銃砲刀剣類所持等取締法第2条
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条文
[編集](定義)
- 第2条
- この法律において「銃砲」とは、拳銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。以下同じ。)をいう。
- この法律において「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ(刃渡り5.5センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつて峰の先端部が丸みを帯び、かつ、峰の上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わるものを除く。)をいう。
- (昭和37年4月5日法律第72号[1]、昭和40年4月15日法律第47号[2]、平成18年5月24日法律第41号[3]、平成20年12月5日法律第86号[4]、令和3年6月16日法律第69号[5]改正)
解説
[編集]本条は、「鉄砲」と「刀剣類」の定義について規定している。
銃砲
[編集]本法において、「銃砲」とは、次の7種類のものをいう。鉄砲に該当するかどうかの条件は、その物品が、(1)この7種類のいずれかに該当すること(類型的要件)と、(2)弾丸を発射する機能によって人や動物を殺傷する程度の威力を有すること(実質的要件)とされる。
拳銃
[編集]「拳銃」とは、「金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃器で、片手で発射操作のできるもの[6]」をいう。
小銃
[編集]「小銃」とは、個人で携帯し、両手で保持し肩付けして照準・発射できる形態であり、主として戦闘用に作られた銃をいう。
機関銃
[編集]「機関銃」とは、短時間に多数の弾丸を発射する連続自動撃発式の機能を有する戦闘用の銃で、「口径が20ミリメートル未満(武器等製造法施行規則2条1項イ(3))」のものをいう。
砲
[編集]「砲」とは、金属性の弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲のうち、口径が20ミリメートル以上のものをいい、次の4種類に分類される(武器等製造法施行規則2条1項ロ)。
- 小口径砲
- 口径が20ミリメートル以上40ミリメートル以下の銃砲
- 中口径砲
- 口径が40ミリメートルを超え、90ミリメートル未満の銃砲(迫撃砲を除く)
- 大口径砲
- 口径が90ミリメートル以上の銃砲(迫撃砲を除く)
- 迫撃砲
- (条文上の説明はない)
なお、「砲」という言葉が付いている道具のうち、「捕鯨砲」は、武器等製造法2条2項により「猟銃等」に区分されており、近代戦に適さない「古代砲」も本法にいう砲に該当しない。ただし、武器として扱った場合などは、「その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲」に該当することとなる。
猟銃
[編集]「猟銃」とは、狩猟、有害鳥獣駆除、標的射撃に適するように作られた散弾銃やライフル銃をいう。猟銃のうち、ライフル銃は、「銃腔に腔旋を有する猟銃で腔旋を有する部分が銃腔の長さの半分をこえるもの」と規定されている(銃砲刀剣類所持等取締法5条の2第4項)。
その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲
[編集]「その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲」とは、上記のいずれにも該当しないが、弾丸を発射する機能によって人や動物を殺傷する程度の威力を有する装薬銃砲の全てをいう。「装薬銃砲」とは、火薬・爆薬・火工品により、その爆発力によって弾丸を発射するものをいう。
空気銃
[編集]「空気銃」とは、圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。また、空気拳銃も空気銃の一種とされる。
内閣府令の規定は以下の通りである。
- 内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値
- 弾丸の運動エネルギー(単位は、ジュールとする。)の値の測定は、次に掲げるものに基づき算出することにより行うものとする(銃砲刀剣類所持等取締法施行規則2条)。
- 水平方向に発射された弾丸が弾道の上における銃口から水平距離でそれぞれ0.75メートルの点と1.25メートルの点との間を移動する速さを、室内においてその温度が20度から35度までのものである場合に測定したときにおける測定値
- 弾丸の質量の測定値
- 内閣府令で定める値
- 人の生命に危険を及ぼし得る弾丸の運動エネルギーの値は、弾丸を発射する方向に垂直な当該弾丸の断面の面積(単位は、平方センチメートルとする。)のうち最大のものに20を乗じた値とする(銃砲刀剣類所持等取締法施行規則3条)
つまり、弾丸の運動エネルギーの値が、1平方センチメートルあたり20ジュールを超える場合は、人に着弾したときにその人を死に至らしめる可能性があるとして、この値が定められている。
なお、空気銃に該当しない場合であっても、「準空気銃」として規制される場合がある(銃砲刀剣類所持等取締法21条の3)。
銃砲に該当しないもの
[編集]クロスボウ、スリングショット、弓などは、金属性の弾丸を発射できるとしても、装薬銃砲にも空気銃にも該当しないものとして、本法にいう鉄砲に該当しない。
なお、クロスボウ(引いた弦を固定し、これを解放することによつて矢を発射する機構を有する弓のうち、内閣府令で定めるところにより測定した矢の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。)については、2022年(令和4年)3月15日以降、本法の対象となる[7][8]。
刀剣類
[編集]本法において、「刀剣類」とは、次の6種類のものをいう。刀剣類に該当するかどうかの条件は、その物品が、(1)この6種類のいずれかに該当すること(類型的要件)と、(2)鋼質性であり人や動物を殺傷する程度の威力を有すること(実質的要件)とされる。
