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商法第577条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学民事法商法コンメンタール商法第2編 商行為 (コンメンタール商法)

条文

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(高価品の特則)

第577条
  1. 貨幣、有価証券その他の高価品については、荷送人が運送を委託するに当たりその種類及び価額を通知した場合を除き、運送人は、その滅失、損傷又は延着について損害賠償の責任を負わない。
  2. 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
    1. 物品運送契約の締結の当時、運送品が高価品であることを運送人が知っていたとき。
    2. 運送人の故意又は重大な過失によって高価品の滅失、損傷又は延着が生じたとき。

改正経緯

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2018年改正により、第578条にあった以下の条文を現代語化の上、第2項を新設するなど改正。

運送人ハ自己若クハ運送取扱人又ハ其使用人其他運送ノ為メ使用シタル者カ運送品ノ受取、引渡、保管及ヒ運送ニ関シ注意ヲ怠ラサリシコトヲ証明スルニ非サレハ運送品ノ滅失、毀損又ハ延著ニ付キ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス

本条にあった、「運送人の損害賠償責任」に関する規定は、前条において統合された。

解説

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高価品は盗難などが起こりやすいのでより厳重な管理が必要だし、滅失すると損害額が高額になってしまうので場合によっては保険に加入することも考えなければならない。運送コストも高くなるので、より高い運送料で契約するのが普通である。商法が運送人の免責を認めたのは、荷送人に契約締結時までに明告するよううながす趣旨であるとされている(つまり荷送人に対するペナルティー)。滅失、損傷で債務不履行責任を問われても運送人は荷送人の明告が無かったことを主張立証すれば免責される。なお、延着については適用されない。

  • 明告がなくても運送人が運送物が高価品だと知っていた場合、
免責を肯定する説
本条は、荷送人に契約締結時までに明告するよううながす趣旨である。
通常の物品としての管理さえしていなければ免責なしとする説
運送人は通常品として運送を請け負ったから普通の運送品として必要な注意をしなければ、高額の損害賠償を負わせるのももやむをえない。
運送人に安い運送料で引き受けさせて高額の賠償責任を負わせることになる。

参照条文

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(高価品及び貴重品)第9条
  1. この運送約款において高価品とは、次に掲げるものをいいます。
    1. 貨幣、紙幣、銀行券、印紙、郵便切手及び公債証書、株券、債権、商品券その他の有価証券並びに金、銀、白金その他の貴金属、イリジウム、タングステンその他の稀金属、金剛石、紅玉、緑柱石、琥珀、真珠その他の宝玉石、象牙、べっ甲、珊瑚及び各その製品
    2. 美術品及び骨董品
    3. 容器及び荷造りを加え1キログラム当たりの価格が2万円を超える貨物(動物を除く。)
  2. 前項第3号の1キログラム当たりの価格の計算は、一荷造りごとに、これをします。
  3. この運送約款において貴重品とは、第1項第1号及び第2号に掲げるものをいいます。
(高価品に対する特則)第45条
高価品については、荷送人が申込みをするに当たり、その種類及び価額を明告しなければ、当店は損害賠償の責任を負いません。

判例

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  1. 損害賠償請求(最高裁判決昭和45年4月21日)
    商法578条(改正前・現本条)所定の高価品の意味
    商法578条所定の高価品とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいうものと解すべきである。
    • 商法578条所定の高価品とは、容積または重量の割に著しく高価な物品をいうものと解すべきところ、原審の確定する事実によれば、本件研磨機は容積重量ともに相当巨大であつて、その高価なことも一見明瞭な品種であるというのであるから、本件研磨機は同条所定の高価品にはあたらないというべきである。したがつて、同条の適用、類推適用をなすべきではないとする原審の説示判断は、すべて正当として支持することができる。

前条:
商法第576条
(損害賠償の額)
商法
第2編 商行為

第8章 運送営業

第2節 物品運送
次条:
商法第578条
(複合運送人の責任)
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