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刑法第109条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

条文

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(非現住建造物等放火)

第109条
  1. 放火して、現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した者は、2年以上の有期拘禁刑に処する。
  2. 前項の物が自己の所有に係るときは、6月以上7年以下の拘禁刑に処する。ただし、公共の危険を生じなかったときは、罰しない。

改正経緯

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2022年、以下のとおり改正(施行日2025年6月1日)。

(改正前)懲役
(改正後)拘禁刑

解説

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Wikipedia
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ウィキペディア非現住建造物等放火罪の記事があります。

客体

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  1. 現に人が住居に使用せず、かつ、現に人がいない建造物
    1. 建造物 - 前条解説参照。
    2. 人が住居に使用せず、かつ、現に人がない
      「住居に使用」は前条解説参照。行為者は「人」に含まないので、行為者のみが居住する建造物は本条の対象となる。
  2. 現に人がない艦船または鉱坑
    前条から「汽車・電車」は除かれる。

自己物

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上記のものが自己の所有物である場合、減軽される。また、「公共の危険」が生じなかった場合、不可罰となる(具体的危険犯)。「公共の危険」は 次条解説参照。

故意

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第1項・第2項共通
客体の状況、すなわち、客体が「現住の建造物ではなく、かつ、放火行為現在において人がいない建造物等」であることの認識。
  • この認識と異なり、たまたま、放火の客体に人がいて(錯誤があって)、火災の結果、死傷に至った場合、この過失致死傷については、本罪に吸収される、または、本罪と過失致死傷の観念的競合となる(重過失を含め過失致死傷よりも本罪の法定刑の方が重いため、いずれの解釈でも大きな差はない)。
第2項
「公共の危険」の認識の要否。次条解説参照。

実行の着手と既遂時期

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前条解説参照。

罪数

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前条解説参照。

参照条文

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  • 第112条(未遂罪)
    第1項の罪の未遂は、罰する。

判例

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  1. 大審院第一刑事部大正6年4月13日判決 殺人及放火ノ件
    人を殺害したる後其犯跡を蔽はんか為めに其死屍の横はれる家屋に放火し之を焼燬したる行為は該家屋に他に住居するものなく又人の現在せる事実なき以上は刑法第109条に該当すへきものとす
  2. 大審院第一刑事部昭和7年5月5日判決
    他人所有の建造物を賃借し単独で居住している者が、当該建造物に放火した場合、現住建造物放火罪(刑法108条)ではなく非現住建造物放火罪(同109条1項)が成立するとした
    1. 犯人単独居住の家屋に放火したる犯罪に付刑法第109条1項を適用したるを非難して同法第108条を適用すへきものなりとの主張は不利益論旨なり
    2. 訴訟関係人より公判準備の為証人の召喚を請求したる場合に於て裁判所か其の請求を正当なりと認めたるときは証拠決定を為すへきものなるも特に決定書を作成せす直に其の証人に対し召喚状を発するを以て足る
  3. 非現住建物等放火未遂(最高裁決定昭和28年6月12日)第112条, 第115条
    現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火未遂罪の成否
    刑法115条の規定する現に人の住居に使用せず又は人の現存しない建造物に対する放火罪が、その未遂をも罰する法意であることは、放火の目的物に、同条所定の事実が存するときは、たとえそれが自己の所有に係る場合と雖も他人の物を焼燬した場合と同様に取扱われ刑法109条1項の犯罪を構成する旨を定めていること、そしてこの場合は同法112条によりその未遂罪をも罰していることに照して明らかである。

前条:
刑法第108条
(現住建造物等放火)
刑法
第2編 罪
第9章 放火及び失火の罪
次条:
刑法第110条
(建造物等以外放火)
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