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日本国憲法第32条

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条文

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【裁判を受ける権利】

第32条
何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。

解説

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ウィキペディア日本国憲法第32条の記事があります。

審級制度

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審級制度については、憲法第81条に規定するところ(憲法判断に関しては最高裁判所を終審裁判所とする旨)を除いては、憲法はこれを法律の定めるところにゆだねており、事件の類型によって一般の事件と異なる上訴制限を定めても、それが合理的な理由に基づくものであれば憲法32条に違反するものではない(判例)。

参照条文

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判例

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  1. 強盗、建造物侵入(最高裁判決 昭和23年3月10日)
    刑訴應急措置法第13條第2項の合憲性
    上告審において原審の事實認定の可否及び刑の量定の當否を判断するには自ら事實審査をしなければならない。盖刑の軽重は犯況、情状等に付き詳細の審査をしなければ之れを定めることが出來ないものだからである。故に原審の事實認定乃至刑の量定に對する批難を上告の理由として認めるか否かは上告審においても事實審査をすることにするかどうかの問題となり、結局審級制の問題に帰着する。刑訴應急措置法第13條第2項が刑訴法第412條乃至第414條の規定【刑事訴訟法第412条第413条第414条】を適用しない旨を定めたのは畢竟審級制度の問題として實體上の事實審査は第二審を以て打切り上告審においてはこれをしないことにする趣旨に出たものである。而して憲法は審級制度を如何にすべきかに付ては第81條以外何等規定する處がないから此の點以外の審級制度は立法を以て適宜に之れを定むべきものである。從つて刑訴應急措置法第13條第2項が前記の如く事實審査を第二審限りとし刑事訴訟法第412條乃至第414條の規定を適用しないことにしたからと云つてこれを憲法違反なりとすることは出來ない。故に右規定が違憲であることを主張しこれを前提として原審の刑の量定を攻撃せんとする論旨は上告の理由とならない。
  2. 町村長選挙罰則違反(最高裁判決 昭和24年3月23日)
    管轄違の裁判と憲法第32条
    憲法第32条の趣旨は凡て国民は憲法又は法律に定められた裁判所においてのみ裁判を受ける権利を有し裁判所以外の機関によつて裁判をされることはないことを保障したものであつて訴訟法で定める管轄権を有する具体的裁判所において裁判を受ける権利を保障したものではない。従つて仮に所論の如く本件公判請求書は昭和22年5月2日に福知山区裁判所において受理したものではなくて同年同月5日京都地方裁判所福知山支部が受理したものであるとしても、その違法はただ管轄違の裁判所のなした第二審判決を原審が是認したという刑事訴訟法上の違背があるということに帰着するだけであつて、そのために原判決を目して憲法違反のものであるとはいい得ない。従つて原判決は憲法に違反することを主張する。論旨は再上告適法の理由とはならない。
  3. 食糧管理法違反(最高裁判決 昭和25年2月1日)憲法第36条
    1. 刑訴応急措置法第13条第2項と憲法第32条
      所論憲法第32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利であることを規定したに過ぎないもので、如何なる裁判所において、裁判を受くべきかの裁判所の組織、権限等については、すべて法律において諸般の事情を勘案して決定すべき立法政策の問題であつて、憲法には第91条を除くの外特にこれを制限する何等の規定も存しない。従つて三審制を採用する裁判制度において、上告審を純然たる法律審すなわち法令違反を理由とするときに限り上告を為すことを得るものとするか、又は法令違反の外に量刑不当乃至事実誤認の上告理由をも認めて事実審理をも行うものとするかは、立法を以て適当に決定すべき事項に属する。されば旧憲法時代の訴訟手続において刑訴法第412条の規定により量刑不当の上告理由を許していたにかかわらず、刑訴応急措置法第13条第2項の規定において右刑訴法の規定を適用しないものと規定しからと云つてその規定を目して右憲法規定の違反なりとする所論は当を得ない。(昭和22年(れ)第56号同23年2月6日宣告大法廷判決参照)。
    2. 憲法第36条にいわゆる「残虐な刑罰」
