ガイウス・ユリウス・カエサルの著作/絶対奪格の例文
表示
絶対奪格とは
[編集]ルビコン川を渡ったカエサルが演説したとするアリミヌム(リミニ)の石碑(右の画像)には次のように刻まれている。
C. CAESAR DICT. RVBICONE SVPERATO CIVILI BEL. COMMILIT. SVOS HIC IN FORO AR. ADLOCVT.
分かりやすく記すと、次のようになる。
- C. Caesar dictātor Rubicone superātō cīvīlī bellō commīlitōnēs suōs hīc in forō Arīminensī adlocūtus est.
- 独裁官ガイウス・カエサルは、内戦のときに、ルビコン川が越えられると、ここ、アリミヌムの広場において、配下の兵隊仲間たちに話しかけた。
下線部の Rubicone superātō 「ルビコン川が越えられると」のように、主文とは独立して、時・理由などを表わす副詞的にはたらく分詞句を絶対奪格(ablativus absolutus) という。
時間の経過
[編集]paucīs diēbus interpositīs 数日が経過して
[編集]- paucīs diēbus interpositīs
- paucus, -a, -um 形容詞 「少数の」「わずかな」 > 複数・奪格 paucīs
- diēs 名詞 「日」 > 複数・奪格 diēbus
- interpōnō 動詞 「間に置く」「時を経過させる」 > 完了受動分詞 interpositus > 複数・奪格 interpositīs
- (直訳)わずかな日々が間に置かれて
- (意訳)数日が経過して
- (『内乱記』第3巻37節⑤項より)
paucīs diēbus intermissīs 数日だけ間をあけて / 数日だけ中断して
[編集]- paucīs diēbus intermissīs あるいは paucīs intermissīs diēbus
- paucus, -a, -um 形容詞 「少数の」「わずかな」 > 複数・奪格 paucīs
- diēs 名詞 「日」 > 複数・奪格 diēbus
- intermittō 動詞 「間をあける」「中断する」> 完了受動分詞 intermissus > 単数・奪格 intermissīs
- diēs 名詞 「日」 > 複数奪格 diēbus
- (直訳)わずかな日々だけ間をあけられて、わずかな日々だけ中断されて
- (意訳)数日だけ間をあけて、数日の間をあけて、数日中断して
- (『内乱記』第3巻58節②項より)
- (『内乱記』第3巻66節④項より)
quinque intermissīs diēbus 5日だけ間をあけて / 5日だけ中断して
[編集]- quinque diēbus intermissīs あるいは quinque intermissīs diēbus
- quinque 数詞・不変化 「5(の)」
- intermittō 動詞 「間をあける」「中断する」> 完了受動分詞 intermissus > 単数・奪格 intermissīs
- diēs 名詞 「日」 > 複数・奪格 diēbus
- (直訳)5日だけ間があけられて、5日間だけ中断されて
- (意訳)5日間をあけて、5日間だけ中断して
- (『内乱記』第3巻54節②項より)
continuātō nocte ac diē itinere / diē ac nocte continuātō itinere 昼も夜も旅を続けて
[編集]- continuātō nocte ac diē itinere
- continuō 動詞 「続ける」> 完了受動分詞 continuātus > 中性・単数・奪格 continuātō
- nox, noctis 女性名詞 「夜、夜間」> 単数・奪格 nocte
- diēs 名詞 「日」「昼、昼間」> 単数・奪格 diē
- iter 中性名詞 「旅、行軍」「進路、行程」> 単数・奪格 itinere)
- (直訳)夜も昼も旅が続けられて
- (意訳)夜も昼も旅を続けて
- (『内乱記』第3巻11節①項より)
- diē ac nocte continuātō itinere
- (直訳)昼も夜も行軍が続けられて
- (意訳)昼も夜も行軍を続けて
- (『内乱記』第3巻36節⑧項より)
parvō spatiō intermissō わずかな時間をあけて
[編集]- parvō spatiō intermissō
- parvus, -a, um 形容詞 「少量の、わずかな、短い」 > 中性・単数・奪格 parvō
- spatium 中性名詞 「時間」 > 単数・奪格 spatiō
- intermittō 動詞 「間をあける」「中断する」> 完了受動分詞 intermissus > 中性・単数・奪格 intermissō
- (直訳)わずかな時間があけられて/わずかな時間をあけて
- (意訳)わずかな時間をあけ(ただけで)
- (『内乱記』第3巻75節②項より)
parvā parte noctis itinere intermissō 夜のわずかな間だけ行軍を中断して
[編集]- parvā parte noctis itinere intermissō
- parvus, -a, um 形容詞 「少量の、わずかな、短い」 > 奪格 parvā
- pars 女性名詞 「部分」 > 単数・奪格 parte
- nox, noctis 女性名詞 「夜、夜間」> 単数・属格 noctis
- iter 中性名詞 「旅、行軍」「進路、行程」> 単数・奪格 itinere)
- intermittō 動詞 「中断する」> 完了受動分詞 intermissus > 中性・単数・奪格 intermissō
- (直訳)夜のわずかな間 旅(行軍)が中断されて
- (意訳)夜のわずかな間だけ行軍が中断されて(されたが)
- (『内乱記』第3巻41節⑤項より)
longā morā interiectā / longā interiectā morā 長い時間を置いて
