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以上の準備の下に,Laplace 変換による解法の正しさを証明することができる.
この章の初めに述べたことを,特性方程式を用いて簡単に復習しておこう.
特性方程式を,

とするとき,同次方程式

および非同次方程式

を初期条件

の下に解くという問題であった.
[定理 3.2]
(i)

ならば

(i)

ならば

ここに,
は高々
次の任意の多項式である.
これを示すことが目標である.一般に,
![{\displaystyle p(s)=\prod _{i=1}^{\mu }(s-\gamma _{i})^{l_{i}}\prod _{j=1}^{\nu }{\bigg [}(s-\alpha _{j})^{2}+\beta _{j}^{2}{\bigg ]}^{m_{j}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/858483f1e8b81a476a4ae08e9bdfc844184ee345)
と因数分解できるから[1],補題3.2 を念頭におけば,定理 3.2 は,

および
![{\displaystyle {\bigg [}(s-\alpha )^{2}+\beta ^{2}{\bigg ]}^{l}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/86a56e7230694ab54de3aa7dff2c1ee288597ff1)
の場合に証明すれば十分である[2].

は例67で示した[3].よって,定理は,
![{\displaystyle p(s)={\bigg [}(s-\alpha )^{2}+\beta ^{2}{\bigg ]}^{l}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/e8540102db771d0de5a619ee3848628822232ace)
の場合だけ示せばよい.ところで補題 3.3 に留意すれば,

の場合だけを論ずればよいことが分かる[4].したがって,


を確めればよいことが分かる.ところが,これらは前章ですでに示されている.
すなわち 式 (2.33) によれば,

より直ちに,

が出る.[5]
また,

に注意すれば,

も明らかである.以上で定理の (i) の部分が示された.
(ii) の部分は次のようにして示される[6].いま証明したことから,

は
の解である[7].しかも初期値は,
(3.11b)

を満たす[8].この初期条件に留意しつつ
に合成積の微分の公式を次々に適用すると,





および,

となり,上から順に
を掛けて加えると,
[9]
を得る.
この証明からも分かる通り,
の Laplace 変換が存在しなくても
は,

の解となる.たとえば,

において,
の Laplace 変換は存在しないが,

が解であることは明らかである[10].
- ^
これは部分分数定理の注にて証明した.
- ^
にて
ならば
.よって
となる
があればよい. この節の証明方針を以下に整理すると,定理3.2(i) の
の分母
を因数分解したときに因数として
を持ち,したがって
の部分分数展開を第二分解定理まで実施した結果,項
を持つのであれば,この原像の
の次数が微分方程式の解
を構成する項の中で最高次数となり 式(2.17b)よりその次数は
.これに作用素
を働かせた結果が
になれば,証明全体の中のこの項
に関与する部分を完了させられる. 部分分数展開の結果,項として
を持つものについては後述される.
- ^
補題 3.3(ii) およびその系)
- ^
のとき,
- ^


- ^
ここでの証明法は二階線形微分方程式の解法と同じ.
- ^
ならば
で,
の場合.
- ^

で,
と
をおくと,
…①
一方,式 (2.1) ,したがって式 (2.11) より、
![{\displaystyle sG={\mathcal {L}}[g']+g(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/13224728a8219cbfacc9054d421f0f8a666c493c)
![{\displaystyle s^{2}G={\mathcal {L}}[g'']+g(0)s+g'(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/8488b4e9f835af5ac76ef9bad626bd3f6e4cd5e9)
![{\displaystyle s^{3}G={\mathcal {L}}[g''']+g(0)s^{2}+g'(0)s+g''(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9d240996c0232ac28d1150db8a5d3b4a54570515)

![{\displaystyle s^{n-1}G={\mathcal {L}}[g^{(n-1)}]+g(0)s^{n-2}+g'(0)s^{n-3}+\cdots +g^{(n-2)}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/af5deb4cc6f466057fa1ecdeaa35f156e5a70ef6)
![{\displaystyle s^{n}G={\mathcal {L}}[g^{(n)}]+g(0)s^{n-1}+g'(0)s^{n-2}+\cdots +g^{(n-1)}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/609ef8461c4e981c5cacec374005bd501dab642f)
これらを①に代入して,
![{\displaystyle {\mathcal {L}}{\bigg [}g^{(n)}+a_{1}g^{(n-1)}+a_{2}g^{(n-2)}+\cdots +a_{n-2}g''+a_{n-1}g'+a_{n}g{\bigg ]}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/df6914bd9b2eb32978f7da14cce4bb580fbbbe33)

より
内は
となり,①より
の係数を比較して,

- ^

- ^
この章の証明に Laplace 変換 が使われていない,というのは,Laplace 変換によって求めた原像
が微分方程式
の解であることを証明するのに Lapalce 変換を使っていない,ということである.ただ,非同次微分方程式の定常解
の
については,
は与えられた関数であり,「
に対応する Laplace 変換がなくとも
は解となる」という部分には Laplace 変換が使われていないことはいえる.初期値の与え方についても最終項を除いて
となるように初期値
,最終項は
と後から与えてよい.