コンテンツにスキップ

Java/プログラミングのための準備

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

プログラミングのための準備

[編集]

JDK

[編集]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアJava Development Kitの記事があります。

JDK(Java Development Kit)は、Javaプログラムを開発するためのソフトウェア開発キットです。JDKには、Javaプログラムを作成、コンパイル、実行するために必要なツールやファイルが含まれています。具体的には以下のような要素が含まれます。

  1. Javaコンパイラ(javac): Javaソースコードをバイトコードに変換するためのコンパイラです。Javaコンパイラは、Javaプログラムをコンパイルして実行可能な形式に変換します。
  2. Javaランタイム環境(JRE): Javaプログラムを実行するための実行時環境です。JREには、Java仮想マシン(JVM)やJavaクラスライブラリが含まれています。
  3. デバッグツール: デバッグやトラブルシューティングのためのツールが含まれています。例えば、デバッガやプロファイラなどがあります。
  4. APIドキュメント: JavaプログラミングのためのAPIドキュメントが含まれています。これにより、Javaの標準ライブラリやクラスの使用方法を確認することができます。
  5. 開発ツール: jshell(Java REPL)、jlink(モジュールリンカー)、jdeps(依存関係分析)などの開発支援ツールが含まれています。

javac

[編集]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアjavacの記事があります。

javacは、Javaコンパイラのコマンドラインツールです。このツールは、Javaソースコードファイル(.java拡張子)をJava仮想マシン(JVM)が理解できるバイトコードファイル(.class拡張子)に変換します。

具体的には、以下のような役割があります:

  1. Javaソースコードのコンパイル: javacは、Javaプログラムをコンパイルしてバイトコードに変換します。このバイトコードはJVM上で実行されるため、プラットフォームやオペレーティングシステムに依存しません。
  2. エラーチェックとデバッグ: javacは、ソースコードに文法エラーや論理エラーがないかをチェックし、必要に応じてエラーメッセージを生成します。これにより、開発者はコードの品質を向上させることができます。
  3. バイトコードの生成: javacは、コンパイルされたJavaソースコードからバイトコードファイルを生成します。このバイトコードは、JVM上で実行されるJavaアプリケーションやアプレットの基盤となります。
  4. モジュール対応: Java 9以降、javacはモジュールシステム(Project Jigsaw)に対応し、モジュール化されたアプリケーションのコンパイルをサポートしています。

JRE

[編集]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアJava Runtime Environmentの記事があります。

JRE(Java Runtime Environment)は、Javaプログラムを実行するための環境を提供するソフトウェアパッケージです。主な役割は以下の通りです:

  1. Javaアプリケーションの実行: JREにはJava仮想マシン(JVM)が含まれており、Javaプログラムを実行可能な形式に変換します。これにより、Javaアプリケーションは異なるプラットフォームやオペレーティングシステム上で動作します。
  2. Javaクラスライブラリの提供: JREには、Java標準ライブラリが含まれています。これにより、Javaアプリケーションは基本的なデータ構造や機能を利用できます。例えば、文字列処理、ネットワーク通信、ファイル操作などが含まれます。
  3. セキュリティ機能の提供: JREは、Javaアプリケーションの実行中にセキュリティを確保し、悪意ある操作やリソースの不正使用を防ぎます。これには、セキュリティマネージャーなどが含まれます。
  4. パフォーマンス最適化: JITコンパイラによるコードの最適化やガベージコレクションの実行など、実行時のパフォーマンスを向上させる機能を提供します。

Java仮想マシン

[編集]
Wikipedia
Wikipedia
ウィキペディアJava仮想マシンの記事があります。

Java仮想マシン(Java Virtual Machine、JVM)は、Javaプログラムを実行するための仮想的なコンピュータ環境です。JVMは、Javaバイトコード(.classファイル)をホストプラットフォームのネイティブマシンコードに変換し、実行します。

以下はJVMの主な役割です:

