内乱記 第3巻 (下)

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内乱記Blue square C.PNGBlue square O.PNGBlue square M.PNGBlue square M.PNGBlue square E.PNGBlue square N.PNGBlue square T.PNGBlue square A.PNGBlue square R.PNGBlue square I.PNGBlue square O.PNGBlue square R.PNGBlue square V.PNGBlue square M.PNGSolid blue.svgBlue square D.PNGBlue square E.PNGSolid blue.svgBlue square B.PNGBlue square E.PNGBlue square L.PNGBlue square L.PNGBlue square O.PNGSolid blue.svgBlue square C.PNGBlue square I.PNGBlue square V.PNGBlue square I.PNGBlue square L.PNGBlue square I.PNG

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関連地図[編集]

『内乱記』第3巻の参考地図(訳者が作成)。
デュッラキウムの戦いの後、カエサル(赤線)とポンペイウス(青線)が別の進路をたどり、カエサルがドミティウス・カルウィヌス(オレンジ線)と合流、ポンペイウスがスキピオ(青線)と合流して、テッサリアにおけるパルサルスの戦いで激突するまでの行軍路を、現代ギリシアの精細な地形図の上に示す(※ルートは、地形の起伏に合わせて訳者が推定したもの。古代の地形とは海岸線や河川・湖沼などが異なる)。カエサルの行軍路は、マケドニア方面へ抜けることを想定していれば、?印のルートも考えられるが、「アタマニアを通って」という修正された記述に従うならば、南側のルートであろう。ポンペイウスの行軍路はエグナティア街道(黄色の線)とほぼ合致すると思われるが、簡略な表現にするため、あえて街道とはずれた表現にしてある。⇒この画像のラテン語版はこちら




































目次[編集]

内容目次」を参照せよ。

両軍のテッサリアへの転進[編集]

75節[編集]

カエサル勢がアポッロニアへの復路を急ぎ、ポンペイウスの騎兵を退けて、ゲヌスス川岸へたどり着く


   まず、輜重と護衛の1個軍団を、アポッロニアへ向けて先遣する

  • ①項 Itaque
    • このようにして、
  • nulla interposita mora
  • sauciorum modo et aegrorum habita ratione
    • 負傷した者たちや病気の者たちをおもんばかっただけで、
      (訳注:saucius, -a, -um 「負傷した(者)」 > 男性・複数・属格 sauciōrum
      (訳注:aeger 形容詞 「病気の」または男性名詞 「病人」 > 複数・属格 aegrōrum)
  • impedimenta omnia silentio prima nocte ex castris Apolloniam praemisit
  • ac conquiescere ante iter confectum vetuit.
    • 行軍イテルが成し遂げられる前に休息することを禁じた。
      (訳注:conquiēscere 「休息する」)
      (訳注:vetāre 「禁じる」)
  • His una legio missa praesidio est.
    • これら(の輜重隊)の護衛として、1個軍団が先遣された。


   2個軍団を陣営にとどめ、残りの軍団をアポッロニアへ向けて先遣する

  • ②項 His explicitis rebus
  • duas in castris legiones retinuit,
    • 2個軍団を陣営に保持しておき、
      (訳注:retinēre 「引き止める」「保持する」)
  • reliquas de quarta vigilia compluribus portis eductas
    • 残り(の軍団)を、第四夜警時の頃に、いくつかの門から進発させて、
      (訳注:第四夜警時は、真夜中から日の出までの間の後半の時間帯「明け方」を指す。『古代ローマの不定時法』を参照。)
  • eodem itinere praemisit
    • 同じ行程で先遣した。


   カエサル自身も2個軍団とともにデュッラキウム近郊から撤退する

  • parvoque spatio intermisso,
  • ut et militare institutum servaretur
    • 軍務の取り決め(軍規)が守られるように
  • et quam serissime eius profectio cognosceretur,
    • かつ、彼(カエサル)の出発が知られるのが、できるだけ遅くなるように
      (訳注:sērō 副詞 「遅く、遅れて」 > 最上級 sērissimē ;quam +最上級「できるだけ~」)
  • conclamari iussit,
    • (陣営からの撤収が)号令されることを、命じた。
  • statimque egressus
    • すぐさま、進発して、
  • et novissimum agmen consecutus
    • 行軍隊列アグメンの最後列に追いついて、
  • celeriter ex conspectu castrorum discessit.
    • たちどころに、陣営の視界から撤収してしまった。


   ポンペイウスが、カエサルの撤収に気づいて、追撃のために出発する

  • ③項 Neque vero Pompeius cognito consilio eius moram ullam ad insequendum intulit,
    • その一方で、ポンペイウスは、彼(カエサル)意図コンシリウムを察すると、追撃するために いかなる遅れモラ与えなかった
      (訳注1:īnsequī 「おいかける」「追跡する」「追撃する」)
      (訳注2:īnferre 「引き起こす」「与える」)
  • sed eadem
    • しかも、同じ道を
      (訳注:eādem 「同じ道で」「同様に」by the same way
  • spectans, si itinere impeditos perterritos deprehendere posset,
    • ── (輜重により)行軍を妨げられているし 臆病になっている者たちを、引っ捕まえることができるかのではないか、と期待して ──
      (訳注:下線部は、多くの写本では impeditos だが、impedito あるいは impedimentos としている写本もある。
       itinere impeditō 「行軍を妨げることにより」)
  • exercitum e castris eduxit
    • 軍隊を陣営から進発させた。
  • equitatumque praemisit ad novissimum agmen demorandum,
    • (カエサル勢の)行軍隊列アグメンの最後列を遅らせるために、騎兵隊を先遣した。
      (訳注:dēmorārī 「遅らせる」)
  • neque consequi potuit,
    • が、追いつくことができなかった。
  • quod multum expedito itinere antecesserat Caesar.
    • というのも、カエサルが、軽装の行軍により、(すでに)大いに先行していたからだ。
      (訳注:antecēdere 「先行する」)


   ポンペイウスの騎兵隊が、カエサルの最後列に追いすがる

  • ④項 Sed cum ventum esset ad flumen Genusum,
  • けれども、ゲヌスス川のたもとまで到着したときに、
  • quod ripis erat inpeditis,
    • (その川が)岸により(渡河を)妨げており、
  • consecutus equitatus novissimos proelio detinebat.
    • (ポンペイウス勢の)騎兵隊が、(カエサル勢の)最後列に追いついて、合戦により遅らせていた。
      (訳注:dētinēre 「遅らせる」)


   カエサルの騎兵隊と軽装歩兵が、ポンペイウスの騎兵隊を撃退する

  • ⑤項 Huic suos Caesar equites opposuit
    • これに対して、カエサルは配下の騎兵たちを対峙させた。
  • expeditosque antesignanos admiscuit CCCC,
    • 軽装の軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌスたち400名を(騎兵たちに)混ぜ加えた。
      (訳注:admiscēre 「混ぜ加える」)
  • qui tantum profecerunt,
    • 彼らは、たいへん首尾よくやった。
  • ut equestri proelio commisso pellerent omnes
    • その結果、騎兵戦をやり合って、総勢を追いやって、
  • compluresque interficerent
    • かなりの者たちを殺戮さつりくして、
  • ipsique incolumes se ad agmen reciperent.
    • (カエサル配下の兵たち)自身は無傷で行軍隊列アグメンのもとへ引き上げていた。

76節[編集]

両軍がゲヌスス川岸のアスパラギウム近辺に陣取るが、カエサル勢が出し抜いて復路を急ぐ

ローマ軍の陣営カストラの概略図(再掲)。
(1) Principia(本営)
(2) Via Praetoria(正門道)
(3) Via Principalis(主道)
(4) Porta Principalis Dextra(右の脇門)
(5) Porta Praetoria(正門)
(6) Porta Principalis Sinistra(左の脇門)
(7) Porta Decumana(裏門)
  • ①項 Confecto iusto itinere eius diei quod proposuerat Caesar,
    • カエサルは、その日に予定していたところの正規の行軍を成し遂げて、
      (訳注1:iūstus, -a, -um 「正規の」)
      (訳注2:prōpōnere 「予定する」)
  • traductoque exercitu flumen Genusum
    • 軍隊にゲヌスス川を渡河させて、
  • veteribus suis in castris contra Asparagium consedit
    • アスパラギウムの向かい側の味方の古い陣営に陣取り、
  • militesque omnes intra vallum castrorum continuit
    • すべての兵士ミレス(歩兵)たちを、陣営の防柵ウァッルムの内側に引き止め、
  • equitatumque per causam pabulandi emissum
    • 騎兵隊エクイタスまぐさを調達するために送り出したが、
      (訳注:ēmittere 「送り出す、派遣する」 > 完了受動分詞 ēmissus
  • confestim decumana porta in castra se recipere iussit.
    • ただちに裏門から陣営に引き上げて来ることを命じた。
      (訳注:porta decumāna または porta decimāna は、
      第10歩兵大隊コホルスが守備していた陣営の裏門を指す。右の図を参照。)


  • ②項 Simili ratione Pompeius confecto eius diei itinere
  • in suis veteribus castris ad Asparagium consedit.
    • アスパラギウムのそばの味方の古い陣営に陣取った。


   カエサル勢が陣営に落ち着いたと思い込み、ポンペイウス勢が分散してしまう

  • ③項 Eius milites,
    • (ポンペイウス)の兵士たちは、
  • quod ab opere integris munitionibus vacabant,
    • 堡塁ムニティオが手つかずだったゆえに、堡塁工事オプスがひまだったので、
      (訳注:vacāre ab ~ 「~免れる」「ひまである」)
  • alii lignandi pabulandique causa longius progrediebantur,
    • ある者たちは、材木集めやまぐさあさりのために、より遠くに出て行ったし、
  • alii, quod subito consilium profectionis ceperant
    • 別のある者たちは、不意に(デュッラキウム近辺からの)出発の作戦計画コンシリウムを立てていたので、
  • magna parte impedimentorum et sarcinarum relicta,
    • 輜重しちょう手荷物サルキナの大部分を放置しており、
  • ad haec repetenda invitati propinquitate superiorum castrorum
    • 以前の陣営の近さにより、これらを取り戻すために 引き寄せられて、
      (訳注1:repetere 「取り戻す」 > 未来受動分詞(動形容詞) repetendus =動名詞の代用 ad haec repetenda
      (訳注2:invītāre 「勧誘する」「引き起こす」「刺激する」 > 完了受動分詞 invītatus
ローマ軍の編制単位 コントゥベルニウムcontubernium)の再演。
8名からなる最小単位で、10個で歩兵小隊ケントゥリア(約80名)を構成した。
一つの天幕に宿営したので、この共有天幕もコントゥベルニウムという。


   カエサル勢が不意に陣営から出発して、ポンペイウス勢を引き離す

  • ④項 Quibus ad sequendum impeditis
    • その者たちにより、追跡することが妨げられていたときに、
  • Caesar, quod fore providerat,
    • カエサルは、そうなることを予見していたので、
  • meridiano fere tempore signo profectionis dato
    • ほぼ真昼の時に、出発の号令シグヌムを出して、
  • exercitum educit
    • 軍隊を進発させて、
  • duplicatoque eius diei itinere
    • その日の行軍を倍に増やして、
  • VIIIoctō milia passuum ex eo loco procedit;
  • quod facere Pompeius discessu militum non potuit.
    • というのも、ポンペイウスは、兵士たちの退出により、(追跡を)行なうことができなかったからだ。

77節[編集]

カエサル勢が、ポンペイウス勢の追跡を振り切って、アポッロニアにたどり着く

  • ①項 Postero die Caesar similiter praemissis prima nocte impedimentis
    • 翌日に、カエサルは、(前日の場合と)同様に、夕暮れ時に輜重を先遣して、
      (訳注:prīmā nocte 「夜のはじめに」=「夕暮れ時に」)
  • de quarta vigilia ipse egreditur,
    • 第四夜警時の頃に、自身も進発して、
      (訳注:第四夜警時は、真夜中から日の出までの間の後半の時間帯「明け方」を指す。『古代ローマの不定時法』を参照。)
  • ut si qua esset imposita dimicandi necessitas, subitum casum expedito exercitu subiret.
    • もし、何らかの闘う必要性が負わせられたなら、軍隊が軽装であることにより、不意の危難カススに耐えるようにした
  • Hoc idem reliquis fecit diebus.
    • ほかの日々も、これと同じことを実行した。


  • ②項 Quibus rebus perfectum est,
    • それらの行動が成し遂げられて、
  • ut altissimis fluminibus atque impeditissimis itineribus
    • その結果、河川がきわめて深く、道がきわめて通りにくくても、
  • nullum acciperet incommodum.
    • 何ら災難をこうむることがなかった。


  • ③項 Pompeius enim,
  • primi diei mora inlata
    • 1日目の遅れが引き起こされて、
  • et reliquorum dierum frustra labore suscepto,
    • ほかの日々も、無駄に骨折りを甘んじた。
  • cum se magnis itineribus extenderet et praegressos consequi cuperet,
    • 強行軍で力を尽くして、先行する者たちに追いつくことを望んだのだが
      (訳注:magnīs itineribus 「強行軍で」)
      (訳注:extendere 「努力する」)
      (訳注:praegredī 「前を行く」 > 完了受動分詞 praegressus
  • quarta die finem sequendi fecit
    • 4日目に、追跡することを終わりにして、
  • atque aliud sibi consilium capiendum existimavit.
    • (ポンペイウス)自らにとって、別の作戦計画コンシリウムが立てられるべきだ、と判断したのだ。

78節[編集]

カエサルがアポッロニア周辺に守備隊を残してドミティウスとの合流を目指し、ポンペイウスもスキピオとの合流を目指す

  • ①項 Caesari
    • カエサルにとって、
  • ad saucios deponendos,
    • 負傷した者たちをゆだねるため
      (訳注:dēpōnere 「預ける、任せる、ゆだねる」 > 動形容詞 dēpōnendus
  • stipendium exercitui dandum,
    • 軍隊に俸給スティペンディウムを支給するため
  • socios confirmandos,
    • (近隣諸市の)同盟者たちを激励するため
      (訳注:12節④項において、ビュッリス、アマンティアや周辺の諸都市がカエサルと盟約を結んだことが述べられた。)
  • praesidium urbibus relinquendum
    • (これらの)諸都市に守備隊を残しておくために
  • necesse erat adire Apolloniam.



   カエサルの作戦企図とは

  • ③項 Totius autem rei consilium
    • ところで、(カエサル勢の)全体の作戦計画レイ・コンシリウムは、
  • his rationibus explicabat,
    • 以下の企図ラティオによって展開していたのだ。
  • ut si Pompeius eodem contenderet,
    • もし、ポンペイウスが同じところへ急いでいたならば、
  • abductum illum a mari
    • (ポンペイウス)を海から遠ざけて、
      (訳注1:abdūcere 「遠ざける、引き離す」 > 完了受動分詞 abductus
      (訳注2:第3巻の前半でたびたび述べられたように、アドリア海はポンペイウス勢の大艦隊によって封鎖されていた。)
  • atque ab iis copiis, quas Dyrrachii comparaverat, frumento ac commeatu, abstractum
    • デュッラキウムで(すでに)調達しておいた、穀物や生活物資コンメアトゥスの貯えから引き離して、
      (訳注1:commeātus は、兵士の生活に欠かせない食糧や生活必需品などを指す。)
      (訳注2:abstrahere 「引き離す、遠ざける」 > 完了受動分詞 abstractus
  • pari condicione belli secum decertare cogeret;
    • 対等な戦争条件により、自分(カエサル)と決戦することを(ポンペイウスに)強いるように。
  • si in Italiam transiret,
    • もし、(ポンペイウスが)イタリアに渡航したならば、
  • coniuncto exercitu cum Domitio
    • ドミティウスと(陸上の)軍隊エクセルキトゥスを合流させて、
  • per Illyricum Italiae subsidio proficisceretur;
  • si Apolloniam Oricumque obpugnare
    • もし、(ポンペイウスが)アポッロニアやオリクムを攻囲して、
  • et se omni maritima ora excludere conaretur,
    • 自分(カエサル)をすべての海岸地帯から排除することを試みたならば、
      (訳注:exclūdere 「締め出す、排除する」)
  • obsesso Scipione necessario illum suis auxilium ferre cogeret.
    • スキピオを襲撃することで、あやつ(ポンペイウス)がやむなく味方を支援することを強いるように、と。
      (訳注:obsidēre 「封鎖する、包囲する」「襲う」 > 完了受動分詞 obsessus


   カエサルが諸都市に守備隊を残して、エピルスとアタマニアを通って、ドミティウスとの合流のために出発する

  • ④項 Itaque praemissis nuntiis ad Cn. Domitium Caesar
    • こうして、カエサルは、グナエウス・ドミティウス(・カルウィヌス)のもとへ 伝令ヌンティウスたちを先遣して、
  • scripsit et, quid fieri vellet, ostendit
    • (書状を)書き送って、(カエサルは)何がなされることを望んでいるかを示して、
  • praesidioque Apolloniae cohortibus IIII,
  • Lissi una,
    • リッススに1個を、
  • III Orici relictis,
    • オリクムに3個を残して、
  • quique erant ex vulneribus aegri depositis,
    • 負傷のゆえに病んでいた者たちをゆだねて、
  • per Epirum atque Athamaniam iter facere coepit.
    • エピルスやアタマニアを通って、行軍をし始めた。
      (訳注:Athamaniam 「アタマニアを」は修正提案されたもので、
      写本では Acarnaniam 「アカルナニアを」などとなっているが、
      これでは南に寄り過ぎているので、修正提案が支持されている。)


  • ⑤項 Pompeius quoque
  • de Caesaris consilio coniectura iudicans
    • カエサルの作戦計画コンシリウムについて、推測コニェクトゥラにより洞察しながら、
  • ad Scipionem properandum sibi existimabat;
    • 自分にとって、スキピオのもとへ急行するべきである、と判断していた。
  • si Caesar iter illo haberet,
    • もし、カエサルが あちらに進路を取るならば、
  • ut subsidium Scipioni ferret,
    • スキピオに加勢しよう。
  • si ab ora maritima Oricoque discedere nollet,
    • もし、(カエサルが)海岸地帯や(港湾都市である)オリクムから遠ざかることを望まないのならば、
  • quod legiones equitatumque ex Italia expectaret,
    • イタリアからの諸軍団や騎兵隊を待っているということなので、
  • ipse ut omnibus copiis Domitium adgrederetur.
    • (ポンペイウス)自身が、すべての軍勢をともなって(マケドニア地方にいると思われる)ドミティウスを攻撃しよう、と。

79節[編集]

カエサルの部将ドミティウス・カルウィヌスが、紆余曲折を経て、カエサルとの合流を果たす

両軍の進路と位置を示す簡略地図(訳者が作成)。
この画像のラテン語版はこちら
エグナティア街道の現在も残っている部分(カンダウィア高原の辺り)。エグナティア街道は、ローマ人が築いたもので、軍隊をすばやく移動させるには打ってつけの舗装道路であった。
  • ①項 His de causis
    • このような理由のために
  • uterque eorum celeritati studebat,
    • 彼ら (カエサルとポンペイウス) の両者ともに、迅速さに努めていたし、
  • et suis ut esset auxilio,
    • 味方にとっての援軍であらんとし、
  • <et> ad opprimendos adversarios
    • <かつ>敵対者たちを打ちのめすための
  • ne occasioni temporis deesset.
    • 時機をおろそかにしないようにしていた。



   ドミティウスに、ポンペイウスとの遭遇の危機が迫る

  • ③項 Accessit etiam ex inproviso aliud incommodum,
    • そのうえ、想定外の別の厄介なことが付け加わった。
  • quod Domitius, <cum> dies complures castris Scipionis castra conlata habuisset,
  • rei frumentariae causa ab eo discesserat
    • 穀物の調達のために、彼 (スキピオ) のもとから(すでに)撤退しており、
  • et Heracliam [Senticam], quae est subiecta Candaviae,
    • カンダウィアに接しているヘラクリア[・センティカ]へ、
      (訳注:写本の記述では、Heracliam Senticam 「ヘラクリア・センティカ へ」とあるが、
      これはトラキアの町(現在のブルガリア領)であって北東に寄り過ぎるため、
      ヘラクリア・リュンケスティス Heraclea Lyncestis (現在のマケドニア共和国領内)が正しいと判断され、[ ]内が削除提案されている。)
  • iter fecerat,
    • (すでに)行軍していた。
  • ut ipsa fortuna illum obicere Pompeio videretur.
    • その結果、まさに運命が彼 (ドミティウス)をポンペイウス(の攻勢)にさらすように思われていた。
  • Haec ad id tempus Caesar ignorabat.
    • カエサルは、その当時、このことを知らなかったのだ。


   ポンペイウスが勝報を各地に広めたため、カエサル勢の移動が困難になる

  • ④項 Simul a Pompeio litteris per omnes provincias civitatesque dimissis
    • 他方では、ポンペイウスによって(周辺の)すべての属州や都市を通って書状が送り出されて、
  • de proelio ad Dyrrachium facto
  • latius inflatiusque multo, quam res erat gesta,
    • (現実に)なされた戦いよりも、かなり冗長かつ大げさに、
      (訳注1:lātē 「広く」「高慢に」「冗長に」 > 比較級 lātius
      (訳注2:īnflātē 「大げさに」 > 比較級 inflātius)
  • fama percrebruerat pulsum fugere Caesarem paene omnibus copiis amissis.
    • カエサルはほとんど全軍勢を失い、駆逐されて敗走している、という風評が広まっていたのだ。
      (訳注:percrēbrescere > 3人称・単数・過去完了・能動・直説法 percrēbruerat という記述の写本のほかに、
           percrēbēscere > 3人称・単数・過去完了・能動・直説法 percrēbuerat という記述の写本もある。)
  • Haec itinera infesta reddiderat,
    • このことが、(カエサル勢の)行軍を危険な状態にしていたし、
  • haec civitates nonnullas ab eius amicitia avertebat.
    • このことが、少なからぬ諸都市を彼 (カエサル) との同盟関係アミキティアから離反させていたのだ。


  • ⑤項 Quibus accidit rebus,
    • そのような事態により、以下のことが生じた。
  • ut pluribus dimissi itineribus a Caesare ad Domitium et a Domitio ad Caesarem
    • 多くの道筋により、カエサルからドミティウスへ、ドミティウスからカエサルへ、(伝令として)送り出された者たちが、
  • nulla ratione iter conficere possent.
    • どのような方策によっても、往来を果たせなかったのだ。


   アッロブロゲス族の兄弟の従者たちが、ドミティウスの斥候たちに機密をしゃべってしまう

  • ⑥項 Sed Allobroges, Roucilli atque Aeci familiares,
    • けれども、アッロブロゲス族のロウキッルスとアエクスの家内奴隷ファミリアリスたちが、
      (訳注:この二人兄弟については、59節61節を参照。)
  • quos perfugisse ad Pompeium demonstravimus,
    • ── その者たちがポンペイウスのもとへ寝返ったことは前述したが、──
  • conspicati in itinere exploratores Domiti,
    • 道中において、ドミティウスの斥候たちを見出すと、
  • seu pristina sua consuetudine, quod una in Gallia bella gesserant,
    • ガリアで一緒に戦争を闘った往時の自分らの付き合いからか、
  • seu gloria elati,
    • あるいは功名グロリアに高ぶっていたからか、
  • cuncta, ut erant acta, exposuerunt
    • 行なわれていたことの全部を語ってしまい、
  • et Caesaris profectionem, adventum Pompei docuerunt.
    • カエサルの(デュッラキウム周辺からの)出発、ポンペイウスの到来を教えてしまったのだ。
アエギニウムAeginium)というラテン語名で知られた古代の町、古代ギリシア語名 アイギニオンΑἰγίνιον)、すなわち、現代ギリシャのカランバカΚαλαμπάκα)の景観。ピンドゥス山脈からテッサリア平原への入口になっていることが見て取れる。


   ドミティウスが、無事にテッサリア近くのアエギニウムでカエサルと合流する

  • ⑦項 A quibus Domitius certior factus
    • ドミティウスは、その者たちから報告されて、
  • vix IIII horarum spatio antecedens
    • かろうじて4時間の距離を進んで、
  • hostium beneficio periculum vitavit
    • 敵方のおかげで危険を免れた。
  • et ad Aeginium, quod est obiectum oppositumque Thessaliae,
    • そして、テッサリアに面して向かい合うアエギニウムの辺りで、
  • Caesari venienti occurrit.
    • やって来るカエサルと出くわしたのである。

80節[編集]

カエサル勢が、同盟を反故にしたテッサリア辺境の城市ゴンピを攻め落とす

  • ①項 Coniuncto exercitu Caesar
    • カエサルは、(配下の二つの)軍隊を合流させると、
  • Gomphos pervenit,
    • ゴンピに到着する。
  • quod est oppidum primum Thessaliae venientibus ab Epiro;
  • quae gens paucis ante mensibus ultro ad Caesarem legatos miserat,
    • その(ゴンピの)住民は、数か月前には、自発的に、カエサルのもとへ使節たちを(すでに)遣わして、
  • ut suis omnibus facultatibus uteretur,
    • 自分たちのすべての能力を用いてくれるように(と頼み)、
  • praesidiumque ab eo militum petierat.
    • (カエサル) に兵士たちの守備隊(の配備)を要求していた。


  • ②項 Sed eo fama iam praecurrerat, quam supra docuimus, de proelio Dyrrachino,
    • けれども、そこには、デュッラキウムの戦いについて、前述したような風聞がすでに先行していて
      (訳注:praecurrere 「先行する」 > 3人称・単数・過去完了・能動・直説法 praecucurrerat > 別形 praecurrerat)
  • quod multis auxerat partibus.
    • (その風聞は、戦いについて)大部分において、大げさに言っていた。


