲」もそのひとつです。冬から春にかけて、極域の下部成層圏は非常に寒くなり、少量の水蒸気と硝酸が凝縮して極成層圏雲が形成されます。この雲が、オゾン層を破壊するフロンの反応を加速させます。以上が、南極のオゾンホールが大きくなっている理由のひとつです。

 一方、極中間圏雲は、夏に南極や北極の中間圏上部(上空約85km)に発生する雲です。夏場、ここの空気の温度は-140度程度まで下がり、少量の水蒸気が凝縮して氷雲となります。これは、地球の大気圏で見られる最も低い温度です。極域中間圏の雲を構成する水蒸気は、対流圏からやってくるのではありません。メタンが酸化され、近く(中間圏上部)で作られています。日没後や日の出前に太陽の光が当たると青白く見えるため、「夜光雲」とも呼ばれます。

 今では毎年のように見られる夜光雲も、産業革命以前にはなかったとされています。オゾンホールと同様、人間活動が原因ではないかと考えられています。最近では、極域だけでなく中緯度でもこの雲が見られるようになりました。2007年に打ち上げられたNASAの中間圏観測衛星AIMは、極中間圏の雲を確認出来ました。南極では、日本が大きな気象レーダーを設置し、極域中層雲の研究が始まっています。大気レーダーは、地上から空に向かって電波を送り、空気の乱れによって戻ってくる散乱波を拾うので、どんな天気でも風の速さや方向が必ず分かります。一方、気象レーダーは、雨粒で散乱した電波を拾うので、雨が降っている時しか使えません。


大気の観測[編集]

 新聞などでよく目にする地上天気図は、大気圏の底である地表の様子を示しています。しかし、地表の天気を調べるには、より広い範囲、地球の上空で大気がどのように動いているかを知る必要があります。

地表での観測[編集]

 気圧、気温、湿度、風向、風速、降水量、雲、地表の日照時間などは、船や露場(気象観測所)で計測出来る範囲です。アメダス(地域気象観測システム)や海洋気象ブイロボットによる自動観測も行われています。雨粒が散乱する電波は、気象レーダーで雨や風の強さを測定するのに使われています。気象レーダーとアメダスのデータを合わせて、30分ごとに1km四方の雨の降っている場所を地図上に表示出来ます。この地図には日本近海も含まれています。

アメダス観測所
降水量は全国約1300カ所の観測所で測定されています。また、気温、日照時間、風向、風速は、約850カ所の観測所で21kmごとに、10分ごとにデータを収集しています。
気象レーダー
雨粒は、気象レーダーが発信する電波を散乱させます。電波を発射してから受信するまでの時間から、対象物との距離を、電波の強さから対象物の材質を調べます。気象レーダーは、散乱した電波レーダーエコーを見て、雨や風の強さを調べます。また、雨粒から返ってくる電波の周波数のドップラー効果や、風が雨粒を運ぶ性質を利用して、風の速さを割り出しています。

 また、地球大気環境の実態や長期変化を知るために、世界中で次の内容について研究が行われています。

  • 二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガス
  • オゾンやエアロゾルなどの大気中の微量ガスや微粒子

高層気象観測[編集]

ウィンドプロファイラ

 ラジオゾンデは、気球に取り付けて、高度約30kmまでの気圧、気温、湿度、風向、風速を測定する装置です。

 ウィンドプロファイラとは、上空の風速と風向きを常時測定する装置です。また、約5kmまでの大気の流れを3次元的に測定出来ます。ウィンドプロファイラでは、高度約5kmまでの大気の流れを立体的に測定できます。そのため、特定地域の大雨や竜巻の予測に役立っています。日本では、全国33カ所にウインドプロファイラを設置しています。

気象衛星による観測[編集]

 気象衛星は、陸上から見えにくい海上の天候を観測出来ます。また、世界中の気象情報をリアルタイムで宇宙から伝えてくれます。地上からの観測と衛星からの観測は、それぞれ異なる高度で様々な気象要素を拾えるので、この2つの観測を組み合わせると、地球全体の気象情報をつかむのに有効です。気象衛星には、赤道上空を周回する静止気象衛星と極域を周回する極軌道気象衛星の2種類があります。

 静止気象衛星は、赤道から約3万5800kmの上空にあります。地球の自転と同じ長さで公転しているため、常に同じ経度帯を観測出来ます。2022年現在、日本のひまわり9号のほか、静止気象衛星は世界に11機あります。静止気象衛星は、1時間ごとに可視画像赤外画像水蒸気画像を撮影しています。これらの写真は、雲や水蒸気がどこにあり、どのように動いているかを調べるために使われます。また、小さな雲の動きから風速や風向きを測定したり、海面の温度を測定したりするのにも使われます。

 極軌道気象衛星は、高度850kmの地球を約100分で一周し、静止衛星では見えない極域を観測します。また、地球は自転しているので、1機の衛星で地球全体を観測出来ます。極軌道にある気象衛星は、約30km上空までの気温や水蒸気量などを測定します。さらに、エーロゾルの量や、オゾン、メタン、一酸化二窒素などの微量大気成分の濃度も測定しています。

 気象衛星以外にも、GPS衛星の信号も利用されています。大気中では、温度構造や水蒸気の影響により、真空に比べて電波の速度が遅くなります。この性質を利用して、各地点の水蒸気の量や気温を把握し、大雨の予想などに役立っています。また、レーダーで雨を測るGPM衛星や、温室効果ガス観測技術衛星いぶきの情報も天気予報に利用されています。

天気予報と天気図[編集]

 正確な天気予報を行うためには、その時々の天候を正確に知る必要があります。そのため、世界中で目を光らせており、その情報は国ごとにまとめて送られています。また、衛星観測やレーダーなどの観測データもより多く集められるようになりました。これらの観測データはスーパーコンピュータにかけられ、天気図や予想天気図が作られます。この地図には、風、等圧面高度、水蒸気量、気温などの情報が含まれています。このように、観測データを一つ一つコンピュータに取り込み、大気の状態を予測するのが数値予報です。数値予報では、数日前までの天気を予測でき、地球の大気の動きも水平方向で数十km、日本付近で数kmの精度で計算出来ます。

 各地域の気象観測は、数値予報とともに、各地域の天気予報に利用されています。現在、3日先までの短期予報、1週間先までの週間天気予報、数カ月先までの季節予報など、様々な種類の予報が行われています。

高層天気図[編集]

 中緯度地方でいつ低気圧が発生するかを知るには、上空を調べなければなりません。そこで、天気を予測するためには、上空の天気図も必要です。上空の天気図には、ある気圧面の高度分布(等圧面)や気温などが示されています。つまり、気圧の分布を示す等圧線の代わりに、等圧面の高度分布を示す等圧面等高線が表示されます。気圧は下層ほど高いので、低気圧部分は低圧部、高気圧部分は高圧部となります。等圧面が上に行くのが気圧の尾根、下に行くのが気圧の谷です。このような上空天気図を等圧面天気図といい、毎日0時と12時(日本時間では9時と21時)に作成されます。

※図についてはこちら:高層天気図の見方・ポイント解説