刑事訴訟法第21条
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条文
[編集]【忌避の原因、忌避申立権者】
- 第21条
- 裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官又は被告人は、これを忌避することができる。
- 弁護人は、被告人のため忌避の申立をすることができる。但し、被告人の明示した意思に反することはできない。
解説
[編集]裁判官について、除斥事由には該当しないが、手続の公正さを失わせるおそれがあることを理由に、申立てに基づいてその手続に関する職務執行から排除すること
- 制度の目的
- 裁判官がその担当する事件の当事者と特別な関係にあるとか、訴訟手続外においてすでに事件につき一定の判断を形成しているとかの、当該事件の手続外の要因により、当該裁判官によつては、その事件について公平で客観性のある審判を期待することができない場合に、当該裁判官をその事件の審判から排除し、裁判の公正および信頼を確保すること※。
- 派生原理
- 手続内における審理の方法、態度などは、それだけでは直ちに忌避の理由となしえないものであり、これらに対しては異議、上訴などの不服申立方法によつて救済を求めるべきである※。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 詐欺(最高裁判決昭和28年10月6日)日本国憲法第37条
- 他の共犯者に対する公判審理により被告事件の内容を予め知つていた裁判官の裁判と憲法第37条第1項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」
- 共同被告人として起訴された共犯者らと被告人との弁論が分離された結果、判決裁判所の裁判官が、右共犯者らの公判審理により、被告人に対する公判審理の開始前に被告事件の内容に関し、予め知識を有していたからといつて、その裁判官のした審理判決が憲法第37条第1項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」でないということはできない。
- →「他の共犯者に対する公判審理により被告事件の内容を予め知つていた」ということは忌避の原因とならない。
- 裁判官忌避申立却下決定に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件(最高裁決定昭和31年9月18日)
- 裁判官が関係事件の審理によつて被告事件の内容につき知識を得たことと忌避の理由
- 同一の裁判官が公職選挙法第221条違反の罪における金員の被供与者の公判審理により、金員供与者たる被告人に対する事件の内容につき知識を得たからとて、その一事をもつて忌避の理由があるものとすることはできない。
- 背任被告事件につきなした裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定昭和31年9月25日)
- 社会的事実関係を同じくする民事訴訟の審判に関与した裁判官による合議体の構成と公平な裁判所
- 被告人に対する背任の公訴事実と社会的事実関係を同じくする民事訴訟事件の審判に関与した裁判官が、右背任被告事件について合議体の一員として審判に関与しても、それだけでは刑訴第21条第1項に該当せず、また憲法第37条第1項の公平な裁判所ではないとはいえない。
- 日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定に伴う刑事特別法違反被告事件につき裁判官田中耕太郎の忌避申立(最高裁決定昭和34年7月1日)
- 裁判官忌避の理由にあたらないとされた事例。
- 裁判官が日本国憲法の理念または社会現象についての所感を発表しても、その一事をもつて事件につき不公平な裁判をする虞があるものとはいえない。
- 裁判官忌避申立却下決定に対する異議についてなした棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定昭和36年6月14日)
- 共犯者に対して有罪の判決をした裁判官と忌避の原因。
- 裁判官が共犯者に対して被告人との共謀にかかる公訴事実につき有罪の判決をしたことだけでは、被告人に対する右公訴事実につき審判をするにあたつて忌避の原因とはならない。
- 裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定昭和44年9月11日)
- いわゆる付審判請求事件における被疑者の忌避申立権の有無
- 刑訴法262条以下に規定するいわゆる付審判請求事件における被疑者は、同法21条1項により、裁判官忌避の申立をすることができる。
