初等数学公式集/初等代数

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多項式[編集]

展開公式[編集]

解説はこちらのページをご覧ください

  • 基本公式
  • 累乗
    パスカルの三角形
      • 特に、とすると、
  • 応用
    2変数
    • , の一般的な形
        • が奇数である時、
        • (参考) が4の倍数である時(とおいて)、
    3変数
    • の展開式の一般項(多項定理):
      • (ただし、)
    4変数

式の変形[編集]

  • ※1
  • ※1
  • ※1
  • ※1
  • ※2
  • ※1
    • ※1
  • ※1
  • ブラーマグプタの二平方恒等式
  • ラグランジュの恒等式

対称式・交代式[編集]

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ウィキペディア対称式の記事があります。
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  • 対称式とは、どの変数を入れ替えても、値が変わらない式、交代式とはいずれか2個の変数を入れ替えると、元の式の−1倍となる式をいう。
    (上記の変形式で※1は対称式であり、※2は交代式である。)
    • 変数が2個の場合、対称式はと表され、交代式はと表される。
    • 変数が3個の場合、
      • 対称式は
      • 交代式は
      となる。なお、3変数を全て入れ替えた場合が成立している。
    • 変数が4個以上にも一般化できるが、初等数学では取り扱わない。また、3変数の場合も参考の位置付けとしてのみ取り扱う。
対称式の性質
  • 2変数の対称式は、2変数の和:、積:を組み合わせることにより表される。, を基本対称式という。
    3変数の基本対称式は、, , であり、この性質を有する。
    (例)
  • 公式
    •  
      基本対称式を, と表現すると、
      と表されることとなり、, が与えられていれば、隣接三項間漸化式を解く問題に帰結される。
      数列未履修であっても出題される形式であるが、一般に次数が小さいものの値を求める問題となるため、次数の低いものから順に求めることが可能である。一般式ではなく、極端に次数が大きい場合は、循環性に着目した問題である場合が多い(交代式の例題①参照)。
    応用問題
    (定数)であるとき、の値を求めよ。
     
    (解法)
    とおくと、与式はの形となる、ここで、, であるので、
    とおいた漸化式;を解く問題に帰結する。
交代式の性質
  • 2変数の交代式は、2変数の差:を因数に持ち、で割った商は対称式である。
    3変数の交代式は、を因数に持ち、で割った商は対称式である。
  • 変数が同一である、2つの交代式(等)の積は対称式となる。

多項式の除法[編集]

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ウィキペディア除法の原理の記事があります。

多項式における除法の原理

多項式を、それより次数の少ない多項式で割るとき、次式を満たす多項式 , が一意に存在する。
 
 
このときの 剰余と呼ぶ。なお、を除数、除式または除多項式、を被除数、被除式または被除多項式ともいう。
除式次式であるとき、は、高々 次式である。

剰余の定理と因数定理[編集]

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ウィキペディア剰余の定理の記事があります。
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多項式 で割った余りは である。(剰余の定理

除法の原理より、であり、除多項式は1次式なので、は定数とすると、

とくに のとき、多項式 を因数に持つ。(因数定理

上の式で、となる場合である。
 
剰余定理の応用
  1. 除多項式が2次式の場合
    で割った余りが ()、 で割った余りが ()であるとき(ただし、)、 で割った余り;
     
     
    (解法)とおき、, を剰余式の係数について解く。
     
    • を2次式 で割った余り;
      の実数解が()であるとき、
       
     
    • を2次式 で割った余り;
       
       
      なお、 で割り切れる必要十分条件は、
       
      (解法)
      とおくと、となり、
      を代入すると、, を得るので、これらを剰余式の係数について解く。
       
  2. 除多項式が3次式の場合
    2次式における解法を拡張する。3元一次方程式の公式等は省略する。
    で割った余りが ()、 で割った余りが ()、 で割った余りが ()であるとき(ただし、は各々異なるものとする)、 で割った余り;
     
