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太陽

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
天文学 > 太陽系 > 太陽
地球から望む太陽、スコットランド

太陽

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太陽は、銀河系の恒星の一つで、太陽系の物理的中心と位置づけられる。

ガス球であるため、地表と大気の区別がない。

中心部では6.7 × 108t /s(毎秒6億7000万トン)の速さで水素の原子核融合が起こり、莫大なエネルギーを放出している。地球に到達する太陽エネルギーは、太陽が放出する全エネルギーのうちほんのわずかな分でしかない。

  • 赤道直径 … 1,392,000km
  • 自転周期(大きな球体であるため緯度により自転速度が異なる)
    • 赤道 … 27.275日
    • 緯度30° … 28.186日
    • 緯度60° … 30.8日
    • 緯度75° … 31.8日
    • 銀河を一周する時間 … 2.2 × 108 年(2億2000万年)
  • 密度 … 1.411g / cm3
  • 体積 … 6.09 × 1027 m3
  • 質量 … 1.9891 × 1030 kg

太陽の構造

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太陽は、その内部から外部にかけて層状に構成されており、コロナ、遷移層、彩層、光球、対流層、放射層、中心核の7つの主な層に分けられる。それぞれの層は異なる温度や密度、物理的特性を持ち、太陽の活動や現象に寄与している。

コロナ
コロナは太陽の最外層で、温度は約100万から200万℃に達する。この層は非常に薄く、太陽風の発生源となる。コロナは皆既日食の際に白く輝く姿で観測されることができ、その美しさは多くの人々を魅了している。コロナの高温の理由は完全には解明されていないが、「コロナ加熱の謎」と呼ばれ、磁場のエネルギー解放、ナノフレア、アルヴェーン波といった様々なメカニズムが考えられている。
彩層
彩層はコロナと光球の間に位置する層で、温度は約4000 - 5000℃程度である。赤い光を放つため、皆既日食の際に観測可能で、赤い部分が彩層に相当する。また、彩層内ではフレアと呼ばれる爆発的現象が発生することがあり、これは彩層の一部が噴出することで生じる。フレアは太陽の表面から大量のエネルギーを放出し、宇宙空間に影響を与える。
光球
光球は太陽の可視光を放つ層で、表面温度は約5780 K(約6000℃)である。ここには黒点と呼ばれる低温領域が存在し、約11年周期でその数が増減する。黒点は周囲の光球よりも暗く、太陽の活動周期を示す重要な指標となる。また、光球からはプロミネンス(紅炎)と呼ばれる巨大な爆炎が絶えず噴出しており、これも太陽の活動を示す重要な現象である。
対流層と放射層
対流層と放射層は、中心核で生成されたエネルギーを太陽の表面に輸送する役割を担っている。放射層ではエネルギーが放射の形で伝わり、対流層では物質の移動によってエネルギーが伝達される。対流層では対流が活発に行われており、これにより熱が効率的に表面に運ばれている。
中心核
太陽の中心核は核融合が行われる場所で、温度は約1.58 × 107 K(約1580万℃)に達する。この極めて高温の環境下で、水素原子が融合してヘリウムが生成され、その際に大量のエネルギーが放出される。このエネルギーが太陽の光や熱の源となり、地球に生命を支える光を届けている。

光球を形成する物質

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太陽の光球を構成する物質の割合は以下の通りである。

  • 水素 … 73.46 %
  • ヘリウム … 24.85 %
  • 酸素 … 0.77 %
  • その他(炭素, 鉄, ネオンなど)… 0.82 %

温度

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太陽の各層の温度は以下のようになっている。

コロナ … 1.5 × 106 K(約100万 - 200万℃)
表面よりも遥かに高温であることは解明されておらず、「コロナ加熱の謎」として研究が続けられている。
黒点 … 4000 - 4500 K(約4000 - 5000℃)
彩層~光球表面 … 5780 K(約6000℃)
中心 … 1.58 × 107 K(約1580万℃)

太陽の構造は、非常に複雑でありながら、宇宙の中での生命の維持に不可欠な役割を果たしている。各層の特性や活動は、太陽の安定性や変動に深く関わっており、その理解は天文学において非常に重要なテーマである。

太陽黒点

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NASAにより撮影された太陽の黒点の拡大図。

太陽の光球の部分には周りと比べて比較的温度が低く、温度では約4000Kである黒い部分がある。この部分のことを黒点という。黒点はふつう、黒い部分とその周りにある少し黒い部分から構成される。この黒い部分を暗部、少し黒い部分を半暗部という。写真を見るとわかりやすい。

なお、この節で太陽黒点としたのは黒点は太陽に限らず、他の恒星にも存在するためである。変光星の一種であるりょうけん座RS型の変光星は太陽の数10倍もの黒点をもつものが発見されている。

黒点はその年によってよく見られる年とあまり見られない年がある。例えば、マウンダー極小期と呼ばれる期間では30年間で50個しか見られないなど、特異的なこともある。しかし、これはあまりに特殊的な例で、通常は11年間ごとのサイクルでその個数は決まってくる。この11年の周期のことを、太陽活動周期という。また、この太陽活動周期を表す指標として黒点相対数というものがあり、黒点相対数をR、kを定数、gを黒点群の数、sを黒点の総数とすると、

で表せる。kは観測の方法などによって異なってくる。

太陽と宇宙気象

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太陽は、地球にとって最も重要な天体であり、私たちの生活に大きな影響を与える。太陽からの放射エネルギーや粒子の流れは、宇宙環境にさまざまな現象を引き起こす。この節では、太陽の活動が引き起こす宇宙気象について解説する。

太陽活動

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太陽は、約11年周期で変動する活動周期を持っており、この周期は太陽黒点の数や太陽フレア、コロナ質量放出(CME)などによって特徴づけられる。太陽活動が活発な時期には、これらの現象が頻繁に発生し、地球に与える影響も増加する。

太陽風

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太陽風は、太陽のコロナから放出される高温のプラズマの流れであり、秒速400〜800kmの速度で宇宙空間を進む。太陽風には電子や陽子、重イオンが含まれており、これらの荷電粒子が地球に到達すると、地球の磁場と相互作用する。太陽風の強度は、太陽活動によって変化し、特にCMEが発生すると、その影響はより顕著になる。

磁気嵐

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磁気嵐は、太陽風の強度が急激に増加することによって引き起こされる現象で、地球の磁場に大きな影響を与える。磁気嵐が発生すると、オーロラが強くなり、電磁波の通信に障害が発生することがある。特に、人工衛星や宇宙船にとっては、深刻な影響を与える可能性があるため、宇宙気象の監視が重要である。

デリンジャー現象

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デリンジャー現象は、太陽からの高エネルギー粒子が地球に到達し、特に電離層に影響を与えることによって発生する。この現象は、無線通信やGPS信号に影響を及ぼし、特に航空機や宇宙船の運行において注意が必要である。太陽活動が活発な時期には、デリンジャー現象が頻繁に発生するため、宇宙気象予報の重要な要素となっている。

宇宙気象の影響

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宇宙気象は、地球上の技術や生態系にさまざまな影響を与える。例えば、太陽風や磁気嵐は、電力網に過負荷をかけたり、通信システムに障害を引き起こしたりすることがある。さらに、宇宙天気予報は、航空機の航行や宇宙探査ミッションにおいても重要な役割を果たしている。科学者たちは、太陽活動と宇宙気象の関係を解明することで、より正確な予測を行い、地球上の生活を守るための研究を続けている。