古典ラテン語/名詞の変化/第三変化

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第三変化[編集]

第三変化 (羅 Tertia Declinatio ; 英 Third declension ; 仏 Troisième déclinaison ) は、名詞の数が多く、複雑な変化に富んでいる。 形容詞の変化にも用いられる重要な変化形だが、一筋縄にはいかない難解なグループである。 グループ内の分類方法は、文法書によっても異なる。例外が多いので、分類方法にはこだわり過ぎず、個々の単語ごとの変化を丹念に捉えることが大切である。


第三変化 (おもな語尾変化)
(名詞の性) 男性・女性名詞 中性名詞
(分類例) 子音幹
異数音節
子音幹
異数音節
i幹
等数音節
i幹
擬異数音節
子音幹
異数音節
i幹
等数音節
(単語例) 語尾
変化
homō
(人間)
cīvitās
(共同体)
cīvis
(市民)
urbs
(都市)
語尾
変化
flūmen
(川)
mare
(海)
(語幹例) homin- cīvitāt- cīv- urb- flūmin- mar-
単数 主格 - ※ homō cīvitās cīvis urbs - ※ flūmen mare
属格 -is hominis cīvitātis cīvis urbis -is flūminis maris
対格 -em (-im) hominem cīvitātem cīvem urbem - ※ flūmen mare
与格 -ī hominī cīvitātī cīvī urbī -ī flūminī marī
奪格 -e (-ī) homine cīvitāte cīve (-ī) urbe -e / -ī flūmine marī
複数 主格 -ēs hominēs cīvitātēs cīvēs urbēs -(i) a flūmina maria
属格 -(i) um hominum cīvitātum cīvium urbium -(i) um flūminum marium
対格 -ēs (-īs) hominēs cīvitātēs cīvēs (-īs) urbēs (-īs) -(i) a flūmina maria
与格 -ibus hominibus cīvitātibus cīvibus urbibus -ibus flūminibus maribus
奪格 -ibus hominibus cīvitātibus cīvibus urbibus -ibus flūminibus maribus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。



(編集中)


第三変化の分類方法[編集]

第三変化名詞は、単数・属格の語尾が -is であるという共通点を持つグループであるが、さらに細分化されている。

伝統的な分類では、単数・主格と単数・属格の音節数に着目して、次の三つに大別される。フランスなどで用いられている大まかな分類方法である。

異数音節語 Imparisyllabiques 単数・主格と単数・属格の音節数が異なり、属格の方が1~2音節長い。後述の「子音幹」とかなり重なる。
等数音節語 Parisyllabiques 単数・主格と単数・属格の音節数が等しい。後述の「i幹」とかなり重なる。
擬異数音節語 Faux imparisyllabiques 単数・属格の語幹(語尾の前の部分)が2つ以上の子音で終わるが、等数音節語(i幹)のように活用する。


現代の英米や日本などで主流の分類では、複数・属格が -um か-ium かに着目して、次のように分類される。

子音幹 Consonant stem 複数・属格の語尾が-um、単数・奪格の語尾が-e
i幹 I-stem 複数・属格の語尾が-ium
純粋i幹 "Pure" i-stem 複数・属格の語尾が-ium、単数・奪格の語尾が
混合i幹 Mixed i-stem 複数・属格の語尾が-ium、単数・奪格の語尾が-e

※子音幹は、さらに黙音幹・流音幹・鼻音幹などに分類される。

※いずれの分類方法を採っても、それに従わない例外的な変化をする語が少なくないので、分類方法にとらわれすぎないことが大切である。


第三変化の分類方法と単語例[編集]

