民法第504条

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法学民事法コンメンタール民法第3編 債権 (コンメンタール民法)

条文[編集]

(債権者による担保の喪失等)

第504条
  1. 弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)がある場合において、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し、又は減少させたときは、その代位権者は、代位をするに当たって担保の喪失又は減少によって償還を受けることができなくなる限度において、その責任を免れる。その代位権者が物上保証人である場合において、その代位権者から担保の目的となっている財産を譲り受けた第三者及びその特定承継人についても、同様とする。
  2. 前項の規定は、債権者が担保を喪失し、又は減少させたことについて取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるときは、適用しない。

改正経緯[編集]

2017年改正により以下のとおり改正。

  1. 第1項
    1. 適用の主体1
      • (改正前)民法第500条の規定により代位をすることができる者
        旧・500条(法定代位)
      • (改正後)弁済をするについて正当な利益を有する者(以下この項において「代位権者」という。)
    2. 適用の主体2
      • (改正前)その代位をすることができる者は
      • (改正後)その代位権者は
    3. 「代位権者が物上保証人である場合」について追加。
  2. 第2項を追加。

解説[編集]

「取引上の社会通念に照らして合理的な理由があると認められるとき」とは、具体的には銀行の担保保存義務免除特約などをいう。これは、銀行が長期的な融資をおこなう際にする特約で、担保を差し替えたりして抵当権を放棄する場合に銀行が責任を免れるもののこと。それでもこの特約の主張が信義則違反・権利濫用になる場合がある。最高裁判例によれば「当該保証等の契約及び特約が締結された時の事情、その後の債権者と債務者との取引の経緯、債権者が担保を喪失し、又は減少させる行為をした時の状況等を総合して、債権者の右行為が、金融取引上の通念から見て合理性を有し、保証人等が特約の文言にかかわらず正当に有し、又は有し得べき代位の期待を奪うものとはいえないとき」は信義則違反・権利濫用でないという。第二項はこのような最高裁判例を明文化したものである。

判例[編集]

  1. 債権一部不存在確認請求(最高裁判決 昭和44年07月03日)民法第392条
    先順位共同抵当権者が抵当権の一部を放棄した場合における次順位抵当権者との優劣
    甲乙不動産の先順位共同抵当権者が、甲不動産には次順位の抵当権が設定されているのに、乙不動産の抵当権を放棄し、甲不動産の抵当権を実行した場合であつても、乙不動産が物上保証人の所有であるときは、先順位抵当権者は、甲不動産の代価から自己の債権の全額について満足を受けることができる。
  2. 不当利得返還(最高裁判決 平成3年09月03日)
    共同抵当の関係にある不動産の一部に対する抵当権の放棄とその余の不動産の譲受人が民法504条所定の免責の効果を主張することの可否
    債務者所有の甲不動産と第三者所有の乙不動産とが共同抵当の関係にある場合において、債権者が甲不動産に設定された抵当権を放棄するなど故意又はけ怠によりその担保を喪失又は減少したときは、その後の乙不動産の譲受人も債権者に対して民法504条に規定する免責の効果を主張することができる。

前条:
民法第503条
(債権者による債権証書の交付等)
民法
第3編 債権

第1章 総則
第6節 債権の消滅

第1款 弁済
次条:
民法第505条
(相殺の要件等)
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