手形法第17条
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条文
[編集]【人的抗弁の切断】
- 第17条
- 為替手形に依り請求を受けたる者は振出人其の他所持人の前者に対する人的関係に基く抗弁を以て所持人に対抗することを得ず但し所持人が其の債務者を害することを知りて手形を取得したるときは此の限に在らず
解説
[編集]- 為替手形によって請求を受けた者は、振出人その他所持人の前者に対する人的関係に基づく抗弁をもって所持人に対抗することができない。但し、所持人がその債務者を害することを知って手形を取得したときは、この限りでない。
「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ」
[編集]- 該当する事例
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- 詐欺などで取消しうる取引の支払いのために振り出された手形を事情を知って裏書譲受した手形所持人(最判昭和30年05月31日)
- 該当しない事例
参照条文
[編集]判例
[編集]- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和29年04月02日)手形法第77条
- 融通手形の振出人が受取人に対し融通手形の抗弁をもつて対抗し得ない場合
- 金額および満期日を同じくする約束手形を融通手形として相互に交換的に振り出し交付するにあたり、相互にこれを対価とする合意がある場合において、一方の手形金の支払がなされたときは、反対の事情のないかぎり、他方の手形の振出人は、その受取人に対して融通手形の抗弁をもつて対抗し得ない。
- 「金額および満期日を同じくする約束手形を融通手形として相互に交換的に振り出し交付する」、双方、資金繰りが苦しい時に行われる馴合手形・書合手形と呼ばれる手法。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和30年05月31日)手形法第77条
- 手形法第77条、第17条但書に該当する一事例。
- 約束手形の裏書譲渡を受けた者が、その取得に際し、右手形は売買代金債務の支払確保のため振出されたものであり、かつ右売買は売主の不履行により結局解消されるに至るべきことを熟知していた場合は、手形法第77条、第17条但書にいわゆる「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形を取得シタルトキ」に該当する。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和30年11月18日)
- 手形法第17条但書にあたらない一場合
- 約束手形を裏書によつて取得した者が、取得の際、右手形は請負代金の前渡金として振り出されたものであることを知つていたとしても、後に請負契約が解除されるかも知れることを予想していたとは認められないときは、手形法第17条但書にいわゆる「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」に該当しない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和34年07月14日)
- 融通手形の振出人の責任。
- いわゆる融通手形の振出人は、直接被融通者から手形金の支払を請求された場合に支払を拒絶できるのは格別、被融通者以外の所持人に対しては、特段の事情のないかぎり、その者が融通手形であることを知つていたと否とを問わず、その支払を拒絶することはできない。
- 為替手形の支払呈示禁止請求(最高裁判決 昭和35年02月11日)
- 書替前の旧手形取得の際に人的抗弁事由の存在を知らなかつた者に対する悪意の抗弁の成否。
- 書替前の旧手形を取得した際に人的抗弁事由の存在を知らなかつた者に対しては、書替後の新手形について悪意の抗弁を対抗することはできない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和35年10月25日)小切手法第22条
- 手形所持人の過失の有無と手形法第17条。
- 債務者を害することを知らないで手形の所持人となつた者に対しては、重大な過失があると否とを問わず、前者に対する人的抗弁をもつて対抗することはできない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和37年05月01日)
- 人的抗弁の存在につき手形所持人の前者が善意であつた場合と手形法第17条但書の適用
- 人的抗弁の存在につき手形所持人の前者が善意であるため、手形債務者が右前者に対し人的抗弁を対抗しえなかつた場合は、手形所持人が右人的抗弁の存在を知つて手形を取得しても、右人的抗弁の対抗を受けない。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和40年04月09日)
- 善意の第三者に裏書譲渡したのち戻裏書によつて再び所持人になつた者に対する人的抗弁。
- 約束手形の振出人から人的抗弁の対抗を受けるべき手形所持人は、当該手形を善意の第三者に裏書譲渡したのち戻裏書によつて再びその所持人となつた場合でも、振出人から右抗弁の対抗を受ける。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和42年04月27日)
