前項で述べたように,真の分数式は,

のような項の和であらわされた.ところで,
![{\displaystyle {\frac {Bs+C}{(s^{2}+ps+q)^{n}}}={\frac {B(s-\alpha )+D}{[(s-\alpha )^{2}+\beta ^{2}]^{n}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/c70f8a73aac9e04ee884c7e9818f242ffc2591e6)
と変形できるから、真分数は、
![{\displaystyle {\frac {1}{(s-\alpha )^{n}}},{\frac {1}{[(s-\alpha )^{2}+\beta ^{2}]^{n}}},{\frac {s}{[(s-\alpha )^{2}+\beta ^{2}]^{n}}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6204b72bb56b131c25d3eabebfe160fe51d1aab6)
ような項の 1 次結合で表されることが分かる.これらの原像を求めることができれば,我々の問題は解けたことになるのである.
ところで 第一移動定理

を想い起こせば,

の原像が計算できればよい.第 1 のものの原像,および第 2, 第 3 のものの
に対する原像はすでに分かっているから,

の原像が求まればよいことになる.もっともこれらの原像は形式的には,

および,

と知られているのであるが,この右辺の合成積を計算するのがやっかいである.その簡単な計算法が見つかればよい.
まず合成積の微分の公式,

を思い出そう.そうすれば

とおくとき,
(2.32b)
[1]
となるから,
(2.32c)

を得る.この結果は
は明らか[2]であるから,対応
からも直ちに出る.
の場合にすでに用いた技法である.
さて,後で必要になるもう一つの公式を導いておこう.上述の記号を用いると,

であるが,これをもう一度微分する.
[3]
よって次の結果を得る.
公式 1

(2.33)
[4]
さて,合成積の微分の公式は,通常の積の微分の構造:

を持っていない.同様な構造を持つものは,単に
を掛けるという演算である.
補題 2.3

証明

![{\displaystyle =\int _{0}^{t}\left[tf(t-\tau )g(\tau )-\tau f(t-\tau )g(\tau )+\tau f(t-\tau )g(\tau )\right]d\tau }](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9a807fbaa13344c0b0c50992dc94ab6f4fef6715)

合成積に対しては
を掛けるという演算が微分の構造を持っているので,次のような計算ができる.

とおくと,
(2.33b)

を得る[5].とくに,

のときは,
(2.34)

となる.
なぜ合成積に対しては
を掛けることが微分することを意味するのかは,Laplace 変換の像関数の世界で考えてみれば納得できるが,それは後ほど説明することにして,本題に入ろう.
公式 2

とおけば,
(1)

(2.34b)
(2)

証明
(1)
を示せばよい[6].
(2.21)

であったから,
(2.32b)


となる.これに式 (2.34) を考慮すれば,
[7]を得る.
(2) 上の結果 (1) を二度用いると、

となるが,これと式(2.33) の結果,

を等置すれば,求める結果を得る.