音価

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音価[編集]

音の長さを、音価と言います。実際に響いている長さではなく、その音が支配している長さを、音価と言う、といったほうが正確かも知れません。たとえばある音符にスタッカートが付いて音の響きそのものが短くなっても、音価は変わらないからです。

音価を書き表すのには、それぞれの音価に応じた音符を使います。

音符[編集]

音符の音価は、他の音価の何倍かで表されます。ここで全音符を1小節分の音価と定義して、これを基準にします。

音符の各部の名称

各音符は全音符の音価を何等分するかでそれぞれ[分割数]分音符と命名されます。例えば、2分音符は全音符の1/2の音価で、4分音符は全音符の1/4の音価です。この分割数はより長い音価の音符に対して2倍ずつ増えていく、つまり2の整数乗(2、4、8、16)の数が入ります。

現代では、大多数の楽曲が4拍子となっています。そのため4拍子の1拍である4分音符を基準として考える事がほとんどです。

付点音符[編集]

上に示した音価の1.5倍の長さの音価の音符を、付点音符と言います。例えば、4分音符の音価を1としたときに、付点4分音符の音価は1.5、付点2分音符の音価は3となります。

これは付点4分音符は4分音符と8分音符を足し合わせた音価を持っていると言い換えられます。

付点音符は音符の「たま」の右に点を加えることで示されます。元来は、この点が、元の音符の半分の長さを持つと考えられていました。

複付点音符[編集]

1.75倍の長さの音価の音符を、複付点音符といいます。上の例で言うならば、複付点4分音符は4分音符と8分音符と16分音符を足し合わせた音価を持っています。

付点音符は音符の「たま」の右に点を2つ加えることで示されます。最初の点が元の音符の半分の長さを、次の点がそのさらに半分の長さを持つと考えていいでしょう。

連符[編集]

音符は必ずしも2の整数乗(2、4、8、16)の数で割った大きさになるとは限りません。3等分する必要も出てくるでしょうし、5等分する必要も出てくるでしょう。そのような音価を書き表すには、連符を使います。連符には、特別の形がありません。上に書いた音符の形をそのまま借用し、何等分するのかを数字で表します。

  • 3等分する連符を三連符と呼び、2等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
  • (4)
  • 5等分する連符を五連符と呼び、4等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
  • 6等分する連符を六連符と呼び、4等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
  • 7等分する連符を七連符と呼び、4等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
  • (8)
  • 9等分する連符を九連符と呼び、8等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
    ....
  • 15等分する連符を十五連符と呼び、8等分したときと同じ音価の音符で書き表します。
  • (16)

タイ[編集]

ひとつの音符で表しきれない長さの音は、タイを使い、いくつかの音符を合わせた長さとして書き表します。

休符[編集]

音楽には音の鳴っていない時間も存在します。そういう時間を休符で表します。言い方を変えると、音価が音を持たないとき、休符を用います。休符は原則として、同じ数字の付いた音符と同じ長さを表します。

ただし、全休符は普通、1小節の休みを表します。1小節の長さがどんなに長くても、短くても、1小節の休みは全休符で表すことができるのです。また、倍全休符は2小節休みを表します。以下、3小節休みから8小節休みまで、形が決まっています。任意の小節数の休みを表す休符もあり、この場合は休符の上に休む小節数を書きます。(1小節休みなどでも普通は休む小節数を書きます)

付点休符[編集]

付点休符はあまり使われません。一般に、付点休符は読みづらいとされているからです。また、休符を2つ連ねて書けば付点休符と同じ長さを書き表すことができるからでもあるでしょう。

連符[編集]

連符の中で音符に休符が混ざるというのはよくあることです。しかし、休符だけの連符の音価は一般の音符を用いて表記できるため、普通用いられません。