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高等学校物理基礎/波動

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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波動は物体の運動の基本的な形態の一つで、行っては帰る行っては帰るの繰り返しは、様々なインスピレーションを与える。波動は最先端の物理学に密接にかかわる分野の一つである。波力発電は、今後もっとも重要な発電方法の一つとなるだろう。

「発展」とつく単元は高等学校 物理の内容や、高校範囲外の内容を含む。物理基礎の内容を補完し、理解を深めるために設置されている。


波とは何か

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表面波

静かな水面にゆっくりと石を投げると, 石の落ちたところを中心として同心円状の波紋が広がる。このように, ある点で生じた振動が周囲に伝わっていく現象を, または波動という。

波には振動を伝える物質が必要である。振動を伝える物質のことを媒質という。そして、石が落ちたところのように振動が始まった点を波源という。

波に乗って移動する点は振動する。

次に静かな水面に紙を浮かべ, そこに波を送ってみよう。すると, 紙は波の進む方向には進まずに上下するだけである。このことから, 波は媒質が移動するのではなく波源からの振動が伝わっていく現象であることが分かる。

波の性質

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波と媒質の運動

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波の発生

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水平に張った紐やバネの一端を上下に動かすと、動かし方によって様々な波が発生する。 ごく短い間振動させると、単独の波(パルス)が発生する。その一方、絶えず振動させ続けると連続的な波が生じる。 実際に波を発生させると、振動によって変形した部分が平行移動していくように見える。しかし、媒質の各点は振動によって上下に動いているだけであり、媒質自体が平行移動する訳ではない。媒質の各点の、元の位置からのズレを変位と呼ぶ。


物体が往復する運動のことを単振動と呼ぶ。円運動を一つの座標軸上に投影した運動も単振動になる。(詳しくは高等学校 物理/単振動を参照。)


物体が一回の振動に要する時間[s]を周期、1秒あたりの振動回数[Hz]を振動数と呼ぶ。振動数の単位「Hz」はヘルツと読み、1/sを表す。

次の関係が成り立つ。

物体の変位の時間変化をグラフにすると、正弦曲線のようなグラフ)となる。また、振動の中心から振動の端までの長さ[m]を振幅と呼ぶ。


波源の単振動は周囲の媒質に伝わり、各点は波源よりも遅れて単振動を始める。その振幅と周期は波源のそれに等しい。 振動する媒質の各点を連ねた線を波形という。また、波形が正弦曲線となる波を特に正弦波と呼ぶ。


波の記述

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波形の最も高い場所を、最も低い場所をと呼ぶ。山の高さ、谷の深さは振幅に一致する。

隣り合う山と谷の間隔など、波一つ分の長さ[m]を波長と呼ぶ。は「ラムダ」と読むギリシャ文字で、アルファベットの(ここでは「length」の)に対応する。

山や谷が進む速さ[m/s]を波の速さと呼ぶ。

波は波源の媒質が一回振動する時間(周期)の間に一波長分進むので、次の関係が成り立つ。

この式は、周期と振動数の関係式を用いて以下のように表せる。

波について、位置(x)と媒質の変位(y)の関係を表すグラフをy-xグラフと呼ぶ。このグラフは、ある時刻の波形そのものを表す。 これに対し、ある位置における時間(t)と媒質の変位(y)の関係を表すグラフをy-tグラフと呼ぶ。このグラフはある位置における媒質の変位の時間経過を表す。正弦波の場合、いずれも正弦曲線で表されるため、グラフを読み取る際に注意する必要がある。

波の進む向きに波形を僅かに進めると、媒質の各点の動きがわかる。正弦波では、媒質の変位方向の速さについて、山・谷の位置で最小(0)、変位が0の位置で最大となる。

媒質がどのような振動状態にあるかを表す量を位相と呼ぶ。(位相空間論の位相とは異なる。) 同じ振動状態にあるときを同位相、逆の振動状態にあるときを逆位相と呼ぶ。

例えば媒質上の2点について、

  • ともに山で媒質の速度が0である場合は同位相
  • 変位の符号が逆で絶対値が等しい場合、逆位相
  • ともに変位が0であっても、媒質の運動方向が逆である場合は逆位相

である。

同位相である2点の振動を比較すると、変位の大小がどの時刻においても一致する。一方、逆位相である2点の振動の変位は、一方が最大ならば他方は最小である。

また、原点()に関して、時刻における位相を初期位相と呼ぶ。


発展:正弦波の式

証明は物理基礎の範囲を大きく逸脱するため省くが、x軸の正の方向に進む正弦波について、その変位は以下の式で表される。

ここで、[m]は振幅、[s]は時刻、[s]は周期、[m]は位置、[m]は波長、[rad]は初期位相を表す。なお、「rad」はラジアンのことである。

なお、x軸の負の方向に進む正弦波の式は以下である。


横波・縦波

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媒質の振動方向が波の進行方向に垂直である波を横波という。 今まで見てきた波は全て横波である。

これに対し、媒質の振動方向が波の進行方向に平行である波を縦波という。 縦波は媒質が密集した部分(密部)と疎らな部分(疎部)の繰り返しが伝わるので、疎密波とも呼ばれる。のちに学習する音波は縦波である。

