刑事訴訟法第350条の16
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条文
[編集](即決裁判手続申立の要件と手続き)
- 第350条の16
- 検察官は、公訴を提起しようとする事件について、事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれることその他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公訴の提起と同時に、書面により即決裁判手続の申立てをすることができる。ただし、死刑又は無期若しくは短期1年以上の拘禁刑に当たる事件については、この限りでない。
- 前項の申立ては、即決裁判手続によることについての被疑者の同意がなければ、これをすることができない。
- 検察官は、被疑者に対し、前項の同意をするかどうかの確認を求めるときは、これを書面でしなければならない。この場合において、検察官は、被疑者に対し、即決裁判手続を理解させるために必要な事項(被疑者に弁護人がないときは、次条の規定により弁護人を選任することができる旨を含む。)を説明し、通常の規定に従い審判を受けることができる旨を告げなければならない。
- 被疑者に弁護人がある場合には、第1項の申立ては、被疑者が第2項の同意をするほか、弁護人が即決裁判手続によることについて同意をし又はその意見を留保しているときに限り、これをすることができる。
- 被疑者が第2項の同意をし、及び弁護人が前項の同意をし又はその意見を留保するときは、書面でその旨を明らかにしなければならない。
- 第1項の書面には、前項の書面を添付しなければならない。
改正経緯
[編集]2022年改正
[編集]以下のとおり改正。2025年6月1日施行。
- (改正前)懲役若しくは禁錮
- (改正後)拘禁刑
2016年改正
[編集]2016年改正において「証拠収集等への協力及び訴追に関する合意」の章が挿入されたことにより、「第350条の2」から条数が繰り下がった。
解説
[編集]即決裁判手続は、争いがなく明白かつ軽微であると認められた事件について、簡略な手続によって証拠調べを行い、原則として即日判決を言い渡すものとするなど、簡易かつ迅速に公判の審理及び裁判を行うことにより、手続の合理化、効率化を図るものである。
即決裁判手続により審判するためには、被告人の訴因についての有罪の陳述(第350条の22)と、同手続によることについての被告人及び弁護人の同意とが必要であり(本条第2項及び4項、第350条の20、第350条の22第1号及び2号)、この陳述及び同意は、判決の言渡しまではいつでも撤回することができる(第350条の25第1項第1号及び第2号)。したがって、即決裁判手続によることは、被告人の自由意思による選択に基づくものであるということができる。また、被告人は、手続の過程を通して、即決裁判手続に同意するか否かにつき弁護人の助言を得る機会が保障されている(第350条の17、第350条の18、第350条の23)。加えて、即決裁判手続による判決では、拘禁刑の実刑を科すことができないものとされている(第350条の29)。
同手続による判決に対し、犯罪事実の誤認を理由とする上訴ができるものとすると、そのような上訴に備えて、必要以上に証拠調べが行われることになりかねず、同手続の趣旨が損なわれるおそれがあるため、上訴は制限される(第403条の2)。
参照条文
[編集]判例
[編集]- 業務上横領被告事件(最高裁判決平成21年7月14日)刑事訴訟法第403条の2、日本国憲法第32条、日本国憲法第38条
- 刑訴法403条の2第1項と憲法32条
- 刑訴法403条の2第1項は憲法32条に違反しない。
- 即決裁判手続の制度が虚偽の自白を誘発するか
- 即決裁判手続の制度自体が虚偽の自白を誘発するとはいえない。
- 所論は、即決裁判手続は、刑の執行猶予の言渡しが必要的であるために安易な虚偽の自白を誘発しやすいから、憲法38条2項に違反する旨主張する。しかしながら、前記(解説参照)のような被告人に対する手続保障の内容に照らすと,即決裁判手続の制度自体が所論のような自白を誘発するものとはいえないから、憲法38条2項違反をいう所論は前提を欠く。
- 即決裁判手続の制度自体が虚偽の自白を誘発するとはいえない。
- 刑訴法403条の2第1項と憲法32条
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