日本国憲法第14条

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条文[編集]

【法の下の平等、貴族政治の廃止、栄典】

第14条
  1. すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
  2. 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
  3. 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

解説[編集]

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参照条文[編集]

判例[編集]

  1. 売春等取締条例違反(最高裁判決 昭和33年10月15日)
    地方公共団体が制定する売春取締に関する条例の合憲性。- 共通する行為を条例で犯罪として処罰する場合、条例間で処罰の内容等が異なって規定されることは法の下の平等を侵害するものとなるか。
    地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、憲法第14条に違反しない。
    • 憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違憲ということはできない。
      下飯坂潤夫裁判官及び奥野健一裁判官による補足意見)
      憲法94条は「地方公共団体は……法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定し、条例制定権は、法律の範囲内で許されることを規定している以上、法律の上位にある憲法の諸原則の支配をも受けるものと解すべきことは当然であつて、各公共団体の制定した条例も、憲法14条の「法の下に平等の原則」に違反することは許されないものと解する。すなわち、憲法が自ら公共団体に条例制定権を認めているからといつて、その各条例相互の内容の差異が、憲法14条の原則を破るような結果を生じたときは、やはり違憲問題を生ずるものというべきであつて、例えば、同種の行為について一地域では外国人のみを処罰したり、他の地域では外国人のみにつき処罰を免除するが如き各条例は、特段の合理的根拠のない限り、憲法14条に反することになろう。これを要するに、憲法が各地方公共団体に、条例制定権を認めているからといつて、当然に、各条例相互間に憲法14条の原則を破る結果を生ずることまでも、憲法が是認しているものと解すべきではなく、各条例が各地域の特殊な地方の実情その他の合理的根拠に基いて制定され、その結果生じた各条例相互間の差異が、合理的なものとして是認せられて始めて、合憲と判断すべきものと考える。
  2. 待命処分無効確認、判定取消等請求(最高裁判決 昭和39年5月27日)
    高齢者であることを一応の基準としてなされた地方公務員の待命処分と憲法第14条第1項および地方公務員法第13条。
    町長が町条例に基づき、過員整理の目的で行なつた町職員に対する待命処分は、55歳以上の高齢者であることを一応の基準としたうえ、その該当者につきさらに勤務成績等を考慮してなされたものであるときは、憲法第14条第1項および地方公務員法第13条に違反しない。
    • 憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解されるから、高齢であるということは右の社会的身分に当らないとの原審の判断は相当と思われるが、右各法条は、国民に対し、法の下の平等を保障したものであり、右各法条に列挙された事由は例示的なものであつて、必ずしもそれに限るものではないと解するのが相当であるから、原判決が、高齢であることは社会的身分に当らないとの一事により、たやすく上告人の前示主張を排斥したのは、必ずしも十分に意を尽したものとはいえない。
    • しかし、右各法条は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨と解すべきであるから、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取扱をすることは、なんら右各法条の否定するところではない
    • 任命権者たる被上告人が、55歳以上の高齢であることを待命処分の一応の基準とした上、上告人はそれに該当し、しかも、その勤務成績が良好でないこと等の事情をも考慮の上、上告人に対し本件待命処分に出たことは、任命権者に任せられた裁量権の範囲を逸脱したものとは認められず、高齢である上告人に対し他の職員に比し不合理な差別をしたものとも認められない。
  3. 尊属殺人(尊属殺法定刑違憲事件 最高裁判決 昭和48年4月4日 刑集第27巻3号265頁) 刑法199条刑法200条(本判決を受け削除済み)
    刑法200条と憲法14条1項
    刑法200条は憲法14条1項に違反する。
    • 尊属の殺害は通常の殺人に比して一般に高度の社会的道義的非難を受けて然るべきであるとして、このことをその処罰に反映させても、あながち不合理であるとはいえない。そこで、被害者が尊属であることを犯情のひとつとして具体的事件の量刑上重視することは許されるものであるのみならず、さらに進んでこのことを類型化し、法律上、刑の加重要件とする規定を設けても、かかる差別的取扱いをもつてただちに合理的な根拠を欠くものと断ずることはできず、したがつてまた、憲法14条1項に違反するということもできない。
    • しかしながら、刑罰加重の程度いかんによつては、かかる差別の合理性を否定すべき場合がないとはいえない。すなわち、加重の程度が極端であつて、前示のごとき立法目的達成の手段として甚だしく均衡を失し、これを正当化しうべき根拠を見出しえないときは、その差別は著しく不合理なものといわなければならず、かかる規定は憲法14条1項に違反して無効であるとしなければならない。
