コンテンツにスキップ

生活保護法第4条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

コンメンタール生活保護法

条文

[編集]

(保護の補足性)

第4条  
  1. 保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
  2. 民法 (明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
  3. 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

解説

[編集]
第2項
民法上の扶養義務者がある場合には、民法第879条(扶養の程度又は方法)に基づき、扶養義務者と被扶養者の関係や扶養義務者の財産状況を勘案し、扶養義務者が、まず生活に困窮する者の扶助を行い、これに不足する分に関して、生活保護がなされる。

参照条文

[編集]

判例

[編集]
  1. 損害賠償請求事件(最高裁判例  昭和46年06月29日)民法第709条
    交通事故による被害者が加害者に対して損害賠償請求権を有する場合と生活保護法による保護受給資格
    交通事故による被害者は、加害者に対して損害賠償請求権を有するとしても、加害者との間において損害賠償の責任や範囲等について争いがあり、賠償を直ちに受けることができない場合は、他に現実に利用しうる資力がないかぎり、傷病の治癒等の保護の必要があるときは、同法4条3項により、利用し得る資産はあるが急迫した事由がある場合に該当するとして、例外的に保護を受けることができるのであり、必ずしも本来的な保護受給資格を有するものではない。
  2. 保護変更決定処分取消,損害賠償請求事件  (最高裁判例  平成16年03月16日)生活保護法第1条,生活保護法第8条,生活保護法第10条,生活保護法第11条1項,生活保護法第13条,生活保護法第25条2項
    1. 生活保護法による保護を受けている者がした貯蓄等の同法4条1項にいう「資産」又は同法(平成11年法律第160号による改正前のもの)8条1項にいう「金銭又は物品」該当性
      生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(平成11年法律第160号による改正前のもの)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。
    2. 生活保護法による保護を受けている者が子の高等学校修学費用に充てる目的で加入した学資保険の満期保険金について収入の認定をして保護の額を減じた保護変更決定処分が違法であるとされた事例
      生活保護法による保護を受けている者が,同一世帯の構成員である子の高等学校修学の費用に充てることを目的として満期保険金50万円,保険料月額3000円の学資保険に加入し,保護金品及び収入の認定を受けた収入を原資として保険料を支払い,受領した満期保険金が同法の趣旨目的に反する使われ方をしたことなどがうかがわれないという事情の下においては,上記満期保険金について収入の認定をし,保護の額を減じた保護変更決定処分は,違法である。
  3. 保護申請却下処分取消等請求事件  (最高裁判例  平成20年02月28日)生活保護法第8条1項,生活保護法第12条1項,生活保護法第25条2項
    生活保護を受け始めて間もない時期に外国への渡航費用を支出した者に対する,同渡航費用の金額を超えない金額を生活扶助の金額から減じて差し引く旨の保護変更決定が,適法であるとされた事例
    生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航費用の金額を超えない金額を,上記支出をした月の分の生活扶助の金額から減じ,後の月の分の生活扶助から差し引く旨の保護変更決定は,適法である。
  4. 生活保護開始申請却下取消等請求事件(東京地方裁判所裁判例  平成23年11月08日)
    1. 生活保護の開始申請に対し,稼働能力を活用していないとして社会福祉事務所長がした同申請の却下決定の取消請求が,認容された事例
      生活保護の開始申請に対し,稼働能力を活用していないとして社会福祉事務所長がした同申請の却下決定の取消請求につき,生活保護法4条1項所定の「その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用すること」という要件は,生活困窮者が稼働能力を有しているのに現にこれが活用されていない場合であっても,直ちにそれを充足することが否定されるものではなく,当該生活困窮者が,その具体的な稼働能力を前提としてそれを活用する意思を有しているときには,当該生活困窮者の具体的な環境の下において,その意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができると認めることができない限り,なお生活困窮者は,その利用し得る能力を,その最低限度の生活の維持のために活用しているものであって,前記要件を充足するということができるとした上で,当該申請者は,申請当時,その具体的な稼働能力を前提としてそれを活用する意思を有しており,またその意思のみに基づいて直ちにその稼働能力を活用する就労の場を得ることができなかったと認めることができるから,前記要件を充足しているとして,前記請求を認容した事例
    2. 路上生活者が社会福祉事務所長に対してした生活保護(居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助)を開始する旨の決定の義務付けを求める請求が,認容された事例
      路上生活者が社会福祉事務所長に対してした生活保護(居宅保護の方法による生活扶助及び住宅扶助)を開始する旨の決定の義務付けを求める請求につき,保護の実施機関は,生活保護法30条1項所定の居宅保護によっては「保護の目的を達しがたい」という要件に該当するか否かの判断について裁量権を付与されており,同要件に該当する旨判断し生活扶助の方法として居宅保護によらないことがその裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められるときに初めて,裁判所は生活扶助の方法として居宅保護によるべき旨を命ずる判決をすることになるが,居宅保護の原則は,施設保護により被保護者を救護施設,更生施設又はその他の施設に入所させるなどして保護を行うよりも被保護者の生活の本拠である居宅において保護を行う方が生活保護法の目的により適うという考慮に基づくものであるから,要保護者が現に居宅を有しない場合であっても,そのことによって直ちに居宅保護による余地はないと解することは相当ではなく,保護の実施機関は,居宅保護による場合の居宅の確保の可能性をも考慮して,居宅保護によるか施設保護によるかを決定すべきであるとした上,生活保護の実務では,保護の開始時において安定した居宅を有しない要保護者が居宅の確保のために敷金等を必要とする場合には,アパート転宅費用として一定の範囲で敷金等必要な費用を支給するものとされている等,居宅保護による場合には居宅の確保が可能となるような取扱いがされていることを総合的に考慮すると,処分行政庁が居宅保護によっては「保護の目的を達しがたい」という要件に該当する旨判断し生活扶助の方法として居宅保護によらないことは,その裁量権の範囲を超え又はその濫用となると認められ,また,当該路上生活者は居宅となるべき家屋を所有していないから,処分行政庁が住宅扶助を行うべきことは同法14条の規定から明らかであると認められるとして,前記請求を認容した事例

前条:
生活保護法第3条
(最低生活)
生活保護法
第1章 総則
次条:
生活保護法第5条
(この法律の解釈及び運用)
このページ「生活保護法第4条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。