縦波は媒質が固体・液体・気体のいずれの状態であっても伝わるが、横波は固体中でしか伝わらない(光波を除く)。

縦波では横波のような波形が見られず波の状態がわかりづらいため、y-xグラフにおいてx軸の正の向きに変位するときはy軸の正の向きに変位をとり、x軸の負の向きに変位するときはy軸の負の向きに変位をとる。こうすることにより、縦波を横波のように表示して横波と同じように考えることができる。

波とエネルギー

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地震波や津波が建物の倒壊などの深刻な被害を齎すことからわかるように、波はエネルギーを運んでいる。

波の進行方向に垂直な単位面積を単位時間に通過する波のエネルギーを、波の強さと呼ぶ。正弦波では単振動のエネルギーが伝えられ、その波の強さは波の振幅または振動数が大きいほど大きくなる。

発展:波の強さの式

正弦波の強さ[J/m^2・s]は以下のように表される。

ここで、[kg/m^3]は媒質の密度、[m/s]は波の速さ、[m]は振幅、[Hz]は振動数を表す。

地震波
地球の内部で急激な変動が起こり、それが伝わって生じる波を地震波という。中学校で学んだように、地震波には速く伝わるP波と遅く伝わるS波が存在する。P波は縦波、S波は横波である。地震波を地上で観測すると、P波は観測されるがS波が観測されない地域が存在する。このことから、地球内部には横波の伝わらない液体の部分が存在すると考えられている。それが地球の外殻である。


一直線上を伝わる波

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重ね合わせの原理

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媒質の両端から単独の波(パルス)を送る。2つの波が出会うと重なり合って波形が変わるが、その後元の波形に戻り、何事もなかったかのように進む。

このとき、波が重なり合ったときの変位は2つの波の変位の和になっている。 つまり、が成り立つ。 これを重ね合わせの原理といい、重なり合ってできた波を合成波という。

重ね合わせの原理は、単独の波・連続的な波・3つ以上の波の全てにおいて成り立つ。 波が重なり合ったとき、媒質の各点に複数の波の変位が同時に伝わるが、それが互いの波の進行を妨げたり他の波に影響を与えることはない。これを波の独立性という。


これらのことはウェーブマシンという器械で簡単に確かめられる。


定常波

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速さが同じで逆方向に進む、波長・振幅の等しい正弦波が重なると、合成波はどちらにも進んでいないように見える。このとき、全く振動しない所()と大きく振動する所()が交互に並んで見える。このように、進行しないように見える波を定常波定在波)という。進行する波は進行波と呼ぶ。

2つの波の位相を考えることにより、媒質のある点が2つの波の定常波における腹・節のどちらになるのかを判断することができる。 媒質のある点において、2つの波が同位相であれば変位の和がそれぞれの変位の2倍になるので腹である。2つの波が逆位相であれば変位の和は打ち消しあって0になるので節である。

発展:定常波の式

波形が同じで向きが逆である2つの正弦波を以下とする。

このとき、重ね合わせの原理より、定常波の変位は以下のようになる。

この式を見ると、sinの中身はtの関数であり、cosの中身はxの関数である。 このことから、位置における定常波の振幅

と表せる。 この式から、「振幅の最大値は2Aで、最大値を取る位置xが飛び飛びに存在する」ことと、「振幅が0になるxが飛び飛びに存在する」ことがわかる。

となる位置を考えると、を満たす位置が腹である。

同様にとなる位置を考えると、を満たす位置が節である。

また、2つの波の初期位相がともに0である場合を考えると、上の式から「腹と節は半波長()ごとに現れる」ことと、「腹と節は四半波長()間隔で交互に現れる」ことがわかる。


自由端反射・固定端反射

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ウェーブマシンの一端から発生させた波を観察すると、波は反対側の端の点に達したのち、その点で折り返して戻ってくる。このような現象を反射という。反射波を入射波、反射後の波を反射波という。

反射する点において、媒質が自由に振動できる端を自由端、媒質が振動できないよう固定されている端を固定端という。

自由端では、入射波の山・谷がそのまま反射波の山・谷となる。このような反射を自由端反射という。 固定端では、作用反作用の法則により入射波の山・谷が反転して反射波の谷・山となる。このような反射を固定端反射という。


単独の波の反射において、自由端反射の場合は入射波を延長した波を自由端を軸に折り返し、固定端反射の場合は入射波を延長した波を上下反転させて固定端を軸に折り返すと反射波が作図できる。また、重ね合わせの原理を用いることで合成波も作図できる。

連続的な正弦波の反射において、反射波も正弦波であるので、入射波と反射波の合成波は定常波となる。自由端の場合、端は定常波の腹となる。固定端の場合、端は定常波の節となる。


発展:平面上を伝わる波

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高等学校 物理で学ぶ内容のうち、第2節「音」を学ぶ上で知っておくべき事項を纏めた。

波面

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水面上の一点を振動させると、波源を中心に円形の波紋が広がる。このとき、同一円周上の各点は同位相である。このような、位相が等しい点を連ねた面を波面といい、波面が平面になる波を平面波、波面が球面になる波を球面波という。