      cf.罪刑の均衡:憲法第36条【拷問・残虐刑の禁止】
  4. 労働契約関係存在確認請求(三菱樹脂事件 最高裁判決 昭和48年12月12日) 憲法第19条民法第1条民法第90条労働基準法第3条,労働基準法第2章
    憲法の私人間効力
  5. 尊属傷害致死(最高裁判決 昭和49年9月26日) 刑法199条刑法205条(第2項に定められていた、尊属傷害致死罪は刑法現代語化改正の際に削除)
    刑法205条2項と憲法14条1項
    尊属傷害致死に関する刑法205条2項の規定は、憲法14条1項に違反しない。
    • 尊属に対する尊重報恩は、社会生活上の基本的道義であつて、このような普遍的倫理の維持は、刑法上の保護に値するから、尊属に対する傷害致死を通常の傷害致死よりも重く処罰する規定を設けたとしても、かかる差別的取扱いをもつて、直ちに合理的根拠を欠くものと断ずることはできず、したがつてまた、憲法14条1項に違反するということもできないことは当裁判所の判例の趣旨に徴し明らかである。
    • 尊属傷害致死罪に対する刑罰加重の程度によつては、その差別的取扱いの合理性を欠き、憲法14条1項に違反するものといわなければならないことも、前記判例の趣旨とするところであるが、尊属傷害致死に関する刑法205条2項の定める法定刑は、合理的根拠に基づく差別的取扱いの域を出ないものであつて、憲法14条1項に違反するものとはいえない。
  6. 秋田相互銀行女子賃金差別(秋田地方裁判所判決 昭和50年04月10日)労働基準法第4条,民法第90条
    労働契約において、使用者が、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱いをした場合には、労働契約の右の部分は、労働基準法4条に違反して無効であるから、女子は男子に支払われた金額との差額を請求することができるものと解するのを相当とする。
    • 労働基準法で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とされ、この無効となつた部分は、労働基準法で定める基準による旨の労働基準法13条の趣旨は、同法4条違反のような重大な違反がある契約については、より一層この無効となつた空白の部分を補充するためのものとして援用することができる
  7. 雇傭関係存続確認等(通称日産自動車女子定年制事件 最高裁判決 昭和56年3月24日)民法第1条ノ2,民法第90条,労働基準法第1章総則, 労働基準法第1条
    定年年齢を男子60歳女子55歳と定めた就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分が性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効とされた事例
    会社がその就業規則中に定年年齢を男子60歳、女子55歳と定めた場合において、担当職務が相当広範囲にわたつていて女子従業員全体を会社に対する貢献度の上がらない従業員とみるべき根拠はなく、労働の質量が向上しないのに実質賃金が上昇するという不均衡は生じておらず、少なくとも60歳前後までは男女とも右会社の通常の職務であれば職務遂行能力に欠けるところはなく、一律に従業員として不適格とみて企業外へ排除するまでの理由はないなど、原判示の事情があつて、会社の企業経営上定年年齢において女子を差別しなければならない合理的理由が認められないときは、右就業規則中女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効である。
    • 判決文に参照条文として本条を引く。
      (引用)専ら女子であることのみを理由として差別したことに帰着するものであり、性別のみによる不合理な差別を定めたものとして民法90条の規定により無効であると解するのが相当である(憲法14条1項、民法1条ノ2参照)。
  8. 損害賠償等(堀木訴訟 最高裁判決 昭和57年7月7日 民集36巻7号1235頁)憲法13条憲法25条、児童扶養手当法(昭和48年法律第93号による改正前のもの)4条3項3号
    1. 児童扶養手当法4条3項3号と憲法25条
      児童扶養手当法4条3項3号は憲法25条に違反しない。
    2. 児童扶養手当法4条3項3号と憲法14条、13条
      児童扶養手当法4条3項3号は憲法14条、13条に違反しない。
      • 本件併給調整条項がその受給する障害福祉年金と児童扶養手当との併給を禁じたことが憲法14条及び13条に違反するか。
        受給者の範囲、支給要件、支給金額等につきなんら合理的理由のない不当な差別的取扱をしたり、あるいは個人の尊厳を毀損するような内容の定めを設けているときは、憲法14条及び13条違反の問題を生じうるが、総合的に判断すると、右差別がなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえない。
  9. 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反(石油価格カルテル刑事事件  最高裁判例 昭和59年02月24日)
    独禁法85条3号の規定と憲法14条1項、31条、32条
    独禁法89条から91条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法85条3号の規定は、憲法14条1項、31条、32条に違反しない。
  10. 非嫡出子法定相続差別事件(最高裁判決平成7年7月5日 『婚外子相続差別』に関する旧判例・最高裁平成25年9月4日決定により判例変更)
    民法900条4号ただし書前段と憲法14条1項
    民法900条4号ただし書前段は憲法14条1項に違反しない。