    (解法)
    とおき、, , を剰余式の係数について解く。
     
    • を3次式 で割った余り;
      の実数解が()であるとき、に関してを代入しできた連立方程式;, , を解いて、剰余式の係数を求める。
      (コメント)
      大学入試等に出題される場合、は基本的に因数分解により解は簡単に求められ(であることが多い)、また、などであって簡単に求められるよう設定されている。除多項式が簡単に因数分解できない場合などは、この方法での解答は求められていない。
     
    • を3次式 で割った余り;
       
       
      なお、 で割り切れる必要十分条件は、
       
      (解法)
      とおくと、
      となり、
      を代入すると、, , を得るので、これらを剰余式の係数について解く。

特殊な剰余の計算[編集]

上記で見られるように、除多項式が次であれば、剰余式は(高々)次であり、剰余式を求める計算において、各項の係数と定数を合わせた未知数は個ともなる。個の未知数を求めるには、個の方程式(元1次方程式)を解くことになるが、初等数学(高校までの数学)においては、4元以上の連立方程式を解く問題が出題されることはごく稀なので(未知数を1個ずつ減らすプロセスなので、無理な出題ではないが、労力の割に教育的意義は低い)、除多項式が3次以上のものが出題された場合、解法には上記の剰余定理以外を用いると考えた方がいい。

例. 次式(ただし、)で割った剰余。例題・特殊な剰余計算参照)
(解法)
にある関数をかけると、 ( は定数、は、で、 []とする)と変形できる場合がある。
これを、と変形し、に代入。
したがって、で割った剰余は、となる。

方程式[編集]

解の公式[編集]

  • 1次方程式 の解の公式:
 
  • 2次方程式 の解の公式:
    • の場合:
    • ( において ) の場合 :
    ※上記の3つの公式の根号の中の式は、各方程式の判別式Dとなる。

2元1次方程式[編集]

 (但し、
の解、
 
行列を用いた表現
右から、逆行列をかけると、

解と係数の関係[編集]

  • 2次方程式 の2つの解をとすると:
    であり、このは次の関係式を満たす。
    • ( において ) の2つの解をとすると:
      であり、このは次の関係式を満たす。
      零点の和 :
      零点の積 :
 
  • 3次方程式 の3つの解をとすると:
    であり、このは次の関係式を満たす。

方程式の解の存在条件[編集]

  • 次方程式の解の個数は、高々個である。
    が奇数である時、少なくとも1個の実数解を有する。
  • 2次方程式 に関して、
    (判別式)とする時、
    1. この2次方程式は2個の異なる実数解を持つ。
    2. この2次方程式は1個の実数解(重解/重根)を持つ。
    3. この2次方程式は2個の異なる虚数解を持つ(実数解を持たない)。
  • 3次方程式 ()に関して、
    1. 実数解をとして、と因数分解できる場合
      (判別式)として、
      1. この3次方程式は1個の実数解と2個の異なる虚数解を持つ(有する実数解は1個である)。
      2. である時、
        1. かつ、この3次方程式は実数解(重解/重根)のみを持つ。
        2. かつ、 但し、この3次方程式は(重解/重根)の2個の異なる実数解を持つ。
      3. である時、
        1. かつ、 但し、この3次方程式は(重解/重根)との2個の異なる実数解を持つ。
        2. かつ、この3次方程式は3個の異なる実数解を持つ。
    2. 微分を用いる解法。
      に対して、
      2次方程式の判別式、この2次方程式に実数解がある場合の解を各々(但し、)とする。
      1. この3次方程式は1個の実数解と2個の異なる虚数解を持つ(有する実数解は1個である)。
      2. この3次方程式は1個の実数解を持つ。
        1. かつこの3次方程式は1個の実数解と2個の異なる虚数解を持つ。
        2. かつこの3次方程式は1個の実数解(重解/重根)のみを持つ。
      3. である時、
        1. かつこの3次方程式は実数解(重解/重根)ととなる別の解の2個の実数解を持つ。
        2. かつこの3次方程式は実数解(重解/重根)ととなる別の解の2個の実数解を持つ。
        3. かつこの3次方程式は3個の実数解を持ち、となる。

