コンテンツにスキップ

商法第596条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

法学>民事法>商法>コンメンタール商法>第2編 商行為 (コンメンタール商法)>商法第596条

条文

[編集]

(場屋営業者の責任)

第596条
  1. 旅館、飲食店、浴場その他の客の来集を目的とする場屋における取引をすることを業とする者(以下この節において「場屋営業者」という。)は、客から寄託を受けた物品の滅失又は損傷については、不可抗力によるものであったことを証明しなければ、損害賠償の責任を免れることができない。
  2. 客が寄託していない物品であっても、場屋の中に携帯した物品が、場屋営業者が注意を怠ったことによって滅失し、又は損傷したときは、場屋営業者は、損害賠償の責任を負う。
  3. 客が場屋の中に携帯した物品につき責任を負わない旨を表示したときであっても、場屋営業者は、前二項の責任を免れることができない。

改正経緯

[編集]

2018年改正により、第594条の以下の条項から現代語化の上、移動。

  1. 旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル 場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス
  2. 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス
  3. 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス

本条にあった、場屋営業者の責任に係る債権の消滅時効にかかる条項は第597条に移動した。

解説

[編集]
「客」とは場屋の設備の利用者をいう。寄託契約者よりも広い。(損害賠償責任を問う者も広い)
「使用人」とは事業上使用される者をいう。雇用契約を結んだ労働者でなくても使用関係があればよい。
任意規定であるから、この債務不履行責任は特約で制限できる。

第一項

[編集]

寄託契約の場合、客が主人またはその使用人の故意または過失を立証しなくとも主人に責任を問える。主人は「不可抗力」で滅失または毀損したことを立証しなければ賠償責任を免れない。寄託物についての場屋営業の信用維持のために定められた(場屋取引ではなく寄託契約の債務不履行責任であるとされている。場屋取引の主たる債務は受託物の保管ではなく場屋でのサービスだから。)。

  • 不可抗力」とは、
    主観説
    (事業ごとに異なるが)最大の注意を尽くしてもなお防げなかった出来事をいう。「軽過失」では不可抗力を認めないが「最軽過失」では不可抗力を認める。
    その二つの区別に批判がある。
    客観説
    事業の外部に発生し、通常発生が期待できない出来事をいう。企業が多大なコストをかけても不可抗力を認めないが、その代わりに企業は賠償額制限条項をつけたり企業保険に加入して損害を賠償することができる。
    レセプツム責任(ローマ法で認められていた旅店が客に必ず物品を返却する制度で、滅失しても客は「受領」を証明すれば必ず損害賠償を追及することができた。)を制限してきた沿革に反しているという批判がある。
    折衷説
    (事業ごとに異なるが)通常必要と認められる予防を尽くしてもなお事業の外部に発生した出来事をいう。折衷説が通説である。

第二項

[編集]

契約によらず寄託した場合、客が主人またはその使用人の故意または過失を立証しなければ賠償責任を追及できない。寄託契約ではないため債務不履行責任を定めたのではなく、場屋の利用関係に基づいて発生する法定責任であり、主人にとって責任が緩和されている。

参照条文

[編集]

判例

[編集]

前条:
商法第595条
(受寄者の注意義務)
商法
第2編 商行為

第9章 寄託

第1節 総則
次条:
商法第597条
(高価品の特則)
このページ「商法第596条」は、まだ書きかけです。加筆・訂正など、協力いただける皆様の編集を心からお待ちしております。また、ご意見などがありましたら、お気軽にトークページへどうぞ。