    • 相続制度は、被相続人の財産を誰に、どのように承継させるかを定めるものであるが、その形態には歴史的、社会的にみて種々のものがあり、また、相続制度を定めるに当たっては、それぞれの国の伝統、社会事情、国民感情なども考慮されなければならず、各国の相続制度は、多かれ少なかれ、これらの事情、要素を反映している。さらに、現在の相続制度は、家族というものをどのように考えるかということと密接に関係しているのであって、その国における婚姻ないし親子関係に対する規律等を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で、相続制度をどのように定めるかは、立法府の合理的な裁量判断にゆだねられているものというほかない。そして、前記のとおり、本件規定を含む法定相続分の定めは、右相続分に従って相続が行われるべきことを定めたものではなく、遺言による相続分の指定等がない場合などにおいて補充的に機能する規定であることをも考慮すれば、本件規定における嫡出子と非嫡出子の法定相続分の区別は、その立法理由に合理的な根拠があり、かつ、その区別が右立法理由との関連で著しく不合理なものでなく、いまだ立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えていないと認められる限り、合理的理由のない差別とはいえず、これを憲法14条1項に反するものということはできないというべきである。
    • 本件規定の立法理由は、法律上の配偶者との間に出生した嫡出子の立場を尊重するとともに、他方、被相続人の子である非嫡出子の立場にも配慮して、非嫡出子に嫡出子の二分の一の法定相続分を認めることにより、非嫡出子を保護しようとしたものであり、法律婚の尊重と非嫡出子の保護の調整を図ったものと解される。これを言い換えれば、民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものであると解される。現行民法は法律婚主義を採用しているのであるから、右のような本件規定の立法理由にも合理的な根拠があるというべきであり、本件規定が非嫡出子の法定相続分を嫡出子の二分の一としたことが、右立法理由との関連において著しく不合理であり、立法府に与えられた合理的な裁量判断の限界を超えたものということはできないのであって、本件規定は、合理的理由のない差別とはいえず、憲法14条1項に反するものとはいえない。
  11. 損害賠償(最高裁判決平成7年12月5日 判時1563.81 「平成7年判決」)民法733条,国家賠償法1条1項
    再婚禁止期間について男女間に差異を設ける民法733条は憲法14条1項に違反するか
    民法733条の元来の立法趣旨が、父性の推定の重複を回避し、父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解される以上、合理的な根拠に基づいて各人の法的取扱いに区別を設けることは憲法14条1項に違反するものではない。
  12. 選挙無効請求事件(最高裁判決平成16年1月14日)公職選挙法14条公職選挙法別表第3
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は,平成13年7月29日施行の参議院議員通常選挙当時,憲法14条1項に違反していたものということはできない。
    • 本件改正は,憲法が選挙制度の具体的な仕組みの決定につき国会にゆだねた立法裁量権の限界を超えるものではなく,本件選挙当時において本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない。
  13. 管理職選考受験資格確認等請求事件(最高裁判決 平成17年01月26日)労働基準法第3条労働基準法第112条,地方公務員法(平成10年法律第112号による改正前のもの)58条3項,地方公務員法第13条地方公務員法第17条地方公務員法第19条
    1. 地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることと労働基準法3条,憲法14条1項
      地方公共団体が,公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
      • 地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)について,職務の遂行は,住民の権利義務や法的地位の内容を定め,あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものであり,国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条,15条1項参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではない。
    2. 東京都が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた措置が労働基準法3条,憲法14条1項に違反しないとされた事例
      東京都が管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員に就任することがあることを当然の前提として任用管理を行う管理職の任用制度を設けていたなど判示の事情の下では,職員が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた東京都の措置は,労働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
  14. 地位確認等請求事件(最高裁判決 平成18年03月17日)民法第2条,民法第90条,民法第92条,民法第263条,民法第294条
    1. 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分が公序良俗に反しないとされた事例
      A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格要件を一家の代表者としての世帯主に限定する部分は,現在においても,公序良俗に反するものということはできない。
