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制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/特性多項式の構造と解の性質

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

を二つの多項式とし,それらに対応する微分作用素を とする. このとき任意の微分可能な に対して,

が成立するとき,

と約束する.この相等の定義は,多項式の相等の定義,

と一致する.

例65

これを証明せよ.

解答例

とおく.任意の関数 で,

…①

が成立するとき, として特定の形を①に代入して の満たすべき必要条件をあぶり出す.

のとき,

等の定数に対する微分は となるから,

…②

が必要.

のとき,

のとき .よって,

…③

②③より

…④

のとき,

のとき .よって,

…⑤

②④⑤より

…⑥

のとき,

のとき
のとき

…⑦

の場合から がすでにいえており、これと⑦から が必要.

以上から は任意の関数であるとき, が必要条件.

逆に のとき,

…⑧

⑧は が任意の の関数であってもその値は常に . すなわち,

これにより十分性を示せた.


さらに微分作用素の和と差を,任意の微分可能な に対して,

と,また積を,

が成立することと定義する.これらの定義と前に述べた の定義と抵触しないことは明らかであろう. このように微分作用素間の加減乗の 3 演算を定義すると,これらは多項式の加減乗の定義と一致するから, これら 3 演算から導かれる多項式に関する公式は,そのまま微分作用素に対しても成立する[1]. 例えば,

[補題 3.1]

を多項式とすると

が成立する.つまり微分作用素の積は交換可能である.

証明

とおく.まず,

を示す.

[2]
[3]
[4][5]

この結果を用いて,

[6]
[7]
[8]

よって,

が示された.


[補題 3.2]

で割り切れるならば,

の解は,

の解となる.


証明

と書けるから, ならば,



[系]

ならば,

が成立する.ここに は定数である.

証明

補題(3.2)より,

これと重ねあわせの原理Ⅰより明らか[9]


例66

[10],また の解[11]である.よって上記より,

の解である.


[補題 3.3]

(i)
(ii)

証明

(i)

より明らか[12]


(ii)

またこの結果を 2 度用いると,

[13]

一般に,

[14]

となるから,求める結果を得る[15]


[系]

ならば [16]


例67

であるから,

[17]

一般に を高々 次の多項式とすると,


[補題 3.4]

(i) の解となるための必要十分条件は, を因数として持つことである.

(ii)

の解であるための必要十分条件は を因数として持つことである.ただし

証明

十分性は 補題3.2 で示されている.(ii) の必要性だけ証明する. (i) も (ii) も証明は同じであるから難しい方を示しておく[18]

とおき, を示せばよい.[19]

であるから[20]

[21]
[22]

これより,

が成立しなければならない[23] であるから,

を得る[24][25]


  1. ^ 例65 は, である可能性はあっても, はありえないことをいっている.この事実よりこれがいえる.
  2. ^
    すなわち 式(3.9a)の微分作用素の定義式による.
  3. ^
    すなわち, による.
  4. ^
    すなわちこれは, による.

    すなわちこれば, による.
  5. ^ すなわち式(3.9a)の微分作用素の定義式による.
  6. ^

  7. ^
  8. ^ 式(3.9a)の微分作用素の定義式による.
  9. ^
  10. ^ を変数分離法で解く.
    ,
    .または解関数として .両辺を で積分して,


    これは解 も含む表現である.(, また と置きなおしている.)
  11. ^ を変数分離法で解く.
    ,
    .または解関数として .両辺を で積分して,


    これは解 も含む表現である.(, また と置きなおしている.)
  12. ^

    すなわち,
    とおけば,
    よって,
  13. ^
  14. ^
  15. ^ すなわち,
    だから,

  16. ^ 補題3.3より,

    ならば
    すなわち,
  17. ^ 補題3.3 より

    今, より,
  18. ^ (i) の必要性を証明する.

    とあらわされるとき, ならば, であることを示す.
    補題3.3)

    のとき,


    より
    よって, だから すなわち, であり, を因数として持つことを示せた.
  19. ^ 証明の方針を整理する. どのような多項式 も,予め定めておいた を含む二次式 で割れば,余りを許せば,

    に書き換えることが可能である.係数 を調整すれば,
    …①
    の形にすることも当然可能である. 今,①の形のもとで,予めさだめておいた に対して を入力条件としたとき,これから を結論とできるか、を証明するべき問題とする.
  20. ^ の解の一つが であることは例48 ですでに証明している.ただし他の形の解が存在するかどうかはここでは触れないでおく.
  21. ^



  22. ^ 補題3.3(ii) による.
  23. ^ 三角関数の合成より, とすると,

    この値が全ての であるためには, かつ が必要.
  24. ^
    すなわち,

    かつ
  25. ^ より,

    の形に表すことができ,すなわち, を因数として持つことを示せた.