実用新案法第40条の2
実用新案法第40条の2
実用新案登録無効審判と訴訟の関係について規定していた。
条文
[編集]なし
削除直前の条文
[編集]第40条の2 前条第2項に規定するもののほか、実用新案権の侵害に関する訴えの提起又は仮差押命令若しくは仮処分命令の申立てがあつた場合において、被告又は債務者が当該実用新案権について実用新案登録無効審判の請求がされていることを理由にその訴訟手続の中止の申立てをしたときは、裁判所は、明らかに必要がないと認める場合を除き、審決があるまでその訴訟手続を中止しなければならない。
2 前項の申立てに関する決定に対しては、不服を申し立てることができない。
3 裁判所は、中止の理由が消滅したとき、その他事情の変更があつたときは、第1項の決定を取り消すことができる。
解説
[編集]本条は40条の特則を定めていた。
平成5年改正で、実用新案法は無審査登録制度を採用した。無審査登録制度では実用新案登録出願の実体的審査を行わないため、瑕疵ある権利が多数成立することが予想された。瑕疵ある権利であっても、実用新案登録無効審判により無効とされるまでは一応有効な権利として取り扱われ、侵害訴訟や保全訴訟を提起することは一律に権利の濫用とはいえない。とはいうものの、被告や債務者からすれば瑕疵ある権利に基づいて訴訟を提起されその対応に追われるという負担を課されるのは酷である。そこで、被告または債務者の保護の観点から、無効審判を請求していることを理由に被告または債務者[1]が訴訟手続の中止を申し立てた場合には、明らかに必要ないと認める場合を除き、裁判所は訴訟手続を中止しなければならないこととした(1項)。なお、細かいようであるが、40条1項では「審決が確定し」とあるところ、本項では「審決があるまで」と違いがある点には注意が必要である。
明らかに必要がないと認める場合とは、一見して無効理由を構成しないことが明らかな理由に基づいて無効審判を請求している場合、無効理由の法条は記載されているものの実質的な理由・証拠が記載されておらず要旨変更とならないように請求の理由を補正することが困難である場合、訴訟の遅延のみを目的として無効審判を請求している場合、すでに確定した審決と同一の理由・証拠に基づいて無効審判を請求している場合(準特167条[2])等が考えられる。
訴訟手続の中止の申立てに関する決定は中間的な処分であり、この決定について争うことができるとすると、訴訟手続全体が遅延するおそれがあることから、訴訟手続の中止の申立てに関する決定については不服を申し立てることができないものとし(2項)、その後の事情の変化により中止の理由が消滅したなどのときには決定を取り消し、訴訟手続を再開できるものとした(3項)。
平成16年の裁判所法等の改正では、新設の特104条の3を準用することになったため(41条)、実用新案権に無効理由があり、実用新案登録無効審判により無効とされるべきものであるときは、訴訟手続において、権利行使ができない旨主張できるようになり、実用新案登録無効審判の進行を待つまでもなくなった。このため、本条はその存在意義を失い削除されることとなった。
改正履歴
[編集]- 平成5年法律第26号 - 追加
- 平成15年法律第47号 - 無効審判の名称制定に伴う修正
- 平成16年法律第120号 - 削除
脚注
[編集]- ^ この点、40条1項では他の審判を誰が請求したかについては限定が無い。
- ^ 平成23年改正以降、他人が請求した無効審判の確定審決と同一の理由・証拠に基づいて無効審判を請求することは認められているが、本条の規定が有効であった全期間で、対世的な一時不再理効が認められていた。
関連条文
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