    2. 入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち入会権者の資格を原則として男子孫に限定し同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分が民法第90条の規定により無効とされた事例
      A入会部落の慣習に基づく入会集団の会則のうち,入会権者の資格を原則として男子孫に限定し,同入会部落の部落民以外の男性と婚姻した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り入会権者の資格を認めないとする部分は,遅くとも平成4年以降においては,性別のみによる不合理な差別として民法第90条の規定により無効である。
  15. 選挙無効請求事件(最高裁判決平成21年9月30日)公職選挙法14条公職選挙法別表第3
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定は,平成19年7月29日施行の参議院議員通常選挙当時,憲法14条1項に違反していたものということはできない。
    • 参議院では,平成16年大法廷判決中の指摘を受け,当面の是正措置を講ずる必要があるとともに,その後も定数較差の継続的な検証調査を進めていく必要があると認識された。本件改正は,こうした認識の下に行われたものであり,その結果,平成17年10月実施の国勢調査結果による人口に基づく選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は,1対4.84に縮小することとなった。また,本件選挙は,本件改正の約1年2か月後に本件定数配分規定の下で施行された初めての参議院議員通常選挙であり,本件選挙当時の選挙区間における議員1人当たりの選挙人数の最大較差は1対4.86であったところ,この較差は,本件改正前の参議院議員定数配分規定の下で施行された前回選挙当時の上記最大較差1対5.13に比べて縮小したものとなっていた。本件選挙の後には,参議院改革協議会が設置され,同協議会の下に選挙制度に係る専門委員会が設置されるなど,定数較差の問題について今後も検討が行われることとされている。そして,現行の選挙制度の仕組みを大きく変更するには,後に述べるように相応の時間を要することは否定できないところであって,本件選挙までにそのような見直しを行うことは極めて困難であったといわざるを得ない。以上のような事情を考慮すれば,本件選挙までの間に本件定数配分規定を更に改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えたものということはできず,本件選挙当時において,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたものとすることはできない。
    • しかしながら,本件改正の結果によっても残ることとなった上記のような較差は,投票価値の平等という観点からは,なお大きな不平等が存する状態であり,選挙区間における選挙人の投票価値の較差の縮小を図ることが求められる状況にあるといわざるを得ない。ただ,専門委員会の報告書に表れた意見にもあるとおり,現行の選挙制度の仕組みを維持する限り,各選挙区の定数を振り替える措置によるだけでは,最大較差の大幅な縮小を図ることは困難であり,これを行おうとすれば,現行の選挙制度の仕組み自体の見直しが必要となることは否定できない。このような見直しを行うについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が必要であり,事柄の性質上課題も多く,その検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないが,国民の意思を適正に反映する選挙制度が民主政治の基盤であり,投票価値の平等が憲法上の要請であることにかんがみると,国会において,速やかに,投票価値の平等の重要性を十分に踏まえて,適切な検討が行われることが望まれる。
  16. 選挙無効請求事件(最高裁判決平成24年10月17日)憲法15条1項,憲法15条3項,憲法43条1項,憲法44条公職選挙法14条公職選挙法別表第3
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の合憲性
    公職選挙法14条,別表第3の参議院(選挙区選出)議員の議員定数配分規定の下で,平成22年7月11日施行の参議院議員通常選挙当時,選挙区間における投票価値の不均衡は違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたが,上記選挙までの間に上記規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,上記規定が憲法14条1項等に違反するに至っていたということはできない。
    • これらの事情を総合考慮すると,本件選挙が平成18年改正による4増4減の措置後に実施された2回目の通常選挙であることを勘案しても,本件選挙当時,前記の較差が示す選挙区間における投票価値の不均衡は,投票価値の平等の重要性に照らしてもはや看過し得ない程度に達しており,これを正当化すべき特別の理由も見いだせない以上,違憲の問題が生ずる程度の著しい不平等状態に至っていたというほかはない。
