シュメール語/文法入門/コピュラ
シュメール語のbe動詞
[編集]やっとここまできましたね。動詞の時間です。多くの言語でもっとも基本的でよく使われる動詞といえば、英語でいう「be動詞」でしょう。使いみちは多岐にわたります。
活用形
[編集]シュメールにおいても他の言語と同様、誰が何をするかによって動詞の活用形が決まります。最も基本的なのは一人称、二人称、三人称、またそれが単数か複数かによるものです。be動詞の活用を見てみましょう。
i.men | 私は | 一人称単数. |
i.men | あなたは | 二人称単数 |
i.me.am | 彼は/彼女は/それは | 三人称単数 |
i.menden | 私達は | 一人称複数 |
i.menzen | あなた達は | 二人称複数 |
i.meš | 彼らは | 三人称複数 |
ところでこのšの文字は/ʃ/の発音を示すもので、カタカナで書くとシュにあたります。
[Thomsen §536, Edzard §12.7.1.1]
活用形について補足
[編集]上の例を見ると、すべての語が/i/の音から始まっており、m...n の形のバリエーションで活用していることがわかります。
また一人称単数と二人称単数が全く同じ形をしていることにもすぐに気づきますよね。これまでに見てきた他の曖昧さの場合と違い、これは多少厄介なものです。私達はシュメール語をその基礎から理解できていないと言わざるを得ないのです。本当に同じ発音をされていたのでしょうか? なぜ同じように書かれているのでしょうか。同じ音であっても語の意味によって楔形文字を使い分ける例もあるのです。もしかしてシュメール語は中国語のような声調言語で、語のピッチや語尾を基本要素としていることを示唆しているのでしょうか。
この疑問について私達ははっきりとした答えを出せてはいません。読者の皆さん、どうぞご意見をください。それがWikiなのですから。
(本当に)シンプルな文
[編集]上に挙げたシュメール語のbe動詞は主語と述語が一体になっています。ですから、簡単な文を作るにはたった2語のシュメール語の単語を並べるだけでいいのです。
例えば、「私はあなたの王です」という文を考えてみましょう。「我は汝の王なり」でもいいですよ。分解して翻訳してみましょう。「私は」はi.menでしたね。レッスン2で学んだところによれば「あなたの」は所有の助詞.zuを使うのでしたね。「王」はlugalですから、「あなたの王」はlugal.zuと書けます。
というわけでこれらを組み合わせたシュメール語の文はこうなります。
私はあなたの王です = lugal.zu i.men.
気がついてもらいたいのは、動詞は最後に置かれるということです。日本語の「です」の位置なので、私達にはお馴染みですね。
例題
[編集]翻訳
[編集]「私はあなたの王です」についてはもう学びましたね。今度は別のものを見てみましょう。
シュメール語から日本語へ:
- nin.zu i.men
- lugal Uruk.ak.ene i.menden
日本語からシュメール語へ:
- 彼らは あなたの子どもたち
- 彼は ウルクの王
復習
[編集]復習のためにいくつかのフレーズを用意しました。
問題
1) šeš.ĝu.ene i.meš
2) bad til.ak i.me.am
3) nin.zu i.men
4) lugal.ene i.menden
5) nin Uruk.ak i.men
回答
1) 彼らは私の兄弟たちです
2) これは壁の命です。 (意味がわからないですよね、でもとりあえずおいておいてください).
3) 私はあなたの姉妹です。 (文脈から「あなたは」ではなく「私は」と読みます).
4) 私達は王である.
5) 私は(あなたは)ウルクの女王です。(ここでは文脈から判断することができません)
コピュラ
[編集]この節でbe動詞を学んだことで、w:jp:コピュラ(繋辞、接続詞)を簡単に理解することができます。
どんな言語でも主語と述語をつなぐ手段は必要不可欠なものです。英語にあってはいわゆるbe動詞ですが、シュメール語ではもっぱらi.menの活用形が使われます。ですが、シュメール語には他にも方法があります。コピュラを使うのです。
これまで学んできてシュメール語には多くの小辞(perticle)があることにお気づきかと思います。意味を修飾するもの、格変化を起こすもの、その他いろいろです。コピュラとはbe動詞を小辞の形にしたもので、前接繋辞(enclitic copula)とも呼ばれます。
例えば先程の「私はあなたの王です」=lugal.zu i.menという文は、より簡単にlugal.zu.enとも書けます。一般的な表現とは構文上の違いがあるだけで、同じ意味です。
コピュラをmunus「女性」を例を表で見てみましょう。
[1]
[2]
人称 | シュメール語 | 日本語 |
---|---|---|
一人称単数 | Munusmen | 私は女です |
二人称単数 | Munusmen | あなたは女です |
三人称単数 | Munusam | 彼女は女です |
一人称複数 | Munusenenden | 私達は女です |
二人称複数 | Munusenenzen | あなた達は女です |
三人称複数 | Munusenemeš | 彼女たちは女です |
コピュラの形は絶対格の人称や数によって変化することに気をつけてください。またその発音もシュメール語の音便のルールによって変化することに留意しましょう。つまり、"munus"が"(a)m"というコピュラ(三人称単数)を取るとき、前の音が子音なので Munusamとなるのですが、 Mam "ボートです"のような場合は省略されるのです。
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- ^ http://www.anelanguages.com/SumerianGrammarFoxvog.pdf
- ^ Hayes, John L., "A Manual of Sumerian Grammar and Texts", Undena Publications, 2000, P. 421