[編集]- longā morā interiectā または longā interiectā morā
- longus, -a, -um 形容詞 「長い」 > 女性・単数・奪格 longā
- mora 女性名詞 「時間」「時間の経過」または「遅れ」「延期」 > 単数・奪格 morā
- intericiō 動詞 「間に置く」 > 完了受動分詞 interiectus > 単数・奪格 interiectā
- (直訳)長い時間が置かれて/長い遅れが置かれて
- (意訳)長い時間を置いて/長い遅れを置いて
- (『内乱記』第3巻69節①項より)
- hac satis longā interiectā morā et re nuntiata
じゅうぶんに長い時間を置いてこの事が報告されると
- hac satis longā interiectā morā et re nuntiata
- (『内乱記』第3巻69節①項より)
nullā morā interpositā / nullā interpositā morā 何ら時間が置かれずに
[編集]- nullā morā interpositā または nullā interpositā morā
- nullus, -a, -um 形容詞 「どの~もない」 > 女性・単数・奪格 nūllā
- mora 女性名詞 「時間」「時間の経過」または「遅れ」「延期」 > 単数・奪格 morā
- interpōnō 動詞 「間に置く」「時を経過させる」 > 完了受動分詞 interpositus > 単数・奪格 interpositā
- (直訳)どのような時間も間に置かれずに/どのような時間も経過させられずに
- (意訳)何ら時間が置かれずに/何ら時間を置かずに
- (『内乱記』第3巻75節①項より)
行為・動作 (1)
[編集]hīs rēbus gestīs これらの事がなされて / これらの戦果があげられて
[編集]- hīs rēbus gestīs
- (直訳)これらの諸事が行なわれて
- (意訳)これらの事がなされて(なされると)/ これらの戦果があげられると
- (『内乱記』第3巻38節①項より)
hīs rēbus complētīs これらの事が果たされて / これらの事が完了して
[編集]- hīs rēbus complētīs
- (直訳)これらの諸事が 果たされて / 成し遂げられて / 完了させられて
- (意訳)これらの事が果たされると/ これらの事が完了すると
- (『内乱記』第3巻46節②項より)
hīs rēbus parātīs / hīs parātīs rēbus これらの事が準備されると / これらの物が用意されると
[編集]- hīs parātīs rēbus
- (直訳)これらの諸事が 準備されて / これらの物が 用意されて
- (意訳)これらの事が準備されると / これらの事を準備すると // これらの物が用意されると / これらの物を用意すると
- (『内乱記』第3巻62節②項より)
hīs rēbus explicitīs / hīs explicitīs rēbus これらの事が処理(解決)されると / これらの物が説明されると
[編集]- hīs rēbus explicitīs または hīs explicitīs rēbus
- hic, haec, hoc 指示形容詞 「これ」「この」 > 複数・奪格 hīs 「これら」「これらの」
- rēs 女性名詞 「事」「物」 > 複数奪格 rēbus 「諸事」
- explicō 動詞 「処理する」「解決する」あるいは「説明する」 > 完了受動分詞 explicitus > 複数・奪格 explicitīs
- (直訳)これらの諸事が 処理(解決)されて / これらの諸事が 説明されて
- (意訳)これらの事が処理(解決)されると / これらの事を処理(解決)すると // これらの物が説明されると / これらの物を説明すると
- (『内乱記』第3巻75節②項より)
quibus rēbus cognitīs それらの事が知られると
[編集]- quibus rēbus cognitīs
- (直訳)それらの諸事が知られて
- (意訳)それらの事が知られて(知られると)/それらの事を知ると
- (『内乱記』第3巻43節①項より)
- quibus cognitīs
- (直訳)それら(のこと)が知られて
- (意訳)それら(のこと)が知られて(知られると)/それら(のこと)を知ると
- (『内乱記』第3巻62節①項より)
hāc rē nūntiātā この事が知らされると / この事が報告されると
[編集]- hāc rē nūntiātā
- (訳)この事が知らされて(知らされると)/この事が報告されて(報告されると)
- (『内乱記』第3巻69節①項より)
- hāc satis longa interiecta mora et rē nūntiātā
じゅうぶんに長い時間を置いてこの事が報告されると
- hāc satis longa interiecta mora et rē nūntiātā
- (『内乱記』第3巻69節①項より)
rē īnfectā 事が達成されないままで
[編集]- rē īnfectā
- (直訳)事が達成されないで(果たされないで)
- (意訳)事が達成されないままで(果たされないままで)
- (『内乱記』第3巻40節⑤項より)
- (『内乱記』第3巻57節⑤項より)
行為・動作 (2)
[編集]hōc tumultū nūntiātō この 騒ぎ/動乱/奇襲 が報告されると
[編集]- hōc tumultū nūntiātō
- (直訳)この騒ぎが知らされて/この動乱が報告されて/この奇襲が報告されて
- (意訳)この騒ぎが知らされると/この動乱が報告されると/この奇襲が報告されると
- (『内乱記』第3巻64節①項より)
quā mūnītiōne perfectā / その塁壁が完成されると
[編集]- quā mūnītiōne perfectā または quā perfectā mūnītiōne
- (訳)その塁壁が完成されると/その塁壁が完成されたときに
- (『内乱記』第3巻66節①項より)