  1. プログラムの実行: JVMはJavaバイトコードを解釈し、ネイティブマシンコードに変換して実行します。これにより、Javaプログラムはホストプラットフォームやオペレーティングシステムに依存せずに実行できます。
  2. メモリ管理: JVMはメモリの割り当てや解放を管理し、ガベージコレクションと呼ばれるメカニズムを使用して不要なオブジェクトを自動的に解放します。これにより、メモリリークや無効なメモリアクセスなどの問題を回避できます。
  3. セキュリティ: JVMは、セキュリティ管理を強化するための機能を提供します。例えば、セキュリティマネージャーを使用して、Javaアプリケーションのアクセス権を制御することができます。
  4. 例外処理: JVMは、Javaプログラム内で発生する例外をキャッチし、適切な例外処理を行います。これにより、プログラムの安定性が向上し、予期せぬエラーに対処できます。
  5. JITコンパイル: Just-In-Time(JIT)コンパイラを使用して、頻繁に実行されるコードをネイティブコードに変換し、実行性能を向上させます。
  6. プロファイリング: アプリケーションの実行状況を監視し、パフォーマンスデータを収集する機能を提供します。

Oracle JDKとOpen JDK

[編集]

Oracle JDK

[編集]

Oracle JDKは、Javaプログラミング言語の開発および実行環境を提供するOracle Corporationによる製品です。Oracle JDK 17以降はNFTC(No-Fee Terms and Conditions)ライセンスの下で提供され、開発、テスト、プロトタイピング、デモンストレーション目的での使用に加えて、商用環境での使用も無料で許可されています。

主な特徴:

  1. 商用サポート: 有償のサポートサービスが利用可能です。
  2. パフォーマンス最適化: 商用環境向けの最適化が施されています。
  3. セキュリティアップデート: 定期的なセキュリティアップデートが提供されます。
  4. 追加ツール: Java Flight Recorderなどの商用機能が含まれています。

Open JDK

[編集]

OpenJDKは、Javaプログラミング言語のオープンソースのリファレンス実装です。GNU General Public License (GPL) version 2 with Classpath Exceptionの下で提供され、商用利用も含めて無料で利用できます。

主な特徴:

  1. オープンソース: ソースコードが公開され、コミュニティによる開発が行われています。
  2. プラットフォーム互換性: 様々なプラットフォームやアーキテクチャに対応しています。
  3. コミュニティサポート: 活発なコミュニティによるサポートが提供されます。
  4. 最新機能: 新機能の実装が早期に行われます。

その他の JDK

[編集]

その他の主要なJDK実装には以下のようなものがあります:

Amazon Corretto
Amazonが提供する無償のOpenJDK配布版です。AWS環境での最適化が施されており、長期サポート(LTS)が提供されます。特徴:
  • AWS環境での最適化
  • 自動パッチ適用
  • 無償の長期サポート
  • マルチプラットフォーム対応
Eclipse Temurin (旧AdoptOpenJDK)
Eclipse Foundationが管理するOpenJDKの配布版です。特徴:
  • 厳格な品質管理
  • 豊富なプラットフォームサポート
  • コミュニティドリブンな開発
  • 定期的なアップデート提供
Azul Zulu
Azul Systemsが提供するOpenJDKの実装です。特徴:
  • エンタープライズグレードのサポート
  • プラットフォーム最適化
  • セキュリティ強化
  • ARM版を含む幅広いアーキテクチャ対応

Java SE LTS

[編集]

Java SE LTS(Java Standard Edition Long-Term Support)は、Java SEプラットフォームの長期サポートを提供するプログラムです。2024年2月現在、最新のJava SE LTSはJava 21です。

以下は、最新のJava SE LTSバージョンの一覧です:

Java SE LTSのバージョン一覧
Java バージョン リリース日 LTS サポート終了日 主な特徴
Java SE 8 LTS 2014年3月18日 2030年12月
  • Lambdaサポート
  • Stream API
  • JavaFX 8
Java SE 11 LTS 2018年9月25日 2026年9月
  • HTTPクライアントAPI
  • 新しいガベージコレクタ
  • モジュールシステム
Java SE 17 LTS 2021年9月14日 2029年9月
  • シールドクラス
  • パターンマッチング
  • 新しいランダム生成器
Java SE 21 LTS 2023年9月19日 2031年9月
  • 仮想スレッド
  • レコードパターン
  • シーケンシャルコレクション

プログラミングに必要なもの

[編集]

統合開発環境(IDE)

[編集]

現代のJava開発では、以下のような統合開発環境(IDE)が広く使用されています:

IntelliJ IDEA
JetBrainsが開発する高機能IDE。Community Edition(無料)とUltimate Edition(有料)があります。
主な特徴:
  • インテリジェントなコード補完
  • 高度なリファクタリング機能
  • フレームワークサポート
  • デバッグ機能の充実
  • Git統合
Eclipse
オープンソースの統合開発環境。無料で利用可能です。
主な特徴:
  • プラグインによる拡張性
  • マルチ言語サポート
  • 豊富なプロジェクトテンプレート
  • デバッグツールの充実
  • チーム開発支援機能
Visual Studio Code
Microsoftが開発する軽量なコードエディタ。Java拡張機能により、IDEとしても利用可能です。
主な特徴:
  • 軽量で高速
  • 豊富な拡張機能
  • Git統合
  • デバッグ機能
  • Live Share機能

ビルドツール

[編集]

現代のJavaプロジェクトでは、以下のビルドツールが主流です:

Apache Maven
XMLベースの構成管理とビルド自動化ツール。
主な特徴:
  • 宣言的な依存関係管理
  • 標準化されたプロジェクト構造
  • 豊富なプラグイン
  • センターリポジトリ
  • ライフサイクル管理
Gradle
GroovyまたはKotlinベースのビルド自動化ツール。
主な特徴:
  • 柔軟なビルドスクリプト
  • インクリメンタルビルド
  • ビルドキャッシュ
  • 依存関係の最適化
  • Android公式ビルドツール

開発環境のセットアップ

[編集]

JDKのインストール

[編集]
  1. JDKのダウンロード:
    Oracle公式サイト(Java SE Downloads)からJDKをダウンロードします。
    以下の点に注意してダウンロードを行います:
    • 使用するOSに合ったバージョンを選択
    • LTSバージョンの選択を推奨
    • プロセッサアーキテクチャ(x64/ARM)の確認

SDKMANを使う方法

[編集]

SDKMANはJavaの開発環境を簡単に管理できるコマンドラインツールです。複数のJDKバージョンを切り替えて使用できる便利な機能を提供します。

  1. SDKMANのインストール:
    Unix系OS(Linux/macOS)で以下のコマンドを実行:
    curl -s "https://get.sdkman.io" | bash
    インストール後、次のコマンドでSDKMANを有効化:
    source "$HOME/.sdkman/bin/sdkman-init.sh"
  2. SDKMANでのJDK管理:
    • 利用可能なJDKの一覧表示:
    sdk list java
    • 特定バージョンのJDKインストール:
    sdk install java 21.0.2-tem
    • デフォルトJDKの設定:
    sdk default java 21.0.2-tem
    • インストール済みJDKの切り替え:
    sdk use java 21.0.2-tem

ビルドツールの設定

[編集]

Javaプロジェクトの依存関係管理とビルド自動化のため、以下のツールの導入を推奨します:

  1. Maven:
    • 最も広く使われているビルドツール
    • インストール方法:
    • SDKMANを使用:sdk install maven
    • 手動インストール:Apache Maven公式サイトからダウンロード
    • 基本的な設定はsettings.xmlで管理
  2. Gradle:
    • 柔軟性の高いビルドツール
    • インストール方法:
    • SDKMANを使用:sdk install gradle
    • 手動インストール:Gradle公式サイトからダウンロード
    • build.gradleファイルでビルド設定を管理

これらの環境設定が完了したら、実際の開発作業を開始できます。