代数方程式論

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この項目では、有理数係数の1変数代数方程式、すなわち有理数を用いて

の形に表される方程式の解法について述べる。この方程式は、両辺をで割ることで、

という形で表すことができるので、以降はこの方程式の解法について述べる。

一次方程式[編集]

一次方程式

は移項により解くことができ、その解は

である。


方程式

の解は、

である。

二次方程式[編集]

二次方程式

は以下のように平方完成を用いて解くことができる。


方程式

の解は、

である。


方程式

の解は、

である。

このように、二次方程式は先ほど求めた解の公式によって解くことができるが、因数分解が簡単にできる場合に解の公式を用いるとかえって計算が煩雑になる。

一次方程式の場合とは異なり、二次方程式は係数が実数であっても虚数解しか持たない場合もある。このことは、人類が初めて虚数を必要としたきっかけとしてしばしば言及されるが、歴史的にはこれは正しくない。虚数を知らない人は、虚数解しか持たない方程式はそもそも「解を持たない」ということにしてしまえば済むからである。代数方程式を研究していく中で虚数が決定的に必要とされたのは、次の三次方程式の解法が発見されてからであった。

三次方程式[編集]

三次方程式

を考える。この方程式は、

と変形できる。

とおく。また、

を満たす2数が存在したとする。このとき方程式は、

と解くことができる(ただし、である)。よって、

である。

あとは、を求めればよい。

に注意すると、は二次方程式

の解である。これを解くと

となるので、

とすればよい。すなわち、3つの解は

である。


方程式

の解は、

である。


方程式

の解は、

である。ここで、であることに注意すると、

である。

3次方程式でも、因数定理で容易に因数分解できるものに解の公式を利用すると、かえって計算が煩雑になる。のみならず、実数解しか持たない方程式では、それにもかかわらず計算の途中で虚数の計算を要することになる。解は実数なのに、途中では虚数が登場するというこの現象こそが、人類が初めて虚数を必要としたきっかけといわれる。

四次方程式[編集]

四次方程式

を考える。この方程式は、

と変形できる。

とすると、

である。この方程式の左辺を因数分解して、

としたい。左辺を展開すると

となるので、係数を比較して

である。上の2式より

なので、これを3番目の式に代入すると、

となる。この方程式はについての3次方程式なので、前節の方法で解くことができ、したがっての値が求まる。すなわち、方程式の左辺がについての二次式の積の形に表せるので、二次方程式の解の公式を用いれば解が求まる。最後の計算の部分はこのまま文字式で計算すると煩雑に過ぎる式となるので、ここでは省略する(興味のある読者は試みるとよい)。注目すべきは、煩雑な式ではあるものの、四則演算と冪根(平方根・立方根)の記号のみからなる式となることである。

高次方程式[編集]

五次方程式では、これまでとは状況が大きく変わる。五次以上では、一般の方程式について、四次以下の方程式のような四則演算と冪根のみからなる解の公式を作ることはできないことが証明されているのである。その不可能性の証明には、ある程度の代数学の知見を必要とするので、詳細はガロア理論の項に譲る。

誤解のないように注意しておくが、五次以上の方程式であっても、解が存在しないわけではなく、ただ四則演算と冪根のみによって表すことができないというだけである。解は必ず存在し、しかもその個数は(重複度込みで)次数と一致することがわかっている。すなわち、次の定理が成り立つ。

定理(代数学の基本定理)
複素数係数のn次方程式

は、(k重解をk個と数えることにすれば)ちょうどn個の複素数解を持つ。すなわち、左辺は(互いに相異なるとは限らない)n個の複素数を用いて

と因数分解できる。

この定理の証明には、複素数の集合の解析的性質が必要となる。ゆえに、証明は複素解析学の項に譲ることにする。