不等式[編集]

絶対不等式[編集]

基本形 ;は、正の実数である場合。

  • 等号成立は のときのみ。
  • 等号成立は のときのみ。

拡張

  • 正の実数からのみ成る数列 に対し、
等号成立は のときのみ。(相加平均と相乗平均の関係式)
  • 複素数から成る数列 に対し、
等号成立はすべての数の偏角が等しいときのみ。(三角不等式)
  • 二つの数列 , に対し、
等号成立は、複素数 , , ..., が全て成り立つようなものが存在するときに限る。(コーシー・シュワルツの不等式)

2次不等式[編集]

  • 2次不等式 の解法:
    でありの解を(但し、は実数であり※2)とする。
    ※:ならば、とし、として評価。
    であるので、
     
    • 解の公式を用いると、であるので、
     
     
     
    ※2:が異なる2個の実数解を持たない場合の の評価
    1. が重解を持つ()とき。
      • の解はであって、不等式を成立させるは存在しない。
    2. が虚数解を持つ()とき。
      1. ならば、
        1. は、全ての実数で成立する。
        2. を成立させるは存在しない。
      2. ならば、
        1. は、全ての実数で成立する。
        2. を成立させるは存在しない。

3次不等式[編集]

  • 3次不等式 の解法:
    でありの解が(但し、は実数であり、)とする。が、この関係にない場合は後述する。
    ※:ならば、とし、として評価。
    とすると、である。
     
    この時、各要素の正負とそれをかけ合わせた式全体の正負は、以下のとおりとなる。
各要素の正負と式全体の正負
  
  • 以上から、
    1. , (表①③)
    2. , (表②④)
 
  • 3次不等式 と3次方程式 の関係
    ※「方程式の解の存在条件 3次方程式」も参照。
    3次方程式 (とする。の場合、大小・増減を入れ替え考察)に関して、実数解を各々,,)とする。条件によっては、,存在しない場合もある
    さらに、微分の知識を用いて、に対して、、ここで、2次方程式の判別式、この2次方程式に実数解がある場合の解を各々(但し、)とする。
    なお以下において、条件に、など、等号成立の場合、存在条件が付加されうるが、場合分けが煩雑になるため割愛する。上記3次方程式の解の存在条件と組み合わせて考察する。
    1. であるとき、は単調に増加する。したがって、
    2. であるとき、で極大値を、で極小値をとる。したがって、
      1. であるとき、
        なお、この時、
      2. であるとき、
        なお、この時、
      3. であるとき、
        なお、この時、

行列[編集]

ここでは行列はすべて2次正方行列とする。をすべての元がである行列 (零行列)とし、を任意の2次正方行列に対してとなる行列 (2次単位行列)とする。任意の2次正方行列 に対し、次が成り立つ。

  • となる行列を逆行列といい、(ただし、) で与えられる。

一次変換[編集]

平面座標上の点を、以下の式によって点に移す操作を一次変換という。

 (但し、

これを行列を用いて表現する。

以下に、代表的な変換行列を示す。
  • 原点を中心とする回転
    • 原点に関する対称移動
  • 直線に関する対称移動(※証明
    • 軸に関する対称移動
    • 軸に関する対称移動
    • 直線に関する対称移動
    • 直線に関する対称移動
 
 
※証明
直線に関する対称移動の操作は、
  1. 回転させることにより、対象軸を軸に一致させる(操作1)。
  2. 軸に関する対称移動を行う(操作2)。
  3. 回転させることにより、対象軸を元にもどす(操作3)。
ことによって実現できる。
これを、平面上の点に対して行うと、
操作1
操作2
操作3
倍角公式より