- いわゆる交換手形につき悪意の抗弁の認められる場合
- 甲および乙が相手方を受取人とし、同一金額の約束手形を、いわゆる融通手形として交換的に振り出し、各自が振り出した約束手形はそれぞれ振出人において支払をするが、もし乙が乙振出の約束手形の支払をしなければ、甲は甲振出の約束手形の支払をしない旨約定した場合において、乙がその約束手形の支払をしなかつたときは、甲は、右約定および乙振出の約束手形の不渡り、あるいは、不渡りになるべきことを知りながら甲振出の約束手形を取得した者に対し、いわゆる悪意の抗弁をもつて対抗することができる。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和43年12月25日)手形法第77条,民法第1条2項,民法第1条3項
- 自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人が右原因債権の完済後に振出人に対してする手形金請求と権利の濫用
- 自己の債権の支払確保のため約束手形の裏書を受けた手形所持人は、その後右債権の完済を受けて裏書の原因関係が消滅したときは、特別の事情のないかぎり、以後右手形を保持すべき正当の権原を有しないことになり、手形上の権利を行使すべき実質的理由を失つたものであつて、右手形を返還しないで自己が所持するのを奇貨として、自己の形式的権利を利用し振出人に対し手形金を請求するのは、権利の濫用にあたり、振出人は、右所持人に対し手形金の支払を拒むことができる。
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和44年04月03日)手形法第77条1項1号,民法第43条,民法第93条,農業協同組合法第10条
- 代理人が権限を濫用して振り出した約束手形と第三取得者に対する本人の手形抗弁
- 代理人が自己または第三者の利益をはかるため、代理権限を濫用して約束手形を振り出した場合において、権限濫用の事実を知りまたは知りうべかりし状態で右手形の交付を受けた受取人が、これを他に裏書譲渡したときは、本人は、手形法17条但書の規定により、第三取得者が受取人の右知情について悪意であることを立証した場合にかぎり、右第三取得者に対する手形上の責任を免れることができると解するのが相当である。
- 手形行為は農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれるか
- 手形行為は、農業協同組合の目的たる事業の範囲に含まれる。
- 代理人が権限を濫用して振り出した約束手形と第三取得者に対する本人の手形抗弁
- 約束手形金請求(最高裁判決 昭和45年07月16日)手形法第77条1項1号
- 振出および裏書の原因関係がともに消滅した場合における人的抗弁の対抗
- 手形振出人は、受取人から手形所持人に対する裏書の原因関係が消滅し、所持人が手形の支払を求めるなんらの経済的利益も有しないときは、受取人との間における振出の原因関係消滅の抗弁をもつて、手形所持人に対抗することができる。
- 約束手形金 (最高裁判決 昭和54年09月06日)民法第95条,手形法第12条第2項,手形法第77条1項
- 手形金額に錯誤のある裏書と悪意の取得者に対する償還義務の範囲
- 手形の裏書人が、金額1500万円の手形を金額150万円の手形と誤信し同金額の手形債務を負担する意思のもとに裏書をした場合に、悪意の取得者に対して錯誤を理由に償還義務の履行を拒むことができるのは、右手形金のうち150万円を超える部分についてだけであつて、その全部についてではない。
- 約束手形金(最高裁判決 昭和57年09月07日)民法第427条,民法第442条,民法第465条1項,手形法第30条1項,手形法第47条1項,手形法第47条3項,手形法第49条,手形法第77条1項1号,1項4号,3項
- 約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも保証の趣旨で裏書したものである場合に手形を受戻した第二裏書人に対し第一裏書人が負うべき遡求義務の範囲
- 約束手形の第一裏書人及び第二裏書人がいずれも振出人の手形債務を保証する趣旨で裏書したものである場合において、第二裏書人が所持人から手形を受戻したうえ第一裏書人に対し遡求したときは、第一裏書人は民法第465条1項の規定の限度においてのみ遡求に応じれば足り、右の遡求義務の範囲の基準となる裏書人間の負担部分につき特約がないときは、負担部分は平等である。
- 約束手形金(最高裁判決 平成7年07月14日)手形法第77条
- 貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出された約束手形であることを知って右手形を取得した行為と手形法17条ただし書
- 約束手形の所持人が手形を裏書によって取得する際に当該手形が貸金債権の未発生の利息の支払のために振り出されたものであることを知っていたとしても、貸金債権の元本が弁済期より前に弁済されることによって右利息債権が発生しないであろうことを知っていたなどの特段の事情がない限り、手形法17条ただし書にいう「債務者ヲ害スルコトヲ知リテ手形ヲ取得シタルトキ」には当たらない。
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