      憲法第36条にいわゆる「残虐な刑罰」とは刑罰そのものが人道上残酷と認められる刑罰を意味し、法定刑の種類の選択又は範囲の量定の不当を指すものではない(昭和22年(れ)第323号同23年6月23日宣告大法廷判決参照)。
    3. 食糧管理法の目的と国民の生存権
      食糧管理法はその主要な目的手段として国民全体の食生活を安定確保するため、食糧生産者から余剰食糧を供出せしめ一般消費者にでき得る限り多く分配せんとするものであるから、国民食糧生産者は、この法律によつて直接その生命又は生活を害せられることなく、また一般消費者はこの法律によつて寧ろその生命又は生活を保障せられるのであるから、所論のごとく憲法の保障する国民の生存権を否定するものではなく、寧ろこれを保護するものである。また、同法並びにその附属法令は、第二次的手段として、主要食糧の讓渡又は移動等を一般的に禁止又は制限し若しくは配給量につき一定の限度を設け得るものとしたが同時にその讓渡、移動等については許可を認め配給については増配給食等の特別配給の方法をも認めているからこの点からしても所論のごとく同法をもつて合理性を欠き又は社会の現実に合はない国民のひとしく守り得ない。結局国民の生存権を否定する法令であると云うことはできない。(昭和23年(れ)第205号同年9月29日宣告大法廷判決参照)。
  4. 家屋収去・土地明渡請求(最高裁判決昭和29年10月13日)旧・民事訴訟法第393条(現・民事訴訟法第311条)、裁判所法第16条第3号
    民訴第393条および裁判所法第16条第3号の規定の合憲性
    民訴第393条および裁判所法第16条第3号の規定は憲法第32条、第76条、第81条のいずれにも違反しない。(本件特別上告の適否については少数意見がある。)
    • 最高裁判所の裁判権については、違憲審査を必要とする事件が終審としてその事物管轄に属すべきことは憲法上要請されているところであるが(憲法81条)、その他の事件の審級制度については法律の定めるところに委されていると解すべきであるから、下級裁判所が同時に上告審の一部を掌ることと定めるか否かは審級制度に関する立法の問題であつて、なんらわが憲法の制限するところでない。従つてこの趣旨からいつて、簡易裁判所を第一審とする民事事件の上告審を高等裁判所とすることを定めた民訴第393条および裁判所法第16条第3号の規定は、なんら憲法32条同76条同81条のいずれにも反するものではない。
  5. 家屋明渡調停事件の決定に対する再抗告につきなした決定に対する抗告(最高裁決定 昭和31年10月31日)憲法第82条
    調停に代わる裁判の合憲性
    家屋明渡請求訴訟事件につき、戦時民事特別法第19条第2項、金銭債務臨時調停法第7条第1項によつてなされた調停に代わる裁判は、憲法第11条第13条第22条第25条、第32条に違反しない。
    • 本件調停に代る裁判所の裁判は裁判所でない他の機関によつてなされたものではなく、同裁判所が戦時民事特別法19条2項、金銭債務臨時調停法7条1項によつてなしたものであること記録上明らかであつて、これも一の裁判たるを失わないばかりでなく、この裁判には抗告、再抗告、特別抗告の途も開かれており抗告人の裁判を受ける権利の行使を妨げたことにならないから、憲法に違反するものでない旨判断している。そして、原決定の右判断は正当であると認められるから、憲法32条違反の主張はその理由がない。
    • 抗告人は、本件調停に代る裁判並に原裁判が非公開の中に決定された違憲ありというが、右各裁判は対審乃至判決の手続によるものではないから、違憲の主張はその前提を欠く。
    (関係法令)
    • 戦時民事特別法19条2項趣旨
      金銭債務臨時調停法7条及び8条を、借地借家調停法による調停に準用。
    • 金銭債務臨時調停法7条1項趣旨
      同条所定の場合に、裁判所が一切の事情を斟酌して、調停に代え、利息、期限その他債務関係の変更を命ずる裁判をすることができ、また、その裁判においては、債務の履行その他財産上の給付を命ずることができる。
    • 金銭債務臨時調停法8条趣旨
      その裁判の手続は、非訟事件手続法による.
  6. 調停に代わる裁判に対する抗告についてなした棄却決定に対する再抗告(最高裁決定 昭和35年7月6日)憲法第82条
    純然たる訴訟事件につきなされた調停に代わる裁判の効力。
    戦時民事特別法第19条第2項、金銭債務臨時調停法第7条に従い、純然たる訴訟事件についてなされた調停に代わる裁判は、右第7条に違反するばかりでなく、同時に憲法第82条、第32条に照らし違憲たるを免れない。
    • 若し性質上純然たる訴訟事件につき、当事者の意思いかんに拘わらず終局的に、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判が、憲法所定の例外の場合を除き、公開の法廷における対審及び判決によつてなされないとするならば、それは憲法82条に違反すると共に、同32条が基本的人権として裁判請求権を認めた趣旨をも没却するものといわねばならない。
