手形法第16条
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条文
[編集]【裏書の資格授与的効力、手形の善意取得】
- 第16条
- 為替手形ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス最後ノ裏書ガ白地式ナル場合ト雖モ亦同ジ抹消シタル裏書ハ此ノ関係ニ於テハ之ヲ記載セザルモノト看做ス白地式裏書ニ次デ他ノ裏書アルトキハ其ノ裏書ヲ為シタル者ハ白地式裏書ニ因リテ手形ヲ取得シタルモノト看做ス
- 事由ノ何タルヲ問ハズ為替手形ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合ニ於テ所持人ガ前項ノ規定ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ手形ヲ返還スル義務ヲ負フコトナシ但シ所持人ガ悪意又ハ重大ナル過失ニ因リ之ヲ取得シタルトキハ此ノ限ニ在ラズ
解説
[編集]- 為替手形の占有者が裏書の連続によってその権利を証明するときは、これを適法の所持人とみなす。最後の裏書が白地式である場合であっても同様である。抹消した裏書は、この関係においては、これを記載しなかったものとみなす。白地式裏書に続けて他の裏書があるときは、その裏書をした者は、白地式裏書によって手形を取得したものとみなす。
- どのような場合であっても、為替手形の占有を失った者がいる場合において、所持人が前項の規定によりその権利を証明するときは、手形を返還する義務を負わない。但し、所持人が悪意又は重大な過失によってこれを取得したときは、この限りでない。
第1項
[編集]- 「適法ノ所持人ト看做ス」とあるが、判例において、この「看做ス」は「推定する」の意味であるとされ(最判 昭和36年11月24日)、真実の権利者でないことを証明すれば、権利の行使を拒みうる。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和30年9月23日)
- 実在しない会社の裏書が介在する場合と裏書の連続
- 手形の裏書中に実在しない会社の裏書が介在しているからといつて連続を欠くとはいえない。
- 譲受債務金請求(最高裁判決 昭和30年9月30日)
- 職名を附記して表示された受取人が個人名義で裏書した場合と裏書の連続
- 職名を附記して表示された手形受取人が個人名義でこれに裏書した場合でも、特段の事由がない限り裏書の連続を欠くとはいえない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和31年2月7日)
- 隠れたる取立委任裏書と手形上の権利移転の有無
- 隠れたる取立委任裏書により、手形上の権利は、裏書人から被裏書人へ移転するものと解すべきである。
- 裏書の連続を欠く手形上の権利行使の許否
- 手形所持人は、たとえ手形が裏書の連続を欠くため形式的資格を有しなくても、実質的権利を証明するときは、手形上の権利を行使することができる。
- 隠れたる取立委任裏書と手形上の権利移転の有無
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和35年1月12日)
- 代理、代表の権限のない者のなした手形の裏書譲渡と手形法第16条第2項
- 甲会社名古屋出張所取締役所長として約束手形を裏書譲渡した乙が、甲会社を代理または代表する権限を有しなかつた場合でも、裏書が形式的に連続しており、被裏書人に悪意または重大な過失がなかつたときは、右被裏書人は振出人に対しその手形上の権利を行使できるものと解するのが相当である。
- 売掛代金請求(最高裁判決 昭和36年11月10日)
- 手形の裏書の抹消。
- 手形の裏書が抹消された場合には、これを抹消する権利を有する者がしたかどうかを問わず、手形法第16条により、右裏書は記載されなかつたものとみなすべきである。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和36年11月24日)
- 手形法第16条第1項第1段の「看做す」の意義。
- 手形法第16条第1項第1段に「看做す」というのは、「推定する」との意味に解すべきである。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和49年12月24日)
- 約束手形の受取人欄の変造と手形法16条1項の適用
- 約束手形の受取人欄が変造された場合であつても、その手形面上変造後の受取人から現在の所持人へ順次連続した裏書の記載があるときは、右所持人は、振出人に対する関係においても手形法77条1項1号、16条1項により適法な所持人と推定される。
- 約束手形金(最高裁判決 昭和52年6月20日)
- 盗難手形の取得者に手形法16条2項但書の重大な過失があるとされた事例
- 手形の譲受人において、手形受取名義人が当該手形の所持人であることにつき疑念を懐いて然るべき原判決理由説示のような事情があるのに、手形振出名義人又は支払担当銀行に照会するなどなんらかの方法で手形振出の真否につき調査をしなかつたのは、重大な過失があるということができる。
- 約束手形金(最高裁判決 昭和57年4月1日)
- 裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えの提起と消滅時効の中断
- 裏書の連続を欠く手形による手形金請求の訴えを提起した場合でも、手形所持人がその実質的権利を証明するときは、右手形債権の消滅時効は中断する。
- 約束手形金(最高裁判決 昭和61年7月18日)
- 手形の被裏書人の記載の抹消と裏書の効力
- 約束手形の裏書のうち被裏書人の記載のみが抹消された場合、当該裏書は、裏書の連続の関係においては、右抹消が権限のある者によつてされたことを証明するまでもなく、白地式裏書となる。
- 約束手形金請求(最高裁判決 平成13年1月25日)
- 手形について除権判決の言渡しがあったこととこれよりも前に当該手形を善意取得した者の手形上の権利
- 手形について除権判決の言渡しがあったとしても,これよりも前に当該手形を善意取得した者は,当該手形に表章された手形上の権利を失わない。
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