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私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第95条

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

コンメンタール私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

条文

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【両罰規定】

第95条  
  1. 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
    1. 第89条
      5億円以下の罰金刑
    2. 第90条第3号(第7条第1項又は第8条の2第1項若しくは第3項の規定による命令(第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。)
      3億円以下の罰金刑
    3. 第94条
      2億円以下の罰金刑
    4. 第90条第1号、第2号若しくは第3号(第7条第1項又は第8条の2第1項若しくは第3項の規定による命令(第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。)、第91条第91条の2又は第94条の2
      各本条の罰金刑
  2. 法人でない団体の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業者がその団体の業務又は財産に関して、次の各号に掲げる規定の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その団体に対しても、当該各号に定める罰金刑を科する。
    1. 第89条
      5億円以下の罰金刑
    2. 第90条第3号(第7条第1項又は第8条の2第1項若しくは第3項の規定による命令(第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。)
      3億円以下の罰金刑
    3. 第94条
      2億円以下の罰金刑
    4. 第90条第1号、第2号若しくは第3号(第7条第1項又は第8条の2第1項若しくは第3項の規定による命令(第3条又は第8条第1号の規定に違反する行為の差止めを命ずる部分に限る。)に違反した場合を除く。)、第91条第91条の2又は第94条の2
      各本条の罰金刑
  3. 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条第1項の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人に対して3億円以下の罰金刑を、その人に対して同項の罰金刑を科する。
  4. 第1項又は第2項の規定により第89条の違反行為につき法人若しくは人又は団体に罰金刑を科する場合における時効の期間は、同条の罪についての時効の期間による。
  5. 第2項の場合においては、代表者又は管理人が、その訴訟行為につきその団体を代表するほか、法人を被告人又は被疑者とする場合の訴訟行為に関する刑事訴訟法の規定を準用する。
  6. 第3項の規定により前条第1項の違反行為につき法人又は人に罰金刑を科する場合における時効の期間は、同項の罪についての時効の期間による。

改正経緯

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2019年改正により、以下のとおり改正。

  1. 第1項
    1. 第3号を新設。それに伴い、改正前第3号を第4号に繰り下げ。
    2. 改正後第4号を以下のとおり改正。
      (改正前)又は第94条
      (改正前)又は第94条の2
  2. 第2項
    1. 第3号を新設。それに伴い、改正前第3号を第4号に繰り下げ。
    2. 改正後第4号を以下のとおり改正。
      (改正前)又は第94条
      (改正前)又は第94条の2

解説

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独占禁止法に関し、法人等が関与した場合の両罰規定(法人に対する刑事罰)を定める。

