不動産登記法第123条
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条文
[編集](定義)
- 第123条
- この章において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
- 筆界
- 表題登記がある一筆の土地(以下単に「一筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう。
- 筆界特定
- 一筆の土地及びこれに隣接する他の土地について、この章の定めるところにより、筆界の現地における位置を特定すること(その位置を特定することができないときは、その位置の範囲を特定すること)をいう。
- 対象土地
- 筆界特定の対象となる筆界で相互に隣接する一筆の土地及び他の土地をいう。
- 関係土地
- 対象土地以外の土地(表題登記がない土地を含む。)であって、筆界特定の対象となる筆界上の点を含む他の筆界で対象土地の一方又は双方と接するものをいう。
- 所有権登記名義人等
- 所有権の登記がある一筆の土地にあっては所有権の登記名義人、所有権の登記がない一筆の土地にあっては表題部所有者、表題登記がない土地にあっては所有者をいい、所有権の登記名義人又は表題部所有者の相続人その他の一般承継人を含む。
- 筆界
解説
[編集]- 本章(本条より第150条まで)において「筆界特定制度」を定める。
- 不動産登記制度の成立以来、隣接する土地の筆界の位置に争いがある場合、これを明定するためには、訴訟である「境界(けいかい)確定の訴え(または、境界確定訴訟)[1]」のみによらざるを得なかった。これは、隣接する当事者間の民事的争いであるにも関わらず、公法上の土地の単位である筆同士の境界である筆界を画定する訴訟であるため、通常の訴訟とは異なる特色がある。なお、私法上の土地の所有権の境界を確定する場合、所有権界(筆界と一致するとは限らない)を確定する所有権確認訴訟となり、さらに別の形態の訴訟となる。
- 境界確定の訴えは訴訟であるため、時間・費用がかかる、裁判官自身は土地測量等の専門家ではない一方でそれら専門家の関与が法定されていないなどの問題点を有していたため、これを解決するため、2006年(平成18年)に前年不動産登記法改正を受け、行政制度として導入された。
概要
[編集]- 不動産登記制度によって国が登記上公示している土地と土地との境界を筆界と定め、筆界が不明なときに土地の所有者や相続人などから筆界特定の申請があれば、筆界調査委員という筆界の専門家の意見を基にして、筆界特定登記官が筆界を特定する制度である。
- 筆界特定された筆界は、登記行政上の特定であり、特定された筆界を反映させる分筆登記や地積更正登記は可能であるが、行政処分としての公定力はないとされる。したがって、不動産登記法第156条の「登記官の処分」には該当しない為、審査請求の対象にならず、又、行政事件訴訟法に基づく抗告訴訟も提起できない。
- 筆界特定された筆界に不服がある場合は、不動産登記法第148条の規定に基き境界確定訴訟を提起し、筆界特定された筆界を覆す判決を確定させることにより、筆界特定の効力を失わせることとなる。
問題点
[編集]- 筆界特定されても、特定された各点に、直接、境界標を設置する為には、相手方の同意が必要とされ(民法第223条)、裁判での確定の様な完全な効力はない。
- 筆界特定されても、納得できない当事者は、いつでも裁判を提訴することができ、裁判の確定判決の様な安定した状態とはならない。にもかかわらず、特定された筆界を測量し作成した地積測量図を使用した、地積更正登記や分筆登記の申請は、筆界特定後はいつでも可能であり、地積更正後や分筆後に、事情を知らない第三者に所有権移転があった場合、後日、裁判で筆界特定が覆され、購入した土地が狭くなったり、家が建てられなくなったりする可能性がある。
- これらの問題点を解決するため、筆界特定について一定の訴訟提起期限を設け、この期間が経過した後は、境界確定訴訟を提訴不能とし、筆界特定された筆界を裁判上の判決と同等の効果を持つ筆界とする制度の改革が求められている。
参照条文等
[編集]- 平成17年12月6日法務省民二第2760号通達より
- (筆界)
- (略)「当該1筆の士地が登記された時」とは、分筆又は合筆の登記がされた土地については、最後の分筆又は合筆の登記がされた時をいい、分筆又は合筆の登記がされていない士地については、当該土地が登記簿に最初に記録された時をいう。
- (筆界)
判例
[編集]脚注
[編集]- ^ 現行法において境界確定の訴えの性質、裁判手続、判決の効力等に関する直接の根拠規定はない。戦前は、裁判所構成法で「不動産ノ経界確定ノミニ関スル訴訟」を区裁判所の管轄に属するとしていたが、戦後の裁判所法では継承されなかった。判例及び実務慣行上認められているものであるが、不動産登記法の改正により「民事訴訟の手続により筆界の確定を求める訴え」として法令上認知された。戦前の規定から「経界確定訴訟」とも書くことがあるが、講学・実務上「境界(けいかい)確定の訴え」と言う。将来的には、「筆界確定の訴え」の用語が一般化していくものと思われる。
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