   ゴンピの武将アンドロステネスが、ポンペイウスとスキピオに救援を求める

  • ③項 Itaque Androsthenes, praetor Thessaliae,
    • こうして、テッサリアの将であるアンドロステネスは、
  • cum se victoriae Pompei comitem esse mallet quam socium Caesaris in rebus adversis,
    • 苦境にあるカエサルの同盟者ソキウスであるよりも、むしろポンペイウスの勝利の仲間コメスであることを望んでいたので、
  • omnem ex agris multitudinem servorum ac liberorum in oppidum cogit
    • 耕地から奴隷たちや自由民たちの群集のすべてを、城市オッピドゥムに徴集し、
  • portasque praecludit
    • 諸門を閉ざす。
  • et ad Scipionem Pompeiumque nuntios mittit,
    • スキピオやポンペイウスのもとへ伝令たちを遣わして、
  • ut sibi subsidio veniant:
    • 自分たちの増援として来てくれるように(頼んだ)。
  • se confidere munitionibus oppidi,
    • 自分らは、城壁都市オッピドゥム塁壁ムニティオを信じている。
  • si celeriter succurratur;
    • もし、速やかに救援に駆けつけてくれるならば(の話だが)。
  • longinquam oppugnationem sustinere non posse.
    • 長期間の包囲攻撃オップグナティオを持ちこたえることはできない、と(伝令たちを通じて伝えた)。


   スキピオが、テッサリア北東部のラリサに到着


   カエサルが、城市ゴンピの攻囲の準備を命じる

  • ⑤項 Caesar, castris munitis,
    • カエサルは、陣営を(堡塁で防御を)固めて、
  • scalas musculosque ad repentinam oppugnationem fieri
    • はしごや攻城歩廊ムスクルスを、不意の包囲攻撃のために造られること、
      (訳注:ムスクルス(攻城歩廊)については、第2巻10節を参照せよ。)
  • et crates parari iussit.
    • 編み細工が準備されること、を命じた。


   カエサルが、城市ゴンピの攻囲の有益性を説く

  • ⑥項 Quibus rebus effectis
    • それらの物が作られると、
  • cohortatus milites docuit,
    • 兵士たちに発破はっぱをかけて(以下のように)説いた。
  • quantum usum haberet ad sublevandam omnium rerum inopiam
    • あらゆる物の欠乏を和らげるために、どれほど有益であることか。
  • potiri oppido pleno atque opulento,
    • 豊かで富のある城市を獲得することが。
  • simul reliquis civitatibus huius urbis exemplo inferre terrorem
    • 同時に、この都市ウルプス見せしめエクセンプルムとすることで、ほかの都市国家キウィタスに畏怖心を誘発することが、
  • et id fieri celeriter, priusquam auxilia concurrerent.
    • そのことが、(スキピオとポンペイウスらが)救援に急行するより前に、速やかになされることが(どれほど有益であることか)。


   カエサルが、城市ゴンピを攻略して、ただちに隣のメトロポリスに急行する

  • ⑦項 Itaque usus singulari militum studio
    • このようにして、兵士たちの類いまれなる意気込みストゥディウムを役立てて、
  • eodem, quo venerat, die post horam nonam
    • (ゴンピのそばに)到着した同日の第9時の後に、
      (訳注:「第9時」は、正午から日の入りまでの間の3分の1が経過した頃。夏季なら、現代の午後2時よりも後の時間。
      古代ローマの不定時法』を参照。)
  • oppidum altissimis moenibus oppugnare adgressus
    • この上なく高い防壁モエニア城市オッピドゥムを攻囲することに着手して
      (訳注:adgredī ~[不定法] 「~に着手する」)
  • ante solis oocasum expugnavit
    • 日没の前には攻略した。
  • et ad diripiendum militibus concessit
    • そして、兵士たちに(ゴンピの城内を)略奪することを許可した。
  • statimque ab oppido castra movit
    • そして、すぐさま、城市から陣営を引き払って、
      (訳注:castra movēre 「陣営を引き払う」)
  • et Metropolim venit, sic ut nuntios expugnati oppidi famamque antecederet.
    • 攻略された城市(ゴンピ)の伝令たちや風聞に先行するように、メトロポリスに到着した。

81節[編集]

城市メトロポリスをはじめ諸都市がカエサルに帰順。カエサルはテッサリア平原を決戦地と想定する

  • ①項 Metropolitae,
    • メトロポリスの住民たちは、
      (訳注:Mētropolītae, [属格] Mētropolītārum 「メトロポリス (Mētropolis ;希 Μητρόπολιςの住民たち」)
  • primum eodem usi consilio,
    • はじめのうちは、(ゴンピの住民たちと)同じ判断を採用して、
  • isdem permoti rumoribus,
    • (カエサルの敗戦についての)同じ風評に揺り動かされて、
  • portas clauserunt
    • 諸門を閉ざして、
  • murosque armatis compleverunt;
    • 城壁を武装した者たちで埋め尽くした。
  • sed postea
    • けれども、後に、
  • casu civitatis Gomphensis cognito ex captivis, quos Caesar ad murum producendos curaverat,
    • カエサルが城壁のたもとに連行されるように手配した 捕虜たちから、都市ゴンピの災厄カススを悟って、
  • portas aperuerunt.
    • 諸門を開いた。


   城市メトロポリスと周辺の諸都市が、カエサルの軍門に降る

  • ②項 Quibus diligentissime conservatis,
    • 彼ら(メトロポリスの住民たち)が 念には念を入れて 保護されると、
      (訳注:dīligenter 副詞 「注意深く、入念に」 > 最上級 dīligentissimē)
  • conlata fortuna Metropolitum cum casu Gomphensium
    • メトロポリスの境遇フォルトゥナがゴンピの災厄カススと比較されて、
      (訳注:cōnferre ~ cum ・・・ 「~を・・・と比較する」)
  • nulla Thessaliae fuit civitas
  • praeter Larisaeos, qui magnis exercitibus Scipionis tenebantur,
    • スキピオの多勢の軍隊により占領されていたラリサの住民たちを除けば、
      (訳注:Lārīssaeī, -ōrum 「ラリサLārīsa または Lārīssa) ; 希 Λάρισα または Λάρισσαの住民たち」)
現代ギリシャのラリサ県 ファルサラ市の地形図。
地形図の中央にファルサラΦάρσαλα)と記された市街があり、その辺りにラテン語でパルサルスPharsalus)、古代ギリシア語でパルサロスΦάρσαλος)と呼ばれた古代の町があったと推定されている。その北側に広がるデルタ状の平原のどこか(古代の河岸の辺り)でカエサルとポンペイウスの決戦が行なわれたと考えられている。カエサル自身は、パルサルスの地名を挙げていないが、ローマ時代の史家たちはパルサルスに言及している。
  • quin Caesari parerent atque imperata facerent.
    • ことごとくカエサルに服従して、命令されたことを実行していた。
      (訳注:nūllus (nūlla, nūllum) ~ est, quīn ・・・
           「・・・でない~はない」
           nūlla cīvitās fuit, quīn ・・・
           「・・・でない都市国家はなかった」
          =「都市国家はことごとく・・・であった」)


  • ③項 Ille idoneum locum in agris nactus <ad frumentorum commeatus>,
    • 彼は、耕作地に<糧秣供給のために>ふさわしい土地を獲得して、
      (訳注:< >内は写本にはなく、挿入提案されたもの。)
  • quae prope iam matura erant,
    • ── それら(の穀物)は、ほぼすでに成熟していたわけだが、──
  • ibi adventum expectare Pompei
  • eoque omnem belli rationem conferre constituit.
    • そこに、戦略のすべてをかけること、を決意した。






82節[編集]

ポンペイウスがテッサリアに到着して、スキピオと合流。元老院派の高位の者たちが勝利後の皮算用を始める


  • ①項 Pompeius paucis post diebus in Thessaliam pervenit
  • contionatusque apud cunctum exercitum
    • 軍隊全員の面前で演説をして
      (訳注:cōntiōnārī 「演説をする」 > 完了受動分詞 contiōnātus
  • suis agit gratias,
    • 配下の者たちに謝意を表わした。
      (訳注:grātiās agere 「感謝を述べる」)
  • Scipionis milites cohortatur, ut parta iam victoria praedae ac praemiorum velint esse participes,
    • スキピオの兵士たちを、勝利はすでに手に入れたから 戦利品プラエダ報酬プラエミウムを分かち合う者となることを望むように、と鼓舞した。
      (訳注1:カエサルとの戦いはすでに勝ったも同然であるから、戦功を立てて戦利品や報酬を分かち合えるように、頑張ってくれ!)
      (訳注2:parere 「手に入れる」「獲得する」 > 完了受動分詞 partus
         ⇒ partā iam victōriā 「勝利がすでに手に入れられたので」)
  • receptisque omnibus in una castra legionibus
    • 諸軍団すべてを一つの陣営に収容して、
  • suum cum Scipione honorem partitur
    • (将軍としてのポンペイウス)自らの職権ホノルをスキピオと分配して、
      (訳注:partīrī 「割り当てる、分配する」 > 3人称・単数・現在・能動・直説法 partītur )
  • classicumque apud eum cani
    • (スキピオ)の面前で 戦闘らっぱクラッシクム が吹奏されることと、
  • et alterum illi iubet praetorium tendi.
    • (スキピオ)のために二つ目の 軍指揮官の天幕プラエトリウム が張られること、を命じた。
      (訳注:tendere 「(天幕を)張る」 > 現在・受動・不定法 tendī


   大軍を頼みとする元老院派の将兵たちが、勝利を確信して、慎重なポンペイウスをやゆする

  • ②項 Auctis copiis Pompei duobusque magnis exercitibus coniunctis,
    • 二つの多勢の軍隊が合流して、ポンペイウスの軍勢が増大したので、
  • pristina omnium confirmatur opinio
    • 以前からの皆の思いが確固たるものとされて、
  • et spes victoriae augetur,
    • 勝利への期待が増されたので、
  • adeo ut, quidquid intercederet temporis,
    • 介在していた時間がどのようなものであれ、
  • id morari reditum in Italiam videretur,
    • それは、イタリアへの帰還を遅延させている、と思われていたほどであった
  • et si quando quid Pompeius tardius aut consideratius faceret,
    • もし、ポンペイウスが よりぐずぐずと、あるいは より慎重に 何かをしているときは、
      (訳注1:tardē 副詞「ゆっくりと、ぐずぐずと」 > 比較級 tardius 「よりぐずぐずと」)
      (訳注2:cōnsīderātē 副詞「慎重に」 > 比較級 cōnsīderātius 「より慎重に」)
  • unius esse negotium diei,
    • 一日分の務めである(と思われていた)
  • sed illum delectari imperio
    • けれども、彼 (ポンペイウス)司令権インペリウムを楽しんでいて、
      (訳注:dēlectāre 「楽しませる」 > 受動 dēlectārī 「楽しむ」)
  • et consulares praetoriosque servorum habere numero dicerent.
    • 執政官コンスラリスたちや法務官プラエトリウスたちを奴隷セルウスたちと見なしている、と言っていたものだ。
      (訳注:~ [対格] ・・・ [属格] numerō habēre 「~を・・・と見なす」)


   元老院派の高位の者たちが、戦勝後の論功行賞について言い争い始める

  • ③項 Iamque inter se palam de praemiis ac de sacerdotiis contendebant
    • もはや、(高位の者たちは)互いに、公然と、報酬プラエミウムについて、祭司職サケルドティウム(への任官)について、争っていたり、
  • in annosque consulatum definiebant,
    • 何年間にもわたって 執政官コンスラトゥス(に任官する者たち)を指定していたり、
  • alii domos bonaque eorum, qui in castris erant Caesaris, petebant;
    • 別の者たちは、カエサルの陣営にいた者たちの邸宅や財産を要求していた。


  • ④項 magnaque inter eos in consilio fuit controversia,
    • 会議において、彼らの間で、(以下のような)大きな論争があった。
  • oporteretne Lucili Hirri,
    • ルキリウス・ヒッルスは、
      (訳注:oportērene ~ 関節疑問「~は当然か否か?」)
  • quod is a Pompeio ad Parthos missus esset,
    • ── 彼は、ポンペイウスによって、パルティア人たちのもとへ派兵されていたので、 ──
  • proximis comitiis praetoriis absentis rationem haberi,
    • 次の法務官プラエトルたちの選挙に(立候補に当たって)不在であるのを考慮に入れること、は当然か否か?
      (訳注:ratiōnem habēre 「考慮に入れる」)
  • cum eius necessarii fidem implorarent Pompei,
    • そのとき、彼の縁者たちは、ポンペイウスの誓約フィデスに助けを求めていた。
  • praestaret, quod proficiscenti recepisset,
    • (ポンペイウスは、ヒッルスが)出発しようとしているときに(法務官選挙について)約束していたことを、保証するべきだ。
  • ne per eius auctoritatem deceptus videretur,
    • (ヒッルスが)彼 (ポンペイウス) の影響力にだまされたと、思われないようにしてくれ
  • reliqui, in labore pari ac periculo ne unus omnes antecederet, recusarent.
    • (これに反して)ほかの者たちは、同じ労苦や危険の中にあるのに(ヒッルス)一人だけを皆より厚遇しないでくれ、と異議を唱えた。

83節[編集]

ポンペイウスの陣営で、元老院派のレントゥルス、ドミティウス、スキピオらが戦勝後の賞罰をめぐって言い争う

最高神祇官Pontifex Maximus)の恰好をした、カエサルの大甥オクタウィアヌス(アウグストゥス)の像。最高神祇官は、共和制ローマにおける祭司たちの長で、終身職であり、トガで頭をおおっていた。
  • ①項 Iam de sacerdotio Caesaris
    • もはや、カエサルの祭司職サケルドティウムについて、
      (訳注:カエサルは、37歳頃のBC63年に、終身職である最高神祇官Pontifex Maximus)に
      立候補して当選・任官している。
      カエサルが戦死するか、ローマ国家に対する謀反人として刑死しない限り、
      ほかの者が就任することはできなかった。)
  • Domitius, Scipio Spintherque Lentulus
    • ドミティウス (・アヘノバルブス)、スキピオ、およびスピンテル・レントゥルスは、
  • cotidianis contentionibus
    • 毎日のように競い合って、
  • ad gravissimas verborum contumelias palam descenderunt,
    • こっぴどい悪態をつくまでに落ちぶれていた。
      (訳注:dēscendere ad ~[対格] 「身を落として~する」)
  • cum Lentulus aetatis honorem ostentaret,
    • そのとき、レントゥルス(・スピンテル)は、年功序列アエタスによる高官職ホノル(就任案)を提示していたし、
      (訳注1:ostentāre 「自慢する」あるいは「指し示す、注意を向けさせる」)
      (訳注2:レントゥルス・スピンテル Publius Cornelius Lentulus Spinther はBC57年の執政官。
         第1巻23節ではコルフィニウム陥落とともに、カエサルの捕虜となったが、放免された。)
  • Domitius urbanam gratiam dignitatemque iactaret,
    • ドミティウス (・アヘノバルブス) は、首都 (ローマ) での信望グラティア地位ディグニタスを誇示し、
      (訳注1:iactāre 「自慢する、誇示する」)
      (訳注2:ドミティウス・アヘノバルブス Lucius Domitius Ahenobarbus は、
      レントゥルスと同様にコルフィニウムで捕虜となり、マッシリアにも籠城したが、逃亡していた。)
  • Scipio adfinitate Pompei confideret.
    • スキピオ は、ポンペイウスとの姻戚関係アドフィニタスに頼り切っていた。
      (訳注:スキピオの娘 コルネリア・メテッラ Cornelia Metella は、ポンペイウスの5人目の妻となっていた。)


   アクティウス・ルフスが、アフラニウスのヒスパニアでの降伏を裏切りと非難

  • ②項 Postulavit etiam L. Afranium proditionis exercitus Acutius Rufus apud Pompeium,
    • さらに、アクティウス・ルフスは、ポンペイウスがいる所で、軍隊への裏切りのとがでルキウス・アフラニウスを訴えた。
      (訳注1:postulāre 「告訴する」「非難する」)
      (訳注2:アクティウス氏族 Acutii は、平民プレブスだったが、ルフスは騎士階級だったとされている。)
      (訳注3:ルキウス・アフラニウス Lucius Afranius は、第1巻~第2巻で語られたように、
           マルクス・ペトレイウス Marcus Petreius とともにヒスパニアでカエサルと戦ったが、降伏していた。)
  • quod <neglegenter bellum> gestum in Hispania diceret.
    • ヒスパニアで<戦争がぞんざいに>遂行されたことを(アフラニウスが)語っていた限りでは(軍隊への裏切りに当たると訴えた)。
      (訳注1:quod ~[接続法] 「~限り」)
      (訳注2:<neglegenter bellum> <戦争がぞんざいに> は、写本にはなく、挿入提案されている。)


   ドミティウス・アヘノバルブスが、三枚ずつの投票札で各人の賞罰を評決することを提案する

  • ③項 Et L. Domitius in consilio dixit
  • placere sibi bello confecto ternas tabellas dari ad iudicandum
    • 戦争が(勝利で)完遂されたら、評価するための三枚ずつの投票札タベッラが与えられることが、自分にとっては好ましい
  • iis, qui ordinis essent senatorii belloque una cum ipsis interfuissent,
    • 元老院議員の階級にあって、自分らと一緒に戦争に参加していた者たちに(三枚ずつの投票札が与えられることが好ましい)。
  • sententiasque de singulis ferrent,
    • (彼らをして)それぞれについて評決センテンティアをさせるためだ。
      (訳注:sententiam ferre 「投票する」)
  • qui Romae remansissent
    • (ポンペイウスに従わず、首都)ローマに残留していた者たち、
  • quique intra praesidia Pompei fuissent neque operam in re militari praestitissent:
    • および、ポンペイウスの陣地プラエシディウム内にいたが、軍事において務めオペラを果たさなかった者たちを(評決させるためだ)。
  • unam fore tabellam, qui liberandos omni periculo censerent,
    • (三枚ずつのうちの)一つの投票札タベッラは、あらゆる訴追ペリクルムから放免されるべきだと(評決者たちが)評価するために、
      (訳注:perīculum 「危険」あるいは「訴訟、裁判」)
  • alteram, qui capitis damnarent,
    • 二枚目は、死刑カプトを宣告するために、
  • tertiam, qui pecunia multarent.
    • 三枚目は、財産ペクニアを没収するために。


  • ④項 Postremo omnes
    • 結局のところ、(高位の者たち)皆が、
  • aut de honoribus suis
    • 自分たちの高官職ホノルについて、
  • aut de praemiis pecuniae
    • あるいは、金銭的な恩賞について、
  • aut de persequendis inimicitiis agebant,
    • 敵対関係イニミキティアエを処罰することについて、協議していた。
  • nec quibus rationibus superare possent,
    • どのような戦法で(カエサルを)打ち負かしえるか、ではなくて、
  • sed, quemadmodum uti victoria deberent, cogitabant.
    • どんな風に 勝利ウィクトリアを享受するべきか、を思案していたのだ。
      (訳注:quemadmodum = quem ad modum 「どのようなやり方で」)

両軍のパルサルス周辺での小競り合いと駆け引き[編集]

84節[編集]

戦機が熟したと判断したカエサルが、騎兵の間に軽装歩兵を混ぜる戦術を、小競り合いで試す

  • ①項 Re frumentaria praeparata
    • 糧秣調達があらかじめ準備され、
      (訳注:praeparāre 「前もって用意する」 > 完了受動分詞 praeparātus
  • confirmatisque militibus
    • 兵士たちも元気づけられて、
  • et satis longo spatio temporis a Dyrrachinis proeliis intermisso,
    • デュッラキウムの戦いから、じゅうぶんに長い時間間隔があけられて、
      (訳注:Dyrr(h)achīnum proelium 「デュッラキウムの戦い」 > 複数・奪格 Dyrr(h)achīnīs proeliīs
  • quo satis perspectum habere militum <animum> videretur,
    • 兵士たちの<心が>じゅうぶんに見通しがついたと思われて、
      (訳注:<animum> <心が> は写本になく、挿入提案されたもの。)
  • temptandum <Caesar> existimavit, quidnam Pompeius propositi aut voluntatis ad dimicandum haberet.
    • ポンペイウスが、闘うためにどのような企てまたは意思を持っているのか、試してみるべきだと<カエサルは>判断した。
      (訳注:<Caesar> <カエサルは> は、挿入提案されたもの。)


   カエサル勢が、ポンペイウスの陣営に迫って、士気を高める

  • ②項 Itaque exercitum ex castris eduxit
    • そんなわけで、(カエサルは)軍隊を陣営から進発させて、
  • aciemque instruxit,
    • 戦列アキエスを整えた。
  • primum suis locis pauloque a castris Pompei longius,
    • まずは、味方の土地に、ポンペイウスの陣営からは少し遠いところに(進み)、
  • continentibus vero diebus,
    • さらに、引き続く日々には、
  • ut progrederetur a castris suis
    • 味方の陣営から前進するようにして、
  • collibusque Pompeianis aciem subiceret.
    • ポンペイウス勢の(陣営がある)丘陵のそばに戦列アキエスを置いていた。
      (訳注:sūbicere 「~の下に置く」)
  • Quae res in dies confirmatiorem eius exercitum efficiebat.
    • その事は、日増しに、彼 (カエサル) の軍隊を確固たるものにしていた。


   カエサル勢の前衛の軽装歩兵たちが、騎兵たちに交じって闘う戦術を会得する

  • ③項 Superius tamen institutum in equitibus, quod demonstravimus, servabat,
    • しかしながら、騎兵たちにおいては、前述した 以前からの慣行インスティトゥトゥムを維持していた。
      (訳注:75節⑤項では、騎兵たちの間に 軽装の軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌス400名を混ぜ加えた、と述べられている。)
  • ut, quoniam numero multis partibus esset inferior,
    • (カエサルの騎兵隊は、ポンペイウスのより)数の面でかなり劣勢であったので、
  • adulescentes atque expeditos ex antesignanis electis ad pernicitatem armis
    • すばやさのために選り抜かれた軍旗前の散開歩兵アンテシグナヌス部隊アルマのうちから若くて軽武装の者たちを、
  • inter equites proeliari iuberet,
    • 騎兵たちの間で交戦することを命じていた。
  • qui cotidiana consuetudine usum quoque eius generis proeliorum perciperent.
    • 彼らは、毎日の習慣により、その類いの戦いの経験さえも習得していたのだ。


   軽装歩兵を混ぜ加えたカエサルの騎兵1000騎が、ポンペイウスの7000騎と互角以上に闘う

  • ④項 His erat rebus effectum,
    • これらの事が成し遂げられると、
  • ut equitum mille etiam apertioribus locis VII milium Pompeianorum impetum,
    • (カエサル勢の)騎兵1000騎が、開けた場所においてさえ、ポンペイウス勢の7000(の騎兵)の突撃に、
  • cum adesset usus, sustinere auderent
    • 経験が助けとなっていたので、あえて持ちこたえて、
  • neque magnopere eorum multitudine terrerentur.
    • 彼ら (ポンペイウスの騎兵) の多勢に、あまり動じなかった。
      (訳注:neque magnoperē ~ 「あまり~ない」)


  • ⑤項 Namque etiam per eos dies proelium secundum equestre fecit
    • 現に、(カエサルは)その日々を通してさえも、好調な騎兵戦を行ない、
  • atque unum Allobrogem ex duobus, quos perfugisse ad Pompeium supra docuimus,
    • ポンペイウスのもとへ寝返ったことを前に述べた アッロブロゲス族の二人のうち一人を
      (訳注:59節61節で、アッロブロゲス族の二人兄弟がカエサルを裏切った。
       下線部 unum 「一人を」を Aecum 「アエクスを」とする修正提案もある。)
  • cum quibusdam interfecit.
    • 幾人かの者たちとともに殺害した。

85節[編集]

カエサルが、行軍の駆け引きによって、慎重なポンペイウスを決戦に誘い出そうとする

  • ①項 Pompeius, qui castra in colle habebat,
  • ad infimas radices montis aciem instruebat,
    • (その)小山モンスの最も下のふもと戦列アキエスを整えていて、
  • semper, ut videbatur, expectans, si iniquis locis Caesar se subiceret.
    • もしやカエサルが不利な所に身をさらすのではないかと、常に待ち望んでいるように思われていた。
      (訳注:si ~[接続法・未完了過去] 「もしや~ではないかと」)
      (訳注:sūbicere 「(危険などに)さらす」)


   カエサルが、ポンペイウスを陣営から誘い出す策を企てる

  • ②項 Caesar nulla ratione ad pugnam elici posse Pompeium existimans
    • カエサルはどのような方法によっても、ポンペイウスを戦いに誘い出すことができない、と判断して、
      (訳注:ēlicere 「おびき出す、誘い出す」)
  • hanc sibi commodissimam belli rationem iudicavit, uti castra ex eo loco moveret semperque esset in itineribus,
    • その場所から陣営を動かして、常に行軍中であることが、自分にとって最も有利な戦法だ、と洞察した。
  • haec spectans, ut movendis castris pluribusque adeundis locis commodiore re frumentaria uteretur,
    • これは、陣営を動かして より多くの地点を訪れることによって、糧抹補給をより好都合に享受するように、
  • simulque in itinere ut aliquam occasionem dimicandi nancisceretur
    • 他方では、行軍中に、何らかの闘う好機にでくわすように、
  • et insolitum ad laborem Pompei exercitum cotidianis itineribus defatigaret.
    • 労苦に慣れていない ポンペイウスの軍隊を、毎日の行軍により疲弊させるように、もくろんでいた