第三変化の分類
分類1 分類2 おもな
男性・女性名詞
おもな
中性名詞
備考
子音幹 異数音節 cōnsul, cōnsulis
dux, ducis
homō, hominis
lēx, lēgis
mōs, mōris
pāx, pācis
prī̆nceps, prī̆ncipis
caput, capitis
corpus, corporis
flūmen, flūminis
genus, generis
nōmen, nōminis
opus, operis
tempus, temporis
異数音節で、複数・属格は-um
(子音幹
の例外)
等数音節 pater, patris
māter, mātris
frāter, frātris
iuvenis, iuvenis
canis, canis
等数音節だが、複数・属格は-um
純粋i幹(1) turris, turris[注 1] mare, maris 等数音節で、複数・属格は-ium
男・女性は単数・対格の語尾が-im
混合i幹(1) civis, civis
hostis, hostis
nāvis, nāvis[注 1]
等数音節で、複数・属格は-ium
単数対格の語尾が-em
混合i幹(2) 擬異数音節 urbs, urbis
ars, artis
gēns, gentis
mēns, mentis
mōns, montis
mors, mortis
nox, noctis
pars, partis
異数音節で、複数・属格は-ium
単数対格の語尾が-em
純粋i幹(2) animal, animālis 語尾が -ar, -al, -e で終わる中性名詞。
(例外)[注 2] parēns, parentis
fraus, fraudis
mēnsis, mēnsis
mūs, mūris
vātēs, vātis
-um, -ium の二つの複数・属格を持つ。
  1. ^ 1.0 1.1 等数音節語の中には、turrisnāvisなど、-e, -ī の二つの単数・奪格、-em, -im の二つの単数・対格を持ち、純粋i幹と混合i幹の両方の変化形を持つ単語もある。
  2. ^ parēns, frausなどいくつかの語は、-um, -ium の二つの複数・属格を持ち、子音幹とi幹のどちらかに分類することができない。mēnsisなどもmensiummensumの二つの複数・属格を持つ。Barron's Latin Grammar (2011)のp.24を参照せよ。

子音幹または異数音節語 (男性・女性名詞)[編集]

子音幹Consonant stem) または伝統的に 異数音節語Imparisyllabiques) に分類される第三変化名詞は、単数主格と単数属格の音節数が異なり、属格が1~2音節長い。複数・属格の語尾が -um となる。


第三変化 子音幹または異数音節語
(名詞の性) 男性・女性名詞
(分類例) 子音幹
異数音節
子音幹
異数音節
(単語例) 語尾
変化
homō
(人間)
cīvitās
(共同体)
(語幹例) homin- cīvitāt-
単数 主格 - ※ homō cīvitās
属格 -is hominis cīvitātis
対格 -em (-im) hominem cīvitātem
与格 -ī hominī cīvitātī
奪格 -e (-ī) homine cīvitāte
複数 主格 -ēs hominēs cīvitātēs
属格 -(i) um hominum cīvitātum
対格 -ēs (-īs) hominēs cīvitātēs
与格 -ibus hominibus cīvitātibus
奪格 -ibus hominibus cīvitātibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。

子音幹または異数音節語 (中性名詞)[編集]

flūmen, flūminis (川) など。

第三変化 (中性名詞) 子音幹または異数音節語
(名詞の性) 中性名詞
(単語例) 語尾
変化
flūmen
(川)
(語幹例) flūmin-
単数 主格 - ※ flūmen
属格 -is flūminis
対格 - ※ flūmen
与格 -ī flūminī
奪格 -e flūmine
複数 主格 -a flūmina
属格 -um flūminum
対格 -a flūmina
与格 -ibus flūminibus
奪格 -ibus flūminibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。

flūmen, flūminis[編集]

flūmen, flūminis (中性)
単 数 複 数
主格 flūmen flūmina
属格 flūminis flūminum
対格 flūmen flūmina
与格 flūminī flūminibus
奪格 flūmine flūminibus

















純粋i幹(1)または異数音節語 (男性・女性名詞)[編集]

第三変化 純粋i幹または異数音節語
(名詞の性) 男性・女性名詞
(単語例) 語尾
変化
w
()
(語幹例) - - -
単数 主格 - ※ is is is
属格 -is is is is
対格 -em (-im) em em em
与格 -ī ī ī ī
奪格 -e (-ī) e (-ī) e (-ī) e
複数 主格 -ēs ēs ēs ēs
属格 -ium ium ium ium
対格 -ēs (-īs) ēs (-īs) ēs (-īs) ēs (-īs)
与格 -ibus ibus ibus ibus
奪格 -ibus ibus ibus ibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。

純粋i幹(2)または等数音節語 (男性・女性名詞)[編集]

単数・対格の語尾が -im で終わる。

turris(塔) など。

第三変化 純粋i幹または等数音節語
(名詞の性) 男性・女性名詞
(単語例) 語尾
変化
turris
(塔)
(語幹例) turr- - -
単数 主格 -is turris is is
属格 -is turris is is
対格 -im turrim im im
与格 -ī turrī ī ī
奪格 -ī turrī ī ī
複数 主格 -ēs turrēs ēs ēs
属格 -ium turrium ium ium
対格 -ēs (-īs) turrēs,
turrīs
与格 -ibus turribus ibus ibus
奪格 -ibus turribus ibus ibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。


