聖書原典購読初級/1
ああ、主、ヤハウェよ
[編集] אֲהָהּ אֲדֹנָי יְהוִה
[編集]聖書に全部で11回出てくる(ヨシュア記77、士師記622、列王紀下65、エレミア書16、410、1413、 3217、エゼキエル書414、 98、 1113、 2049)。
אֲהָהּ 'ahāh 「ああ!」。おそれの間投詞。最後の ה にはマッピークがあるので、アハーではなく、アハーハと発音する。
אֲדֹנָי 'adōnāy 「主」。ヤハウェにのみ用いる。その他の場合は אָדוֹן ādōn。語尾の ־ׇי āy が元来何を意味したかについては、研究者の間で意見が分かれる。主に、1. 意味を強める接尾辞 afformative -ay から(例えば人名 הַגַּי haggay < הַג )、2. אֲדֹנִי adōnī 「わが主」から(単数 אָדוֹן に一人称単数の接尾代名詞が付いた形。接尾代名詞がつくと、語調が変わり、 אָדוֹן の母音字ワウが落ちるのが普通)、3. אֲדֹנַי adōnay 「わが主」から( אָדוֹן の複数形 אֲדֹנִים に一人称単数の接尾代名詞が付いた形。この場合の複数は、 אֱלֹהִים elōhīm 「神々」→「神」と同様、尊厳の複数)、と三通りの説明がある。確かなことはわからない。ともあれ、 אָדוֹן がヤハウェに用いられるとき、いつからかユダヤ人は אֲדֹנָי と発音し、他の場合と区別した。
יְהוִה 「ヤハウェ」。 יהוה は古代イスラエルの神名。ユダヤ人は十戒の第三戒(出エジプト記207)に従って、 יהוה の名を口にしなかった。聖書本文に יהוה の名が出るときは、普通、אֲדֹנָי adōnāy と発音した。そのために יְהוָה と母音記号がつけられた(־ֲが־ְになっているのは、־ֲ は、通常、א、ה、ח、ע の四つの喉音にしかつかないから)。ところが אֲדֹנָי が יהוה の前に来る場合には、adōnāy adōnāy と二重になってしまう。そこで、このような場合には יהוה を אֱלֹהִים と読んだ。従って、 יהוה の母音が יְהֹוִה もしくは יְהוִה となる(־ֱ が ־ְ となる理由は ־ֲ が ־ְ となる場合と同じ)。なお、この問題についてはこちらを参照。 יהוה が何故ヤハウェ(Yahweh) なのかについては、いずれ説明する機会があると思う。
我々は、人生の歩みにおいて、幾度となく「ああ、主よ」と叫びたくなることがある。