   ついに、ポンペイウス勢が陣営から前進して来る

  • ③項 His constitutis rebus,
    • このような軍事行動レ  スが決められ、
  • signo iam profectionis dato
    • すでに出発の号令シグヌムが発せられて、
  • tabernaculisque detensis
    • 天幕タベルナクルムがたたまれたときに、
      (訳注:dētendere 「(天幕を)たたむ」 > 完了受動分詞 detensus
  • animum adversum est paulo ante extra cotidianam consuetudinem longius a vallo esse aciem Pompei progressam,
    • 少し前に、ポンペイウスの戦列アキエスが、毎日の習慣より外側へ、堡塁からより遠くへ、進み出ていたことに気づいた。
  • ut non iniquo loco posse dimicari videretur.
    • その結果、(カエサル勢にとって)不利でない場所でも闘うことができると思われていた。


   カエサルが雄弁を振るって、軍勢を出陣させる

  • ④項 Tum Caesar apud suos,
    • そのとき、カエサルは、配下の者たちの前で、
  • cum iam esset agmen in portis,
    • すでに、行軍隊列アグメンは(陣営から出るために)諸門のところにいたのだが、
  • "differendum est" inquit "iter in praesentia nobis
    • (カエサルは)発言した:「目下のところ、我が方にとって、行軍は延期されるべきだ。」
  • et de proelio cogitandum, sicut semper depoposcimus;
    • 「我々が常に求めてきたような合戦について、考えるべきである。」
  • animo simus ad dimicandum parati:
    • 「闘うための心の準備はできている。」
  • non facile occasionem postea reperiemus.";
    • 「(今を逃したら)後になっては、たやすく好機を見いだせないぞ。」
  • confestimque expeditas copias educit.
    • すぐさま、軽装のまま軍勢を進発させた。

86節[編集]

ポンペイウスが、せがまれて戦いを決意、騎兵の機動力を活かした速戦即決の戦法を提案する

  • ①項 Pompeius quoque,
  • ut postea cognitum est,
    • ── 後に知られたように ──
  • suorum omnium hortatu statuerat proelio decertare.
    • 配下の者たち一同からき付けられて、合戦で決着を付けることを決心していた。
  • Namque etiam in consilio superioribus diebus dixerat,
    • 確かに、過ぎし日々の軍議コンシリウムにおいて(次のように)さえ言っていた。
  • priusquam concurrerent acies,
    • 戦列アキエスが激突するより前に、
  • fore uti exercitus Caesaris pelleretur.
    • カエサルの軍隊エクセルキトゥスが駆逐されるようになるであろう、と。


  • ②項 Id cum essent plerique admirati,
    • (ポンペイウスが述べた)そのことに、たいていの者たちがビックリしていたときに、
  • "scio me" inquit "paene incredibilem rem polliceri;
    • (ポンペイウスは)言った:「私が ほとんど信じがたい事を明言しているということを、私は心得ている。」
      (訳注:以下、ポンペイウスの発言が直接話法で描写されている部分を、うすい水色でマーキングする。)
  • sed rationem consilii mei accipite,
    • 「けれども、私の計画コンシリウム方法ラティオ聞いてくれ
      (訳注:accipere 「聞く」 > 2人称・複数・現在・能動・命令法 accipite
  • quo firmiore animo in proelium prodeatis.
    • そのことによって、より強固な闘志をもって、合戦に進み出るようにせよ。」


   ポンペイウスが、速戦即決の作戦を提案

  • ③項 Persuasi equitibus nostris,
    • 「我が方の騎兵たちに、(以下のような戦法を)私は促したし、
      (訳注:persuādēre ~ [与格] , ut ・・・ 「・・・するように、~を説得する/促す」
           > 1人称・単数・完了・能動・直説法 persuāsī
トレビアの戦い(BC218年)の概略図:
カルタゴ軍(紺色)の名将ハンニバルは、左翼と右翼の強力な騎兵でローマ軍(赤色)の騎兵を撃退し、ローマ軍本体を騎兵と歩兵により包囲して、壊滅させた。
 ハンニバルによるカンナエの戦いや、大スキピオがハンニバルを破ったザマの戦いも同様な勝ち方となった。
 ポンペイウスが本節で示した戦法はこれらと似ているが、騎兵を左翼(カエサル勢の右翼)に集中させる点や、歩兵による正面攻撃を考慮に入れていない点などが大きく違う。左右両翼から強力な騎兵で攻め立て、歩兵と共同して包囲すれば、カエサル勢も支えることが難しかったかも知れない。
  • idque mihi facturos confirmaverunt,
    • そのことを遂行するでありましょう、と(騎兵たちも)私に確言した。
  • ut cum propius sit accessum,
    • より近くに進軍している間に、
  • dextrum Caesaris cornu ab latere aperto adgrederentur
    • カエサルの右翼を、開いた側面から、襲撃せよ。
      (訳注1:dextrum cornū 中性・単数・主格/対格 「右翼 (が/を)」
        参考 sinistrum cornū 中性・単数・主格/対格 「左翼 (が/を)」)
      (訳注2:開いた側面とは、長盾で防護されていない右手の側のこと。)
  • et circumventa a tergo acie
    • かつ、戦列アキエスを背後から包囲することによって、
  • prius perturbatum exercitum pellerent, quam a nobis telum in hostem iaceretur.
    • 我が方によって飛び道具が敵陣に投げ込まれるよりも前に、混乱させられた(カエサルの)軍隊を敗走せしめよ。
      (訳注:ポンペイウスが言っていることは、
         ①両軍の歩兵が互いに近づいて ぶつかる前に、
         ②7000騎の騎兵隊を左翼に集中して、カエサルの右翼の弱い右側面を攻撃する
         ③カエサルの歩兵全体を背後から包囲する
         ④統制不可能に陥ったカエサル勢は撃退される
         ⑤ポンペイウスの軍団本体は戦わずして勝つ
      ということであろう。相撲にたとえれば、がっぷり四つ身に組む前に 強烈な張り手一発で倒す、と。
      だが、ここでは、カエサルの1000騎の騎兵をまったく考慮に入れていない。
      84節で前述されたように、カエサルが軽装歩兵を1000騎の騎兵に混ぜ加えて、
      ポンペイウスの騎兵と互角以上にわたりあった場合は事情が異なる。)


  • ④項 Ita sine periculo legionum et paene sine vulnere bellum conficiemus.
    • それゆえ、諸軍団の 危険ペリクルムがなく、ほとんど負傷ウルヌスもなしに、戦争を我が方は成し遂げるであろう。
  • Id autem difficile non est, cum tantum equitatu valeamus."
    • さらに、そのことは、困難ではない。これほどにも、騎兵隊において、我が方はまさっているのだから。


   兵士たちよ、決戦において、われら元老院派を失望させてくれるな

  • ⑤項 Simul denuntiavit,
    • 一方で、(ポンペイウスは、以下のように)告示した。
  • ut essent animo parati in posterum,
    • 翌日に向けて、心の準備をせよ。
  • et quoniam fieret dimicandi potestas, ut saepe rogitavissent,
    • (ポンペイウスの部下たちが)しばしば要求していたように、決着をつける機会が生じるのであるから、
  • ne suam neu reliquorum opinionem fallerent.
    • 自分 (ポンペイウス) やほかの者たちの(勝利の)予想オピニオを裏切らないように、と。
      (訳注1:nē ~ neu ・・・ ○○  「~も・・・も○○するな」)
      (訳注2:fallere 「(期待を)裏切る、失望させる」)

87節[編集]

ラビエヌスが、カエサル勢は弱体化していると士気を高めて、必勝を誓う

  • ①項 Hunc Labienus excepit
    • 彼 (ポンペイウス)(の話) を、ラビエヌス引き継いで
      (訳注:excipere 「~の後に続く」)
  • et, cum Caesaris copias despiceret,
    • カエサルの軍勢を見下しており、
  • Pompei consilium summis laudibus efferret,
    • ポンペイウス計画コンシリウムを、最高の賞賛ラウスでほめそやしていたので
      (訳注:efferre ~[対格] laudibus 「賞賛する、ほめたたえる」)
  • "noli", inquit "existimare, Pompei, hunc esse exercitum, qui Galliam Germaniamque devicerit.
    • (次のように)言った:ポンペイウスよ、これが、ガリアとゲルマニアを征伐した軍隊であると判断してはいけない
      (訳注:以下、ラビエヌスの発言が直接話法で描写されている部分を、うすい水色でマーキングする。)


  • ②項 Omnibus interfui proeliis
    • 合戦にはことごとく、私は居合わせたし、
  • neque temere incognitam rem pronuntio.
    • 知らない事を、むやみに私は公言しているのではない。
  • Perexigua pars illius exercitus superest;
    • (ガリアとゲルマニアを征伐した)あの軍隊のうち、ごくわずかな部隊パルスしか生き残っていないし、
      (訳注:superesse 「生き残る、生き残っている」)
  • magna pars deperiit,
    • 多くの部隊パルスは、壊滅してしまった。
  • quod accidere tot proeliis fuit necesse,
    • そのことは、あれだけ多数の合戦プロエリウムによっては、起こることが不可避であったのだ
  • multos autumni pestilentia in Italia consumpsit,
    • イタリアにおいては、秋季アウトゥムヌス伝染病ペスティレンティアが、多くの者たちを衰弱死させてしまったし、
  • multi domum discesserunt,
    • 多くの者たちが、故郷に立ち去ってしまったし、
  • multi sunt relicti in continenti.
    • 多くの者たちが、間隔を置かずに置き去りにされたままである。
      (訳注:in continentī 「間隔を置かずに」
       ※「大陸に」とする訳書もあるが、その場合は in continente でなければならない。)



  • ④項 Hae copiae quas videtis,
    • 君らが見ているこの軍勢は、
  • ex dilectibus horum annorum in citeriore Gallia sunt refectae,
    • この数年のキテリオル・ガリアにおける徴兵ディレクトゥスによって再建されて、
      (訳注:キテリオル・ガリア citeriore Gallia は、アルプス山脈とルビコン川の間の属州のこと。)
  • et plerique sunt ex coloniis Transpadanis.
    • たいていの者たちは、トランスパダナの植民諸市からの出身者であり、
      (訳注:トランスパダナ・ガリア Transpadana Gallia は、パドゥス川(現・ポー川)の北岸地域のこと。)
  • Ac tamen, quod fuit roboris,
    • それらは、精鋭部隊ロブスであったにもかかわらず、
      (訳注:ac tamen 「それにもかかわらず」)
  • duobus proeliis Dyrrachinis interiit."


  • ⑤項 Haec cum dixisset,
    • (ラビエヌスは)これらを語って、
  • iuravit se nisi victorem in castra non reversurum,
    • 自分は 勝利者としてでない限り 陣営には戻らないであろう、と宣誓して、
  • reliquosque ut idem facerent hortatus est.
    • ほかの者たちも、同じことをするように、と激励した。


  • ⑥項 Hoc laudans Pompeius idem iuravit;
    • ポンペイウスは、これを ほめたたえて、同じことを宣誓した。
  • nec vero ex reliquis fuit quisquam qui iurare dubitaret.
    • 現に、ほかの者たちのうちから、宣誓することをためらう者は、誰もいなかった


  • ⑦項 Haec cum facta sunt in consilio,
    • これらのことが、軍議においてなされたので、
  • magna spe et laetitia omnium discessum est;
    • 一同は、大きな期待と喜びとともに、散会した。
  • ac iam animo victoriam praecipiebant,
    • そして、すでに、心では、勝利を予感していた。
  • quod de re tanta et a tam perito imperatore
    • というのも、これほどの大事について、これほどの老練なる将軍インペラトルによって、
  • nihil frustra confirmari videbatur.
    • わけもなく、何ら断言されることはない、と思われていたからである。

ついに両雄が雌雄を決する (パルサルスの戦い)[編集]

88節[編集]

ポンペイウス麾下の戦列の陣容。カエサルがその歩兵数を4万7000人ほどと見積もる

  • ①項 Caesar cum Pompei castris adpropinquasset,
    • カエサルは、ポンペイウスの陣営に接近していたときに
      (訳注:cum +接続法・過去完了 「(歴史的に)~した時に」)
  • ad hunc modum aciem eius instructam animum advertit.
    • 彼の戦列アキエスが、以下のように整列させられているのに、着目する。
      (訳注:ad hunc modum 「以下のように」)


  • ②項 Erant in sinistro cornu legiones duae traditae a Caesare initio dissensionis ex senatus consulto;
    • 左翼には、(両者の)紛争ディッセンスィオのはじめに、元老院決議セナトゥス・コンスルトゥムに基づき、カエサルによって引き渡された2個軍団があった。
      (訳注:senātūs cōnsultum 「元老院決議」
        パルティア人との戦争に、カエサルとポンペイウスから各1個軍団が供出されるように元老院が決議したが、
       ポンペイウスはカエサルのガリア属州から徴兵された1個軍団をまるで自分の持ち分であるかのように供出したので、
       カエサルは2個軍団を供出させられたのだ、というのがカエサルの言い分である。
       この話は、カエサルの没後に補筆された『ガリア戦記』第8巻54節で述べられ、
       『内乱記』第1巻冒頭でもカエサルがかなり固執している。もちろん、2個軍団ともカエサルの私兵ではないのだが。)
  • quarum una prima, altera tertia appellabatur.
    • それらのうち一つは 第1プリマ(軍団)、もう一つは 第3テルティア(軍団)と呼ばれていた。
  • In eo loco ipse erat Pompeius.


  • ③項 Mediam aciem Scipio cum legionibus Syriacis tenebat.
    • 戦列の中央部を、スキピオがシリアの(2個)軍団とともに占めていた。
  • Ciliciensis legio coniuncta cum cohortibus Hispanis, quas traductas ab Afranio docuimus,
    • キリキアの軍団が、アフラニウスから引き渡されたと前述したヒスパニアの諸歩兵大隊コホルスと連結されて、
      (訳注1:4節①項で、「双子」と呼ばれていた2個軍団からつくられたキリキアの古参の軍団について言及されている。)
      (訳注2:下線部 ab Afranio 「アフラニウスから」は、修正提案されたもので、写本では ab aeranio または ab aeronio などとなっている。
           なお、アフラニウスから部隊が引き渡されたという前述部分はない。)
  • in dextro cornu erant conlocatae.
    • 右翼に配列されていた。
      (訳注:右翼は、レントゥルス・スピンテル Publius Cornelius Lentulus Spinther が指揮していた、などとする史料もある。)


  • ④項 Has firmissimas se habere Pompeius existimabat.
    • ポンペイウスは、これらが、自分が保持している最も精強(な部隊)だと、判断していた。
  • Reliquas inter aciem mediam cornuaque interiecerat
    • (ポンペイウスは)戦列アキエスの中央部と両翼の間に、ほかの者たちを(すでに)挿入しておいた。
  • numeroque cohortes CX expleverat.
    • 数にして、110個歩兵大隊コホルスを満たしていた。


  • ⑤項 Haec erant milia XLV,
    • これらは、4万5000名であり、
  • evocatorum circiter duo,
    • (再召集の)古参兵エウォカティたち、約2000名、
  • quae ex beneficiariis superiorum exercituum ad eum convenerant;
    • ── 彼らは(ポンペイウスの)以前の軍隊の 雑用免除兵士ベネフィキアリウス のうちから、彼のもとへ集結していたのだが、 ──
      (訳注:beneficiarius「雑用を免除された兵士」。第1巻75節②項で既述。)
エニペウス川Enipeus,Ἐνιπεύς)、すなわち現代ギリシャのエニペアス川(Ενιπέας)の川岸が、決戦の舞台だったと考えられている。
  • quae tota acie disperserat.
    • (ポンペイウスは)彼らを、すべての戦列アキエスに、分散させていた。
  • Reliquas cohortis VII castris propinquisque castellis praesidio disposuerat.
    • (ポンペイウスは)残りの7個歩兵大隊コホルスを、陣営および近隣の城砦に、守備隊として配置しておいた。


  • ⑥項 Dextrum cornu eius rivus quidam impeditis ripis muniebat;
    • (ポンペイウス) の右翼を、とある小川リウスが、越えにくい川岸リパにより、防御していた。
      (訳注:この川は、エニペウス川 Enipeas のことだと考えられている。)
  • quam ob causam
    • その理由のために、
  • cunctum equitatum, sagittarios funditoresque omnes
    • 騎兵隊、弓兵たち、投石兵たちの全体すべてを
  • sinistro cornu obiecerat.
    • 左翼に置いていた。

89節[編集]

カエサル麾下の戦列の陣容。歩兵2万2000人のうちから、第四戦列を編制する

  • ①項 Caesar superius institutum servans
    • カエサルは、以前からの慣習インスティトゥトゥムを保持して、
  • X (decimam) legionem in dextro cornu,
    • 第10デキマ軍団を右翼に、
  • nonam in sinistro conlocaverat,
    • 第 9ノナ (軍団) を左翼に、配列しておいた。
  • tametsi erat Dyrrachinis proeliis vehementer adtenuata,
    • (第9軍団は)デュッラキウムの戦いで極度に消耗させられていたけれども、
      (訳注1:adtenuāre 「消耗させる」 > 完了受動分詞 adtenuātus
      (訳注2:67節③項で、カエサルは第9軍団を含む部隊を進軍させたが、大敗している。)
  • et huic sic adiunxit octavam,
    • これに対して、第 8オクタウァ (軍団) を付け加えて、
  • ut paene unam ex duabus efficeret,
    • 2個(軍団)から、ほとんど1個(軍団)となるようにして、
      (訳注:sīc ~ ut ・・・ 「・・・ように~」「~なので、・・・ほどである」)
  • atque alteram alteri praesidio esse iusserat.
    • 一方が他方の助けとなるように命じていた。


  • ②項 Cohortes in acie LXXX constitutas habebat,
    • 80個 歩兵大隊コホルスを、戦列アキエスに配置しておいた。
  • quae summa erat milium XXII;
    • それらの総計は、2万2000名であった。
  • cohortes VII castris praesidio reliquerat.
    • 7個 歩兵大隊コホルスを、陣営の守備隊として残留させておいた。


  • ③項 Sinistro cornu Antonium,
  • dextro P. Sullam,
    • 右翼に、プブリウス・スッラを、
      (訳注:プブリウス・コルネリウス・スッラ Publius Cornelius Sulla は、有名な独裁官スッラの甥に当たる。51節で既述。)
  • mediae aciei Cn. Domitium praeposuerat.
    • 戦列アキエスの中央部に、グナエウス・ドミティウス(・カルウィヌス)を、指揮官としていた。
      (訳注:カエサルは、戦列の中央部について詳しく言及していないが、
         34節③項で、ドミティウス・カルウィヌスは 第11・第12の2個軍団と騎兵500騎を率いていたので、
         これら2個軍団が中央部にいたと考えられるし、カエサルの騎兵隊がわずか1000騎というのも過少申告ではなかろうか。)
  • Ipse contra Pompeium constitit.
    • (カエサル)自身は、ポンペイウス相対あいたいしてとどまった。


   カエサルが、第四戦列を編制して、勝負をかける

  • ④項 Simul his rebus animadversis, quas demonstravimus,
    • 同時に(カエサルは)前述した事情に着目したので、
      (訳注:前節=88節 でカエサルが着目した ポンペイウス勢の陣容のこと。)
  • timens, ne a multitudine equitum dextrum cornu circumveniretur,
    • (ポンペイウスの)騎兵たちの多勢によって、(カエサル勢の)右翼が取り囲まれるのではないか、と恐れて、
  • celeriter ex tertia acie singulas cohortes detraxit
    • 第三戦列テルティア・アキエスから、一つずつの歩兵大隊コホルスを、速やかに引き離して、
      (訳注:後述されるように 6個 歩兵大隊で、3000名ほどだと考えられている。余力のある軍団から1個ずつ引き出したのであろう。)
  • atque ex his quartam instituit equitatuique opposuit
    • これら(の歩兵大隊)から、第四クウァルタ(戦列)を編制し、(ポンペイウスの)騎兵隊に立ち向かわせた。
  • et, quid fieri vellet, ostendit
    • そして、(カエサルが)何をして欲しいか、を指図して、
  • monuitque eius diei victoriam in earum cohortium virtute constare.
    • その日の勝利ウィクトリアが、それらの歩兵大隊コホルス武勇ウィルトゥスかかっている、と告げた。


  • ⑤項 Simul tertiae aciei totique exercitui imperavit,
    • 同時に、第三戦列テルティア・アキエスおよび全軍隊に(以下のように)命令した。
  • ne iniussu suo concurrerent;
    • 自分の命令なしには、(敵勢と)ぶつかるな。
      (訳注:iniussu 副詞 「命令なしに」)
  • se, cum id fieri vellet, vexillo signum daturum.
    • (カエサル自身が)そうなって欲しいときに、自分が軍旗ウェクシッルムにより号令シグヌムを出すであろう、と。

90節[編集]

カエサルが、自らの和平を求めるこれまでの努力を強調してから、開戦の号令を発する

  • ①項 Exercitum cum militari more ad pugnam cohortaretur
    • (カエサルは)軍隊の伝統により、会戦プグナのために軍隊エクセルキトゥスに気合を入れ、
      (訳注:mīlitāris mōs 「軍隊の習慣・伝統」 > 奪格 mīlitārī mōre 「軍隊の伝統により」)
  • suaque in eum perpetui temporis officia praedicaret,
    • かつ、自らが連中に 絶え間ない敬意を表していることを告げて、
      (訳注1:perpetuum tempus 「絶え間ない時間」 > 属格 perpetuī temporis 「時間的に絶え間ない」)
      (訳注2:officium 多義語のため、解釈が分かれる。「義務、奉仕」「職務、任務」あるいは「敬意を表わすこと」など)


   カエサルが、自らの和平の追求について、兵士たちに確認を求める

  • in primis commemoravit
    • 特に、(以下のことを、軍隊の軍団兵たちに)思い出させた。
      (訳注1:in prīmīs = imprīmīs 「特に、とりわけ」)
      (訳注2:commemorāre 「思い出させる」あるいは「述べる」)
  • testibus se militibus uti posse,
    • 自分 (カエサル)は、兵士たちを目撃証人テスティスとして見い出すことができる。
      (訳注1:~[奪格] ・・・[奪格] ūtī 「~が・・・であると見い出す」)
      (訳注2:testis 「証人、目撃者」)
  • quanto studio pacem petisset,
    • どれほどの意気込みで和平を求めてきたか、
      (訳注:quantum studium 「どれほど大きな熱意」 > 奪格 quantō studiō
  • quae per Vatinium in conloquiis,
    • ウァティニウスを通じて、会談において、どんなこと(を協議したか)、
      (訳注:19節で、副官プブリウス・ウァティニウス Publius Vatinius を通じて、対岸のポンペイウス勢に対して和平を協議させようとした。)
  • quae per Aulum Clodium cum Scipione egisset,
    • アウルス・クロディウスを通じて、スキピオと、どんなことを協議したか、
      (訳注:57節で、スキピオと親しいクロディウスを派遣して、和平を協議したが失敗した。)
  • quibus modis ad Oricum cum Libone de mittendis legatis contendisset.
    • どのような仕方で、オリクムのもとで、リボと、使節たちを派遣することについて、努力したか(を兵士たちに思い出させた)。
      (訳注1:quī modus 「どのような仕方」 > 複数・奪格quibus modīs
      (訳注2:16節17節で、カエサルがスクリボニウス・リボ Lucius Scribonius Libo と協議したが、物別れに終わった。)


  • ②項 Neque se umquam abuti militum sanguine
    • 自分 (カエサル) は、これまで兵士たちの血を無駄づかいしたことはないし、
      (訳注:abūtī 「浪費する」)
  • neque rem publicam alterutro exercitu privare voluisse.
    • 国家から、(カエサル勢とポンペイウス勢の)どちらか一方の軍隊を取り上げようと望んだこともない。
      (訳注1:alteruter 「(二つのうちの)いずれか一つ」)
      (訳注2:ローマ国家の二つの軍隊のどちらか一方を、決戦によって葬り去る積もりではない、ということか。)
ローマ軍が用いていたホルンに似たラッパの一種、コルヌ(cornu)。これに対して、トゥバ(tuba)は管のまっすぐなものを指す。


   カエサルが、ラッパで開戦の号令を発する

  • ③項 Hac habita oratione
    • (カエサルは)このような演説をすると、
  • exposcentibus militibus et studio pugnae ardentibus
    • 戦いへの意気込みに激高して(開戦を)嘆願している兵士たちに対して、
      (訳注:exposcere懇願する、嘆願する」)
      (訳注:ardēre 「燃える、激する」)
  • tuba signum dedit.
    • ラッパで号令シグヌムを出した。
      (訳注:前節 89節⑤項では、カエサルは、軍旗を使って号令を出すと言っていた。)

91節[編集]

カエサル配下の再召集の古参兵クラスティヌスが、熱弁を振るってから、突撃する

  • ①項 Erat Crastinus evocatus in exercitu Caesaris,
    • カエサルの軍隊に、クラスティヌスという再召集された古参兵エウォカトゥスがいた。
  • qui superiore anno apud eum primum pilum in legione X duxerat,
    • その者は、先年、彼 (カエサル) のもとで、第10デキマ軍団で首席百人隊長プリムス・ピルス(の地位)を獲得していたのだが、
  • vir singulari virtute.
    • 類いまれなる武勇をもつ男であった。