純粋i幹(2)または等数音節語 (中性名詞)[編集]

純粋i幹"Pure" i-stem) または伝統的に 等数音節語Parisyllabiques) に分類される第三変化名詞は、単数主格と単数属格の音節数が等しく、複数・属格が -ium で終わる。


mare, maris (海) など。

第三変化 (中性名詞) 純粋i幹または等数音節語
(名詞の性) 中性名詞
(単語例) 語尾
変化
mare
(海)
(語幹例) mar-
単数 主格 - ※ mare
属格 -is maris
対格 - ※ mare
与格 -ī marī
奪格 -ī marī
複数 主格 -ia maria
属格 -ium marium
対格 -ia maria
与格 -ibus maribus
奪格 -ibus maribus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。

mare, maris[編集]

mare, maris (中性)
単 数 複 数
主格 mare maria
属格 maris marium
対格 mare maria
与格 marī maribus
奪格 marī maribus

















混合i幹(1)または等数音節語 (男性・女性名詞)[編集]

混合i幹Mixed i-stem) または伝統的に 等数音節語Parisyllabiques) に分類される第三変化名詞は、単数主格と単数属格の音節数が同じである。

cīvis (市民) など。

第三変化 i幹または等数音節語
(名詞の性) 男性・女性名詞
(単語例) 語尾
変化
cīvis
(市民)
fīnis
(終・境界)
hostis
(敵)
(語幹例) cīv- fīn- host-
単数 主格 - ※ cīvis fīnis hostis
属格 -is cīvis fīnis hostis
対格 -em (-im) cīvem fīnem hostem
与格 -ī cīvī fīnī hostī
奪格 -e (-ī) cīve,
cīvī
fīne,
fīnī
hoste
複数 主格 -ēs cīvēs fīnēs hostēs
属格 -ium cīvium fīnium hostium
対格 -ēs (-īs) cīvēs,
cīvīs
fīnēs,
fīnīs
hostēs,
hostīs
与格 -ibus cīvibus fīnibus hostibus
奪格 -ibus cīvibus fīnibus hostibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。



civis, civis[編集]

cīvis (男性・女性名詞)
単 数 複 数
主格 cīvis cīvēs
属格 cīvis cīvium
対格 cīvem cīvēs (-īs)
与格 cīvī cīvibus
奪格 cīve (-ī) cīvibus


















混合i幹(2)または擬異数音節語[編集]

混合i幹Mixed i-stem) の一部、またはフランスなどで 擬異数音節語Faux imparisyllabiques) に分類される第三変化名詞は、単数属格の語幹が2つ以上の子音で終わるが、等数音節語(i幹)のように活用する。


第三変化 混合i幹/擬異数音節語
(名詞の性) 男性・女性名詞
(単語例) 語尾
変化
urbs
(都市)
ars
(技芸)
gēns
(種族)
mēns
(精神)
mōns
(山)
mors
(死)
nox
(夜)
pars
(部分)
(語幹例) urb- art- gent- ment- mont- mort- noct- part-
単数 主格 -s (※) urbs ars gēns mēns mōns mors nox pars
属格 -is urbis artis gentis mentis montis mortis noctis partis
対格 -em urbem artem gentem mentem montem mortem noctem partem
与格 -ī urbī artī gentī mentī montī mortī noctī partī
奪格 -e (-ī) urbe arte gente mente monte morte nocte parte,
partī
複数 主格 -ēs urbēs artēs gentēs mentēs montēs mortēs noctēs partēs
属格 -ium urbium artium gentium mentium montium mortium noctium partium
対格 -ēs (-īs) urbēs,
urbīs
artēs,
artīs
gentē,
gentīs
mentē,
mentīs
montēs,
montīs
mortēs,
mortīs
noctēs,
noctīs
partēs,
partīs
与格 -ibus urbibus artibus gentibus mentibus montibus mortibus noctibus partibus
奪格 -ibus urbibus artibus gentibus mentibus montibus mortibus noctibus partibus

(注) 第三変化の ※印 は、単語ごとに語尾の形がさまざまであることを示す。


urbs, urbis[編集]

urbs, urbis (女性名詞)
単 数 複 数
主格 urbs urbēs
属格 urbis urbium
対格 urbem urbēs (-īs)
与格 urbī urbibus
奪格 urbe urbibus

















脚注[編集]


参考文献[編集]

関連項目[編集]

関連記事[編集]

英語版[編集]

仏語版[編集]

ラテン語版[編集]

外部リンク[編集]