労働基準法第1条

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コンメンタール労働基準法

条文[編集]

(労働条件の原則)

第1条  
  1. 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
  2. この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

解説[編集]

労働基準法の基本理念となる、労働条件の原則についての条文。
この条文では、労働者にとって、労働条件が「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を満たすべきものでなければならない」とされている。これは、日本国憲法第25条の、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と同様の、宣言的規定となっている。
また、「この法律で定められている労働条件の基準は最低のものである」とあるが、これは、この法律に書かれている条件以下の労働条件は認められないことを条文として示している。
それとともに、労働関係の当事者に対して、例え条件が法律を上回っているとしても、また、労使の合意があったとしても、社会経済情勢の変動など他に決定的な理由がある場合を除いて、労働基準法に記載されている条件を理由として労働条件を低下させてはならないことはもちろん、その向上を図るように努めることを求めている。

参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 雇傭関係存続確認等(日産自動車女子定年制事件 最高裁判決昭和56年03月24日)憲法第14条1項,民法第1条ノ2,民法第90条,労働基準法第1章総則
    定年年齢を男子60歳女子55歳と定めた就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分が性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効とされた事例
    会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも60歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。

前条:
-
労働基準法
第1章 総則
次条:
労働基準法第2条
(労働条件の決定)
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