- 特別抗告と原決定を取り消しても実益がないようになつたときの措置
- 忌避申立の対象とされた裁判官が、当該事件の審理を担当する裁判所の合議体の構成を離れたときは、特別抗告の論旨につき判断するまでもなく、同裁判官に対する忌避申立を却下した第一審決定およびこれを維持した原決定を取り消す実益を欠くに至つたものとして、特別抗告を棄却すべきである。
- いわゆる付審判請求事件における被疑者の忌避申立権の有無
- 国家公務員法違反被告事件についてした裁判官忌避申立(最高裁決定昭和47年7月1日)
- 刑訴法20条6号にいう「裁判官が事件について検察官の職務を行つたとき」の意義
- 刑訴法20条6号にいう「裁判官が事件について検察官の職務を行つたとき」とは、裁判官がその任官前に、当該事件について、検察官としてある具体的な職務行為をした場合をいう。
- 最高裁判所の裁判官がその任官前に憲法および法律の解釈上同種の論点を含む他の事件につき高等検察庁検事長として上告趣意書を提出したことと刑訴法20条6号の除斥原因および同法21条1項の「不公平な裁判をする虞」
- 最高裁判所の裁判官が、その任官前に高等検察庁検事長として、憲法および法律の解釈上本件と同種の論点を含む他の刑事被告事件について上告趣意書を提出したからといつて、本件につき裁判官が検察官の職務を行なつたときにはあたらない。また、同上告趣意書において本件と同種の論点に関する法律上の見解を明らかにしたからといつて、本件につき不公平な裁判をする虞れがあるときに該当するものとはいえない。
- 最高裁判所の裁判官がその任官前に最高検察庁次長検事の職にあり検察庁法所定の職務権限を有していたことと刑訴法20条6号の除斥原因および同法21条1項の「不公平な裁判をする虞」
- 最高裁判所の裁判官が、その任官前に、最高検察庁次長検事の職にあり、検察庁法等所定の職務権限を有し、その在職の期間中に本件の論点と密接に関連する判旨をもつ上告審の諸裁判があつたとしても、本件につき具体的な職務行為をした事実が認められないかぎり、裁判官が検察官の職務を行なつたときにはあたらない。また、同裁判官が前記の期間次長検事の職務権限を有していたからといつて、本件につき不公平な裁判をする虞れがあるときに該当するものとはいえない。
- 刑訴法20条6号にいう「裁判官が事件について検察官の職務を行つたとき」の意義
- 付審判請求事件の裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告(最高裁決定昭和47年11月16日)
- 付審判請求事件の審理方式と忌避事由
- 本件付審判請求事件の審理を担当する裁判所が示した審理方式(判文参照)は、裁量の許される範囲を逸脱している疑いを免れないけれども、そのことはただちに右裁判所を構成する裁判官らを忌避する事由とはなりえない。
- 裁判官忌避申立(最高裁決定昭和48年9月20日)
- 裁判官が任官前審理の対象となつている条例の立案過程において法務府法制意見第一局長として意見回答をしたことと刑訴法21条1項の「不公平な裁判をする虞」
- 裁判官が、任官前、審理の対象となつている条例の立案過程において、当該条例案の合憲性に関する立案当事者の意見照会に対し、当時の法務府法制意見第一局長として純然たる法律解釈に関する意見回答をしたからといつて、事件につき裁判の公正を妨げるおそれがある予断または偏見があるものとすることはできない。
- 裁判官忌避申立却下決定に対する即時抗告の決定に対する特別抗告(最高裁決定昭和48年10月8日)
- 審理の方法態度と裁判官忌避
- 訴訟手続内における審理の方法、態度などは、それ自体としては裁判官を忌避する理由となしえない。
- 裁判官の忌避申立につき簡易却下が相当であるとされた事例
- 公判期日前の打合せから第一回公判期日終了までの裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権の行使の不当を理由とする忌避申立は、本件のような事情(判文参照【裁判長の訴訟指揮権、法廷警察権の行使に対する不服】)のもとにおいては、訴訟遅延のみを目的とするものとして、刑訴法24条により却下すべきものである。
- 審理の方法態度と裁判官忌避
- 忌避申立て事件(最高裁決定平成23年5月31日)
- 最高裁判所長官として裁判員制度の実施に係る司法行政事務に関与したことが同制度の憲法適合性を争点とする事件についての忌避事由に当たるか
- 最高裁判所長官が,裁判員制度の実施に係る司法行政事務に関与したからといって,同制度の憲法適合性を争点とする事件について,「不公平な裁判をする虞」があるということはできない。
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