   クラスティヌスが、兵士たちを鼓舞する

  • ②項 Hic signo dato,
    • 彼は、(開戦の)号令シグヌムが発せられると、
  • "sequimini me", inquit,
    • 「私について来い」 と言って。
  • "manipulares mei qui fuistis,
    • 「私の歩兵中隊マニプルスにいた者たちよ、
  • et vestro imperatori, quam constituistis operam date.
    • 君らの大将軍インペラトルに、(君らが)決心した働きオペラを捧げよ。
  • Unum hoc proelium superest;
    • (今や)たった一つの合戦が残っているだけだ。
  • quo confecto
    • それが成し遂げられたら、
  • et ille suam dignitatem et nos nostram libertatem recuperabimus."
    • (カエサル) は自らの名誉を、我らは我々の自由をとりもどすであろうと。
      (訳注:recuperāre 「取り戻す」 > 1人称・複数未来・能動・直説法 recuperābimus


   クラスティヌスが、カエサルに戦功を誓う

  • ③項 Simul respiciens Caesarem
    • 一方で、カエサルを振り返って
      (訳注:respicere 「振り返る」 > 現在分詞 respiciens
  • "faciam", inquit, "hodie, imperator, ut aut vivo mihi aut mortuo gratias agas."
    • 言った:大将軍インペラトルよ、今日、(私が)生きていようが戦死していようが、私に対して謝意を表わすようにさせますよ。」
      (訳注1:facere 「~する」 > 1人称・単数未来・能動・直説法 faciam
      (訳注2:grātiās agere 「謝意を表わす」)
      (訳注3:agere 「表わす」 > 2人称・単数・現在・能動・接続法 agās


   クラスティヌスと120名ほどの兵士たちが、右翼から突撃する

  • ④項 Haec cum dixisset,
    • (クラスティヌスは)これらを、言い放つと、
  • primus ex dextro cornu procucurrit
    • 一番手プリムスとして、右翼から、突き進んだ。
      (訳注:prōcurrere 「突き進む、進撃する」 > 3人称・単数完了・能動・直説法 prōcurrit = prōcucurrit)
  • atque eum electi milites circiter CXX voluntarii [eiusdem centuriae] sunt prosecuti.
    • そして、彼に[同じ歩兵小隊ケントゥリアの]選抜された兵士たち約120名が自発的に、付き従った。
      (訳注1:voluntārius 「自発的な」)
      (訳注2:prōsequī 「付き従う、同行する」 > prōsecūtus
      (訳注3:[eiusdem centuriae] [同じ歩兵小隊の] は、写本にあるが、削除提案されている。)

92節[編集]

ポンペイウスが指示したという受け身の戦法を、カエサルが口を極めて批判する

  • ①項 Inter duas acies
    • (両軍の)二つの戦列アキエスの間には、
  • tantum erat relictum spatii, ut satis esset ad concursum utriusque exercitus.
    • 双方の軍隊の激突コンスルススにじゅうぶんであるだけの広がりスパティウムが残されていた。
      (訳注:tantum ~, ut ・・・ 「・・・だけの~」)


  • ②項 Sed Pompeius suis praedixerat,
    • けれども、ポンペイウスは、配下の者たちに(以下のように)あらかじめ指図していた。
      (訳注:praedīcere 「あらかじめ言う」「指図する、命じる」)
  • ut Caesaris impetum exciperent
    • カエサルの突進を持ちこたえるように、
      (訳注:excipere 「(攻撃などを)持ちこたえる」)
  • neve se loco moverent
    • 陣地から動かないようにして、
      (訳注:movēre 「動かす」 ⇒ 再帰 sē movēre 「動く」)
  • aciemque eius distrahi paterentur;
    • (カエサル)戦列アキエスが(ポンペイウスの騎兵隊に包囲されて)引き裂かれるままにしておくように。
      (訳注:distrahere 「分散させる、引き裂く」 > 現在・受動・不定法 distrahī
      (訳注:patī 「(~の状態に)しておく」 > 3人称・複数・未完了過去・能動・接続法 paterentur


   ポンペイウスの作戦の意図

  • idque admonitu C. Triarii fecisse dicebatur,
    • (ポンペイウスは)ガイウス・トリアリウスの忠告により、そのように(指示)したのだ、と言われていた。
      (訳注:admonitus 第4変化名詞 「忠告」 > 奪格 admonitū 「忠告により」)
  • ut primus excursus visque militum infringeretur
    • (カエサルの)兵士たちの最初の出撃エクスクルスス攻勢ウィスくじかれるように、
      (訳注1:excursus 「出撃、突撃」「奇襲、急襲」)
      (訳注2:īnfringere 「くじく、弱める」)
  • aciesque distenderetur,
    • (カエサルの)戦列アキエスてんでバラバラにされるようにして、
      (訳注:distendere 「広げる、伸ばす」あるいは「ばらばらにする、乱す」 > 3人称・単数・未完了過去受動接続法 distenderētur
  • atque in suis ordinibus dispositi dispersos adorirentur;
    • (ポンペイウスの)味方の戦闘隊形オルド配置された者たちが、(カエサル勢の)四散させられた者たちを、襲撃するように(意図していた)。
      (訳注1:dispōnere 「配置する」 > 完了受動分詞 dispositus 「配置された(もの)」)
      (訳注2:dispergere 「分散させる」 > 完了受動分詞 dispersus 「分散させられた(もの)」)
      (訳注3:adorīrī デポネンティア動詞 「襲撃する、攻撃する」 > 3人称・複数・未完了過去・能動・接続法 adorīrentur


  • ③項 leviusque casura pila sperabat in loco retentis militibus,
    • 兵士たちが立ち位置を固守することで、投げ槍ピルムの落下がより軽くなると期待していた。
      (訳注:leviter 副詞 「軽く」 > 比較級 levius 「より軽く」)
  • quam si ipsi inmissis telis occurrissent,
    • もし、飛び道具が発射されながら、(ポンペイウスの兵士ら)自身が迎え撃つ場合よりは(飛び道具の攻勢が軽くなると期待していた)。
      (訳注1:inmittere 「発射する」 > 完了受動分詞 inmissus
      (訳注2:occurrere 「立ち向かう、迎え撃つ」)
  • simul fore ut duplicato cursu Caesaris milites exanimarentur
    • 他方では、カエサルの兵士たちは、走路が倍増されたことで、消耗させられて、
      (訳注1:duplicāre 「二倍にする、増やす」 > 完了受動分詞 duplicātus
      (訳注2:exanimāre 「消耗する」 > 3人称・複数・未完了過去受動接続法 exanimārentur
  • et lassitudine conficerentur.
    • 疲労により、衰弱させられる(と、ポンペイウスは期待していた)。
      (訳注1:lassitūdō 「疲労」 > 単数・奪格 lassitūdine
      (訳注2:cōnficere 「消耗する、衰弱する」 > 3人称・複数・未完了過去受動接続法 cōnficerentur


   カエサルが、ポンペイウスの受け身の戦法を批判する

  • ④項 Quod nobis quidem nulla ratione factum a Pompeio videtur,
    • そのことは、ポンペイウスによって、まったく何ら分別もなくなされた、と我々にとっては、思われるのだ
      (訳注:~ nōbīs vidētur 「我々にとっては~だと思われる」)
  • propterea quod est quaedam animi incitatio atque alacritas naturaliter innata omnibus,
    • 誰にとってもオムニブス、本来 生まれつきの何らかの心の激情や熱意があるのであるから
      (訳注1:proptereā quod ~ 「~であるから」)
      (訳注2:incitātiō 「興奮、激情」)
      (訳注3:alacritās 「熱心、熱意、活発さ」)
      (訳注4:nātūrāliter 副詞「本来、生まれつき」)
      (訳注5:innātus, -a, -um 「生来の、生まれつきの」)
  • quae studio pugnae incenditur.
    • それは、戦いへの意気込みにより、燃え上がらされるものなのだ。
      (訳注:incendere 「(感情を)燃え上がらせる」)


   将軍は、兵士の戦闘意欲を高めるべきだ、とカエサルが主張する

  • ⑤項 Hanc non reprimere, sed augere imperatores debent;
    • 将軍インペラトルたちは、これを抑えつけるのではなく、高めるべきなのである。
      (訳注:reprimere 「抑制する、妨げる」)
  • neque frustra antiquitus institutum est, ut signa undique concinerent clamoremque universi tollerent;
    • そこかしこで号令シグヌム(のラッパ)を共に吹奏し、(将兵が)一斉に雄叫びを上げるという、古来の慣 行インスティトゥトゥムは、理由のないことではない。
      (訳注1:frūstrā 「理由なく」)
      (訳注2:concinere 「一緒に歌う、一緒に演奏する」)
  • quibus rebus et hostes terreri et suos incitari existimaverunt.
    • それらの理由により、敵方が威圧され、味方が駆り立てられる、と(古人は)判断したのだ。


(訳注:カエサルは、ポンペイウスのこのような指示の理由を、知ってか知らずか記していないが、
    ほかの史料、たとえば、帝政期のギリシア人史家プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の69および「カエサル」の章44 では、
    ポンペイウスは、野戦に不慣れな兵士たちが冷静さを失って動揺しているのを見たので、敵に圧倒されることを恐れて、
    槍を低く構え、地歩を固めて敵襲を待ち受けることを命じたという。村川堅太郎 編『プルタルコス英雄伝 下』(ちくま学芸文庫) などを参照。)

93節[編集]

側面から攻撃して来るポンペイウスの騎兵隊らを、カエサルの第四戦列が駆逐する


   カエサル勢の兵士たちが、疲れ果てないように、一旦休憩してから再び突撃する

  • ①項 Sed nostri milites dato signo
    • けれども、我が方の兵士たちは、号令シグヌムが発せられて、
  • cum infestis pilis procucurrissent
    • 投げ槍ピルムを前に向けて、突き進んでいたが、
      • (訳注:infestus 「(敵)に対して向けられた」(fr:dirigé contre ~) > infestīs pīlīs 「投げ槍を(敵に)向けて」)
  • atque animum advertissent non concurri a Pompeianis,
    • ポンペイウス勢がぶつかって来ないことに気づいたので
      (訳注:concurrere 「衝突する、ぶつかる、戦う」 > 現在・受動・不定法 concurrī)
  • usu periti ac superioribus pugnis exercitati
    • 実戦経験により熟練し、従来の合戦によりきたえられた者たち (=古参兵) は、
      (訳注:exercitāre 「訓練する、鍛える」 > 完了受動分詞 exercitātus 「訓練された、鍛えられた」)
  • sua sponte cursum represserunt
    • 自発的に走ることクルススを止めて、
      (訳注:suā sponte 「自発的に、自ら進んで」)
  • et ad medium fere spatium constiterunt,
    • 走路スパティウムのほぼ中央の辺りでとどまった。
  • ne consumptis viribus adpropinquarent,
    • 力を使い果たしてしまったまま(敵方に)接近することがないように、
  • parvoque intermisso temporis spatio
    • わずかな時間間隔をあけてから、
  • ac rursus renovato cursu
    • 再び走り始めて、
      (訳注:renovāre 「再び始める、再開する」 > 完了受動分詞 renovātus
  • pila miserunt
    • 投げ槍ピルムを投げ放って、
  • celeriterque, ut erat praeceptum a Caesare, gladios strinxerunt.
    • カエサルから命令されていたように、速やかに、長 剣グラディウスを(さやから)抜いたのだ。


   ポンペイウスの戦列が、カエサルの戦列に応戦する

  • ②項 Neque vero Pompeiani huic rei defuerunt.
    • 他方で、ポンペイウス勢は、この事態をおろそかにしなかった
      (訳注:deesse 「なおざりにする、おろそかにする」 > 完了 dēfuī
  • Nam et tela missa exceperunt
    • たとえば、放り投げられた飛び道具テルムに持ちこたえもしたし、
      (訳注:et ~ et ・・・ 「~でもあるし、・・・でもある」)
  • et impetum legionum tulerunt
    • (カエサル勢の)諸軍団の突進に耐えもしたし、
  • et ordines conservarunt
    • 戦闘隊形オルドを維持したし、
  • pilisque missis
    • 投げ槍ピルムを投げ放つと、
  • ad gladios redierunt.
    • 長 剣グラディウス(を抜く)に至った。


   ポンペイウス勢の左翼の騎兵隊と弓兵らが進撃を開始する

  • ③項 Eodem tempore
    • 同じ頃、
  • equites ab sinistro Pompei cornu,
    • ポンペイウスの騎兵たちが、左翼から(※すなわち カエサル勢にとっては右翼から)、
  • ut erat imperatum, universi procucurrerunt,
    • 命令されていたように、総勢で進撃して来た。
  • omnisque multitudo sagittariorum se profudit.
    • かつ、弓兵たちの多勢すべてが、なだれ込んで来た
      (訳注:prōfundere 「流す、あふれ出させる」「分散させる」 > se prōfundere 「あふれ出る」「分散する」)


   ポンペイウスの騎兵隊らが、カエサル勢の騎兵隊を蹴散らす

  • ④項 Quorum impetum noster equitatus non tulit,
    • その者らの突撃に、我が方の騎兵隊は、踏ん張れずに、
  • sed paulum loco motus cessit,
    • 立ち位置からいくらか追いやられて後退あとじさりした。
      (訳注:movēre 「追い出す、追いやる」 > 完了受動分詞 mōtus 「追いやられた」)
  • equitesque Pompei hoc acrius instare
    • ポンペイウスの騎兵たちは、この分だけ より激しく迫り(始め)、
      (訳注1:hōchūc 副詞 「この程度まで」)
      (訳注2:ācriter 副詞 「激しく」 > 比較級 ācrius 「より激しく」)
  • et se turmatim explicare
    • 騎兵小隊トゥルマごとに、展開し(始めて)、
      (訳注1:turmātim 「騎兵小隊(turma)ごとに」。「騎兵隊の編成」を参照。)
      (訳注2:explicāre 「(部隊を)展開させる」 > se explicāre 「展開する」)
  • aciemque nostram a latere aperto circumire coeperunt.
    • 我が方の戦列アキエスを、開いた側面から、包囲し始めた。
      (訳注:戦列を構成する軍団兵=重装歩兵にとって、開いた側面とは、盾でおおわれていない右側のこと。)


   カエサルが、命運を賭けて、切り札ともいうべき第四戦列を繰り出す

  • ⑤項 Quod ubi Caesar animum advertit,
    • カエサルは、そのことに気づくや否や、
  • quartae aciei, quam instituerat sex cohortium numero, dedit signum.
    • 6個歩兵大隊コホルス部隊ヌメルスから(すでに)構成しておいた第四戦列クウァルタ・アキエスに、号令シグヌムを発した。
      (訳注:第四戦列については、89節④項で述べられている。)
      (訳注:numerus 「(軍事用語で)部隊」あるいは「兵力、兵員」)
      (訳注:下線部は修正提案されたもので、写本では ex cohortium numero「歩兵大隊の部隊から」などとなっている。
          6個という数字は、プルタルコスの『対比列伝』など、ほかの史料の記述から裏付けられると考えられている。)


   カエサルの第四戦列が、ポンペイウスの騎兵たちを撃退する

  • ⑥項 Illae celeriter procucurrerunt
    • それら(の6個歩兵大隊)は、速やかに突き進んで、
  • infestisque signis
    • 軍旗シグヌムを前へ向けて、
  • tanta vi in Pompei equites impetum fecerunt, ut eorum nemo consisteret,
    • たいへんな攻勢ウィスで、ポンペイウスの騎兵たちに突撃を行なったので、彼らの誰一人として立ち止まれないほどであった。
      (訳注:tantus, -a, -um ~, ut ・・・ 「・・・ほど、たいへんな~」「たいへんな~ので、・・・ほどだ」)
  • omnesque conversi
    • (ポンペイウスの騎兵たち)全員が反転させられて
      (訳注:convertere 「向きを変えさせる、回転させる」)
  • non solum loco excederent,
    • 戦場から離脱しただけでなく
      (訳注:nōn sōlum ~, sed ・・・ 「ただ~だけでなく・・・」)
  • sed protinus incitati fuga
    • そのまま敗走に駆り立てられて、
  • montes altissimos peterent.
    • いちばん高い山々を目指した。


   カエサルの第四戦列が、無防備なポンペイウスの弓兵や投石兵を皆殺しにする

  • ⑦項 Quibus submotis,
    • それら(ポンペイウスの騎兵隊)が撃退されると
      (訳注:submovēre 「追い払う、撃退する」 > 完了受動分詞 submōtus
  • omnes sagittarii funditoresque destituti
    • 弓兵たちと投石兵たちの総員が、置き去りにされて
      (訳注:dēstituere 「置き去りにする、見捨てる」 > 完了受動分詞 dēstitūtus
  • inermes sine praesidio interfecti sunt.
    • 護衛プラエシディウムがなく無防備イネルミスなままで、殺戮さつりくされた。


   カエサルの第四戦列が、ついに、ポンペイウス勢の戦列の背後に回り込む

  • ⑧項 Eodem impetu cohortes
    • 同じ突撃により(カエサルの第四戦列の)諸歩兵大隊コホルスは、
  • sinistrum cornu pugnantibus etiam tum ac resistentibus in acie Pompeianis,
    • ポンペイウス勢の戦列アキエスにおいて、左翼でそのときまで防戦して抵抗しているものたちを、
      (訳注:etiam tum 「そのときまで」)
  • circumierunt eosque a tergo sunt adortae.
    • 取り囲み、彼らに背後から襲いかかった。

94節[編集]

カエサル勢の総攻撃によりポンペイウス勢が総崩れとなり、戦意を失ったポンペイウスが戦列を離れる


   カエサルが、総攻撃を命じる

  • ①項 Eodem tempore
    • 同じ頃、
  • tertiam aciem Caesar, quae quieta fuerat et se ad id tempus loco tenuerat,
    • カエサルは、活動を止めていて その時点まで定位置を維持していた 第三戦列テルティア・アキエス に、
      (訳注:quiēscere 「休息する、静かにしている、活動を止めている」 > 完了受動分詞 quiētus
  • procurrere iussit.
    • 進撃することを命じた。
      (訳注:第三戦列は、一般に軍団の中でも古参兵からなる精強な部隊で構成される虎の子部隊であり、
          カエサルが勝利を確信したため出撃させた、と思われる。)


   カエサル勢の総攻撃により、ポンペイウス勢がついに総崩れとなる

  • ②項 Ita cum recentes atque integri defessis successissent,
    • このようにして、(カエサル勢の)新手で無傷な者たちが、疲れ果てた者たちに取って代わっていたし、
      (訳注1:dēfessus 「疲労した(者)」 > 複数・与格 dēfessīs
      (訳注2:succēdere ~[与格] 「~に取って代わる」)
  • alii autem a tergo adorirentur,
    • そのうえ、ほかの者たち (=第四戦列) が、(ポンペイウス勢の戦列の)背後から襲いかかっていたので
  • sustinere Pompeiani non potuerunt,
    • ポンペイウス勢は、耐え切れなくなって、
  • atque universi terga verterunt.
    • 総勢が、(敵に)背を向けたのだ。
      (訳注:terga vertere 「(敵に)背中を向ける」=「逃げる、敗走する」)


   第四戦列を編制した カエサルの作戦意図が適中

  • ③項 Neque vero Caesarem fefellit,
    • 実に、(以下のことは)カエサルの期待を裏切らなかった
      (訳注1:fallere ~[対格] 「~を誤らせる」「~の期待を裏切る」 > 完了形 fefellī
      (訳注2:neque ~, quīn ・・・[接続法] 「・・・ことは~でない」
          ;neque ~[対格] fefellit, quīn ・・・[接続法] 「・・・ことは~の期待を裏切らなかった」)
  • quin ab iis cohortibus, quae contra equitatum in quarta acie conlocatae essent,
    • (ポンペイウス勢の)騎兵隊に対抗して 第四戦列クウァルタ・アキエスに配置されていた 諸歩兵大隊コホルスによって、
  • initium victoriae oriretur,
    • 勝利のきっかけが生じていたし、
  • ut ipse in cohortandis militibus pronuntiaverat.
    • (カエサル)自身が兵士たちを鼓舞するに当たって、公言していたようになったのだ。


  • ④項 Ab his enim primum equitatus est pulsus,
    • なぜなら、彼ら (第四戦列) によって、初めに(ポンペイウス勢の)騎兵隊が駆逐され、
  • ab isdem factae caedes sagittariorum ac funditorum,
    • 同じ者らによって、(ポンペイウス勢の)弓兵たちと投石兵たちの虐殺カエデスが行なわれ、
  • ab isdem acies Pompeiana a sinistra parte [erat] circumita
    • 同じ者らによって、ポンペイウス勢の戦列アキエスが左翼側から包囲されて、
      (訳注:[erat] は写本にあるが、削除提案されている。)
  • atque initium fugae factum.
    • (ポンペイウス勢の)敗走のきっかけがつくられたのだから。


   敗勢に失望したポンペイウスが、戦場を離れる

  • ⑤項 Sed Pompeius ut equitatum suum pulsum vidit
    • けれども、ポンペイウスは、味方の騎兵隊が駆逐されたのを目撃し、
  • atque eam partem, cui maxime confidebat, perterritam animadvertit,
    • (ポンペイウス自身が)最も頼りにしていた(戦列中の)部分が、ふるえ上がっているのに気付くや否や、
  • <sibi> aliisque diffisus
    • 自らや他の者たちに失望して、
      (訳注1:下線部は、写本では aliisque だが、<sibi> aliisque あるいは aliis <quo>que などの修正提案がある。)
      (訳注2:diffīdere 「疑念を抱く」「望みを失う」 > 完了受動分詞 diffīsus
  • acie excessit
    • 戦列アキエスから離脱して、
  • protinusque se in castra equo contulit,
    • すぐさま、馬で陣営に向かった
      (訳注:cōnferre 「運ぶ」「向ける」 > se cōnferre 「身を運ぶ」=「行く」)
ローマ軍の陣営カストラの概略図(再掲)。
(1) Principia(本営)
(2) Via Praetoria(正門道)
(3) Via Principalis(主道)
(4) Porta Principalis Dextra(右の脇門)
(5) Porta Praetoria(正門)
(6) Porta Principalis Sinistra(左の脇門)
(7) Porta Decumana(裏門)


   ポンペイウスが、陣営の防衛を指示する

  • et iis centurionibus, quos in statione ad praetoriam portam posuerat,
    • そして、(陣営の)正門のそばで歩哨として配置していた百人隊長ケントゥリオたちに、
  • clare, ut milites exaudirent,
    • 兵士たちが聞き取れるように はっきりと、
      (訳注1:clārē 副詞「はっきりと」)
      (訳注2:exaudīre 「聞き取る」)
  • "tuemini" inquit "castra et defendite diligenter, siquid durius acciderit.
    • 言った:「陣営を防衛せよ。もし何らかのことが苛烈に生じたとしても、注意深く防戦せよ。」
      (訳注1:tuērī 「守る」 > 2人称・複数・現在・能動・命令法 tuēminī
      (訳注2:dēfendere 「守る、保護する」 > 2人称・複数・現在・能動・命令法 dēfendite
      (訳注3:siquid = si aliquid 「もし、何らかのことが」)
      (訳注4:dūrē 副詞「厳しく、苛酷に」 > 比較級 dūrius
  • Ego reliquas portas circumeo et castrorum praesidia confirmo."
    • 「私は、ほかの諸門を巡回して、陣営の守備隊を勇気づける。」


  • ⑥項 Haec cum dixisset,
    • (ポンペイウスは)これらを言い放って、
  • se in praetorium contulit
    • 軍指揮官の天幕プラエトリウム行った
      (訳注:cōnferre 「運ぶ」「向ける」 > se cōnferre 「身を運ぶ」=「行く」)
  • summae rei diffidens
    • 重大な事態に、望みを失ってはいたが、
      (訳注2:diffīdere 「望みを失う」 > 現在分詞 diffīdens
  • et tamen eventum expectans.
    • それでも、首尾を待ち望んでいたのである。

カエサル勢による追撃とポンペイウス勢の投降[編集]

95節[編集]

カエサル勢がポンペイウスの陣営を攻略し、ポンペイウス勢が山中に逃避する

  • ①項 Caesar, Pompeianis ex fuga intra vallum conpulsis,
    • カエサルは、ポンペイウス勢が逃亡の結果として防柵ウァッルムの内側に駆り立てられると
      (訳注1:ex ~ 「~のため、~の結果として」)
      (訳注2:conpellerecompellere 「駆り立てる」 > 完了受動分詞 conpulsus
  • nullum spatium perterritis dari oportere existimans
    • 怖気おじけづいている者たち (=ポンペイウス勢) に対して、どのような時間的猶予スパティウムも与えられるべきではない、と判断して、
  • milites cohortatus est, ut beneficio fortunae uterentur castraque oppugnarent.
    • 運命(の女神)フォルトゥナの恩恵を役立てて(ポンペイウスの)陣営を攻囲すべし、と兵士たちに発破はっぱをかけた。


  • ②項 Qui, etsi magno aestu fatigati
    • 彼ら (兵士たち) は、はなはだしい(夏季の)暑さアエストゥスにより、消耗していたとはいえ
      (訳注1:fatīgāre 「疲れさせる、消耗させる」 > 完了受動分詞 fatīgātus
      (訳注2:etsī ~, tamen ・・・ 「~であっても、それでも・・・」)
  • ── nam ad meridiem res erat perducta ──,
    • ── なぜなら、交戦レスは、真昼メリディエスの頃まで長引いていたのだ ──、
  • tamen ad omnem laborem animo parati imperio paruerunt.
    • それでも、あらゆる労苦に 心構えをしており、指令に服従したのだ。
(訳注:このパルサルスの戦いが行われたのは、プルタルコスの『対比列伝』などによれば、
    当時のローマの暦で8月9日であった。天文学者ルヴェリエの説によれば、ユリウス暦BC48年6月29日と算出されている。
    これは、現在のグレゴリオ暦に換算すれば 6月27日であり、最も日照時間が長い夏至の数日後であった。)


