行政事件訴訟法第9条
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条文
[編集](原告適格)
- 第9条
- 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
- 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。
解説
[編集]- 当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者
- 当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
- 当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有する(最高裁判決平成4年09月22日)。
参照条文
[編集]- 行政事件訴訟法第36条 - 無効等確認の訴えの原告適格
- 行政事件訴訟法第37条 - 不作為の違法確認の訴えの原告適格
判例
[編集]- テレビジョン放送局の開設に関する予備免許処分・同免許申請棄却処分並びにこれが異議申立棄却決定取消請求(最高裁判決 昭和43年12月24日)電波法第94条,電波法第99条
- 競願関係にある者の一人に免許が付与され他にこれが拒否された場合と取消訴訟の提起
- 甲および乙が競願関係にある場合において、甲の免許申請が拒否され、乙に免許が付与されたときは、甲は、乙に対する免許処分の取消訴訟を提起することができるほか、自己に対する拒否処分のみの取消訴訟を提起することができる。
- 競願関係にある者の一人に免許が付与され当該免許期間が満了して再免許が付与された場合と免許処分等の取消訴訟の利益
- 甲が、乙に対する免許処分の取消を訴求する場合および自己に対する拒否処分の取消を訴求する場合において、当該免許期間が満了しても、乙が再免許を受けて免許事業を継続しているときは、甲の提起した訴訟の利益は失われない。
- 競願関係にある者の一人に免許が付与され他にこれが拒否された場合と取消訴訟の提起
- 審決取消(最高裁判決 昭和53年3月14日)不当景品類及び不当表示防止法(2009年改正前 以下「旧景表法」)第1条,旧景表法法第4条,旧景表法法第10条第1項、第2項及び第6項
- 森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」と保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格
- 保安林の指定につき森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」は、右指定の解除処分取消訴訟の原告適格を有する。
- 森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」として保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格が認められた事例
- 農業用水の確保を目的とし、洪水予防、飲料水の確保の効果をも配慮して指定された保安林の指定解除により洪水緩和、渇水予防上直接の影響を被る一定範囲の地域に居住する住民は、森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」として、右解除処分取消訴訟の原告適格を有する。
- いわゆる代替施設の設置と保安林指定解除処分取消訴訟の訴えの利益
- いわゆる代替施設の設置によつて洪水、渇水の危険が解消され、その防止上からは保安林の存続の必要性がなくなつたと認められるに至つたときは、右防止上の利益侵害を基礎として保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格を認められた者の訴えの利益は失われる。
- 保安林指定解除処分に伴う立木竹の伐採後の跡地利用によつて生ずる利益侵害の危険と保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格
- 保安林指定解除処分に伴う立木竹の伐採後の跡地利用によつて生ずる利益侵害の危険は、右解除処分取消訴訟の原告適格を基礎づけるものではない。
- 森林法27条1項にいう「直接の利害関係を有する者」と保安林指定解除処分取消訴訟の原告適格
- 保安林解除処分取消(最高裁判決 昭和57年9月9日)森林法第27条第1項
- 旧景表法法第10条第6項にいう「第1項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」の意義
- 旧景表法法第10条第6項にいう「第1項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
- 不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者と公正取引委員会による公正競争規約の認定に対する旧景表法法第10条第6項に基づく不服申立の利益
- 不当景品類及び不当表示防止法の規定にいう一般消費者であるというだけでは、公正取引委員会による公正競争規約の認定に対し旧景表法法第10条第6項の規定に基づく不服申立をする法律上の利益を有するとはいえない。
- 旧景表法法第10条第6項にいう「第1項の規定による公正取引委員会の処分について不服があるもの」の意義
- 建築基準法による確認処分取消(最高裁判決 昭和59年10月26日)建築基準法第6条1項
- 工事が完了した場合における建築確認の取消を求める訴えの利益の有無
- 建築基準法6条1項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
- 新潟-小松-ソウル間の定期航空運送事業免許処分取消(最高裁判決 平成元年02月17日)航空法第100条,航空法第101条
- 定期航空運送事業免許の取消訴訟と飛行場周辺住民の原告適格
- 定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によつて社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを訴求する原告適格を有する。
- 土地改良事業施行認可処分取消(最高裁判決平成4年01月24日)行政事件訴訟法第31条,土地改良法第96条の2第1項
- 土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合と右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益の帰すう
- 町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
- 本件認可処分は、本件事業の施行者であるD町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。
- 原子炉設置許可処分無効確認等(最高裁判決平成4年09月22日)行政事件訴訟法第36条,核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律23条,核原料物質核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律24条
- 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住する住民と原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」
- 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住し、原子炉事故等がもたらす災害により生命、身体等に直接的かつ重大な被害を受けることが想定される範囲の住民は、原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき、行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。
- 設置許可申請に係る原子炉(高速増殖炉)から約29キロメートルないし約58キロメートルの範囲内の地域に居住している住民が右原子炉の設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」に該当するとされた事例
- 設置許可申請に係る電気出力28万キロワットの原子炉(高速増殖炉)から約29キロメートルないし約58キロメートルの範囲内の地域に居住している住民は、右原子炉の設置許可処分の無効確認を求めるにつき、行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」に該当する。
- 設置許可申請に係る原子炉の周辺に居住する住民と原子炉設置許可処分の無効確認を求めるにつき行政事件訴訟法36条にいう「法律上の利益を有する者」
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