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特許法第120条の4

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

特許法第120条の4

特許異議の申立ての取り下げについて規定する。平成6年改正から平成15年改正前の本条は特許法第120条の5を参照のこと。

条文

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(申立ての取下げ)

第120条の4 特許異議の申立ては、次条第1項の規定による通知があつた後は、取り下げることができない。

2 第155条第3項の規定は、特許異議の申立ての取下げに準用する。

解説

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特許異議の申立てをしたものの、主張の誤り、ライセンス契約の締結見込みなどの事情により手続を続行させる意思を失った異議事件を特許庁に係属させておく必要性は低く、また審判官を他の事件の処理に当たらせることができることから、申立人の自由意志による特許異議の申立ての取り下げを認めても構わない。 とはいえ、取消理由通知がされた異議事件まで特許異議の申立ての取り下げを認めると、特許に瑕疵があり無効とされる蓋然性が高いのにもかかわらず、無効とするためには別途特許無効審判の請求を待たなければならず、公益的観点から特許処分の見直しを図ろうとする特許異議申立制度の趣旨に合致しない。このため、特許異議の申立ての取り下げは取消理由通知があるまで認めることとした。したがって、取消理由通知があった後は特許権者の同意があったとしても[1]特許異議の申立ての取り下げは認めないこととした(本条1項)。

平成15年改正前は、特許異議申立期間の経過後に審理を開始する運用がとられていたが、平成26年改正後は特許権者が希望すれば特許異議申立期間の経過前であっても審理を開始できるようになったため[2]、特許異議申立期間内であっても取り下げができない場合も生じるようになった。


なお、特許異議の申立てが取り下げられたときは、特許庁長官がその旨を相手側(特許権者、補助参加人)に通知する(準施規50条の5)。職権審理による続行も認められない。

申立ての取り下げの書面は施規様式65の5が準用される(準施規50条の2)。


特許異議の申立ての請求が請求項ごとにできる(113条柱書後段)こととの均衡上、特許異議の申立ての取り下げも請求項ごとにできる(本条2項で準用する155条3項)。

改正履歴

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  • 平成6年法律第116号 - 追加(120条の3)
  • 平成15年法律第47号 - 削除
  • 平成26年法律第36号 - 再追加

脚注

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  1. ^ そもそも、特許異議申立制度では155条2項を準用していないから同意権は無い。
  2. ^ 特許庁総務部総務課制度審議室編『平成26年特許法等の一部改正 産業財産権法の解説』発明推進協会、2014、p. 81

関連条文

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前条:
120条の3
特許法
第5章 登録異議の申立て
次条:
120条の5