労働基準法第15条
表示
条文
[編集](労働条件の明示)
- 第15条
- 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
- 前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。
- 前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。
解説
[編集]参照条文
[編集]判例
[編集]- 八洲測量賃金請求(東京地方裁判所判決 昭和54年10月29日)職業安定法第18条
- 新入社員の賃金として、大学及び測専卒業見込の者に対しては、多くの場合、求人票にその提出当時の現行基本給を記載しないで、敢えてこれを上回る見込額を記載し、また、高校卒業見込の者に対しては現行基本給を記載し、かつこれを上回る旨明示したことは、後日、被告において右基本給の確定額を決定するに当り、右現行基本給を上回る基本給を保障したものであつて右見込額に相応する基本給を実現するように努力すべき社会的責任を負うものであることは明らかであるが、その上更に被告が原告らに対し、その後景気の変動等があつても、右見込額を基本給として決定することを保障したものであるとまでは認めることができない。
- (原告側主張)
- 求人側が求人票に賃金を記載することは、詐欺的募集等の弊害を除去した近代的な労働契約関係の成立と労働者の保護とを意図して設けられた職業安定法第18条、労働基準法第15条の労働条件明示義務の履行としてされるものであり、また求職者側にとつては唯一の拠り所となるものであるから、仮にこれが「見込」として記載されていた場合でも、これは求人側において、「少なくとも求人票記載の賃金は確実に支払を保障する」趣旨の金額であると解するのが両当事者の意思に合致し、従つて求人側は労働契約締結の際にこれを下回る賃金を提示することができず、また労働契約締結の際に労働条件を明示しない場合には、求人申込の際に明示された労働条件がそのまま労働契約の内容になるという意味での拘束力を有するものと解するべきである。
- (原告側主張)
- 被告の原告らに対する前記合格通知の発送をもつて直ちに原・被告間に労働契約が成立したと解することはできないが、原告らが被告の求めに応じて前記出社勤務約定書に署名捺印のうえこれを被告に提出し、翌春の卒業と同時に出社して勤務すること及びそれまでの間に入社取消等の行為をしないことを約した時点において各原告と被告間に労働契約が成立したものと解する余地はありうる。しかし、そうだとしても、右時点における本件労働契約は、原告らが当時在籍していた学校をそれぞれ首尾よく卒業し、現実に入社することによつてその効果が生じるものであり、それまでは採用された者が入社を辞退しない旨確約しながら自由に辞退することができたのであるから、いわゆる解除条件付、始期付、解約権留保付契約ともいうべき性格を有していたものと解される。
- (原告側主張)
- 右通知は事実上のいわゆる採用内定通知であるが、企業の求人募集が労働契約の申込の誘引であり、これに対する新規学卒予定者の応募又は受験が申込に該当するところ、求人側の採用内定通知の発信は、応募者の成績、健康診断の結果及び身上調書の結果を基礎とした総合的な判断に基づく雇用の意思の外部的な表明であり、一連の採用手続の中で求人側としては最も慎重且つ高度な判断を経た選択権の行使の結果であつて、雇用の意思を明確にしたもの、即ち申込に対する承諾の意思表示と解すべきである。合格通知の発信時のころ、被告は原告らに対して特に労働条件を明示した事実がないから、各原告と被告間に前記求人票記載の賃金等を内容とする各労働契約が成立したものというべきである。なお同契約は、入社日から効力が発生するという始期付労働契約であり、かつ翌春において原告らがその在籍中の学校を卒業できないという事態を解除条件とするものである。
- (原告側主張)
- 反面、その労働条件に関しても、賃金のうち基本給については現行基本給を上回ることだけが保障され、その確定額が後日に留保されていたことは前記認定の通りであり、更に、原告らは、当時求人票を見ていたにすぎなかつたから、その勤務時間、勤務場所等の労働条件についてさえも必ずしも分明ではなく、これらは後日就業規則などの送付によつて明確にされる段階にあつたものということができる。したがつて、右段階において、各原告と被告間に初任給のうち基本給が求人票記載の見込額通りに確定した旨の原告らの主張は、理由がない。
- 新入社員の賃金として、大学及び測専卒業見込の者に対しては、多くの場合、求人票にその提出当時の現行基本給を記載しないで、敢えてこれを上回る見込額を記載し、また、高校卒業見込の者に対しては現行基本給を記載し、かつこれを上回る旨明示したことは、後日、被告において右基本給の確定額を決定するに当り、右現行基本給を上回る基本給を保障したものであつて右見込額に相応する基本給を実現するように努力すべき社会的責任を負うものであることは明らかであるが、その上更に被告が原告らに対し、その後景気の変動等があつても、右見込額を基本給として決定することを保障したものであるとまでは認めることができない。
|
|