参照条文

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判例

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  1. 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反(最高裁判決昭和59年02月24日)
    (関係条文)
    私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)第1条独禁法第2条6項,独禁法第8条1項,独禁法第33条独禁法第85条3号,独禁法89条1項(昭和52年法律第63号による改正前のもの)独禁法96条憲法14条憲法31条憲法32条憲法77条1項,商法124条,商法406条,商法408条,商法415条,商法427条,商法430条1項,刑訴法239条,刑訴法241条,刑訴法339条1項4号,刑訴法490条1項,刑訴規則58条,刑法第35条,通商産業省設置法3条2号,石油業法3条,石油業法4条,石油業法7条,石油業法15条,法人ノ役員処罰ニ関スル法律
    1. 独禁法85条3号の規定と憲法14条1項、31条、32条
      独禁法89条から91条までの罪に係る訴訟につき二審制を定めた同法85条3号の規定は、憲法14条1項、31条、32条に違反しない。
    2. 独禁法85条3号の規定と憲法77条1項
      独禁法89条から91条までの罪に係る訴訟の第一審の裁判権を東京高等裁判所に専属させた同法85条3号の規定は、憲法77条1項に違反しない。
    3. 石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導がある場合と石油製品価格に関する不当な取引制限行為の成否
      石油製品の値上げの上限に関し通産省の了承を得させることとする行政指導が行われており、右行政指導が違法とまではいえない場合であつても、石油製品元売り会社の従業者等が、値上げの上限に関する通産省の了承を得るために右上限についての業界の希望案を合意するに止まらず、その属する事業者の業務に関し、通産省の了承の得られることを前提として、了承された限度一杯まで各社一致して石油製品の価格を引き上げることまで合意したときは、右合意は、独禁法3条、89条1項1号、95条1項によつて禁止・処罰される不当な取引制限行為にあたる。
    4. 不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合と事業者の処罰
      独禁法上処罰の対象となる不当な取引制限行為が事業者団体によつて行われた場合であつても、これが同時に事業者団体を構成する各事業者の従業者等によりその業務に関して行われたと観念しうる事情があるときは、右行為に対する刑責を事業者団体のほか各事業者に対して問うことも許される。
    5. 独禁法2条6項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる場合
      各事業者の従業者等が、事業者の業務に関し、その内容の実施に向けて努力する意思をもち、かつ、他の事業者もこれに従うものと考えて、製品の価格をいつせいに一定の幅で引き上げる旨の協定を締結したときは、協定の実効性を担保するための制裁等の定めがなくても、独禁法2条6項にいう「相互にその事業活動を拘束し」にあたる。
    6. 独禁法2条6項にいう「公共の利益に反して」の意義
      独禁法2条6項の「公共の利益に反して」との文言は、原則としては同法の直接の保護法益である自由競争経済秩序に反することを意味するが、現に行われた行為が形式上これに該当するものであつても、右法益と当該行為によつて守られる利益とを比較衡量すれば「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という同法の究極の目的に実質的には反しないと認められる例外的な場合を、同項にいう「不当な取引制限」行為から除外する趣旨を含む。
    7. 法人の従業者が法人の業務に関して独禁法89条1項1号違反の行為をした場合と右従業者及び法人の処罰
      事業者たる法人の従業者である自然人が、法人の業務に関して、独禁法89条1項1号に違反する行為をした場合には、行為者たる自然人及びその所属する法人は、いずれも、同法95条1項及び同法89条1項1号により処罰される。
    8. 独禁法89条1項1号の罪の既遂時期
      事業者が他の事業者と共同して対価を協議・決定する等相互にその事業活動を拘束すべき合意をした場合において、右合意により、公共の利益に反して、一定の取引分野における競争が実質的に制限されたものと認められるときは、独禁法89条1項1号の罪は直ちに既遂に達し、右決定された内容が各事業者によつて実施に移されることや決定された実施時期が現実に到来することなどは、同罪の成立に必要ではない。
    9. 石油製品価格に関する行政指導の許される範囲
      石油業法に直接の根拠を持たない石油製品価格に関する行政指導であつても、これを必要とする事情がある場合に、これに対処するため社会通念上相当と認められる方法によつて行われるものは、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進する」という独禁法の究極の目的に実質的に抵触しない限り、違法とはいえない。
    10. 適法な行政指導に従つて行われた行為と違法性の阻却
      価格に関する事業者間の合意は、形式的に独禁法に違反するようにみえる場合であつても、適法な行政指導に従いこれに協力して行われたものであるときは、違法性を阻却される。
    11. 独禁法96条2項所定の告発状の方式
      独禁法96条2項所定の告発状の方式には、刑訴規則58条の適用ないし準用があり、公正取引委員会委員長の署名押印が必要である。
    12. 刑訴規則58条違反の瑕疵のある告発状の効力
      告発状の方式に刑訴規則58条違反の瑕疵がある場合でも、その体裁・形式・記載内容などから告発人の真意に基づいて作成されたものであることが容易に推認されうるときは、告発状の訴訟法上の効力は否定されない。
    13. 清算の結了による株式会社の法人格消滅の要件
      清算の結了により株式会社の法人格が消滅したというためには、商法430条1項、124条所定の清算事務が終了しただけでは足りず、清算人が決算報告書を作成してこれを株主総会に提出しその承認を得ることを要する。
    14. 株式会社の吸収合併が不成立ないし不存在とはいえないとされた事例
      解散後清算事務を終了したが商法427条1項所定の手続が未了であつた甲株式会社につき会社継続の手続をしたうえ、乙株式会社をこれに吸収する合併契約をする等の手続を履践して行われた本件吸収合併は、これを不成立ないし不存在ということはできない。
    15. 会社の吸収合併と刑事責任の承継
      乙会社の従業者が会社の業務に関して価格協定に参加したのち、同会社が甲会社との吸収合併により消滅したときは、合併当時甲会社が清算事務を終了しており、かつ、右合併が乙会社の株式の額面金額の変更のみを目的としたものであつたとしても、現に存在する甲会社に対し右従業者の行為を理由としてその刑責を追及することは許されない。

前条:
第94条の3
【秘密保持命令違反の罪】
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律
第11章 罰則
次条:
第95条の2
【法人の代表者に対する罰則】
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