波面は波の進む向きと常に垂直である。波と垂直に交わる線を射線という。射線は波の進む向きを表す。


波の干渉

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水面上の2点を振動させると、これらの点を波源とする波が広がる。このとき、山同士・谷同士が重なる場所は振幅が大きくなり、山と谷が重なる場所は振幅が小さくなる。このように、波が重なって振動を強め合ったり弱め合ったりする現象を波の干渉という。

振幅で同位相で振動する2つの波源から出る波の波長をとする。波源からの距離をそれぞれとすると、距離の差はであるので、非負整数を用いると干渉の条件式は以下のようになる。

強め合う条件:
弱め合う条件:

なお、波源が逆位相で振動する場合は、

強め合う条件:
弱め合う条件:

と条件式が入れ替わるので注意が必要である。

また、この2式を満たす点を連ねた曲線は、波源を焦点とする双曲線となる。


反射・屈折

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媒質の境目を境界面という。

境界面に垂直な直線(境界面の法線)が入射波の進行方向と成す角を入射角、反射波の進行方向と成す角を反射角という。

波の反射では、入射角と反射角について以下が成り立つ。

これを反射の法則という。


波の速さが異なる2つの媒質の境界面に波が斜めに入射する時、波の進行方向が変わる。この現象を屈折といい、屈折した後の波を屈折波と呼ぶ。波が屈折する時、反射波も同時に生じている。

境界面の法線が屈折波の進行方向と成す角を屈折角という。 入射角、反射角、媒質1, 2での波の速さ、波長について、以下が成り立つ。

これを屈折の法則という。 は、媒質1に対する媒質2の(相対)屈折率である。


波の回折

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波が障碍物に当たった場合、障碍物の隙間を通ってその背後まで回り込む。 このような現象を波の回折という。 音や電波が障碍物の陰であっても届くのは、回折によるものである。 回折は、隙間や障碍物の幅に対して波長が小さいとき目立たないが、同程度以上になると目立つようになる。


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音の性質

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音波

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物体が振動すると、その振動は縦波となって空気などの媒質を伝わっていく。このような縦波を音波)という。音の波源を音源発音体)という。 我々は声帯を震えさせて声を出し、鼓膜が振動することで音を聞く。


音の三要素

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音の波形はオシロスコープを用いて観察することができる。

音の大きさ

同じ振動数の音が聞こえている時、振幅が大きくなると音は大きくなる。音の大きさは人間の主観に基づいた量であるのに対し、エネルギーに基づいた物理量を音の強さという。音の強さ[dB]は波の強さと同様に求められる。

音の高さ

振動数が大きければ大きいほど高音になる。1オクターブ上の音にするには、振動数を2倍すれば良い。人間が聞くことのできる音の振動数は20~2万Hzの範囲にある。この人間の可聴域よりも高い音を超音波という。例えば、一般的な犬笛は3万Hzの音を出し、イルカの出す超音波は15万Hzにも達する。逆に、可聴域よりも低い音を超低周波音と呼ぶ。

音色

身の回りの音の殆どは単純な正弦波ではなく、複雑な波形をしている。この波形の違いが音色の違いを生み、より豊かで深みのある音を作りだしている。

音の大きさ・高さ・音色を音の三要素と呼ぶ。


音の速さ

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空気中の音速は、温度が高くなるほど大きくなる。 1気圧、[℃]の空気中での音速[m/s]は、

である。 常温(15℃)での音速は上の式から約340m/sと計算できる。

音は縦波であるため、液体や固体でも伝わる。水中では音速は空気中の4〜5倍であり、固体中は更に速い。真空中では媒質がないので音は伝わらない。


音の伝わり方

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音波も反射・屈折・回折・干渉など波の諸現象が発生する。

音の反射は山びこなどに見ることができる。イルカやコウモリなどは超音波の反射音で獲物や障碍物までの距離や方向を把握する。音が短時間で繰り返し反射すると、音源が振動をやめた後もしばらく音が残ることがある。これを残響という。音楽ホールは音が心地よく響くよう、残響を考慮に入れて設計されている。

空気など同じ媒質の中でも、温度の違いなどで部分的に音の速さが異なれば、音は屈折しながら進む。

人間の声は波長が1〜3m程度であり、身の回りの障碍物の大きさと同程度かそれより長いため、回折が起こりやすい。

同じ振動数の音を2つのスピーカーから出すと、音がよく聞こえる場所と聞こえにくい場所ができる。これは、音の干渉によって空気の振動を強め合う場所と弱め合う場所ができるからである。


唸り

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振動数が僅かに異なる2つの音叉を同時に鳴らすと、音の大小が周期的に繰り返されて聞こえる。このような現象を唸りという。唸りは、2つの音波の重なり合いで生じる。

2つの音波の振動数をとすると、唸りの回数

と表せる。 2つの音波の振動数が接近している場合にのみ唸りは聞こえる。 また、低音になればなるほど唸りは起こりにくい。


共振・共鳴

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発展:ドップラー効果

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