   陣営を守るポンペイウス勢の者たち

  • ③項 Castra a cohortibus, quae ibi praesidio erant relictae,
    • 陣営は、そこに守備隊プラエシディウムとして残して置かれた諸歩兵大隊コホルスによって、
  • industrie defendebantur,
    • 熱心に防御されていた。
      (訳注:下線部の industriē は古い写本にある記述だが、
      より後の写本では industriōsē となっている。意味は同じく「熱心に」。)
  • multo etiam acrius a Thracibus barbarisque auxiliis.
    • さらに、(ローマ人の軍団兵に比べて)トラキア人たちや蛮族たちの支援部隊アウクシリアによって、はるかにより精力的に(防御されていた)。
      (訳注:ācriter 副詞 「激しく、精力的に」 > 比較級 ācrius)


  • ④項 Nam
    • (逃げ込んで来た軍団兵がトラキア人らほど防戦に精力的でなかったのは)なぜなら、
  • qui acie refugerant milites,
    • 戦列アキエスから逃げ込んで来ていた兵士たちは、
  • et animo perterriti
    • 心からおじけていたし、
  • et lassitudine confecti,
    • 疲 労ラッシトゥドにより消耗しており、
  • missis plerique armis signisque militaribus,
    • 大半の者たちが、武器も軍旗も投げ出して、
  • magis de reliqua fuga quam de castrorum defensione cogitabant.
    • 陣営の防御についてよりも、むしろ今後の逃亡について、思いめぐらしていたのだ。


   ポンペイウス勢が、陣営を放置して、山中に逃げ込む

  • ⑤項 Neque vero diutius, qui in vallo constiterant, multitudinem telorum sustinere potuerunt,
    • さらに、防柵ウァッルムの中にとどまっていた者たちは、多数の飛び道具に より長くは持ちこたえることができず、
  • sed confecti vulneribus locum reliquerunt,
    • 負傷により消耗して、その場を放置して、
  • protinusque omnes ducibus usi centurionibus tribunisque militum
    • ただちに、一同が百人隊長ケントゥリオたちや軍団次官トリブヌス・ミリトゥムたちを統率者ドゥクスとして見い出して
      (訳注1:dux 「統率者、先導者」)
      (訳注2:ūtī 「~を・・・と見い出す」)
  • in altissimos montis, qui ad castra pertinebant, confugerunt.
    • 陣営の辺りに広がっていた山の最高峰に逃げ込んだ。
      (訳注:cōnfugere 「逃げ込む、避難する」)

96節[編集]

カエサル勢がポンペイウスの陣営に踏み込む一方で、ポンペイウスは幕僚らとともに船で逃れる


   ポンペイウスの陣営のぜいたくさ

  • ①項 In castris Pompei videre licuit
    • ポンペイウスの陣営において、(以下のようなものを)見ることができた
      (訳注:licet 不定法をともなう非人称動詞として 「~できる」 > 完了・能動・直説法 licuit
         ⇒ vidēre licuit ~ 「~を見ることができた」(fr:on aurait pu voir ~) [1]
  • trichilas structas,
    • 園亭トリキラが建てられているのを、
      (訳注1:trichila 「植物でおおわれたアーケード、園亭(あずまや)」
         (fr:berceau de verdure; tonnelle = berceau de treillage couvert de verdure.) ; 参考 [2])。)
      (訳注2:struere 「建てる」 > 完了受動分詞 structus
古代ローマ時代の銀器。
  • magnum argenti pondus expositum,
    • 多数の銀 器アルゲントゥムが並べられているのを、
      (訳注1:argentum 「銀」あるいは「銀製のもの」;銀器や銀貨など。)
      (訳注2:pondus 「重さ」あるいは「数量」(en:quantity, number)
      (訳注3:expōnere 「並べる」 > 完了受動分詞 expositus
  • recentibus caespitibus tabernacula constrata,
    • 天 幕タベルナクルムに真新しい芝生カエスペスが敷き詰められているのを、
      (訳注1:caespes 「芝生」)
      (訳注2:cōnsternere 「敷き詰める」 > 完了受動分詞 cōnstrātus
キヅタ(木蔦)Hedera)でおおわれた家。
  • Luci etiam Lentuli et nonnullorum tabernacula protecta hedera,
  • multaque praeterea, quae nimiam luxuriam et victoriae fiduciam designarent,
    • さらに加えて、節度に欠けるぜいたくルクスリアや勝利への自信フィドゥキアを示す多くのものを(見ることができた)。
      (訳注1:nimius, -a, -um 「過度の、節度を欠いた」)
      (訳注2:luxuria 「植物が生い茂ること」あるいは「ぜいたく」)
      (訳注3:dēsignāre 「示す」)
  • ut facile existimari posset nihil eos de eventu eius diei timuisse,
    • その結果、彼らがその日の首 尾エウェントゥムについて何ら心配していないことが、たやすく判断され得たのだ。
  • qui non necessarias conquirerent voluptates.
    • 連中は、必要のない悦楽ウォルプタスを追求していたのだから。
      (訳注1:conquīrere 「探し求める、追求する」)
      (訳注2:voluptās 「悦び、快楽」)


   ぜいたくなポンペイウス勢に比べて、カエサル勢は窮乏していた

  • ②項 At hi miserrimo ac patientissimo exercitui Caesaris [[luxuriam obiciebant,
    • それに対して、彼らは、カエサルの この上なく悲惨で忍耐強い軍隊に対して、ぜいたくさを責めていたのだ。
      (訳注1:miser 「みじめな、悲惨な」 > 最上級 miserrimus
      (訳注2:patī 「耐える」 > 現在分詞 patiens 「忍耐強い」 > 最上級 patientissimus
      (訳注3:ōbicere 「責める、非難する」)
  • cui semper omnia ad necessarium usum defuissent.
    • 常に、必需品のすべてを欠けていた者たち(=カエサル勢)に対して。
      (訳注:deesse 「欠けている」 > 完了形 dēfuisse
ローマ軍の陣営カストラの概略図(再掲)。
(1) Principia(本営)
(2) Via Praetoria(正門道)
(3) Via Principalis(主道)
(4) Porta Principalis Dextra(右の脇門)
(5) Porta Praetoria(正門)
(6) Porta Principalis Sinistra(左の脇門)
(7) Porta Decumana(裏門)


   ポンペイウスが、ラリサへ逃走する

  • ③項 Pompeius, iam cum intra vallum nostri versarentur,
    • ポンペイウスは、我が方 (カエサル勢)防柵ウァッルムの内側を歩き回っていたときには、すでに、
      (訳注:versārī 「動き回る」)
  • equum nactus,
    • 馬を手に入れて、
  • detractis insignibus imperatoriis,
    • 将 軍インペラトル記章インシグネを取り外し、
      (訳注1:dētrahere 「引き離す、取り去る」 > 完了受動分詞 dētractus
      (訳注2:īnsigne 「記章」)
  • decumana porta se ex castris eiecit
    • 裏門にて陣営から飛び出して、
      (訳注:ēicere 「投げ出す、追い出す」 > sē ēicere 「飛び出す」)
  • protinusque equo citato Larisam contendit.
    • ただちに、馬を駆り立ててラリサへ急いだ。
      (訳注:citāre 「動かす、駆り立てる」 > 完了受動分詞 citātus


   ポンペイウスが同伴者たちとともに海辺に着き、船出する

  • ④項 Neque ibi constitit,
    • (ポンペイウスは)そこに、とどまることはなかった
  • sed eadem celeritate,
    • けれども、同じ(逃亡の)速さで、
  • paucos suos ex fuga nactus,
    • 逃亡中に、味方のわずかな者たちと出くわして
  • nocturno itinere non intermisso
    • 夜間の行程も中断せずに、
  • comitatu equitum XXX
    • 30騎の騎兵に付き従われて、
      (訳注:comitāre 「随行する、付き従う」 > 完了受動分詞 comitātus
  • ad mare pervenit
    • 海辺に到達した。
  • navemque frumentariam conscendit,
    • そして、穀物船に乗船した。


   ポンペイウスが、真っ先に敗走した騎兵隊らについて嘆く

  • saepe, ut dicebatur, querens
    • (以下のように)たびたび不平をこぼしている、と言われていたものだ。
      (訳注:querī 「不平を言う、嘆く」 > 現在分詞 querēns
  • tantum se opinionem fefellisse,
    • これほどにも(勝利の)予想オピニオが自分(ポンペイウス)を裏切って、
      (訳注1:tantum ~, ut ・・・ 「・・・ほど~」「これほど~ので、・・・だ」)
      (訳注2:fallere 「(期待を)裏切る、失望させる」 > 完了・能動・不定法 fefellisse
        この部分は、86節⑤項にて、ポンペイウスの言葉として語られた
          ne suam neu reliquorum opinionem fallerent
          自分 (ポンペイウス) やほかの者たちの(勝利の)予想を裏切らないように
        という言葉にカエサルが対応させたのだと思われる。)
  • ut a quo genere hominum victoriam sperasset,
    • あの類いのやから勝利ウィクトリアを期待していたが、
  • ab eo initio fugae facto paene proditus videretur.
    • 奴らによって、敗走フガ契機イニティウムをつくられることにより、ほとんど寝返りを打たれたと思われたほどだ
      (訳注:prōdere 「見捨てる、裏切る」 > 完了受動分詞 prōditus


(訳注:カエサルの記述では、ポンペイウスは陣営から馬で逃走して海岸に着き、穀物船に乗ったとする。
    これに対して、帝政期のギリシア人史家プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の73 では、次のように伝えている。
      ポンペイウスは、陣営を離れてほどなく馬を捨て、わずかな随行者たちと徒歩で進んだ。
      ラリサを過ぎてテンペーの渓谷を下って海岸に出た。その晩は、漁師の小屋で休息し、早朝に河船に乗り込んだ。
      海岸を小舟で進むうち、顔見知りのペティキウスというローマ人の荷物船の出帆に出くわしたので、乗せてもらって沖に出た。
      ①項で前述の前執政官L・レントゥルス・クルス、右翼を指揮したといわれる 83節で既述のプブリウス・レントゥルス・スピンテル、
      36節57節で既述のファウォニウス M. Favonius 、および4節で既述のガラティア王デイオタルス Deiotarus らが随行したという。
    村川堅太郎 編『プルタルコス英雄伝 下』(ちくま学芸文庫) などを参照。)

97節[編集]

カエサル勢が、6マイル北の山中に立てこもったポンペイウス勢を包囲し、水を絶って、投降に追い込む

  • ①項 Caesar castris potitus
    • カエサルは(ポンペイウスの)陣営を手中にして、
  • a militibus contendit,
    • 兵士たちに(以下のように)要求した。
      (訳注:contendere 「要求する、懇願する」)
  • ne in praeda occupati reliqui negotii gerendi facultatem dimitterent.
    • 戦利品プラエダに夢中になって、ほかの務めネゴティウムをやり遂げる機会をのがさぬように、と。
      (訳注:occupāre 「占める」「夢中にさせる」 > 完了受動分詞 occupātus 「夢中にされた」)



   ポンペイウス勢が、飲み水を求めて別の山を目指す

  • Pompeiani, quod is mons erat sine aqua,
    • ポンペイウス勢は、その山は水を欠いていたので、
  • diffisi ei loco
    • その地に失望して、
      (訳注:diffīdere 「望みを失う」 > 完了受動分詞 diffīsus
  • relicto monte,
    • 山を後にして、
  • universi iugis eius
    • 総勢が、その尾根を通って
  • Larisam versus <se> recipere coeperunt.
    • ラリサに向けて、引き上げ始めた。
      (訳注:<se> は写本にはないが、挿入提案されている。)


   カエサル勢が、ポンペイウス勢を先回りして迎え撃とうとする

  • ③項 Qua re animadversa,
    • その事に気づくと、
  • Caesar copias suas divisit
    • カエサルは、配下の軍勢を分割して、
  • partemque legionum in castris Pompei remanere iussit,
    • 軍団レギオの一部に、ポンペイウスの陣営に残留することを命じ、
  • partem in sua castra remisit,
    • 別の一部に、自分(カエサル)の陣営に送り返して、
  • IIII secum legiones duxit
    • 4個軍団を自分とともに統率し、
  • commodioreque itinere Pompeianis occurrere coepit
    • より有利な道筋から、ポンペイウス勢を 要撃[1]することを始め、
      (訳注:commodus 「有利な、好都合な」 > 比較級 commodior
  • et progressus milia passuum VI
    • 6ローママイル(=約9km)前進して、
  • aciem instruxit.
    • 戦列アキエスを整えた。


   山中で立ち往生するポンペイウス勢を、カエサル勢が水を絶って包囲しようとする

  • ④項 Qua re animadversa,
    • その事に気づくと、
  • Pompeiani in quodam monte constiterunt.
    • ポンペイウス勢は、とある山に立ち止まった。
  • Hunc montem flumen subluebat.
    • 川が、この山のふもとを流れていた
      (訳注:subluere 「~のふもとを流れる」)
  • Caesar milites cohortatus [est],
    • カエサルは、兵士たちに発破はっぱをかけて、
  • etsi totius diei continenti labore erant confecti
    • 一日中 間断なく働いたことで、疲弊しており、
      (訳注:etsi ~, tamen ・・・ 「~としても、それでも・・・」)
  • noxque iam suberat,
    • すでに夜が差し迫っていたとしても
  • tamen munitione flumen a monte seclusit,
    • それでも塁壁ムニティオにより、川を山から隔離して、
  • ne noctu aquari Pompeiani possent.
    • ポンペイウス勢が、夜中に給水できないようにした。


   ポンペイウス勢が、降伏について交渉しようとする

  • ⑤項 Quo perfecto opere,
    • その堡塁オプスが完成すると、
  • illi de deditione missis legatis agere coeperunt.
    • 彼ら (ポンペイウス勢) は、使節たちを遣わして、降伏について協議し始めた。
  • Pauci ordinis senatorii, qui se cum iis coniunxerant,
    • 元老院議員階級の若干の者たちが、彼ら(使節たち)と合流していたが、
  • nocte fuga salutem petiverunt.
    • 夜間に逃亡することで、身の安全を求めていた。

98節[編集]

カエサルが、投降したポンペイウス勢の将兵たちを助命して、ラリサに赴く

  • ①項 Caesar prima luce
    • カエサルは、明け方に、
  • omnes eos, qui in monte consederant,
    • 山中に野営していた者たち全員に、
  • ex superioribus locis in planitiem descendere
    • 高地から平原に降りて来ることと、
  • atque arma proicere iussit.
    • 武器を捨てること、を命じた。


  • ②項 Quod ubi sine recusatione fecerunt
    • (彼らは)拒否することなしに、そうするや、
  • passisque palmis proiecti ad terram
    • 手のひらを広げて、地面にひざまずいて
      (訳注1:pandere 「広げる、伸ばす」 > 完了受動分詞 passus
      (訳注2:palma 「手のひら」)
      (訳注3:prōicere 「投げ出す」 > 完了受動分詞 prōiectus 「投げ出された」)
  • flentes ab eo salutem petiverunt,
    • 泣きながら、彼 (カエサル) に救済を求めた。
  • consolatus consurgere iussit
    • (カエサルは)慰めて、立ち上がることを命じ、
      (訳注1:cōnsōlārī 「慰める」 > 完了受動分詞 cōnsōlātus
      (訳注2:cōnsurgere 「立ち上がる」)
  • et pauca apud eos de lenitate sua locutus, quo minore essent timore,
    • (投降者たちの)恐怖が軽減されるべく、彼らの面前で、(カエサル)自らの寛大さについて、いくらか話して、
  • omnes conservavit militibusque suis commendavit,
    • 全員を保護して、(カエサル)配下の兵士たちに(以下のように指示して)ゆだねた。
  • ne qui eorum violaretur,
    • 彼らの誰も暴行されないように
      (訳注1:nē quī < nē + aliquī
      (訳注2:violāre 「暴力を振るう」)
  • neu quid sui desiderarent.
    • (投降者たちが)自分たちの何物も失わないように、と。
      (訳注:nē quod < nē + aliquod


  • ③項 Hac adhibita diligentia
    • このような注意深さディリゲンティアで処遇すると、
      (訳注:adhibēre 「扱う、処遇する」 > 完了受動分詞 adhibitus
  • ex castris sibi legiones alias occurrere
    • ほかの諸軍団に陣営から、自分のところへやって来ることを(命じ)、
  • et eas quas secum duxerat, invicem requiescere atque in castra reverti iussit
    • 自分と一緒に率いて来た軍団には、交代して、陣営に帰還して休息することを、命じた、
  • eodemque die Larisam pervenit.
    • (カエサル自身は)同日に、ラリサへ到着した。

99節[編集]

カエサル勢の戦果。古参兵クラスティヌスの戦死。ドミティウス・アヘノバルブスの敗死。

  • ①項 In eo proelio
    • その戦闘において、
  • non amplius ducentos milites desideravit,
    • (カエサルは)兵士たち200名ほどしか失わなかった
  • sed centuriones, fortes viros, circiter XXX (trecentos) amisit.
    • が、百人隊長ケントゥリオである勇敢な歩兵たち、約300名を失った。
      (訳注:vir 「男」 > 複数 virī 「男たち」あるいは「兵士(歩兵)たち」)


   再召集された古参兵クラスティヌスの活躍と最期

  • ②項 Interfectus est etiam fortissime pugnans Crastinus,
    • この上なく勇敢に戦っていたクラスティヌスさえも、戦死した。
  • cuius mentionem supra fecimus,
    • ── その者には、前に言及したのだが ──、
      (訳注:91節で述べられている。)
  • gladio in os adversum coniecto.
    • 長 剣グラディウスを口の中に逆さに放り込まれて(のことだった)。
      (訳注1:ōs 「口」あるいは「顔」)
      (訳注2:cōnicere 「投げ込む」 > 完了受動分詞 coniectus


  • ③項 Neque id fuit falsum, quod ille in pugnam proficiscens dixerat.
    • (クラスティヌス) が戦いに出発するときに言っていたことは、法螺ほらではなかった。
  • Sic enim Caesar existimabat
    • 確かに、カエサルが(以下のように)評価していた限りにおいては
  • eo proelio excellentissimam virtutem Crastini fuisse
    • その戦闘でのクラスティヌスの武勇ウィルトゥスは、誠にあっぱれなものであったし、
  • optimeque eum de se meritum iudicabat.
    • (クラスティヌス) は、自分 (カエサル) に最も良く貢献した、と(カエサルは)洞察していたのだ。
      (訳注1:bene 「良く」 > 最上級 optimē 「最も良く」)
      (訳注2:merērī de ~ 「~に貢献する」 > 完了分詞 meritus de ~)


   ポンペイウス勢の戦死者数と、カエサル勢が奪取した軍旗の数

  • ④項 Ex Pompeiano exercitu circiter milia XV cecidisse videbantur,
    • ポンペイウスの軍隊のうち、約15,000名がたおれた、と見られていた。
      (訳注:プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の72 および「カエサル」の章46 では、
       カエサル勢に従軍していた ガイウス・アシニウス・ポッリオ Gaius Asinius Pollio が書き残したこととして、次のように伝える。
          ローマ市民から成る兵士(軍団兵)で戦死した者は6000名以上ではなく、
          そのほか(9000名)は陣営が占領される際に殺された奴隷であった。
       なお、アシニウス・ポッリオの著作は現存していない。
       さらに、ドイツのローマ史家ゲルツァー[2]が注記しているように、カエサルは93節⑦項で 弓兵と投石兵の全員を殺したと述べている。
       弓兵や投石兵は、ローマ市民ではなかったので、容赦なく皆殺しにされたであろう。)
  • sed in deditionem venerunt amplius milia XXIIII
    • けれども、24,000名より多くの者たちが降伏に至った。
  • ── namque etiam cohortes, quae praesidio in castellis fuerant, sese Sullae dediderunt ──,
    • ── なぜなら、城砦カステッルムにて守備に就いていた諸歩兵大隊コホルスでさえも、スッラに降伏していたからだが ──、
  • multi praeterea in finitimas civitates refugerunt,
    • さらに加えて、多くの者たちが、近隣の諸都市に逃避した。
  • signaque militaria ex proelio ad Caesarem sunt relata CLXXX et aquilae VIIII.
    • 戦場からカエサルのもとへ、軍旗180本と鷲の徽章9本がもたらされた。
      (訳注:signum mīlitāre 「軍旗」は、歩兵小隊ケントゥリアごとの旗で、
          aquila 「鷲の徽章」は、軍団ごとの旗。)


   ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブスの最期

  • ⑤項 L. Domitius ex castris in montem refugiens,
  • cum vires eum lassitudine defecissent,
    • 体力が疲労により彼を消耗させていたので、
  • ab equitibus est interfectus.
    • 騎兵たちによって殺害された。
      (訳注:ルキウス・ドミティウス・アヘノバルブス Lucius Domitius Ahenobarbus は、
          かつてガリアのアッロブロゲス族が起こしたローマに対する反乱を鎮圧して属州ガリア・トランサルピナを設置したり
          ドミティア街道を建設した「ガリア征服者」グナエウス・ドミティウス・アヘノバルブス の孫であった。
          第1巻6節⑤項で 元老院は、ガリア征服者の孫であり 反カエサルの強硬派でもあるドミティウスをガリア総督に任命した。
          内戦が始まると、ドミティウスはコルフィニウムに立てこもるが、あっけなくカエサルに降伏した(第1巻16節~23節)。
          ドミティウスは逃れてマッシリアを頼り、提供された艦隊を率いて海戦を戦うが敗れる(第1巻56節~58節、第2巻3節~7節)。
          マッシリアが敗色濃厚になると彼は逐電し、ポンペイウスのもとで左翼を率いてパルサロスの戦いに臨んだが、三度 敗れた。
          カエサルにとって軍事的には大した敵ではなかったとはいえ、カエサルを倒してガリア総督になろうと何度も執念を燃やした
          ドミティウスに対して、カエサルも攻撃の筆をゆるめなかったのであろう。)

両軍の南イタリア周辺での小競り合い[編集]

100節[編集]

ブルンディシウム港をめぐる 元老院派ラエリウス と カエサル派ウァティニウス の攻防


   元老院派のラエリウスの艦隊が、ブルンディシウム港へ来襲する

  • ①項 Eodem tempore
    • 同じ時期に、
  • D. Laelius cum classe ad Brundisium venit
    • デキムス・ラエリウスは、艦隊とともに、ブルンディシウムの辺りにやって来て、
      (訳注:5節③項で、デキムス・ラエリウス Decimus Laelius は、アシアの船団を統率していた、と述べられている。)
  • eademque ratione, qua factum a Libone antea demonstravimus,
    • リボによってなされたと前述したのと同じやり方で、
      (訳注:23節を参照。リボは港の向かいの島を占領した。)
  • insulam obiectam portui Brundisino tenuit.
    • ブルンディシウムの港に面している島を占拠した。
      (訳注:ōbicere ~[与格] 「(受動で)~に向かい合う、~に面する」 > 完了受動分詞 obiectus


   港を防衛するカエサル派のウァティニウスが、ラエリウスの五段櫂船などを港の水路でからめ取る

  • ②項 Similiter Vatinius, qui Brundisio praeerat,
    • 同じように、ブルンディシウムを統率していたウァティニウスは、
      (訳注:プブリウス・ウァティニウス Publius Vatinius はカエサルの副官で、
          19節ではデュッラキウムに近いアプスス川岸でポンペイウス勢との和平交渉に当たっていたが、
          ポンペイウス艦隊の警戒が厳しい中で、どうやってイタリアに渡航できたのか、カエサルは記していない。)
  • tectis instructisque scaphis
    • 小形船スカファを(甲板で)おおい、かつ装備して、
  • elicuit naves Laelianas
    • ラエリウスの船団を誘い出して、
  • atque ex his longius productam unam quinqueremem et minores duas
    • これら(の船団)のうちから、より遠くへ誘い出された五段櫂船クィンクェレミス1隻とより小形の2隻を
      (訳注:fr:quinqueremis 五段櫂船)
      (訳注:prōdūcere 「連れて行く、連れ出す」「さらに進ませる、誘う」 > 完了受動分詞 prōductus
  • in angustiis portus cepit
    • 港の隘路において とりこにした。
  • itemque per equites dispositos
    • さらに、配置された騎兵たちによって、
  • aqua prohibere classiarios instituit.
    • 船員たちに対して、水(の補給)を妨げることにとりかかった。
      (訳注:classiāriī(属格 classiārōrum) 「船員」または「水兵」)


   ラエリウスが、イッリュリア側から水を運んで補給し、デュッラキウム周辺にとどまろうとする

  • ③項 Sed Laelius
    • しかし、ラエリウスは、
  • tempore anni commodiore usus ad navigandum
    • 航海するために より有利な時季を役立てて、
  • onerariis navibus Corcyra Dyrrachioque aquam suis subportabat
  • neque a proposito deterrebatur
    • 作戦目的プロポシトゥムから思いとどまらせられなかったし、
      (訳注:neque ~ neque ・・・ 「~でもないし、・・・でもない」)
      (訳注:dēterrēre 「思いとどまらせる」)
  • neque ante proelium in Thessalia factum cognitum
    • テッサリアにおいてなされた戦闘が知られる以前には、
  • aut ignominia amissarum navium
    • 船団を失ったという恥 辱イグノミニアによって、
      (訳注:āmittere 「失う」「放棄する」 > 完了受動分詞 āmissus
  • aut necessariarum rerum inopia
    • あるいは、必需品の欠乏によって、
  • ex portu insulaque expelli potuit.
    • (ブルンディシウムの)港や(対岸の)島から、追い払われ得なかった。

101節[編集]

