行政事件訴訟法第10条
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条文
[編集](取消しの理由の制限)
- 第10条
- 取消訴訟においては、自己の法律上の利益に関係のない違法を理由として取消しを求めることができない。
- 処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決の取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができない。
解説
[編集]性質の異なる2項からなる本条文は取消訴訟を請求できる場合について制限を設けるものである。
第2項
[編集]行特法は、裁決取消訴訟を処分取消訴訟に当然含まれるものとして位置づけるにとどめ、両者の関係については何ら規定することが無かった。そのため、処分取消訴訟において当該処分の違法を主張するほか、当該処分を維持した裁決の取消訴訟を提起して、そこでも処分の違法を主張する事例が少なくなく、これに対する裁判所の取扱もまちまちであり、不合理だった。そこで本法では原処分中心主義[1]を採ることにより立法的に解決を図ったものである[2]。
なお、本条2項は、棄却裁決の取消訴訟について制限を課するものであるが、却下裁決については、行審法の定める却下裁決の適法要件の充足不充足が審理の対象となり、原告は、審査請求を不適法とした判断の違法及び裁決の手続き上の違法を主張し得る。また、当然裁決主義であるか原処分中心主義であるかに関わり無く、原処分の違法は却下裁決の取消し訴訟で争う意味が無い[3]。
参照条文
[編集]行政不服審査法45条1項
判例
[編集]第2項
[編集]- 懲戒処分取消(最高裁判例 昭和62年04月21日)国家公務員法第82条,国家公務員法第92条1項,国家公務員法第92条の2,行政事件訴訟法第11条1項, "国家公務員に対する懲戒処分について人事院が修正裁決をした場合には、右処分は、消滅するのではなく、当初から右裁決により修正された内容の懲戒処分として存在していたものとみなされる。"
脚注または引用文献
[編集]- 長屋文裕 「取消しの理由の制限」『条解行政事件訴訟法』 弘文堂、東京、2014年、第4版、318 - 338頁。ISBN 978-4-335-35603-2。
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