高等学校 生物/植物の生殖と発生

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
小学校・中学校・高等学校の学習>高等学校の学習>高等学校理科>高等学校生物>生物>植物の生殖と発生

植物の器官形成[編集]

栄養器官の形成[編集]

花芽形成の環境応答[編集]

花器官の形成と遺伝子制御[編集]

ABCモデルの花式図

 花の各部分は、植物ごとに色や形、数が違っても、花のつくりは同じです。花は同心円状に配置されており、4つの領域に分かれています。外側から見て、これらの領域は領域1から領域4と呼ばれます。萼片は領域1、花弁は領域2、雄蕊は領域3、雌蕊は領域4で作られています。ヘチマの花のような雄花と雌花には、その雌蕊と雄蕊の痕跡が残っています。この組み合わせを模式図にしたのが花式図です。花器官とは、このような花の4つの部分を指します。

 植物の種類ごとに一定の条件を満たすと、それまで葉を作っていた頂端分裂組織から、花器官が違って見えるようになります。葉から花までの違いを変えるには、器官を決定する複数の遺伝子のはたらきに由来します。シロイヌナズナやキンギョソウでは、ある遺伝子が機能を失うと、花の形が変わるホメオティック突然変異を起こすそうです。このように、A、B、Cの遺伝子は、花の器官がどのように作られるかを制御しています。また、今回の調査結果、A、B、Cの遺伝子からつくられる蛋白質は、花器官の成長に必要な異なる遺伝子の転写を制御するはたらきをもっていました。ABCモデルとは、花器官が時間とともに成長して、変化する様子を表した分子構造モデルです。A、B、Cは次のようにはたらくと考えられています。

ABCモデル図
  B
A C
花弁 雄蕊 心皮

 Aクラス遺伝子は領域1と2、Bクラス遺伝子は領域2と3、Cクラス遺伝子は領域3と4ではたらきます。一番外側の領域1では、Aクラス遺伝子のみがはたらき、萼片の形が違って見えます。その内側の領域2では、Aクラス遺伝子とBクラス遺伝子がはたらき、花弁の形が違って見えます。さらにその内側の領域3では、Bクラス遺伝子とCクラス遺伝子がはたらき、雄蕊の形が違って見えます。そして、最も内側の領域4では、Cクラス遺伝子のみがはたらき、雌蕊の形が違って見えます。

 また、Aクラス遺伝子とCクラス遺伝子は、お互いのはたらきを抑制します。言い換えると、次の事実がいえます。萼片(領域1)と花弁(領域2)では、Aクラス遺伝子がCクラス遺伝子のはたらきを抑制しています。一方、雄蕊(領域3)と雌蕊(領域4)では、Cクラス遺伝子がAクラス遺伝子のはたらきを抑制しています。したがって、Aクラス遺伝子が働かなくなると、外側の領域1、領域2でもCクラス遺伝子が働き、花全体でCクラス遺伝子がはたらきます。このため、萼片や花弁は変化せず、最も外側の領域1が雌蕊、その内側の領域2が雄蕊になります。一方、Cクラス遺伝子がはたらかなくなると、Aクラス遺伝子も領域3、領域4ではたらくようになります。その結果、雄蕊ではなく花弁が領域3で作られ、雌蕊ではなく萼片が領域4で作られます。Cクラス遺伝子は頂点の細胞分裂を止めるはたらきも持っているので、Cクラス遺伝子を持たない突然変異体はこのはたらきを失い、細胞分裂は進み、萼片と花弁は離れ続けるので、萼片と花弁が増えます。Bクラス遺伝子が機能を失うと、領域2の花弁は萼片に、領域3の雄蕊は雌蕊に変化します。また、A、B、Cの3クラスの遺伝子の機能が全て失われると、花器官は変化しないで、代わりに葉が成長します。

 動物の器官形成では、区分けごとに異なるボックス遺伝子が働き、個性的な仕組みが作られています。これは、花の形が変わるABCモデルのような仕組みです。実は、動物のボックス遺伝子と同じように、各クラスの遺伝子に何をしたらよいかを指示する調節遺伝子です。花を作るA、B、Cクラスの遺伝子に備わる転写因子にはDNA結合領域(MADSボックス)があります。調整遺伝子から作られる調整蛋白質の種類とその組み合わせによって調節されています。細胞の分化の方向は、動物でも植物でも同じ仕組みです。

参考:植物研究におけるシロイヌナズナ[編集]

 シロイヌナズナは、北半球の温帯に生育するアブラナ科の植物です。結構地味で特別な特徴がありませんが、ショウジョウバエのように遺伝子研究に利用されているのは、次のような理由からです。

  • 植物の中でも世代交代が早いので、種子を植えてから2ヶ月後には、次の世代の種が手に入ります。
  • 小さいので実験室での栽培が簡単です。
  • 結実のほとんどが自家受粉なので、純系を得やすく、維持するのも簡単です。
  • 1本のしっかりした株から、大量の種子が出来ます。

 遺伝学や分子生物学の研究材料として注目されたのは、各ゲノムあたりのDNA量が極めて少なかったからです。このうち、シロイヌナズナは、初めて全ゲノムが解読された植物です。これは2000年末に解読されました。このように研究基盤が整えられたので、現在、植物科学のあらゆる分野でシロイヌナズナを使った研究が行われています。

参考:Cクラスの遺伝子の欠損と八重咲きの花[編集]

被子植物の受精[編集]

花粉と胚嚢の形成[編集]

重複受精[編集]

胚の形成[編集]

種子の形成[編集]