南部イタリアとシキリア島の地図。
カッシウスが最初に攻めたメッサナは シキリア(島)の東の突端にあり、次に攻めたウィボメッサナ海峡を隔てたイタリアのブルッティウム半島(ブルッティイ族居住地;現在のカラブリアにある。
ピッチ(pitch )は、植物などから採取される黒く粘性の高い液体。
麻くず(tow

元老院派カッシウスの艦隊が、シキリア島とブルッティウムのカエサル派艦隊を襲撃する

  • ①項 Isdem fere temporibus
    • ほぼ同じ時期に、
  • Cassius cum classe Syrorum et Phoenicum et Cilicum in Siciliam venit,
  • et cum esset Caesaris classis divisa in duas partes,
    • カエサルの艦隊は二つの方面に分割されていて、
  • dimidiae parti praeesset P. Sulpicius praetor <ad> Vibonem [ad fretum],
    • 半分は、[海峡の近辺の]ウィボ<の辺りに>法務官プラエトルプブリウス・スルピキウスが統率していて、
      (訳注:下線部は、写本では Vibonem ad fretum 「海峡の近辺のウィボに」だが、
          <ad> Vibonem 「ウィボの辺りに」と修正提案されている。
           確かに、ウィボはメッサナ海峡から少し離れているが、
          カエサルから見れば近辺だったかも知れない。)
  • dimidiae M. Pomponius ad Messanam,
    • (別の)半分は、マルクス・ポンポニウスがメッサナの辺りで(統率していた)。
  • prius Cassius ad Messanam navibus advolavit, quam Pomponius de eius adventu cognosceret,
    • カッシウスは、ポンポニウスが彼の到来について知るようになるより前にメッサナへ船団を襲撃した。
      (訳注:prius ~, quam ・・・ 「・・・より前に~」)


   カッシウスの艦隊が、メッサナにいたカエサル派ポンポニウスの艦隊を急襲する

  • ②項 perturbatumque eum nactus nullis custodiis neque ordinibus certis,
    • (メッサナのポンポニウス) が動転していて、番 兵クストディアもなく、(船団の)確かな隊列もないところに遭遇して、
  • magno vento et secundo
    • 強い順風によって、
  • conpletas onerarias naves taeda et pice et stuppa reliquisque rebus, quae sunt ad incendia,
  • in Pomponianam classem immisit
    • ポンポニウスの艦隊に突進させて、
  • atque omnes naves incendit XXXV,
    • 35隻の全船団を焼き討ちしたが、
  • e quibus erant XX constratae.
    • それらのうち、20隻は、甲板が張られていた。
      (訳注:cōnsternere 「屋根をく」en: thatch > 完了受動分詞 cōnstrātus屋根がかれた」)


   かろうじて防戦しているメッサナのポンポニウスのもとへ、カエサル勝利の報が届く

  • ③項 Tantusque eo facto timor incessit,
    • それ(=襲撃)がなされることにより、たいへんな恐怖心が降りかかったので
      (訳注:tantus ~, ut ・・・ 「・・・ほど、たいへんな~」「たいへんな~ので、・・・」)
  • ut cum esset legio praesidio Messanae, vix oppidum defenderetur,
    • (1個)軍団がメッサナにいたのに、やっとのことで城市が守られていたほどだった
  • et nisi eo ipso tempore quidam nuntii de Caesaris victoria per dispositos equites essent adlati,
    • まさにその時に、(各地に)分散された騎兵たちを通じて カエサルの勝利についての何らかの知らせがもたらされなかったら
      (訳注:adferre (= afferre) 「もたらす、運んで来る」 > 完了受動分詞 adlātus
  • existimabant plerique futurum fuisse, uti amitteretur.
    • (メッサナの城市は)失われてしまったということになるであろう、と大半の者は判断していたのだ。


   カッシウスが、ブルッティウム半島(現カラブリア)のウィボにいたカエサル派スルピキウスの艦隊へ矛先を転じる
     (訳注:この項の部分は、写本のテキストに不満な校訂者たちによってさまざまな修正提案が加えられている。)

  • ④項 Sed opportunissime nuntiis adlatis oppidum fuit defensum.
    • けれども、まことに好都合なときに、(カエサル戦勝の)知らせがもたらされて、城市は守られた。
      (訳注1:opportūnē 「都合良く、折り良く、時宜にかなって、好都合なときに」 > 最上級 opportūnissimē )
      (訳注2:adferre (= afferre) 「もたらす、運んで来る」 > 完了受動分詞 adlātus
  • Cassiusque ad Sulpicianam inde classem profectus est Vibonem,
    • カッシウスは、その場所から、ウィボのスルピキウスの艦隊の方へ出発した。
  • adplicatisque nostri ad terram navibus [propter eundem timorem,]
    • [同じような恐怖心から]我が方は陸地に船団を接岸したので、
      (訳注1:adplicāre (= applicāre) 「(船を)接岸させる、上陸させる」 > 完了受動分詞 adplicātus
      (訳注2:[ ]内は、写本にあるが、削除提案されている。
  • pari atque antea ratione egerunt;
    • (カッシウスは)前回と同じ方法を実施した。
  • Cassius secundum nactus ventum
    • カッシウスは、順風を得て、
  • onerarias naves circiter XL <in nostras naves> praeparatas ad incendium immisit,
    • 引火物の準備をした約40隻の貨物船団を<我が方の船団に>突進させて、
      (訳注:< >内は、写本にはないが、挿入提案されている。)
  • et flamma ab utroque cornu comprensa naves sunt combustae quinque.
    • 火炎フランマが両側から船団を包んで、5隻が焼き尽くされた。
      (訳注1:comprendere (= comprehendere) 「包む、つかむ」 > 完了受動分詞 comprensus 
      (訳注2:combūrere 「焼き尽くす」 > 完了受動分詞 combustus
ローマ軍の五段櫂船(quinquerēmis)の想像画。


   古参の傷病兵たちが、カッシウスに一矢を報いる

  • ⑤項 Cumque ignis magnitudine venti latius serperet,
    • 火が猛烈な風によって より広範に広がっていたときに、
      (訳注:lātē 「広く」 > 比較級 lātius
  • milites, qui ex veteribus legionibus erant relicti praesidio navibus ex numero aegrorum,
    • 古参の諸軍団のうち、傷病者の集団ヌメルスから船団の守備隊として残留させられていた兵士たちが、
  • ignominiam non tulerunt,
    • 恥辱に耐えられず、
  • ⑥項 sed sua sponte naves conscenderunt
    • しかし自発的に船団に乗り込んで、
  • et a terra solverunt
    • 陸地から船出して、
      (訳注:nāvem solvere 「船(のともづな[3])を解く」=「出帆する」)
  • impetuque facto in Cassianam classem
    • カッシウスの艦隊に突撃し、
  • quinqueremes duas, in quarum altera erat Cassius, ceperunt;
    • 五段櫂船クィンェレミス2隻を ── それらの一方にはカッシウスがいたのだが ── を捕らえた。
  • sed Cassius exceptus scapha refugit;
    • けれども、カッシウスは小舟に引き入れられて、逃避した。
  • praeterea duae sunt deprensae triremes.


   カエサルの勝利を知ったカッシウスの艦隊がイタリアから立ち去る

  • ⑦項 Neque multo post de proelio facto in Thessalia cognitum est,
    • 少し後で、テッサリアでなされた戦闘について、知られるようになったので、
  • ut ipsis Pompeianis fides fieret;
    • ポンペイウス勢の当人たちにとっても確証フィデスが生まれていた。
映画「ジュリアス・シーザー」(Julius Caesar)において、
同志のカスカ(左)と カエサル暗殺を謀議するカッシウス(右)。
イギリスの名優ジョン・ギールグッドがカッシウスを演じた。
  • nam ante id tempus
    • なぜなら、その時点より以前には、
  • fingi a legatis amicisque Caesaris arbitrabantur.
    • カエサルの副官レガトゥスたちや盟友アミクスたちによって捏造ねつぞうされたことだと思われていたのだ。
  • Quibus rebus cognitis
    • それらの事態を知ると、
  • ex his locis Cassius cum classe discessit.
    • カッシウスは、艦隊とともに当地から去った。


(訳注:『内乱記』には、3人のカッシウスが登場して紛らわしい。
 クィントゥス・カッシウス・ロンギヌス Quintus Cassius Longinus は、第2巻21節で、カエサルから属州ヒスパニア・ウルテリオルの統治を任された。
 ルキウス・カッシウス・ロンギヌス Lucius Cassius Longinus は、34節~36節で、カエサルの副官としてテッサリアを帰順させるために派遣されたが、スキピオの来襲を恐れてギリシア西部へ逃げていた。
 ガイウス・カッシウス・ロンギヌス Gaius Cassius Longinus(ルキウスの兄、クィントゥスの従兄弟)が有名なのは、カエサル暗殺の首謀者としてである。パルサルスの戦いでカエサルが勝利したことが知られると、カッシウスはカエサルに降伏してゆるされた。ポンペイウスの幕僚としてパルサルスで敗れたマルクス・ユニウス・ブルトゥス Marcus Iunius Brutus もカエサルに投降するが、未亡人である実母セルウィリアがカエサルの愛人となっていたため(彼が敵将として『内乱記』に登場しないのは愛人の子だからか?)、ゆるされて、カエサルの側近となった。
 カッシウスとブルトゥスはともにカエサルから首都ローマの法務官プラエトルに任じられるほど厚遇されたが、内戦が終結してカエサルの独裁体制が強まると、共和制(実質的には寡頭制)を信奉するカッシウスは、同僚ブルトゥス(カエサルに滅ぼされた叔父小カトーの娘ポルキアを妻にしていた)夫妻を同志に引き入れ、BC44年の3月14日に首都ローマの元老院の議場でカエサルを刺殺した。
 カッシウスとブルトゥスはローマから逃れたが、マケドニアを拠点に東方属州を制圧し、エジプトなど同盟国の支援も得て8万の大軍勢を集めたが、マルクス・アントニウスとカエサルの大甥オクタウィアヌスの同盟軍とマケドニアのピリッポイの近くで対戦して、敗死した(ピリッピの戦い)。)

ポンペイウスのエジプトへの逃避行[編集]

102節[編集]

ポンペイウスの船団が、カエサルの追及を避けて、レスボス島やキュプロス島へ逃げ回る

  • ①項 Caesar omnibus rebus relictis
    • カエサルは、すべての事柄を放置しても、
  • persequendum sibi Pompeium existimavit, quascumque in partes se ex fuga recepisset,
    • (ポンペイウスが)どのような地域に敗走のゆえに撤退していたとしても、自分(カエサル)にとってポンペイウスは追撃されるべきだ、と判断した。
      (訳注:quīcumque, quaecumque, quodcumque 「どのような~でも」 > 女性・複数・対格 quāscumque)
  • ne rursus copias comparare alias et bellum renovare posset,
    • (ポンペイウスが) 再び、別の軍勢を召集すること、戦争を再開することができないように。
  • et quantumcumque itineris equitatu efficere poterat, cotidie progrediebatur
    • 騎兵隊によりどれほどの道のりを完遂することができたとしても、毎日、前進していて、
      (訳注:quantuscumque, quantacumque, quantumcumque 関係形容詞 「どれほどの程度でも」 > 中性・単数・対格 quantumcumque)
  • legionemque unam minoribus itineribus subsequi iussit.
    • 1個軍団に、より短い道のりで追随することを命じた。
アンピポリスἈμφίπολιςAmphipolis)、すなわち現在のアンフィポリ(Αμφίπολη)の位置。


   アンピポリスに、ポンペイウスの名で、兵隊徴募の布告が出される

  • ②項 Erat edictum Pompei nomine Amphipoli propositum,
    • アンピポリスでは、ポンペイウスの名義で、布 告エディクトゥムが公示されていた。
      (訳注1:ēdictum 「布告、宣言、命令」)
      (訳注2:prōpōnere 「公表する」 > 完了受動分詞 prōpositus
  • uti omnes eius provinciae iuniores, Graeci civesque Romani, iurandi causa convenirent.
    • その属州の若年の者たち、ギリシア人もローマ市民も皆、(兵士として忠誠を)誓約するために結集すべし、と。
      (訳注1:iuvenis 「若い」 > 比較級 iūnior 「より若い(者)」)
      (訳注2:Graecus, Graecī 「ギリシア人」)
      (訳注3:cīvis Rōmānus 「ローマ市民」 > 複数・主格 cīvēs Rōmānī


  • ③項 Sed utrum avertendae suspicionis causa Pompeius proposuisset,
    • だが、ポンペイウスが企図していたのが、(カエサルの)推 測ススピキオらす目的で、
      (訳注:utrum ~, an ・・・ 間接選択疑問文「~と・・・のいずれなのか」)
  • ut quam diutissime longioris fugae consilium occultaret,
    • (ポンペイウスらの)より遠方への逃亡の計画コンシリウムを、できるだけ長く隠すためなのか、
      (訳注:diū 「長く」 > 最上級 diūtissimē > quam diūtissimē 「できるだけ長く」)
  • an novis dilectibus,
    • あるいは、新たな徴募により、
      (訳注:dīlēctus 「徴募」)
  • si nemo premeret, Macedoniam tenere conaretur,
    • もし誰も押しとどめなければ、マケドニアを保持し続けることを企てていたのか、
  • existimari non poterat.
    • 判定できかねるものであった。


   ポンペイウスが、アンピポリスに投錨するが、カエサルの接近を恐れて、レスボス島へ逃避する

レスボス島Λέσβος ; Lesbos)と中心地ミュティレネΜυτιλήνη ; Mytilene ; Mytilenae)の位置図。
 女性への愛の詩を多く残した女性詩人サッポーの出身地であるため、「レスボス島民」を指す英語 Lesbian から、女性同性愛者を lesbianレズビアン) と呼ぶようになった。島民たちはこのことをひどく嫌がっており、lesbian という呼称を使わないように呼びかけている。
(訳注:カエサルの記述では、カエサル接近を恐れたポンペイウスが、アンピポリスからミュティレナエに逃げたとしている。
    これに対して、プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の66と74~75 では、次のように伝えている。
     ポンペイウスは、新婚の妻コルネリア(スキピオの娘 Cornelia Metella)と次男セクストゥスを、戦場から離れたこの島に
     秘かに送り届けていた。デュッラキウムの戦いで夫が勝ったと思っていたコルネリアは、今度の敗戦を知らされると、
     前夫プブリウス・クラッススがパルティアで戦死した後に自害していれば、「大」ポンペイウスに災いをもたらさなかった
     のにと嘆いた。そして、なぐさめ合う夫婦の情愛が描かれる。
ポンペイウスの逃亡路(赤線)とカエサルの追跡路(紫線)
(訳者が作成)。
ポンペイウスは、パルサルス近くの戦場からラリサLarissa)を通過して海岸に出て、乗船してアンピポリス(Amphipolis)に停泊し、レスボス島ミュティレナエMytilenae ; Mytilene)にて妻子と再会し、そこからパンピュリアPamphylia)地方のアッタレアAttalea)に到達。そこからキリキアCilicia)経由でキュプルス島Cyprus)へ渡り、エジプト(Aegyptus)のペルシウム(Pelusium)へ向かう。


   ポンペイウスの船団が、小アジアのキリキア属州から、キュプルス島へ回航する

(訳注:プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の76 では、
    次のように伝えている。
     ポンペイウスは、レスボス島で妻子を乗船させると、
     水や食糧の補給以外はどこにも寄港せず、
     パンピュリアPamphylia)地方のアッタレアAttalea)に到達。
     そこへ、キリキアCilicia)から数隻の三段櫂船が出迎えに来て、兵士を徴募して、60名の元老院議員が集まった。
     エジプトへ行くことが決まると、セレウキア市(現在のトルコのシリフケ)から提供された三段櫂船に乗船して、
     キュプルス島Cyprus)から出発したという。)


   シリアのアンティオキア住民とローマ人たちが、ポンペイウス派の者たちを締め出そうとする

  • ⑥項 Ibi cognoscit
    • そこにて、(ポンペイウスが)知ることには、
  • consensu omnium Antiochensium civiumque Romanorum, qui illic negotiarentur,
    • アンティオキア(の住民たち)と、その地で商取引していたローマ市民たちの合 意コンセンススにより、
      (訳注1:Antiochensis = Antiochēnus 「アンティオキアの」)
      (訳注2:cōnsēnsus 「合意、一致」 > 奪格 cōnsēnsū 「合意により、満場一致で」)
  • arma capta esse excludendi sui causa
    • 自分 (ポンペイウス) を排除するために武器を取ること(が決議されたこと)、
      (訳注:exclūdere 「締め出す、排除する」 > 動形容詞 exclūdendus
  • nuntiosque dimissos ad eos, qui se ex fuga in finitimas <civitates> recepisse dicerentur,
    • および、近隣<の諸都市>に、敗走のゆえに退避していた と言われていた者たちのところへ、伝令たちが遣わされて、
  • ne Antiochiam adirent:
  • id si fecissent, magno eorum capitis periculo futurum.
    • もし、そうしたならば、彼らの生命カプトを大いなる危険にさらすであろう(と伝えた)。


   ロドゥス島に着いた両レントゥルスらも、島民から退去を強いられる

  • ⑦項 Idem hoc
    • これと同じことが、
  • L. Lentulo, qui superiore anno consul fuerat,
  • et P. Lentulo consulari ac nonnullis aliis acciderat Rhodi;
    • 元執政官コンスラリスプブリウス・レントゥルスや、ほかの少なからぬ者たちに、ロドゥス島で生じた。
      (訳注1:cōnsulāris 「前執政官、元執政官」)
      (訳注2:プブリウス・コルネリウス・レントゥルス・スピンテル Publius Cornelius Lentulus Spinther は、BC57年の執政官。
          コルフィニウムに立てこもるが、カエサルに降伏して許され(第1巻21節23節)、
          パルサルスの決戦ではポンペイウス勢の右翼を指揮していたとされる。)
  • qui cum ex fuga Pompeium sequerentur atque in insulam venissent,
    • その者たちは、敗走のゆえにポンペイウスの後を追っていて、(ロドゥス)島に到達していたのだが、
  • oppido ac portu recepti non erant
    • 城市や港に受け入れられず、
  • missisque ad eos nuntiis, ut ex his locis discederent,
    • 彼らのもとへ、当地から立ち去るように、と伝令たちが遣わされて、
  • contra voluntatem suam naves solverunt.
    • 自らの意思に反して、出帆した。
      (訳注:nāvem solvere 「船(のともづな[4])を解く」=「出帆する」)


  • ⑧項 Iamque de Caesaris adventu fama ad civitates perferebatur.
    • すでに、カエサルがやって来ることについての風評が、諸都市へもたらされていたのである。

103節[編集]

ポンペイウスがエジプトのペルシウムに到着し、少年王プトロマエウスに保護を求める

  • ①項 Quibus cognitis rebus
    • そのような事態を知ると、
  • Pompeius deposito adeundae Syriae consilio
  • pecunia societatibus sublata
    • 金銭ペクニアが(徴税請負人の)業者組合ソキエタスから取り上げられ、
      (訳注:societās 「協会、組合」
         ※ガードナー訳(J. P. Gardner, 1976)では the company of tax-farmers
          カーター訳(J. M. Carter, 1990)では tax companies などと英訳されている。
      だが、32節で述べられた シリア属州の徴税請負人プブリカヌスを指すのなら、その権限は属州総督であるスキピオに属するであろう。)
  • et a quibusdam privatis sumpta
    • 幾人かの(官職に就いていない)私人たちからも得て、
      (訳注:sūmere 「手に入れる」 > 完了受動分詞 sūmptus
  • et aeris magno pondere ad militarem usum in naves inposito
    • 軍事に使うための大量の銅貨アエスを船団に載せて、
      (訳注1:aes 「銅、青銅」あるいは「お金、銅貨」)
      (訳注2:pondus 「重さ」あるいは「数量」(en:quantity, number)
      (訳注3:inpōnere (=impōnere) 「乗せる、載せる」 > 完了受動分詞 inpōsitus
  • duobusque milibus hominum armatis,
    • 武装した兵士たち2,000名も(乗船させ)、
  • partim quos ex familiis societatum delegerat,
    • ──(彼らの)一部は、業者組合ソキエタス家内奴隷ファミリアのうちから選んでおいたものであり、
      (訳注:dēligere 「選ぶ」)
  • partim a negotiatoribus coegerat, quosque ex suis quisque ad hanc rem idoneos existimabat,
    • (別の)一部は、(商人)各自が配下から この事変にふさわしいと判断していた者たちを、商人たちから徴用しておいたのだが、 ──
      (訳注:negōtiātor 「商人」)
古代エジプト(下エジプト)の地図。ナイル川デルタと呼ばれる世界最大級の三角州(黄緑色)の西端に首都アレクサンドリアAlexandria)があり、東端にペルシウムPelusium)があった。
米映画『クレオパトラ』(Cleopatra, 1917)のプトレマイオス13世(左)とクレオパトラ7世(右)。
ヴァンプ(妖婦役)女優として有名なセダ・バラが女王クレオパトラを演じた。女王はカエサルとアントニウスを愛人として子供をもうけて権勢を保とうとし、かつオクタウィアヌスの敵だったので、伝統的に妖艶な毒婦として描かれた。
  • Pelusium pervenit.
    • ペルシウムに到着した。
      (訳注:ペルシウム Pelusium は、エジプトのナイル川の三角州の東端にあった都市。右図を参照。)


    • (訳注:これに対して、プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の76 では、次のように伝えている。
           )



   エジプト王 プトロマエウス13世 と クレオパトラ7世 の内戦

  • ②項 Ibi casu rex erat Ptolomaeus,
    • そこには、偶然に、王であるプトロマエウスがいた。
      (訳注1:cāsus 「偶然」 > 奪格 cāsū 「偶然に」)
      (訳注2:Ptolomaeus は、プトレマイオス朝代々の王名で、
          ラテン語形は プトレマエウス Ptolemaeus だが、
          写本ではしばしば プトロマエウス Ptolomaeus になる。)
  • puer aetate,
    • (王は)年齢上は少年だが、
  • magnis copiis cum sorore Cleopatra bellum gerens,
    • かなりの軍勢を伴って、姉妹ソロルであるクレオパトラと戦争を遂行しており、
  • quam paucis ante mensibus per suos propinquos atque amicos regno expulerat;
    • 彼女を数か月前に、自らの親族たちや腹心の者たちを介して、王国から追い出していたのだ。
  • castraque Cleopatrae non longo spatio ab eius castris distabant.
    • クレオパトラの陣営は、彼 (プトロマエウス) の陣営からあまり遠くに離れてはいなかった。
    • (訳注:)



   ポンペイウスが、少年王プトロマエウスに助けを求める使節団を派遣する

  • ③項 Ad eum Pompeius misit,
    • ポンペイウスは、彼 (少年王) のもとへ(使節団を)遣わして、
  • ut pro hospitio atque amicitia patris Alexandria reciperetur
    • (少年王の)父との客人待遇ホスピティウム盟友関係アミキティアに応じて、アレクサンドリアに受け入れてくれるように、
  • atque illius opibus in calamitate tegeretur.
    • (少年王)兵力オペスをもって、不運において守ってくれるように、と。
      (訳注:ops 「力、助力」 > 複数 opēs 「権力、勢力」「兵力」)


    • (訳注:)


米映画『クレオパトラ』(Cleopatra, 1917)の劇中に登場するプトレマイオス12世。エジプト民衆の蜂起によって一度は廃位されたが、ローマのシリア総督ガビニウスの武力によって王位に返り咲いた。


  • ④項 Sed qui ab eo missi erant,
    • けれども、彼 (ポンペイウス) によって遣わされた者どもは、
  • confecto legationis officio
    • 使節団レガティオの職責を成し遂げてしまうと、
  • liberius cum militibus regis conloqui coeperunt
    • 王の兵士たちとより自由に会話をし始めて、
      (訳注:līberē 副詞「自由に」 > 比較級 līberius 「より自由に」)
  • eosque hortari,
    • 彼らを(以下のように)促した。
  • ut suum officium Pompeio praestarent
    • ポンペイウスに対する自らの職責を遂行すべし、
      (訳注:praestāre 「遂行する、果たす」)
  • neve eius fortunam despicerent.
    • (ポンペイウス) の命運をあなどるべからず、と。
      (訳注:dēspicere 「見下す、軽蔑する」)



  • ⑤項 In hoc erant numero complures Pompei milites,
    • この部隊ヌメルスの中には、ポンペイウス配下のかなりの兵士たちがいた。
  • quos ex eius exercitu acceptos in Syria Gabinius Alexandriam traduxerat
    • その者らは、ガビニウスシリア(属州)において、彼 (ポンペイウス) の軍隊のうちから引き受けて、アレクサンドリアに連れて来ていたもので、
  • belloque confecto
    • 戦争が完遂されても、
  • apud Ptolomaeum, patrem pueri, reliquerat.
    • 少年の父であるプトロマエウスのもとに、残しておいたのだ。
    • (訳注:)

104節[編集]