    • 金銭債務臨時調停法7条の調停に代わる裁判は、単に既存の債務関係について、利息、期限等を形成的に変更することに関するもの、即ち性質上非訟事件に関するものに限られ、純然たる訴訟事件につき、事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定する裁判のごときは、これに包含されていない。この限りにおいて、昭和31年10月31日最高裁決定の判例は変更される。
    (事件概要)
    家屋明渡請求及び占有回収請求事件において、各係属中に東京地方裁判所は職権をもつて各別に戦時民事特別法により、自ら借地借家調停法による調停により処理する旨を決定。しかし調停が不調となり、金銭債務臨時調停法7条1項、8条の規定により、右両事件を併合して調停に代わる決定をなしたもの。
  7. 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反(石油価格カルテル刑事事件 最高裁判決 昭和59年02月24日)
    独禁法85条3号の規定と憲法14条1項、31条、32条
    独禁法89条から91条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法85条3号の規定は、憲法14条1項、31条、32条に違反しない。
    • 裁判権及び審級制度については、憲法81条の要請を満たす限り、憲法は法律の適当に定めるところに一任したものと解すべきことは、当裁判所の判例(憲法81条判例1憲法81条判例2参照)のくりかえし判示するところである。もつとも、右各判例も裁判権及び審級制度に関する定めにつき、立法機関の恣意を許すとする趣旨ではなく、ある種の事件につき他と異なる特別の審級制度を定めるには、それなりに合理的な理由の必要とされることを当然の前提としていると解すべきであるが、独禁法89条から91条までの罪については、これらの対象とする行為がわが国の経済の基本に関するきわめて重要なものであつて、これに対する判断が区々に分れその法的決着が遅延することは好ましくないこと等の特殊な事情があることなどに照らすと、独禁法が、右各罪に係る訴訟につき、その第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させ裁判官五名をもつて構成する合議体により審理させることとして、審級制度上の特例を認めたことには、それなりに合理性がないとはいえないというべきである。そうすると、同法85条3号の規定が憲法14条1項、31条、32条に違反するものでないことは、当裁判所の前記各大法廷判例の趣旨に徴して明らかであつて、所論は、理由がない。
  8. 業務上横領被告事件(最高裁判決平成21年7月14日)刑事訴訟法第403条の2第1項
    刑訴法403条の2第1項と憲法32条
    刑訴法403条の2第1項は憲法32条に違反しない。
    • 審級制度については、憲法81条に規定するところを除いては、憲法はこれを法律の定めるところにゆだねており、事件の類型によって一般の事件と異なる上訴制限を定めても、それが合理的な理由に基づくものであれば憲法32条に違反するものではないとするのが最高裁判例である。
    • 即決裁判手続は、争いがなく明白かつ軽微であると認められた事件について、簡略な手続によって証拠調べを行い、原則として即日判決を言い渡すものとするなど、簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことにより、手続の合理化、効率化を図るものである。そして、同手続による判決に対し、犯罪事実の誤認を理由とする上訴ができるものとすると、そのような上訴に備えて、必要以上に証拠調べが行われることになりかねず、同手続の趣旨が損なわれるおそれがある。他方、即決裁判手続により審判するためには、被告人の訴因についての有罪の陳述(第350条の22)と、同手続によることについての被告人及び弁護人の同意とが必要であり(第350条の16第2項及び4項第350条の20第350条の22第1号及び2号)、この陳述及び同意は、判決の言渡しまではいつでも撤回することができる(第350条の25第1項第1号及び第2号)。したがって、即決裁判手続によることは、被告人の自由意思による選択に基づくものであるということができる。また、被告人は、手続の過程を通して、即決裁判手続に同意するか否かにつき弁護人の助言を得る機会が保障されている(第350条の17第350条の18第350条の23)。加えて、即決裁判手続による判決では、拘禁刑の実刑を科すことができないものとされている(第350条の29)。[※:各条項は現行法に変更している]
    • 刑訴法403条の2第1項は、上記のような即決裁判手続の制度を実効あらしめるため、被告人に対する手続保障と科刑の制限を前提に、同手続による判決において示された罪となるべき事実の誤認を理由とする控訴の申立てを制限しているものと解されるから、同規定については、相応の合理的な理由があるというべきである。

前条:
日本国憲法第31条
【法定手続の補償】
日本国憲法
第3章 国民の権利及び義務
次条:
日本国憲法第33条
【逮捕の要件】
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