会社法第188条
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法学>民事法>商法>コンメンタール会社法>第2編 株式会社>第2編第2章 株式
条文
[編集](単元株式数)
- 第188条
- 株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって株主が株主総会又は種類株主総会において一個の議決権を行使することができる一単元の株式とする旨を定款で定めることができる。
- 前項の一定の数は、法務省令で定める数を超えることはできない。
- 種類株式発行会社においては、単元株式数は、株式の種類ごとに定めなければならない。
解説
[編集]- 本条において、議決権を行使できる株式について、一定数量の株式を単位とすることができる旨をさだめる(単元株制度)。したがって、それに満たない株式(単元未満株式)は議決権を行使できない他、共益権の行使について制限を受ける。また、一般に証券市場における取引は、単元株単位となっている[1]。
単元株式制度導入の経緯
[編集]- 商法典制定から終戦まで
- 日本に株式会社制度が成立した当時、株式は実際に払い込んで資本金に充当した金額に対して、1株の額を一定額に規格化し「1株券金50円也」のように記載した額面株式であった[2]。額面株式制度においては、「資本の額=額面額×発行済株式総数(=株金総額)」が明確であった。株式会社制度が定着した昭和初期にあっては、1株の額面には50円が多く採用され、その他、20円や100円なども見られた。当時の50円は、おおよそ現在の20万円から40万円程度の価値と言われているので、事業会社への投資一口分としては概ね妥当な水準であった。
- しかし、敗戦を契機とした急激なインフレーションにより、円の価値は暴落し、1株当たりの額面の市場的価値は極めて小さいものになった。
- 1950年商法改正
- 1950年(昭和25年)改正により、無額面株式制度が導入され、また、改正後に設立される株式会社の最低額面額は500円となったが、同改正前の旧法下で成立した会社についてはそのまま旧法が適用されたため、実際にはそれまで一般的であった額面額50円の株式が大多数であった。そのため、原則的には額面50円1株を所有している者であっても株主として取り扱わざるを得ず、株主総会への参加・配当の支払い等の管理事務手数料や証券市場における取引手数料との均衡が取れず問題となっていた。
- また、増資において無額面株式を時価で発行する方式が認められたため、「資本の額=額面額×発行済株式総数+無額面株式の払込額」ということになり、額面と資本の額が一致しない状況も生じるようになった。
- 1981年商法改正
- 1981年(昭和56年)商法改正により、額面株式制度を残したまま、改正以降、新たに設立される株式会社については、1株の額面は50000円以上とされ、一方でそれ以前に設立された会社については、1株額面50円は維持されたものの、議決権等株主権の行使・証券市場を通した取引などは50000円額面相当、すなわち、50円額面の株式であれば1000株を単位として取り扱う単位株株制度が導入された。50000円の額面株式が株式分割等により、1株に満たない持分が生じたものについては
端株 、単位株に満たない株式は単位未満株として、株主権のうち共益権の制限と証券市場における売買が制限された(次条、単元未満株式参照)。 - さらに、本改正で時価発行増資が認められるようになったため、資本の額と額面額の関連性は切断され、資本の額は、原則として、設立または株式の発行に際して株主となる者が株式会社に払込みまたは給付をした額(出資額)となり(商法第284条ノ2;現.会社法第445条1項)、出資額の2分の1を超えない額は、資本金として計上せず、資本準備金に計上することができることになった(同条2項,3項)。
- こうして、株式の額面と資本の額の関係は断たれたが、証券市場において大勢を占めたのは旧来からの50円額面の株式であり(株式併合による50000円額面への転換が期待されたが、発行会社には特にメリットがなく全く進まなかった)、50000円額面[3]の株式は少数派であり、証券会社店頭などの取引ボードでは表示が異なるなどの不具合もあり[4]、改善が求められた。
- 2001年商法改正
- 2001年(平成13年)商法改正により、額面株式は廃止され、会社は定款により、議決権を行使する株式数(≒取引単位)を定めることができるようになり、それまでの端株・単位未満株は単元未満株として統合された。
- 2005年(平成17年)会社法制定に伴い、本制度は継承された。
関連条文
[編集]- 2項
- 法務省令:会社法施行規則第34条(単元株式数)
- 法第188条第2項に規定する法務省令で定める数は、1000及び発行済株式の総数の200分の1に当たる数とする。
脚注
[編集]- ^ 上場株式に関して、単元株未満でも取引ができるサービスを証券会社が提供している場合もあるが、これは証券会社等が保有する株式の共有持分を取引しているケースが多い。したがって、発行会社との直接の関係はない。
- ^ 1899年(明治32年)の商法典施行より1948年(昭和23年)の商法改正までは、会社設立時に株式の全額払込制を採用する株式会社の額面株式の最低額面額は20円、分割払込制を採用する会社の最低額面額は50円であった。
- ^ NTTドコモなどは50000円額面相当の無額面株式であった。
- ^ 1981年以降に設立された会社が、上場に際して50円額面の会社に吸収合併され、50円額面の株式を上場させる例も見られた。
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