高等学校歴史総合/市場開放と経済の自由化

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詳しい内容は、「世界史探究」の「」、「日本史探究」の「新たな世紀の日本へⅠ」を見てください。本歴史総合では、簡単に記述します。

 冷戦が終わり、お金持ちになりたい人が世界中で商売をするようになりました。経済の自由化が進んで、私達は幸せになったのでしょうか?

新自由主義の台頭[編集]

 世界恐慌から第二次世界大戦後の高度経済成長期にかけて、多くの先進国は経済成長、国力増強、国民生活の向上のために、産業活動の統制や公共サービスの充実を図りました。これを受けて、アメリカのロナルド・レーガン政権やイギリスのマーガレット・サッチャー政権は、規制緩和、公営企業の民営化、税制改革などを通じて「小さな政府」を作りました。また、市場原理に基づく自由競争によって社会を活性化させようとする新自由主義改革を開始しました。日本でも、自民党の中曽根康弘政権が国鉄や電電公社などの民営化を進めました。そのため、新しいアイデアや技術に基づく起業が推奨されて、企業間の競争によって価格が下がりました。一方、資金力のある大企業が業界を支配するようになり、経済格差を拡大させました。冷戦の終結とともに、このような現象がロシアや東ヨーロッパ、社会主義市場経済を持つ中国など、世界中で広がりました。

経済のグローバル化と新たな国際経済組織[編集]

 国際市場経済の発展に伴って、人・物・資本・技術が国家間を自由に移動するようになり、多国籍企業も様々な形で成長しています。グローバル化(グローバリゼーション)とは、世界の経済が1つにまとまっていく過程です。グローバル化は1990年代以降、より強まりました。1995年に関税と貿易に関する一般協定(GATT)が終了して、世界貿易機関(WTO)[1]がその代わりを務めました。また、インターネットなどの情報通信技術の広がりによって、先進国から投機的な理由で資金が流れやすくなりました。その結果、1990年代になると、世界各地で通貨危機が発生しました。特に1997年のアジア通貨危機では、タイ、インドネシア、韓国の経済に大きな影響を受けました。

スマホとコンゴの子供達
 スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器が増えていく中で、コバルト鉱山での児童労働が問題になっています。コバルトは、電子機器の電池の原料です。コバルトの需要はここ数年で急速に伸びています。世界で作られるコバルトの約半分は、アフリカのコンゴ民主共和国から供給されています。鉱山では、多くの子どもたちが少ない賃金で長時間働き、中には病気になったり、学校を休んだりする子もいます。大変な仕事なのに、彼らが採掘したコバルトは、有名な大企業の製品に使われています。私達のスマートフォンの中にも使われているかもしれません。

 21世紀に入ると、中国やロシアが世界貿易機関に加盟したため、自由貿易がさらに広がりました。しかし、加盟国が増えるにつれて交渉は難しくなったり、時間もかかったりして、貿易ルール作りは二国間、多国間ともに活発になっていきました。日本は、東南アジア諸国などと二国間経済連携協定(EPA)や多国間で環太平洋パートナーシップ協定(TPP)[2]を結んで、経済を活性化させようとしました。一方で、食や環境と深く関わる農林水産業の持続性の視点では、国や地域の違いに合わせた貿易ルールの整備が強く求められています。

ここに注意!![編集]

  1. ^ GATTやWTOの英訳は公民や国際関係の内容なので、そこで掲載します。本歴史総合では、略称のみ記載します。
  2. ^ EPAやTPPの英訳も公民や国際関係の内容なので、そこで掲載します。本歴史総合では、略称のみ記載します。