エジプト王プトロマエウスの廷臣たちが一計を案じて、ポンペイウスを暗殺する

  • ①項 His tunc cognitis rebus
    • そのとき、このような事態が知られると、
      (訳注:下線部は、写本では tunc だが、tum に修正提案されている。)
  • amici regis, qui propter aetatem eius in procuratione erant regni,
    • 王の僚友アミクス・レギスたちは、彼の(幼い)年齢のために、王政レグヌム監督官職プロクラティオについていたのだが、
      (訳注1「王の僚友」は側近の地位で、古代ギリシア語で ピロス・バシリコス φίλος βασιλικός と呼ばれていたらしい。)
      (訳注2prōcūrātiō 「世話、管理、監督」または「監督官の職」)
  • sive timore adducti, ut postea praedicabant, sollicitato exercitu regio, ne Pompeius Alexandriam Aegyptumque occuparet,
    • 後で申し立てたように、王の軍隊を扇動してポンペイウスアレクサンドリアエジプトを占領するのではないか、という恐れに駆られて、
      (訳注1:sive ~, sive ・・・ 「~あるいは・・・」)
      (訳注2:praedicāre 「公表する」「主張する」)
      (訳注3:sollicitāre 「扇動する、そそのかす」)
  • sive despecta eius fortuna, ut plerumque in calamitate ex amicis inimici exsistunt,
    • あるいは敗勢カラミタスにおいては、たいてい友人たちのうちから敵対者たちが生じるように、彼 (ポンペイウス) の不運をなめきっていて、
  • iis qui erant ab eo missi, palam liberaliter responderunt
    • (ポンペイウス) によって遣わされていた者たちには、公けには親切に返答して、
  • eumque ad regem venire iusserunt;
    • (ポンペイウス) に、王のもとへ参上することを要請した
      (訳注:iubēre 「命じる」あるいは「促す、乞う」)


(訳注:これに対して、プルタルコスの『対比列伝』の「ポンペイウス」の章の77 では、次のように伝えている。
     )



   王の廷臣たちが、ポンペイウスを暗殺するために、近衛隊長アキッラスおよびローマ人軍団次官セプティミウスを派遣する

  • ②項 ipsi clam consilio inito
    • (王の腹心たち)自身は、秘密裏に、謀略コンシリウムに取りかかって、
      (訳注:inīre 「開始する、着手する」)
  • Achillam, praefectum regium, [singium] singulari hominem audacia,
    • 王の指揮官であり、類いまれなる豪の者であるアキッラスと、
      (訳注:アキッラス AchillasἈχιλλᾶς)は、王の護衛官で近衛兵たちの隊長であった。)
  • et L. Septimium, tribunum militum,
  • ad interficiendum Pompeium miserunt.
    • ポンペイウスを殺害するために、遣わした。


(訳注:)


刺殺されるポンペイウスの想像画。
1880年頃に刊行された The Illustrated History of the World の挿絵として描かれたもの。
頭部を斬り取られたポンペイウスの想像画
(18世紀、作者不詳の La mort de Pompée 「ポンペイウスの死」)。


   ポンペイウスが、アキッラスとセプティミウスによって殺害される

  • ③項 Ab his liberaliter ipse appellatus
    • (ポンペイウス)自身は、彼らにより親切にあいさつされて、
      (訳注:appellāre 「呼びかける、あいさつする」 > 完了受動分詞 appellātus
  • et quadam notitia Septimi productus,
    • セプティミウスとのいくらかの知り合いであること連れ出されて
      (訳注1:nōtitia 「知り合いであること」)
      (訳注2:prōdūcere 「連れ出す」「誘い出す」 > 完了受動分詞 prōductus
  • quod bello praedonum apud eum ordinem duxerat,
    • ── というのも、海賊プラエドとの戦争で、彼(ポンペイウス) の下で部隊を率いていたのだ ──
      (訳注:BC67年にポンペイウスが海賊を討伐した戦争のこと。
          「海賊征討戦Campaign against the pirates を参照。)
  • naviculam parvulam conscendit cum paucis suis:
    • ちっぽけな小舟ナウィクラに、数名の配下とともに、乗船した。
  • ibi ab Achilla et Septimio interficitur.
    • そこで、アキッラスとセプティミウスによって討ち取られる。


   前年のローマ執政官ルキウス・レントゥルスも、捕えられて殺害される


(訳注:)

カエサルがエジプトの内紛に介入する (アレクサンドリア攻囲戦前夜)[編集]

105節[編集]

カエサルがアシア属州へ到着して、神殿を災難から救い、東地中海岸の各地で 神々の御璽(みしるし)が現われる

エペススのアルテミス神殿の模型。内部に本尊であるアルテミス像が見える。
ギリシア神話のアルテミスとローマ神話のディアナは同一視されるようになっていた。
イタリア・ティヴォリエステ家別荘Villa Estensis)に建造された「エペススのアルテミス」像。胴回りの「牛の睾丸」とも考えられる多数の乳房から乳をほとばしらせる異形の姿は、小アジアで信仰された地母神としての原形をとどめていると思われる。
パイオニオスのニケNike of Paionios)。19世紀にエリス地方のオリュンピアから出土した物からの復元像。原物はギリシア人彫刻家パイオニオス(Paeonius)によって制作されて、オリュンピアのアテナ神殿にあったと考えられている。
12世紀頃のアンティオキアの城壁。
小太鼓(テュンパヌム)奏者のモザイク画。
  • ①項 Caesar, cum in Asiam venisset,
  • reperiebat
    • 見出していたことには、
  • T. Ampium conatum esse pecunias tollere Epheso ex fano Dianae
    • ティトゥス・アンピウスが、エペススで、ディアナ神殿ファヌムから浄財ペクニアを運び出すことを企てて、
      (訳注:ティトゥス・アンピウス・バルブス it:Tito Ampio Balbo は、
          BC59年に法務官、BC57年にアシア属州の総督を務めている。)
  • eiusque rei causa senatores omnes ex provincia evocavisse,
    • そのことのために、(アシア)属州から元老院議員たちを呼び集めて、
  • ut his testibus in summam pecuniae uteretur,
    • 彼らを浄財ペクニアの総額の立会い証人テスティスとして利用しようとしたが、
  • sed interpellatum adventu Caesaris profugisse.
    • しかし、カエサルの到来に阻まれて、逃げ去った、というのである。
      (訳注:interpellāre 「妨害する」 > 完了受動分詞 interpellātus


  • ②項 Ita duobus temporibus Ephesiae pecuniae Caesar auxilium tulit.
    • このようにして、カエサルは、再度にわたってエペススの浄財ペクニアに救いをもたらしたのである。
      (訳注:33節を参照。なお、二度とも、カエサルは直接的関与はしていない。)


   エリス(オリュンピア)のアテナ神殿にあるニケの神像が、向きを変える奇跡

  • ③項 Item constabat
    • さらにまた、(以下のことも)明白であった。
  • Elide in templo Minervae
  • repetitis atque enumeratis diebus, quo die proelium secundum Caesar fecisset,
    • 日々をさかのぼって計算すると、カエサルが戦勝をなした その当日に、
      (訳注1:repetere 「戻る」「繰り返す」または「さかのぼる」 > 完了受動分詞 repetītus
      (訳注2:ēnumerāre 「計算する」 > 完了受動分詞 ēnumeratus
  • simulacrum Victoriae, quod ante ipsam Minervam conlocatum esset
  • et ante ad simulacrum Minervae spectavisset,
    • 従前には、ミネルウァの像の方を向いていたのだが、
      (訳注:spectāre 「(ある方向を)向く、面する」)
  • ad valvas se templi limenque convertisse.
    • 寺院の両開きの戸ウァルウァや敷居の方へ向きを変えた、というのだ。
      (訳注1:valva 「(複数形で)両開きの戸」)
      (訳注2:līmen 「敷居」「戸口」)
      (訳注3:ここでは、ギリシア神話のアテナがローマ神話のミネルウァと、
           同じくギリシア神話のニケがローマ神話のウィクトリアと同一視されている。
           ニケは、アテナに付き従う戦争の女神であった。)


   アンティオキアで、ときの声などが聴こえ、市民たちがあわてて城壁の守りにつく

  • ④項 Eodemque die Antiochiae in Syria
  • bis tantus exercitus clamor et signorum sonus exauditus est,
    • 二度も、軍隊のたいへんなときの声クラモル号令シグヌムの(ラッパの)音が聴き取られたので、
      (訳注:exaudīre 「聞き取る」 > 完了受動分詞 exaudītus
  • ut in muris armata civitas discurreret.
    • 武装した市民団が、城壁(の持ち場)に散らばって行ったほどであった
      (訳注:discurrere 「走り回る」「散らばる」)
  • Hoc idem Ptolomaide accidit.
    • これと同じことが、プトレマイスでも起こった。
      (訳注:プトレマイス Ptolemais という地名は複数あるが、フェニキアの都市で現在はイスラエル領の有名な町アッコのことであろう。)


   ペルガムムの神域で、小太鼓が鳴り響く

  • ⑤項 Pergamique in occultis ac reconditis templi,
    • ペルガムムでは、寺院テンプルム秘された人目につかないところで、
      (訳注1:occulere 「隠す、秘密にする」 > 完了受動分詞 occultus 「秘された」)
      (訳注2:recondere 「隠す」 > 完了受動分詞 reconditus 「隠された」「人目につかない」)
  • quo praeter sacerdotes adire fas non est,
    • ── そこでは、祭司のほかには、近づくことが神の掟ファスに反するし、
      (訳注1:sacerdōs 「祭司、神官」)
      (訳注2:fās 「神の掟(おきて)」)
ローマ時代に造られた舗装道路。
ヤシの街路樹(トルコ)。


  • ⑥項 Item Trallibus
    • さらにまた、(アシア属州の)トラッレスでは、
      (訳注:トラッレス Tralles は、アシア属州のエペススの近くにある都市で、
           現在のトルコ領のアイドゥン。)
  • in templo Victoriae, ubi Caesaris statuam consecraverant,
    • (市民たちが)カエサルの彫像スタトゥアを奉納していたウィクトリア寺院テンプルムにおいて、
      (訳注1:statua 「彫像」)
      (訳注2:cōnsecrāre 「奉納する」)
  • palma per eos dies [in tecto] inter coagmenta lapidum ex pavimento exstitisse ostendebatur.
    • それらの日々に、舗装道路パウィメントゥムの石の接合部の間に、ヤシの木パルマが出現したことが指摘されていた。
      (訳注1:palmaヤシ(椰子)」。
      日本では、聖書などで伝統的に温帯になじみ深い「棕櫚シュロ」の訳語をあてることが多い。)
      (訳注2:coagmentum 「結合」)
      (訳注3:pavīmentum 「舗装された道路」)

106節[編集]

カエサルがエジプトの都アレクサンドリアに到着して、ポンペイウスの死を知るが、民衆の暴動によりローマ兵が殺される


  • ②項 In his erant legionibus hominum milia III(tria) CC;
    • これらの諸軍団には、3,200名がいた。
      (訳注:共和制末期において、歩兵小隊ケントゥリア(百人隊)の定員が80名とすると、
          60個歩兵小隊から成る1個軍団の定員は4800名、2個軍団で9,600名のはずであるが、
          死傷による欠員は補充されないことになっているほか、以下の理由により著しく減じていたのであろう。)
  • reliqui vulneribus ex proeliis
    • ほかの者たちは、戦闘による負傷により、
  • et labore ac magnitudine itineris
    • および、かなりの行程で疲労したことにより、
  • confecti consequi non potuerant.
    • 消耗して、後から続くことができなかったのだ。


  • ③項 Sed Caesar confisus fama rerum gestarum
    • しかし、カエサルは、軍事的実績による功名を信頼して、
      (訳注1:cōnfīdere 「信頼する」 > 完了受動分詞 cōnfīsus
      (訳注2:fāma 「名声」)
      (訳注:rēs gestae 「戦績」 > 属格 rērum gestārum
  • infirmis auxiliis proficisci non dubitaverat,
    • 非力な兵 力アウクシリアで出発することをためらわなかったし、
  • aeque omnem sibi locum tutum fore existimans.
    • 自分にとっては、あらゆる場所が等しく安全になるであろう、と判断していたのだ。


   ポンペイウスの死を知ったカエサルが上陸するが、兵士たちが抗議のため群がり集まる

  • ④項 Alexandriae de Pompei morte cognoscit
    • (カエサルは)アレクサンドリアにて、ポンペイウスの死について知る。
  • atque ibi primum e navi egrediens
    • そして、まず、そこで船から上陸したときに、
      (訳注:ēgredī 「出て来る」「(船から)下りる、上陸する」 > 現在分詞 ēgrediēns
  • clamorem militum audit, quos rex in oppido praesidii causa reliquerat,
    • 王(プトロマエウス)が城市に守備のために残していた 兵士たちのどよめきを聞き、
  • et concursum ad se fieri videt, quod fasces anteferrentur.
    • 束桿(そっかん)ファスケスが先んじて運ばれていたというので、自分 (カエサル) のもとへ群がって来られるのを見る。
      (訳注1:concursus 「群がり集まること」
      (訳注2:anteferre 「先んじて運ぶ」)
束桿(そっかん)ファスケスを携えて政務官を先導する 先導警吏リクトルの再現。


   群衆が連日のように押し寄せて、多くのローマ人兵士が殺傷される

  • ⑤項 Hoc sedato tumultu
    • この混乱が落ち着いた後、
      (訳注1:tumultus 「大騒ぎ、混乱」)
      (訳注2:sēdāre 「静める、落ち着かせる」 > 完了受動分詞 sedātus
  • crebrae continuis diebus ex concursu multitudinis concitationes fiebant
    • 連日にわたって、大勢の者たちがたびたび群がり集まったため、暴動が発生していて、
      (訳注:concitātiō 「暴動」)
  • conpluresque milites huius urbis omnibus partibus interficiebantur.
    • この都市のあらゆる方面で、多数の兵士たちが、殺害されていた。
      (訳注:下線部は、写本では huius 「この」であるが、in viis 「道々において」とする修正提案がある。)

107節[編集]

エテシアエ風(夏に東地中海に吹く北風)の説明図。夏季に、ヨーロッパ中部に高気圧アナトリア半島低気圧が発生すると、西高東低の気圧配置となり、気圧の谷間となるエーゲ海から東地中海・エジプト方面にかけて乾燥した強い北風が吹く。
 ラテン語の etēsiae は古代ギリシア語で「季節風」periodic winds を意味する エテシアイ ἐτησίαι に由来するが、現代ギリシャ語では メルテミア μελτέμια という。
米映画『クレオパトラ』(Cleopatra, 1934)で、クレオパトラに扮する女優のクローデット・コルベール のスチール。史劇の巨匠セシル・B・デミルが監督した。

カエサルが、アシアからの増援を指図し、エジプト王家の内紛を知って介入を決意する

  • ①項 Quibus rebus animadversis,
    • (カエサルは)それらの事態に気が付くと、
  • legiones sibi alias ex Asia adduci iussit,
    • アシア(属州)から、別の諸軍団が自分のもとに率いて来られることを命じた。
  • quas ex Pompeianis militibus confecerat.
    • それら(の諸軍団)は、(降伏した)ポンペイウス勢の兵士たちから、構成していた。
      (訳注:cōnficere 「構成する」)
  • Ipse enim necessario etesiis tenebatur,
    • なぜなら、(カエサル)自身は、北西季節風エテシアエにより、やむなく引き止められていた。
      (訳注:etēsiaeetēsia, etesias の複数形) 「エテシアエ風」;右図を参照。)
  • qui navigantibus Alexandria flant adversissimi venti.
    • それは、アレクサンドリアから航海する者たちにとっては、最も不都合な風として吹く
      (訳注1:nāvigāre 「航海する」 > 現在分詞 nāvigāns
      (訳注2:adversus 「不都合な」 > 最上級 adversissimus
      (訳注3:下線部は、写本では fīunt 「なる」であるが、
           flant 「吹く」と修正提案されている。)


   カエサルが、ペルシウムで対峙する王プトロマエウスとクレオパトラに、調停案を示す

  • ②項 Interim controversias regum
    • そうこうするうちに、(カエサルは)王家の紛争が
      (訳注:rēx 「王」 > 複数形 rēgēs 「王族、王家」 > 複数・属格 rēgum 「王家の」)
  • ad populum Romanum et ad se, quod esset consul, pertinere existimans
    • ローマ人民および、執政官コンスルである自分 (カエサル) に関連がある、と判断して、
  • atque eo magis officio suo convenire,
    • (以下の理由のため)自らの職 務オッフィキウムいっそうふさわしい(と判断し)、
      (訳注1: magis ~ quod ・・・ 「・・・なので、よりいっそう~」)
      (訳注2:convenīre 名詞の与格をとり「~にふさわしい」)
  • quod superiore consulatu cum patre Ptolomaeo et lege et senatus consulto societas erat facta,
    • ── というのも、以前の執政官職にあったとき、父のプトロマエウスと、法と元老院決議により同盟関係ソキエタスが成っていたためだが、 ──
    • (訳注:  )
  • ostendit sibi placere
    • (カエサルは、以下のことが)よろしいと思う、と指示した。
      (訳注:sibi placēre 直訳は「自分(カエサル)にとって喜ばしい」)
  • regem Ptolomaeum atque eius sororem Cleopatram exercitus, quos haberent, dimittere
  • et de controversiis iure apud se potius quam inter se armis disceptare.
    • および、(王家の)紛争について、互いに武力で(争う)よりも、むしろ自分 (カエサル) のもとで公正さユ スにより討論すること。
      (訳注:disceptāre 「議論する、討論する」)

108節[編集]

エジプト王政を牛耳る宦官ポティヌスが、アキッラスを司令官として軍を都に呼び寄せる。前王プトロマエウスの遺言状が開封される

  • ①項 Erat in procuratione regni propter aetatem pueri
    • 少年プエル (王プトロマエウス) の年齢のために、王政レグヌム監督官職プロクラティオに就いていたのは、
      (訳注:prōcūrātiō 「管理、監督」または「監督官の職」)
  • nutricius eius, eunuchus nomine Pothinus.
    • 彼の養育官ヌトリキウスである、ポティヌスという名前の宦官エウヌクスだった。
      (訳注1:nūtrīcius 「養い親、養育者」)
      (訳注2:eunūchus宦官」)
  • Is primum inter suos queri atque indignari coepit
    • 彼は、はじめのうちは、味方の間で、不平を言ったり、腹を立てたりし始めた。
      (訳注1:prīmum ~; deinde ・・・ 「はじめのうちは~、それから・・・」)
      (訳注2:querī 「不平を言う、嘆く」)
      (訳注3:indignārī 「腹を立てる」)
  • regem ad causam dicendam evocari;
    • 王が(紛争の)理由カウサを陳述するために呼び出されるということに。
      (訳注:dīcere 「述べる」 > 未来受動分詞(動形容詞) dīcendus ⇒動形容詞による動名詞の代用)


   宦官ポティヌスが、近衛隊長アキッラスを全軍の指揮官とし、軍をアレクサンドリアに呼び戻す

  • ②項 deinde adiutores quosdam consilii sui nactus ex regis amicis
    • それから王の僚友アミクス・レギスたちのうちから、自らの謀計コンシリウムのいく人かの加担者アデュトルを得ると、
      (訳注1:adiūtor 「助力者」または「加担者」)
      (訳注2:「王の僚友」は104節で述べられた側近の地位で、古代ギリシア語で ピロス・バシリコス φίλος βασιλικός 。)
  • exercitum a Pelusio clam Alexandriam evocavit
  • atque eundem Achillam, cuius supra meminimus, omnibus copiis praefecit.
    • 前に言及したのと同じアキッラスを、全軍勢の指揮官とした。
      (訳注1:meminisse 「言及する」)
      (訳注2:104節で、ポンペイウスを暗殺したアキッラスについて述べられた。)


  • ③項 Hunc incitatum suis et regis [inflatumpollicitationibus,
    • この者を、自分と王の約束事によりけしかけのぼせあがらせて
      (訳注:incitāre 「駆り立てる、けしかける」)
      (訳注:īnflāre 「吹き込む、のぼせあがらせる」。[ ]は削除提案されている。)
  • quae fieri vellet, litteris nuntiisque edocuit.
    • 何をして欲しいのか、書状や伝令により、知らせた。
      (訳注:ēdocēre 「教える、知らせる」)


   前王プトロマエウス12世の遺言状とは

  • ④項 In testamento Ptolomaei patris
    • (現王の)父であるプトロマエウスの遺言状テスタメントゥムにおいて、
      (訳注:testāmentum 「遺言、遺言状」)
  • heredes erant scripti
    • 相続人ヘレスとして指名されていたのは、
      (訳注1:hērēs 「相続人」)
      (訳注2:scrībere 「(文書で)指名する」 > 完了受動分詞 scrīptus
  • ex duobus filiis maior
  • et ex duabus filiabus ea, quae aetate antecedebat.
    • および、二人の息女フィリアたちのうち、年齢において先行していた者だった。
      (訳注:プトレマイオス12世の三人の息女のうち、長女のベレニケ4世は殺されており、
          次女のクレオパトラ7世と三女のアルシノエ4世が生存していた。
          すなわち、長男のプトレマイオス13世と次女のクレオパトラ7世が、相続人に指名されていたことになる。)


  • ⑤項 Haec uti fierent,
    • このことが成就するように、
  • per omnes deos
    • (エジプトで信仰されていた)すべての神々を介して、
  • perque foedera, quae Romae fecisset,
    • および、(ローマ人の都である)ローマにて締結してあった盟約フォエドゥスを介して、
      (訳注:foedus 「同盟、盟約」)
  • eodem testamento Ptolomaeus populum Romanum obtestabatur.
    • (前王)プトロマエウスは、ローマ人民を証人に挙げていたのだ。
      (訳注:obtestārī 「証人として引き合いに出す」 デポネンティア動詞)


  • ⑥項 Tabulae testamenti unae
    • 遺 言テスタメントゥム文書タブラエの一つは、
  • per legatos eius Romam erant adlatae, ut in aerario ponerentur
    • 国 庫アエラリウムに保管されるように、彼 (前王プトロマエウス) の使節たちを通じてローマに運ばれて、
  • ── hae cum propter publicas occupationes poni non potuissent,
    • ── これは、政変のため、保管することができなかったので、
  • apud Pompeium sunt depositae ──,
    • ポンペイウスのもとにゆだねられていたのだが ──
  • alterae eodem exemplo relictae atque obsignatae Alexandriae proferebantur.
    • 同じ写しのもう一つは、アレクサンドリアに残されて封印されていて、提示されていたのである。

109節[編集]

カエサルが王室の紛争を仲裁していると、アキッラスの軍勢が都に差し迫って来たので、王を手元に置いて備える

  • ①項 De his rebus cum ageretur apud Caesarem,
    • これらの事柄について、カエサルがいるところで談判されていて、
      (訳注:agere 「談判する、協議する」)
  • isque maxime vellet pro communi amico atque arbitro controversias regum componere,
    • とりわけ、彼が(双方にとり)共通の友人、かつ王室の紛争の仲裁人アルビテルとして、調停することを望んでいたときに
      (訳注1:arbiter 「仲裁人、審判者」)
      (訳注2:compōnere 「(問題を)処理する、調停する」)
  • subito exercitus regius equitatusque omnis venire Alexandriam nuntiatur.
    • 不意に、王のすべての歩兵隊エクセルキトゥス騎兵隊エクィタトゥスが、アレクサンドリアに進撃して来ると、報告される。
      (訳注:exercitus は「軍隊」と訳されるが、特にequitātus 「騎兵隊」に対して「歩兵隊」を指す。)


   兵力の少ないカエサルが、都に陣地を確保して、アキッラスの軍勢に備えようとする

  • ②項 Caesaris copiae nequaquam erant tantae, ut eis, extra oppidum si esset dimicandum, confideret.
    • カエサルの軍勢は、もし城市の外で闘わなければならぬ場合に信頼するほど、じゅうぶんでは決してなかった。
      (訳注1:nēquāquam 「決して~ない」)
      (訳注2:tantus, -a, -um ~, ut ・・・ 「これほど~、・・・ほどである」「・・・ほどの~」)
  • Relinquebatur, ut se suis locis oppido teneret
    • (カエサルにとって)残されていたのは、城市にて味方の場所を掌握して、
  • consiliumque Achillae cognosceret.
    • アキッラスの考えを知ることであった。


   カエサルが、部下たちに武装させながら、王の使節を介してアキッラスの意向を知ろうとする

  • ③項 Milites tamen omnes in armis esse iussit
    • しかしながら、(カエサルは)すべての兵士たちに武装することを命じて、
  • regemque hortatus est,
    • 王に(以下のことを)促した。
  • ut ex suis necessariis, quos haberet maximae auctoritatis, legatos ad Achillam mitteret
    • 配下の親しい者ネケッサリウスたちのうちから、最大の権勢を持つ者たちを、使節としてアキッラスのもとへ遣わして、
  • et, quid esset suae voluntatis, ostenderet.
    • (王)自らの意思が何であるかを、示すように、と。


   カエサルの意を受けた王プトロマエウスが、側近のディオスコリデスとセラピオンを、アキッラスのところへ派遣する

  • ④項 A quo missi Dioscorides et Serapion,
    • (王プトロマエウス) によって遣わされたのは、ディオスコリデスとセラピオンで、
      (訳注:ギリシア語名は、ディオスコリデス Διοσκουρίδης と、セラピオン Σεραπίων 。)
  • qui ambo legati Romae fuerant
    • ── その者らは、両者とも、使節としてローマにいたことがあり、
  • magnamque apud patrem Ptolomaeum auctoritatem habuerant,
    • (現王の)父であるプトロマエウスのもとで大きな権威を持っていたのだが、 ──
  • ad Achillam pervenerunt.
    • アキッラスのもとへ到着した。


  • ⑤項 Quos ille, cum in conspectum eius venissent,
    • あの者 (アキッラス) は、彼ら (二人の使節) が彼の眼前にやって来たときに、
  • priusquam audiret aut, cuius rei causa missi essent, cognosceret,
    • 彼らが遣わされたところの事由を 聞き取ったり、あるいは、知るよりも前に、
  • corripi atque interfici iussit;
    • とっ捕まえて、殺してしまうことを、命じた。
      (訳注:corripere 「ひっつかむ」)
  • quorum alter accepto vulnere occupatus per suos pro occiso sublatus,
    • 彼らの一方は、傷を受けたが、仲間によってつかまれて、殺された者として運び去られた。
  • alter interfectus est.
    • もう一人は、殺害された。
      (訳注:このとき生き延びた者は、BC43年にキュプロス島県長官ストラテゴスStrategosστρατηγός ) に任じられた
          セラピオン (SerapionΣεραπίων ) と同一人物ではないかと想定されている。)