- 刃渡り15センチメートル以上の刀
- 刃渡り15センチメートル以上のやり
- 刃渡り15センチメートル以上のなぎなた
- 刃渡り5.5センチメートル以上の剣
- あいくち
- 45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ
「刃渡り」とは、「棟区(むねまちすなわち刀身の峯部の柄の窪みの箇所)と鋩子(ぼうしすなわち切先)とを直線で測つたもの[9]」をいう。
刀
[編集]「刀」とは、鍔および柄を付けて用いる片刃の鋼質性の刃物で、殺傷の用具としての機能を有するものをいう。本法の対象となるものは、刃渡り15センチメートル以上のものに限られ、鍔などは必須条件ではない。
居合道や剣舞に用いる刀、儀式などで用いる軍刀、模造刀などであっても、上記の定義を満たす場合は「刀」に該当する。
やり
[編集]「やり(槍)」とは、長い棒状の柄をつけて、突きやすいように作られた鋼質性の刃物で、殺傷の用具としての機能を有するものをいう。本法の対象となるものは、刃渡り15センチメートル以上のものに限られる。
なぎなた
[編集]「なぎなた(薙刀)」とは、長い柄を付けて用いる茎の長い片刃の鋼質性の刃物で、殺傷の用具としての機能を有するものをいう。本法の対象となるものは、刃渡り15センチメートル以上のものに限られる。
剣
[編集]「剣」とは、柄を付けて用いる諸刃の鋼質性の刃物で、先端が鋭く、殺傷の用具としての機能を有するものをいう。本法の対象となるものは、刃渡り5.5センチメートル以上のものに限られる。刃渡りの長さについて、以前は他の刀剣類と同様に「刃渡り15センチメートル以上」とされていたが、2008年(平成20年)の秋葉原通り魔事件の発生を踏まえ、法律的、医学的観点から、同年に「刃渡り5.5センチメートル以上」と改正された。
スローイングナイフ、ダイバーズナイフ、ダガーナイフなどの名称であっても、上記の定義を満たす場合は「剣」に該当する。先端の丸いダイバーズナイフ、刃の付いていないペーパーナイフや段ボールカッターなどは、「剣」に該当しない。
あいくち
[編集]「あいくち(匕首)」とは、鍔のない柄を付けて用いる鋼質性の短刀で、殺傷の用具としての機能を有するものをいう。あいくちは、その形態上、隠密に形態しやすく危険性が大きいことから、刃渡りに関する明文規定はない。
飛出しナイフ
[編集]「飛出しナイフ」とは、バネの弾力などを利用し、ボタンや爪を押すといったような単純な動作によって、45度以上に自動的に開刃する装置を有するナイフをいう。ただし、次の条件を全て備えたものは除外される。
- 刃渡り5.5センチメートル以下であること
- 開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有しないこと
- 刃先が直線であって峰の先端部が丸みを帯びていること
- 峰の上における切先から直線で1センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して60度以上の角度で交わること
刀剣類に該当しないもの
[編集]包丁、十徳ナイフ、はさみなどは、本法上の刀剣類に該当しない。
上記の刀剣類の要件を満たさなくても、金属で作られ刀剣類に著しく類似する形態・構造を有する物は「模造刀剣類」とされ、携帯が禁止される場合がある(銃砲刀剣類所持等取締法22条の4、銃砲刀剣類所持等取締法施行規則104条)。
参照条文
[編集]- 銃砲刀剣類所持等取締法第5条の2(猟銃及び空気銃の許可の基準の特例)
- 銃砲刀剣類所持等取締法第21条の3(準空気銃の所持の禁止)
- 銃砲刀剣類所持等取締法第22条の4(模造刀剣類の携帯の禁止)
- 銃砲刀剣類所持等取締法施行規則第2条(弾丸の運動エネルギーの値の測定の方法)
- 銃砲刀剣類所持等取締法施行規則第3条(人の生命に危険を及ぼし得る弾丸の運動エネルギーの値)
- 銃砲刀剣類所持等取締法施行規則第104条(模造刀剣類)
- 武器等製造法第2条(定義)
- 武器等製造法施行規則第2条(武器等の種類)
判例
[編集]- 最高裁判所第三小法廷決定、昭和57年10月8日、昭和57年(あ)第323号、『銃砲刀剣類所持等取締法違反事件』、最高裁判所判例集36巻10号867頁。
- 最高裁判所第三小法廷決定、平成8年2月13日、平成5年(あ)第728号、『銃砲刀剣類所持等取締法違反事件』、最高裁判所判例集50巻2号236頁。
脚注
[編集]- ^ “法律第七十二号(昭三七・四・五)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “法律第四十七号(昭四〇・四・一五)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “法律第四十一号(平一八・五・二四)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “法律第八十六号(平二〇・一二・五)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “法律第六十九号(令三・六・一六)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ 東京高判昭和47年5月23日、『銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反被告事件』、高裁刑集25巻2号219頁。
- ^ “クロスボウの所持が禁止されます!”. 警察庁Webサイト. 2024年11月17日閲覧。
- ^ “法律第六十九号(令三・六・一六)”. 衆議院. 2024年11月17日閲覧。
- ^ 最判昭和26年9月6日、『銃砲等所持禁止令違反、詐欺事件』、刑集5巻10号1891頁。
参考文献
[編集]- 辻義之監修、大塚尚著 『注釈 銃砲刀剣類所持等取締法』 立花書房、2015年10月20日、第2版。ISBN 9784803743388。
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