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商法第574条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法商法コンメンタール商法第2編 商行為 (コンメンタール商法)

条文

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(運送人の留置権)

第574条
運送人は、運送品に関して受け取るべき運送賃、付随の費用及び立替金(以下この節において「運送賃等」という。)についてのみ、その弁済を受けるまで、その運送品を留置することができる。

改正経緯

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2018年改正により新設(詳細な経緯等は解説参照)。

本条にあった、「貨物引換証の処分証券性」に関する以下の条項は、実務上貨物引換証が発行されていないという事情を踏まえ、改正法で規定自体が削除(商法第571条#改正経緯参照)。

貨物引換証ハ其記名式ナルトキト雖モ裏書ニ依リテ之ヲ譲渡スコトヲ得但貨物引換証ニ裏書ヲ禁スル旨ヲ記載シタルトキハ此限ニ在ラス
(旧法の解説)
貨物引換証はそれが記名式であっても裏書によってこれを譲渡することができる。ただし、貨物引換証に裏書を禁止する旨を記載したときはこの限りでない。
貨物引換証の裏書について定めた。これによって運送物引渡請求権が指図債権となる。但書きにある指図禁止文句があると債権であり、裏書きではなく民法の債権譲渡によって運送物引渡請求権が移転する。
一般的に有価証券の裏書には①権利移転効力(裏書によって証券上の権利一切が移転する)②資格授与効力(証券の占有者は自分までの裏書きの連続を立証すれば適法な所持人であると推定される)③担保的効力(証券の発行者が債務の履行を拒否すれば所持人は裏書人に債務を履行させて証券を受け戻させられる)がある。貨物引換証には①と②がある。

解説

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「運送人の留置権」については2018年商法改正以前から、実務の中で運送人が債権担保のために運送品を留置する慣行が存在し、その根拠としては、旧商法上の運送取扱人の留置権(旧・商法第562条)や海上運送人の留置権(旧・商法第753条、現・商法第741条)や民法上の留置権(民法第295条)の一般規定の準用や類推解釈等によった。

2018年商法改正では、より明確に陸・海・空の全運送分野にわたって「運送人の留置権」を統一・明文化し、具体的な範囲(運送賃、付随費用、立替金のみ)を規定、これによって、従来運送取扱人規定等の準用や判例・通説に依存していた部分が、改正法第574条としてはじめて明示的かつ体系的に「運送人の留置権」として整理され、運送人の権利行使が法定された。

参照条文

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前条:
商法第573条
(運送賃)
商法
第2編 商行為

第8章 運送営業

第2節 物品運送
次条:
商法第575条
(運送人の責任)
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