民法第597条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第3編 債権 (コンメンタール民法)
条文
[編集](期間満了等による使用貸借の終了)
- 第597条
- 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
- 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
- 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。
改正経緯
[編集]2017年改正において、以下の条文から改正。使用貸借が、要物契約から諾成契約に変わったことに伴い、「使用貸借契約の終了」と「借用物の返還」が一致していたものが、概念上分離された。
(借用物の返還の時期)
- 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
- 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
- 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。
概ね、旧第1項及び旧第2項本文は、各々改正第1項及び改正第2項に継承された。旧第2項但書は、解除の条件として改正第598条にその趣旨が引き継がれている。
第3項は、旧第599条の趣旨を引き継いだ。
解説
[編集]使用貸借契約の終期について定める。2017年改正前は、要物契約と解されたため、貸借物の返還の観点から規定されていたが、諾成契約となったことから、契約の終期を定め、それに伴う契約の趣旨である返還義務が発生するという構成になった。
契約終了の原因
- 通常原因(本条)
- 契約に定めた終期の到来(本条第1項)
- 終期を定めず、使用収益の目的を定めた場合、目的を達した時(本条第2項)
- 借主が自然人の場合、借主の死亡(本条第3項)
- 使用貸借権は、相続されない。終期未到来・目的未達成でも契約は終了となる。
- 借主が法人の場合
- 解散など法人の実体が消滅する場合はもちろん(目的不達の確定、使用貸借権は移動しないなど)、倒産処理などで、借主の実体が変わっている場合は、第594条の適用により、貸主は解除ができる。
- 解除
参照条文
[編集]判例
[編集]- 建物収去土地明渡請求、同附帯控訴(最高裁判決 昭和42年11月24日)
- 民法第597条第2項但書の類推適用により土地使用貸借の解約が有効とされた事例
- 父母を貸主とし、子を借主として成立した返還時期の定めがない土地の使用貸借であつて、使用の目的は、建物を所有して会社の経営をなし、あわせて、右経営から生ずる収益により老父母を扶養する等判示内容のものである場合において、借主は、さしたる理由もなく老父母に対する扶養をやめ、兄弟とも往来をたち、使用貸借当事者間における信頼関係は地を払うにいたつた等原判決確定の事実関係があるときは、民法第597条第2項但書を類推適用して、貸主は借主に対し使用貸借を解約できるものと解すべきである。
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