   カエサルが、少年王プトロマエウスを自らの盾にしようとする

  • ⑥項 Quo facto,
    • それをられてしまうと、
  • regem ut in sua potestate haberet, Caesar effecit,
    • カエサルは、王を自らの影響力ポテスタスの下に保持するように した
  • magnam regium nomen apud suos auctoritatem habere existimans,
    • 王の名が、臣下たちの前では大いなる権威を持っていると判断していたし、
  • et ut potius privato paucorum et latronum quam regio consilio susceptum bellum videretur.
    • 王の考えによる、というよりも、むしろ わずかな逆賊ラトロの私的な考えにより、戦争が企てられたと思われるようにしたのだ

110節[編集]

アキッラス麾下の軍勢(ローマ人のガビニウス兵など2万余と騎兵2000騎)の内情

  • ①項 Erant cum Achilla eae copiae,
    • アキッラスとともに、(以下のような)軍勢がいた。
  • ut neque numero
    • 兵数においても、
  • neque genere hominum
    • 兵種においても、
  • neque usu rei militaris
    • 軍隊経験においても
  • contemnendae viderentur.
    • 過小評価されるべきではないと思われていた。
      (訳注:contemnereあなどる、過小評価する」 > 未来受動分詞(動形容詞) contemnendus


   ガビニウスの兵士たちの現状

  • ②項 Milia enim XX in armis habebat.
    • 確かに、武装した20,000名の兵士を保持していた。
  • Haec constabant ex Gabinianis militibus,
    • これは、ガビニウスの兵士たちから成っていた
      (訳注1:cōnstāre ex ~ 「~から成る」)
      (訳注2: ●編集中● )
  • qui iam in consuetudinem Alexandrinae vitae ac licentiae venerant
  • et nomen disciplinamque populi Romani dedidicerant
    • ローマ人の国民であることや規 律ディスキプリナを(すでに)忘れてしまっていて、
      (訳注1:nōmen 「名前」あるいは「国民(であること)」)
      (訳注2:disciplīna 「規律」)
      (訳注3:dēdiscere 「忘れる」)
  • uxoresque duxerant,
    • 妻をめとっており、
      (訳注:uxor 「妻」 > uxōrem dūcere 「妻をめとる」)
  • ex quibus plerique liberos habebant.
    • めいめいの妻たちから、子供たちをもうけていた。


   集められていた多数のアウトローたち

  • ③項 Huc accedebant
    • これに、付け加わっていたのが、
  • collecti ex praedonibus latronibusque Syriae Ciliciaeque provinciae finitimarumque regionum.
  • Multi praeterea capitis damnati exulesque convenerant.
    • そのうえ、多数の市民権喪失を宣告された者たちや亡命者たちが、集まって来ていた。
      (訳注1:caput 「頭」「生命」「市民権」> poena capitis 「死刑」;dēminūtiō capitis 「市民権の喪失」 )
      (訳注2:damnāre 「刑を宣告する」 > 完了受動分詞 damnātus
          カーター訳(J. M. Carter, 1993)では、men condemned to loss of citizen rights 「市民権喪失の刑を宣告された男たち」)
      (訳注3:exul 「流刑者、追放者」または「亡命者」)


   ローマからの逃亡奴隷たち

  • ④項 Fugitivis omnibus nostris
    • 我が方のすべての逃亡奴隷フギティウスにとって、
      (訳注:fugitīvus 「逃亡者」特に「逃亡奴隷」 runaway slave
  • certus erat Alexandriae receptus certaque vitae condicio, ut dato nomine militum essent numero;
    • アレクサンドリアにて、兵隊名簿に登録することによって兵士になるという、確実な避難所と、確実な生活の条件があった。
      (訳注1:receptus 「避難所、隠れ場」)
      (訳注2:condiciō ut ~ 「~という条件」)
      (訳注3:nōmen dare 「兵隊名簿に登録する、徴募に応じる」 > 奪格 nōmine datō 「徴募に応じることによって」)
  • quorum si quis a domino prehenderetur,
    • もし、彼らのうちのある者が、(奴隷時代の)雇い主によって捕らえられたならば、
      (訳注:si quis = si + aliquis 「もし、ある者が」)
  • consensu militum eripiebatur,
    • 兵士たちの合意により、救い出されていた
      (訳注:ēripere 「奪い取る」あるいは「救う、解放する」)
  • qui vim suorum, quod in simili culpa versabantur, ipsi pro suo periculo defendebant.
    • 彼らは、(奴隷身分からの逃亡という)似たようなとがを犯していたので、仲間たちへの横暴ウィスを自らの危険として、自身が守っていたのである。
      (訳注:in culpā versārīとがを犯している」)


   アレクサンドリアの軍隊における古くからの慣習とは

  • ⑤項 Hi regum amicos ad mortem deposcere,
    • この者らは、王の僚友アミクス・レギスたちへの賜死を要求したり、
  • hi bona locupletum diripere,
    • 裕福な者ロクプレスたちの資産ボナを略奪したり、
  • stipendii augendi causa regis domum obsidere,
    • 俸 給スティペンディウムを引き上げるために、王の居館ドムス取り囲んだり
      (訳注:obsidēre 「占領する」あるいは「包囲する、取り囲む」besiege, lay siege
          ガードナー訳(J. P. Gardner, 1976)は These men ... to besiege the palace for a rise in pay
          カーター訳(J. M. Carter, 1993)は these men ... laid siege to the king's residence to win heigher pay
  • regno expellere alios, alios arcessere
    • ある者たちを王位レグヌムから退けて、別のある者たちを(王位に)呼び寄せたり、
      (訳注:ガードナー訳(J. P. Gardner, 1976)は These men ... to drive some from the throne and summon others to fill it
          カーター訳(J. M. Carter, 1993)は these men ... removed some and appointed other to the throne
  • vetere quodam Alexandrini exercitus instituto consueverant.
    • アレクサンドリアの軍隊の、いわば長年にわたる慣習に慣れっこになっていたのだ。
      (訳注:consuēverant は、動詞 cōnsuēscō の直説法・過去完了・3人称複数形だが、
           多くの写本では r の前の ve が脱落した形態 consuērant になっている。)
  • Erant praeterea equitum milia duo.
    • そのうえ、騎兵2,000騎がいた。


   ガニビウスの兵士やアレクサンドリアの軍勢の軍事経験

  • ⑥項 Inveteraverant hi omnes compluribus Alexandriae bellis,
    • この者たちは、皆、アレクサンドリアで、いくつもの戦争とともに歳を重ねていたのであったし、
      (訳注:inveterārefr)「年を取る」devenir vieux, prendre de l’âge, vieillir.
  • Ptolomaeum patrem in regnum reduxerant,
    • (現王の)父であるプトロマエウスを王位レグヌムに復帰させていたし、
      (訳注:redūcere 「連れ戻す、引き戻す、復帰させる」)
  • Bibuli filios duos interfecerant,
    • ビブルスの二人の息子たちを殺害していたし、
      (訳注:マルクス・カルプルニウス・ビブルス は、BC51~50年にシリア総督になったが、
          31節③項で言及されたように、パルティア軍に包囲されて苦戦していたので、
          二人の息子を「ガビニウスの兵士たち」への援軍要請のためにエジプトに派遣したが、
          逆に息子たちはその兵士たちによって殺され、殺害者の身柄は女王クレオパトラからビブルスのもとへ送られた。
          BC49年にカエサルとの内戦が勃発すると、5節7節~8節・14節~16節で元老院派の艦隊司令官として
          カエサル勢を大いに悩ませたが、18節で病死した。)
  • bella cum Aegyptiis gesserant.
    • エジプト人たちとも交戦していた。
  • Hunc usum rei militaris habebant.
    • このような軍事経験を持っていたのである。
      (訳注:下線部は、多くの写本では hunc 「このような」であるが、hinc 「それゆえ」とする写本もある。)

111節[編集]

アキッラスの軍勢がアレクサンドリアの街と港を制圧しようとして、カエサル勢との戦いの火ぶたが切られる

  • ①項 His copiis fidens Achillas
    • アキッラスは、このような軍勢を頼みとして、
  • paucitatemque militum Caesaris despiciens
    • カエサルの兵士たちの少なさをなめきっていて、
      (訳注:dēspicere 「見下す、軽蔑する」)
  • occupabat Alexandriam praeter eam oppidi partem, quam Caesar cum militibus tenebat,
    • カエサルが兵士たちとともに掌握していた城市の街区パルスを除く アレクサンドリアを占領していたのだが、
  • primo impetu domum eius inrumpere conatus;
    • 初めの突撃により、彼 (カエサル)居館ドムスに押し入ることを試みた。
      (訳注:inrumpereirrumpere 「押し入る、突入する」)
  • sed Caesar dispositis per vias cohortibus impetum eius sustinuit.
    • しかし、カエサルは、通りに諸歩兵大隊コホルスを配置して、彼 (アキッラス) の突撃を持ちこたえた。
      (訳注:dispōnere 「配置する」 > 完了受動分詞 dispositus


  • ②項 Eodemque tempore pugnatum est ad portum,
    • 同時に、港の周辺でも闘われており、
  • ac longe maximam ea res adtulit dimicationem.
    • その事態レスは、はるかに大がかりな戦闘状態ディミカティオを引き起こした。


    エジプト艦隊の陣容

  • ③項 Simul enim diductis copiis pluribus viis pugnabatur,
    • すなわち、軍勢が多くの通りに展開して戦われていたのと同時に
      (訳注:dīdūcere 「(軍隊を)分散させる、展開させる」 > 完了受動分詞 dīductus
  • et magna multitudine navis longas occupare hostes conabantur;
    • 敵方ホステスは大勢により、軍船を占領することを試みていた。
  • quarum erant L auxilio missae ad Pompeium
    • それら(の軍船)の50隻は、ポンペイウスのもとへ援軍として派遣されていたが、
  • proelioque in Thessalia facto domum redierant,
    • テッサリアにおいて(ポンペイウスが敗れた)合戦が行なわれたので、故国 (エジプト) に帰還していた。
  • quadriremes omnes et quinqueremes aptae instructaeque omnibus rebus ad navigandum,
    • すべてが四段櫂船と五段櫂船で、あらゆるもので装備され、航行する準備ができていた。
      (訳注1:quādrirēmis 「四段櫂船」)
      (訳注2:quinquerēmis 「五段櫂船」)
      (訳注3:aptus, -a, -um 「装備された」)
      (訳注4:īnstruere 「準備する、装備する」 > 完了受動分詞 īnstrūctus
  • praeter has XXII, quae praesidii causa Alexandriae esse consueverant,
    • そのうえ、守備のためにアレクサンドリアにいることが慣習であった22隻は、
      (訳注:consuēverant は、動詞 cōnsuēscō の直説法・過去完了・3人称複数形だが、
            r の前の ve が脱落した形態 consuērant になっている写本もある。)
プトレマイオス朝(プトレマイオス4世)の巨艦(17世紀の復元画)。
  • constratae omnes.
    • すべてが甲板が張られていた
      (訳注:cōnsternere 「屋根をく」en: thatch
           > 完了受動分詞 cōnstrātus屋根がかれた」)


   艦隊と港湾の重要性

  • ④項 Quas si occupavissent,
    • もし、それらを(アキッラス勢が)占拠したならば、
  • classe Caesari erepta
    • カエサルから艦隊を奪取して、
      (訳注:ēripere 「奪い取る」 > 完了受動分詞 ēreptus
  • portum ac mare totum in sua potestate haberent,
    • 港と沿海の全域を統制下に置き、
  • commeatu auxiliisque Caesarem prohiberent.
    • カエサルを物資供給や増援から阻むようになっていただろう。


   港湾地区で激戦が勃発する

  • ⑤項 Itaque tanta est contentione actum, quanta agi debuit,
    • そういうわけで、起こるべきであったほどの、たいへんな闘争が起こった。
      (訳注:tantusquantus ・・・ 「・・・ほどの~」)
  • cum illi celerem in ea re victoriam, hi salutem suam consistere viderent.
    • あちら方は速やかな勝利が、こちら方は自らの安全が、その事態に立脚していると見ていたのだ。
アレクサンドリアの港湾と大灯台(18世紀のイタリアの画家ルイジ・マイヤー Luigi Mayer による風景画)。左の奥にパルス(パロス)島、右の奥に大灯台が描かれている。


   カエサルが、港湾内の船団を焼き討ちして、軍勢をパルス島へ上陸させる

  • ⑥項 Sed rem obtinuit Caesar
    • けれども、カエサルが戦局レスを制して、
  • omnesque eas naves et reliquas, quae erant in navalibus, incendit,
    • それらの船団と、造船所ナウァレにあった残りの船団を、焼き討ちする。
      (訳注:nāvāle 「造船所、ドック」)
  • quod tam late tueri parva manu non poterat,
    • というのも、わずかな手勢で、これほど広域に防戦することはできなかったからだ。
  • confestimque ad Pharum navibus milites exposuit.
    • (カエサルは)速やかに、兵士たちを船団により、灯台パルスのたもとへ上陸させた。
      (訳注:灯台の名は、古代ギリシア語では パロス(Φάρος)、
          ラテン語では パルス(Pharus)または パロス(Pharos)。
          本来は島の名であるが、ここでは灯台を指していると思われる。)

112節 (前半)[編集]

アレクサンドリアの大灯台Pharus Alexandrinus)の3D CGによる復元画。大理石や花崗岩で造られた堅固な三層の構造物から成り(下層が四角柱、中層が八角柱、上層が円柱)、その上で火を焚いて、その光を鏡で反射させることによって灯台の役割を果たしていた。てっぺんの屋根の上には海神ポセイドンの像が安置されていたなどともいう。高さは120~137m115~160mなど諸説があるが、数度の大地震によって完全に倒壊した。
 ピロンΦίλων)が「世界の七大景観(七不思議)」を選んだ時には灯台はまだ存在していなかったが、後に「七不思議」に数えられるようになった。なお、『内乱記』が言及しているエペススのディアナ(アルテミス)神殿も七不思議の一つ。
 島の名パロスΦάρος)にちなんで、この灯台もパロスと呼ばれ、ラテン語でも パルスPharus)またはパロスPharos)と呼ぶ(『内乱記』の写本では、二つの呼び方が混在している)。灯台を表わす普通名詞としてヨーロッパ諸語にも広まっている。
(訳注:112節は、ほかの節に比べてかなり長く、
    内容的にも前半と後半で異なるため、二つに分けて解説する。)

カエサルがパルス島と大灯台を制圧して、物資供給や増援の態勢を整える

  • ①項 Pharus est in insula turris magna altitudine,
    • 灯台パルスは、島における、とてつもない高さの塔で、
  • mirificis operibus extructa;
    • 驚くべき工法オプスによって建造され、
      (訳注1:mīrificus 「不思議な、驚くべき」)
      (訳注2:opus 「作業、工事」あるいは「建造物、構造物」)
      (訳注3:extruereexstruere) 「建てる、建設する」
           > 完了受動分詞 extructusexstructus))
  • quae nomen ab insula cepit.
    • その名前を、島(の名)から採ったものである。
      (訳注:ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』(en)の第4歌において、
          オデュッセウスの子テレマコスが、スパルタ王メネラオスから、
          エジプトのパロスという島に漂着した話を聞かされる。
           あるいは、メネラオスがエジプトのある島に漂着したときに、
          パロスという名前の舵取りが亡くなったので、その島をパロスと
          名付けた、という別の言い伝えもあるらしい。)


   堤防(ヘプタスタディオン)により、島とアレクサンドリアの街を結ぶ

  • ②項 Haec insula obiecta Alexandriae portum efficit;
    • この島は、アレクサンドリア(の市街地)と向かい合って、港をつくっている。
      (訳注:ōbicere ~[与格] 「(受動で)~と向かい合う、~に面する」
           > 完了受動分詞 obiectus
  • sed a superioribus regibus
    • そればかりか、かつての諸王によって
      (訳注:下線部は、写本では a superiōribus regiōnibus 「より高い場所から」だが、
          a superiōribus rēgibus 「かつての諸王によって」と修正提案されている。)
  • in longitudinem passuum DCCCC in mare iactis molibus
    • 900パッススの長さにて、海中に構造物モレスが設置されて、
      (訳注:下線部は、DCCCC (900)と思われるが、校訂本や訳書によっては DCCC(800)としているものもある。
          900パッスス=約1,350m、800パッスス=約1,200m となる。
           この堤防は、カエサルとほぼ同時代のギリシア人地理学者ストラボンの『地誌』によって
          ヘプタスタディオンῈπταστάδιον, Heptastadion, 羅 Heptastadium)という呼び名が伝えられ、
          これはギリシア語で「7スタディオン」を意味するが、この単位は地域や時代によってまちまちで、
          プトレマイオス朝時代のエジプトでの長さについては諸説がある。
           ファーブルの校訂版(P. Fabre, 1927)では、900パッスス ≒ 7スタディオン = 1,400m という説を採っている。)
  • angusto itinere et ponte cum oppido coniungitur.
    • 狭い道および(一つの)橋により、城壁都市オッピドゥムとつながれている。
      (訳注1:下線部は、写本では et だが、ut とする修正提案もある。)
      (訳注2:堤防の上を細い道が通り、島と街を結ぶ両端には橋を架けて、その下を船が通れるようになっていたと考えられている。
          ファーブルは、ponte(一つの橋により)ではなく、pontibus(複数の橋により)とする方が適切だ、と述べている。)


   港への出入りを困難にする事情とは

  • ③項 In hac sunt insula domicilia Aegyptiorum et vicus oppidi magnitudine;
    • この島には、エジプト人たちの居住地、城市の大きさをもつ集落がある。
      (訳注1:domicilium 「住居、居住地」)
      (訳注2:Aegyptius, -a, -um 「エジプトの、エジプト人(の)」)
      (訳注3:vīcus 「村、村落」)
  • quaeque ubique naves inprudentia aut tempestate paulum suo cursu decesserunt,
    • いたるところで、どんな船が、意図せずに あるいは悪天候により 自らの航路クルススから少しでもそれたとしても、
      (訳注1:inprūdentiaimprūdentia) 「意図しないこと」 )
      (訳注2:dēcēdere 「それる、はずれる」)
  • has more praedonum diripere consuerunt.
    • これら(の船団)を(島民たちが)海賊のように略奪することを常としていた。


  • ④項 Iis autem invitis, a quibus Pharus tenetur,
    • そのうえ、灯台パルスを掌握している者たちによって承知されなければ、
      (訳注:)
  • non potest esse propter angustias navibus introitus in portum.
    • 港の入口の狭さのために、船団にとって通過することができなかった。
      (訳注1:introitus 「入口」)
      (訳注2:ここで述べられている「港」とは、灯台~パロス島~堤防~アレクサンドリアに囲まれる東側の「大港」のこと。)


   カエサルが、灯台を制圧して、食糧や増援部隊の輸送を確かなものにする

  • ⑤項 Hoc tum veritus Caesar,
    • そこで、カエサルはこのことを懸念して、
  • hostibus in pugna occupatis,
    • 敵方 (アキッラスの軍勢) が(アレクサンドリア市街での)戦いに忙殺されていたので、
  • militibus expositis Pharum prehendit
    • 上陸させていた兵士たちによって、灯台パルスを占領して、
      (訳注:前節=111節⑥項で、兵士たちを灯台のたもとへ上陸させている。)
  • atque ibi praesidium posuit.
    • そこに、守備隊を配置した。


  • ⑥項 Quibus est rebus effectum,
    • そうした事がなされたので、
  • uti tuto frumentum auxiliaque navibus ad eum subportari possent.
    • 穀物や増援が無事に、船団によって彼 (カエサル) のもとへ輸送できるようになったほどだ。
      (訳注:tūtō 「安全に、無事に」)
  • Dimisit enim circum omnes propinquas provincias atque inde auxilia evocavit.
    • 確かに、周辺の最寄りの全属州に(伝令たちを)派遣して、そこから増援部隊を呼び出した。

112節 (後半)[編集]

アキッラスを動かしていた黒幕ポティヌスをカエサルが殺害し、アレクサンドリア戦争が新たな展開へ移る

  • ⑦項 Reliquis oppidi partibus
    • 城市のほかの地区では、
  • sic est pugnatum ut aequo proelio discederetur et neutri pellerentur
    • 優劣がつかぬほど戦われて撤退され、どちらも撃退されなかった。
      (訳注:neuter, -tra, trum ~ 「どちらも~でない」)
  • ── id efficiebant angustiae loci ──,
    • ── (市街戦の)戦場の狭さが、それをもたらしていたのだが、 ──
  • paucisque utrimque interfectis
    • 双方とも少数が戦死しただけで、
  • Caesar loca maxime necessaria conplexus
    • カエサルは、とりわけ重要な地点を
      (訳注:conplectīcomplectī) 「取り巻く」 > 完了受動分詞 conplexus(complexus))
  • noctu praemuniit.
    • 夜間に防備を固めた。
プトレマイオス朝時代のアレクサンドリアの市街図(訳者が作成)。


   カエサルが、王宮に隣接する劇場を砦として利用する

  • ⑧項 In eo tractu oppidi
    • 城市のその区 域トラクトゥスの中には、
      (訳注:tractus 「区域」)
  • pars erat regiae exigua,
    • 王宮地区レギアのわずかな一部があって、
      (訳注:rēgia 「王宮」。王宮地区は、ギリシア語で
          バシレイアβασιλείᾱ)と呼ばれていた。)
  • in quam ipse habitandi causa initio erat inductus,
    • (カエサル)自身が当初は居住のために導き入れられていた。
  • et theatrum coniunctum domui,
    • 居館ドムスに隣接して劇 場テアトルムもあり、
  • quod arcis tenebat locum
    • それは、砦の役割を占めていて、
  • aditusque habebat ad portum et ad reliqua navalia.
    • 港やほかのドックへの通路を持っていた。
      (訳注:下線部は、写本では reliqua 「ほかの」だが、regia 「王の」とする修正提案もある。)


  • ⑨項 Has munitiones insequentibus auxit diebus,
    • これらの防塁を、続く日々に増設して、
  • ut pro muro obiectas haberet
    • 防壁として(敵方に)向かい合わせて、
  • neu dimicare invitus cogeretur.
    • 不本意に闘うことを強いられないようにしていた。


   クレオパトラの妹アルシノエが、王宮から抜け出し、アキッラスとともに攻囲軍を指揮し出す

  • ⑩項 Interim filia minor Ptolomaei regis
  • vacuam possessionem regni sperans
    • 王位レグヌムからであるのを占有することを期待して、
  • ad Achillam sese ex regia traiecit
    • 王宮レギアから、アキッラスのもとへ身を投じ、
  • unaque bellum administrare coepit.
    • 一緒に、戦争の采配を振り始めた。
      (訳注:カエサルは、プトレマイオス13世とクレオパトラ7世にエジプトを共同統治させ、
          アルシノエと下の弟プトレマイオス14世をキュプロス島に封じようとしたらしい。
          アルシノエを王宮から脱出させたのは、彼女の養育官で宦官であるガニュメデス Ganymedes (eunuch) であった。)


   アキッラスとアルシノエの間に主導権をめぐる対立が起こる

  • ⑪項 Sed celeriter est inter eos de principatu controversia orta;
    • だが、たちまち、彼らの間で、指導者の立場プリンキパトゥスについて内紛が生じた。
  • quae res apud milites largitiones auxit;
    • その状況は、兵士たちの間に(双方の)施しを増した。
  • magnis enim iacturis sibi quisque eorum animos conciliabat.
    • なぜなら、大枚を投じることにより、おのおのが彼ら (兵士たち) の気持ちを自分たちに引き寄せようとしていたからだ。
      (訳注1:conciliāre 「味方に引き入れる」)
      (訳注2:アルシノエの王宮脱出の立役者であったガニュメデスが主導権を握ろうとしたのであろう。
         この後、ガニュメデスはアルシノエに命じられる形で、アキッラスを殺害することになる。)


  • ⑫項 Haec dum apud hostes geruntur,
    • こういったことが、敵方の中でなされている間に、
  • Pothinus [nutricius pueri et procurator regni, in parte Caesaris,]
    • ポティヌスが [少年の養育官ヌトリキウス、かつ王政レグヌム監督官プロクラトルであり、カエサルの側にいたのだが、]
      (訳注:[  ]内の箇所は、後世の書き込みであると考えられて、削除提案されている。)
  • cum ad Achillam nuntios mitteret hortareturque, ne negotio desisteret neve animo deficeret,
    • アキッラスのもとへ伝令たちを遣わして、任 務ネゴティウムをやめることなく 気を落とすな、と元気づけていたときに、
  • indicatis deprehensisque internuntiis
    • 使いの者インテルヌンティウスたちが、密告されて捕らえられたので、
      (訳注1:indicāre 「知らせる」「密告する」 > 完了受動分詞 indicātus
      (訳注2:dēprehendere 「捕らえる」 > 完了受動分詞 dēprehēnsus
      (訳注3:internūntius 「仲介者、使者」)
  • a Caesare est interfectus.
    • (ポティヌスは)カエサルによって殺害された。
  • [Haec initia belli Alexandrini fuerunt.]
    • [これらのことが、アレクサンドリア戦争の緒戦であった。]
      (訳注:[  ]内は、後世の書き込みであると考えられ、削除提案されている。)

訳者あとがき[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 要撃(ヨウゲキ)とは - コトバンク
  2. ^ マティアス・ゲルツァー著、長谷川博隆訳『ローマ政治家伝Ⅰ カエサル』(名古屋大学出版会)p.349の注(225)を参照。

参考リンク[編集]