    • もっとも,当裁判所が平成21年大法廷判決においてこうした参議院議員の選挙制度の構造的問題及びその仕組み自体の見直しの必要性を指摘したのは本件選挙の約9か月前のことであり,その判示の中でも言及されているように,選挙制度の仕組み自体の見直しについては,参議院の在り方をも踏まえた高度に政治的な判断が求められるなど,事柄の性質上課題も多いためその検討に相応の時間を要することは認めざるを得ないこと,参議院において,同判決の趣旨を踏まえ,参議院改革協議会の下に設置された専門委員会における協議がされるなど,選挙制度の仕組み自体の見直しを含む制度改革に向けての検討が行われていたこと(なお,本件選挙後に国会に提出された公職選挙法の一部を改正する法律案は,単に4選挙区で定数を4増4減するものにとどまるが,その附則には選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行う旨の規定が置かれている。)などを考慮すると,本件選挙までの間に本件定数配分規定を改正しなかったことが国会の裁量権の限界を超えるものとはいえず,本件定数配分規定が憲法に違反するに至っていたということはできない
  17. 遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件(婚外子相続差別訴訟 最高裁決定 平成25年9月4日 民集第67巻6号1320頁)憲法81条民法第900条
    1. 民法900条4号ただし書前段の規定と憲法14条1項
      民法900条4号ただし書前段の規定は,遅くとも平成13年7月当時において,憲法14条1項に違反していた。
      • 本件規定の合理性に関連する以上のような種々の事柄の変遷等は,その中のいずれか一つを捉えて,本件規定による法定相続分の区別を不合理とすべき決定的な理由とし得るものではない。しかし,昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向,我が国における家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化,諸外国の立法のすう勢及び我が国が批准した条約の内容とこれに基づき設置された委員会からの指摘,嫡出子と嫡出でない子の区別に関わる法制等の変化,更にはこれまでの当審判例における度重なる問題の指摘等を総合的に考察すれば,家族という共同体の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかであるといえる。そして,法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。
    2. 民法900条4号ただし書前段の規定を違憲とする最高裁判所の判断が他の相続における上記規定を前提とした法律関係に及ぼす影響
      民法900条4号ただし書前段の規定が遅くとも平成13年7月当時において憲法14条1項に違反していたとする最高裁判所の判断は,上記当時から同判断時までの間に開始された他の相続につき,同号ただし書前段の規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではない。
  18. 損害賠償請求事件(最高裁大法廷判決平成27年12月16日 「平成27年判決」)憲法24条民法733条民法772条,国家賠償法1条1項
    1. 民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
      民法733条1項の規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は憲法14条1項、24条2項に違反しない。
      • 民法772条2項は,「婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は,婚姻中に懐胎したものと推定する。」と規定して,出産の時期から逆算して懐胎の時期を推定し,その結果婚姻中に懐胎したものと推定される子について,同条1項が「妻が婚姻中に懐胎した子は,夫の子と推定する。」と規定している。そうすると,女性の再婚後に生まれる子については,計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって,父性の推定の重複が回避されることになる。
    2. 民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分と憲法14条1項、24条2項
      民法733条1項の規定のうち100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は,平成20年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていた。
      • 本件規定のうち100日超過部分は,遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして,その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。
  19. 損害賠償請求事件(夫婦別姓を求めたもの 最高裁判決 平成27年12月16日 民集第69巻8号2586頁)憲法13条1項、憲法24条民法第750条
    民法750条と憲法14条
    民法750条は憲法14条に違反しない。
    • 本件規定は,夫婦が夫又は妻の氏を称するものとしており,夫婦がいずれの氏を称するかを夫婦となろうとする者の間の協議に委ねているのであって,その文言上性別に基づく法的な差別的取扱いを定めているわけではなく,本件規定の定める夫婦同氏制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではない。我が国において,夫婦となろうとする者の間の個々の協議の結果として夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めることが認められるとしても,それが,本件規定の在り方自体から生じた結果であるということはできない。

前条:
日本国憲法第13条
【個人の尊厳と公共の福祉】
日本国憲法
第3章 国民の権利及び義務
次条:
日本国憲法第15条
【公務員の選定・罷免権、公務員の全体奉仕者性、普通選挙の保障、秘密選挙の保障】
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