民法第146条
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法学>民事法>コンメンタール民法>第1編 総則 (コンメンタール民法)
条文[編集]
(時効の利益の放棄)
- 第146条
- 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。
解説[編集]
時効の利益をあらかじめ放棄させることを可能にしてしまうと、消滅時効において債権者が債務者にあらかじめ時効の利益を放棄させることを強要して貸付を行う恐れがあるからである。
時効の利益を受ける者(消滅時効でいえば債権者)が時効の利益を放棄することは自由である。
- 次の場合を考える。時効期間が経過したのち主債務者が債務の一部を弁済したので債権者が債務の残り全額について主債務者と連帯保証人の資産を差し押さえた。主債務者はこれに対して請求異議の訴えを起こし消滅時効を援用し、146条(の反対解釈)については、自らが時効期間の経過を知らなかったことを立証し、時効の利益の放棄の意思がないので適用が無いと主張した。また、連帯保証人も主債務について消滅時効を援用した。
この問題について通説・判例は(たとえ当該事案で146条(の反対解釈)の適用がないとしても、)時効制度の趣旨を永続した事実状態に対する当事者の信頼の保護ととらえ(実体法説)、この事案では、一部弁済した主債務者が(もはや債権行使をしないだろうという)事実状態の信頼をしていないことを理由に、主債務者の時効の援用を信義則違反とする。しかし(連帯)保証人については、主債務者が時効を援用できないからといって、援用権を失うかは別であり、この事案では援用が信義則違反にならず消滅時効を援用できるとされる(ただし連帯保証人も債務を承認した事案では信義則違反と認定された例がある)。
- 次の場合を考える。時効期間が経過したのち連帯保証人が保証債務の一部を弁済したので債権者が保証債務の残り全額について連帯保証人の資産を差し押さえた。連帯保証人はこれに対して請求異議の訴えを起こし消滅時効を援用し、146条(の反対解釈)については、自らが時効期間の経過を知らなかったことを立証し、時効の利益の放棄の意思がないので適用が無いと主張した。
この問題については、もし連帯保証人に援用権を認めないと、主債務者が消滅時効を援用すると連帯保証人が求償することができなくなるので、連帯保証人に援用権を認める裁判例がある。
参照条文[編集]
判例[編集]
- 消滅時効完成後に債務の承認をした場合において、そのことだけから、右承認はその時効が完成したことを知つてしたものであると推定することは許されないと解すべきである。
- 債務者が、消滅時効完成後に債権者に対し当該債務の承認をした場合には、時効完成の事実を知らなかつたときでも、その後その時効の援用をすることは許されないと解すべきである。
- 土地建物所有権移転登記手続等請求(最高裁判 昭和42年10月27日)民法第369条、民法第145条
- 貸金請求(最高裁判例 昭和45年05月21日)
- [](最高裁判例 )
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