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刑事訴訟法第318条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学コンメンタールコンメンタール刑事訴訟法=コンメンタール刑事訴訟法/改訂

条文

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(自由心証主義)

第318条
証拠の証明力は、裁判官の自由な判断に委ねる。

解説

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参照条文

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旧刑訴法337条
証拠の証明力は判事の自由なる判断に任す

判例

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  1. 強姦致死(最高裁判決 昭和24年07月09日) 
    1. 死因の確実性につき程度の差のある鑑定の結果を綜合して死因を確定することの適否
      致死罪において、甲鑑定人の窒息死と認めるという鑑定の結果と乙鑑定人の窒息死と認めるのが蓋然性が最も多いという鑑定の結果とを、他の証拠と綜合して被害者の死因を窒素死と認定しても、理由齟齬の違法があるとはいえない。
    2. 原審において従来の自白を飜した場合における同自白の任意性及び真実性の有無と裁判所の自由裁量
      被告人が原審において従来の自白を飜し、右は被告人の真意に出たものではないと弁解した場合に、右自白の任意性並びに真実性について如何なる範囲において取調を行い、その供述のいづれを措信するかは凡て事実審たる原審の自由な判断に委ねられているところである。
  2. 爆発物取締罰則違反,殺人未遂被告事件(最高裁決定 平成19年10月16日) 
    1. 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
      有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」というのは,反対事実が存在する疑いを全く残さない場合をいうものではなく,抽象的な可能性としては反対事実が存在するとの疑いをいれる余地があっても,健全な社会常識に照らしてその疑いに合理性がないと一般的に判断される場合には有罪認定を可能とする趣旨である。
    2. 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異なるか
      有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異ならない。
  3. 殺人,現住建造物等放火被告事件(最高裁判決 平成22年4月27日) 
    殺人,現住建造物等放火の公訴事実について間接事実を総合して被告人を有罪とした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決に,審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあるとされた事例
    殺人,現住建造物等放火の公訴事実について,間接事実を総合して被告人が犯人であるとした第1審判決及びその事実認定を是認した原判決は,認定された間接事実中に被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは,少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれているとは認められないなど,間接事実に関する審理不尽の違法,事実誤認の疑いがあり,刑訴法411条1号,3号により破棄を免れない。
    • 刑事裁判における有罪の認定に当たっては、合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証が必要であるところ、情況証拠によって事実認定をすべき場合であっても、直接証拠によって事実認定をする場合と比べて立証の程度に差があるわけではないが(最高裁平成19年(あ)第398号同年10月16日第一小法廷決定・刑集61巻7号677頁参照)、直接証拠がないのであるから、情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係が含まれていることを要するものというべきである。
  4. 強盗殺人被告事件(最高裁判決 平成30年7月13日) 刑訴法382条刑訴法411条1号
    被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決に,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例
    被告人を殺人及び窃盗の犯人と認めて有罪とした第1審判決に事実誤認があるとした原判決は,全体として,第1審判決の説示を分断して個別に検討するのみで,情況証拠によって認められる一定の推認力を有する間接事実の総合評価という観点からの検討を欠いており,第1審判決が論理則,経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものとはいえず,刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり,同法411条1号により破棄を免れない。
    • (事件概要)
      ホテル事務所において、侵入者が金品を物色するなどしていたところ、同ホテル支配人Aに発見されたことから、同人に対し、その頭部を壁面に衝突させ、頸部をひも様のもので絞め付けるなどしてその反抗を抑圧し、同所にあった同人管理の現金を強取し逃亡した。その際、前記暴行により、脳挫傷等の傷害を負ったAは、後日、前記障害による敗血症に起因する多臓器不全により、入院中の病院で死亡した。
      店長として勤務し、事件当時は休職中で、事件後行方不明であった被告人が、強盗殺人罪の疑いで逮捕された。被告人は犯行を否認している。
      第1審判決
      以下の事実を鑑み、被告人を犯人とし有罪判決をした。
      本件の犯人は、本件事務所から少なくとも自動交換機用に準備された二百数十枚の千円札を含む現金を奪取したと認められるところ、被告人は、本件発生から約12時間後、ATM から自己名義の預金口座に230枚の千円札を入金している。日常生活において、このような大量の千円札を持ち合わせることは通常ないと考えられることも併せると、被告人が、偶然に、本件とごく近接した時間帯にこれらの千円札を所持し、入金したとは考え難く、この事実は、特段の事情がない限り、被告人が本件の犯人であることを強く推認させる。
      控訴審判決
      以下の理由により被告人を犯人と認定した第1審判決には事実誤認があるとして第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪の言渡しをした。
      ①被告人が所持していた230枚の千円札が被害金そのものであることを裏付ける直接証拠がないこと、②被告人が犯人であることの立証責任は検察官にあることに鑑みれば、被告人が、本件犯行以外の事由によってその金銭を入手した可能性があれば、被告人を犯人と認定することはできず、その入手経路について弁解主張があったときは、その弁解が信用できると認められた場合はもちろん、その信用性にある程度の疑問があっても、これを虚偽として排斥しきれない以上は、被告人を犯人と認定することができないというべきであり、第1審判決の指摘する事実があれば、特段の事情がない限り、被告人が犯人であることを強く推認させるとした第1審判決の判断枠組みは、無罪推定の原則に反し、被告人に自らが犯人でないことについての立証責任を負担させるものであるから、到底支持することができない。

前条:
第317条
(証拠裁判主義)
刑事訴訟法
第2編 第一審

第3章 公判

第4節 証拠
次条:
第319条
(自白法則・補強法則)
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