図書館法第2条
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条文
[編集]- 第二条(定義)
- この法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。
- 2 前項の図書館のうち、地方公共団体の設置する図書館を公立図書館といい、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人の設置する図書館を私立図書館という。
解説
[編集]本条では、図書館法における「図書館」の定義を述べ、設置主体別に二分している。
「一般公衆の利用に供し」
[編集]「一般公衆の利用に供し」とは、本法の規定する「図書館」が公共図書館であることを意味する。従って、都道府県・市町村議会に附置され「議員の調査研究に資する」ことを第一義とする議会図書館や研究機関に附置される研究図書館・専門図書館などは、本法の対象外となる。「一般公衆」は換言すれば「住民」となり、山口源治郎は地方自治法第244条第2項・第3項を援用しつつ、正当な理由がないのにも住民の利用を拒んだり、不当な差別的取扱いをすることはあってはならないと説いている。
なお、本法で対象から外された図書館については、学校図書館法、大学設置基準、その他の法令で定められている。
目的
[編集]かつての図書館令では、「図書館は図書記録の類を収集保存して公衆の閲覧に供し其の教養及学術研究に資するを以て目的とす」としていたところ、現行の図書館法ではこれにレクリエーション、つまり娯楽が追加された。図書館法を制定に携わった西崎は、この文言の追加を、国民の図書館に対する要望が変化し娯楽を求めるようになり、図書館側もそれに応じてきたことを明文化させた、としている。なお、より具体的な図書館奉仕の例示は第3条で行われている。
博物館法との比較
[編集]博物館は、社会教育法第9条第1項によって、図書館と同じく社会教育機関としての位置づけがされている。博物館を規定した博物館法の第2条では、「(前略)「博物館」とは、歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む。以下同じ。)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(後略)」とし、図書館法における図書館は、博物館法における博物館よりもその教育的意義が弱く規定されている。
設置主体
[編集]本法では、設置団体が「地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人」によるもののみを「図書館」として定め、地方公共団体が設置主体となるものを「公立図書館」、その他が設置主体となるものを「私立図書館」と規定している。従って、国が設置するもの(国立国会図書館)や個人、人格のない社団、営利法人(会社)、その他学校法人等が設置するものは、この法律でいうところの「図書館」または「私立図書館」に該当しない。これはかつての図書館令第4条、同令第5条と比較して設置主体を限定することになっている。これについて、西崎は、行政の対象となり得る「図書館」は安定的な運営が望まれるため、図書館を設置しようとするものはまず公益法人[1]を設立して、図書館の質的向上を図るという狙いがある、としている。
博物館法・社会教育法(公民館)との比較
[編集]博物館について定めた博物館法では設置主体を、「地方公共団体、一般社団法人若しくは一般財団法人、宗教法人又は政令で定めるその他の法人」(博物館法第2条第1項)と定めており、博物館法施行令第1条で、「政令で定めるその他の法人」を日本赤十字社と日本放送協会と定めている。特に公民館について定めた社会教育法では、公民館の設置主体を、「市町村」(社会教育法第21条第1項)と「公民館の設置を目的とする一般社団法人又は一般財団法人」(同法同条第2項)と定めている。
設置主体の範囲としては、博物館が最も広く、公民館が最も小さく、図書館は両者の中間に位置すると考えられる。
非独占名称
[編集]「図書館」の語は「学校」や「病院」とは異なり、名称の独占が規定されていないため、「図書館」の設置主体になれない個人や会社が「図書館」を称する施設を開設することは法令に反しない。これについて、西崎は、「或人が自分の蔵書を開放して、町の図書館という看板をかけて町の人に利用させたとしても、何の不都合も起らない」と示している。なお、この定義に合わない図書館的施設は、第29条の定めにより、「図書館同種施設」というカテゴリに入る。
懸念される点としては、図書館報の規程を守らなければならない立場にあるはずの地方自治体(立図書館)が、当館は「図書館同種施設」であると主張することによって図書館法の規定を骨抜きにできる可能性が指摘されている。例えば、神奈川県は、同県立図書館の館内閲覧・一般貸出業務を廃止する検討を行なったところ、図書館法第3条に違反すると指摘を受けたため、同館を図書館法の適用を受けない図書館同種施設とする考えを真面目に検討したことがある[2]。また、山口源治郎は、管理委託の対象にするために、1990年代から一部の自治体が図書館法に基づかない「図書館」を設置している疑いがあると述べている。これについて山口は、「図書館法の精神に反するばかりか、遵法を旨とすべき地方公共団体の配信的行為であると言わざるを得ない」と断罪している。
改正の沿革
[編集]関連条文
[編集]以下の条文はいずれも新字体と平仮名を用いて書き改めている。
- 図書館令第1条
- 図書館は図書記録の類を収集保存して公衆の閲覧に供し其の教養及学術研究に資するを以て目的とす
- 同令第2条
- 北海道府県、市町村、市町村学校組合、町村学校組合並に町村制を施行せざる地域に於ける町村に準ずべき公共団体及其の組合は図書館を設置することを得
- 同令第4条
- 商工会議所、農会其の他の公共団体は図書館を設置することを得
前項の規定に依り設置したる図書館は私立とす - 同令第5条
- 私人は図書館を設置することを得
参考文献
[編集]- 後藤敏行著『図書館の法令と政策』、樹村房、2015年、ISBN 978-4-88367-243-1
- 西崎恵著『図書館法』、日本図書館協会、1970年
- 『図書館法を読む』森耕一編、日本図書館協会、1990年、ISBN 4-8204-9012-5
- 塩見昇、山口源治郎編著『新図書館法と現代の図書館』、日本図書館協会、2009年、ISBN 978-4-8204-0915-1
註釈・出典
[編集]- ^ 図書館法制定時は、「日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人」ではなく、当時の「民法第34条の法人」を設置主体としていた
- ^ 図書館法から「県立2館除外」案 閲覧廃止が法抵触の指摘受け、県教委、神奈川新聞社、2013年2月21日。
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