意匠法第47条
意匠法第47条
補正却下決定不服審判について規定する。
条文
[編集](補正却下決定不服審判)
第47条 第17の2第1項の規定による却下の決定を受けた者は、その決定に不服があるときは、その決定の謄本の送達があつた日から3月以内に補正却下決定不服審判を請求することができる。ただし、第17条の3第1項に規定する新たな意匠登録出願をしたときは、この限りでない。
2 前条第2項の規定は、補正却下決定不服審判の請求に準用する。
解説
[編集]補正却下決定不服審判とは、審査官が下した補正却下の決定(17条の2第1項)の妥当性について審理判断する準司法的行政手続をいう。
補正却下の決定は、出願の要旨を変更する補正を容認すると先願主義(9条)に反することになり、第三者が不測の不利益を被ることにつながり、不当であることを理由になされる。 しかし、審査官の判断に過誤があったことは保証できず、補正却下決定に対し何ら不服申立手段を認めないことは出願人にとって酷であり、意匠の保護に欠け産業の発達を阻害し法目的(1条)に反することになる。 ここで、不服の申立ては一般には行政不服審査法によるが、補正が要旨変更であるか否かの判断は専門的になる場合もあり、同法による不服申立て手続きを採用することは必ずしも妥当とはいえない。
そこで、意匠法は補正却下決定に対する不服申立手段として、補正却下不服審判制度を設け、準司法的手続に基づいて審判官の合議体に審理・判断させることとした。
要件
[編集]主体
[編集]補正却下決定を受けた者すなわち出願人である(本条1項本文、17条の2第1項、60条の24、6条1項)。共同出願の場合は、出願人全員で請求しなければならない(準特132条3項)。審決は合一にのみ確定すべきだからである。共同出願の場合にその出願について補正をするときは、共同出願人のうちの1人がすることができるが(準特14条)、そのときでも補正却下決定の効力は全員に及ぶため、その補正をした者だけが請求適格を有することは無い。
客体
[編集]審査官がした補正却下の決定という行政処分である(本条1項本文)。ただし、すでに補正却下後の新出願(意17条の3第1項)をしている場合は、原出願が取り下げたものとみなされており(同条第2項)原出願が特許庁に係属していないため、請求できない(本条1項ただし書)。
補正却下の決定は拒絶査定不服審判の審判合議体が下すこともあるが(準17条の2)、この場合は、審決等取消訴訟によることになる(50条1項後段で17条の2第1項を読み替えて準用)。
時期
[編集]補正却下決定の謄本送達日から3月以内に請求しなければならない(本条1項本文)。この3月の期間に対し、地理的不平等から出願人を救済するため延長が認められ(準特4条)、不可抗力から出願人を救済するため追完が認められる(準意46条1項)。
手続
[編集]請求の趣旨、請求の理由など所定の事項を記載した審判請求書(施規14条1項、様式12)を特許庁長官に提出しなければならない(準特131条)。 また、所定の審判請求料を納付しなければならない(意67条2項、別表6号、手数料令3条2項6号)。
効果
[編集]補正却下決定不服審判に係属する。
審理の主体
[編集]方式審理は審判長が審理する(準特133条、133条の2)。判断に慎重を期し審理の客観性を担保するため、適法性審理(準特135条)および実体審理は3人または5人の審判官の合議体が審理する(準特136条)。
審判の公正を担保するため一定の場合には、審判官の除斥・忌避が認められる(準特139-144条)。
審理の内容
[編集]方式審理(準特133条、133条の2)、適法性審理(準135条)の後、補正却下決定の適否を審理する。
この審理は、原則書面審理となる(準特145条2項本文)。ただし、口頭審理となる場合がある(同条ただし書)。 審決の対世的効力に鑑み、職権主義が採用されている(準特150-153条)。
決定維持の可否について自判する。拒絶査定不服審判のように差戻審決はありえない。
答弁書提出、参加の制度はない(意52条で読み替えて準用する特161条において特134条1項、148, 149条を準用せず)。当事者対立構造を採らないため認める必要性が乏しいからである。
審判の終了
[編集]原則として、審理終結通知(準特156条)の後、請求認容または請求棄却の審決によって終了する(準157条)。 不適法な請求で補正ができない場合は、却下審決により終了することもある(準135条)。 また、請求却下の決定(準133条)、請求の取下げ(準155条)、出願の取り下げ(補正却下後の新出願(意17条の3)によるみなし取り下げを含む)によっても終了する。
棄却・却下審決、請求却下決定に不服がある場合は、東京高等裁判所に訴えを提起することができる(59条)。
審決確定の効果
[編集]請求認容審決は、審決の謄本の送達がされた時に確定し、問題となった補正がされた状態で(51条)中止されていた出願の審査が再開される。 棄却審決または却下審決は不服申立手段が尽きたときに確定する。この場合、かかる補正がされなかったとみなされた状態で中止されていた出願の審査が再開される。
確定審決に対する非常の不服申立手段として再審がある(53条)。
改正履歴
[編集]- 昭和60年法律第41号 - 補正却下後の新出願の規定を参照する場所の変更(1項ただし書)
- 平成5年法律第26号 - 補正却下決定、補正却下後の新出願の規定を参照する場所の変更(1項)
- 平成15年法律第47号 - 審判名称付与に伴う修正(見出し含む)
- 平成20年法律第16号 - 請求期間を30日から3月に延長(1項)
平成20年改正では、出願人が補正却下不服審判の請求をするか否かについてより精査して判断できるよう、請求期間を延長した。
関連条文
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